【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

心の刺客

2006年05月28日 22時14分35秒 | 幻想世界(お伽噺) 
   

 【 懊悩褥 】


微か汗匂う想う君は見上げながら 交わり後の疲れ掠れ声で
 「 お友達でいようねっ 」 って 

僕は瞬きせず 貴女の瞳を見下ろしながら 
 「 いぃよっ 」 って


 けどぅ 僕の心は荒みました



眠れぬ夜 黒色深間で懊悩が 支配する意識は 
何処とも知れない深き暗き海 悶々と後悔して渡らせます

音無く揺れる 船酔い気分の僕の心 
音無く揺れ動く波間に 揺蕩ように浮かぶ意識

 優しく静か波が弄びます

 そして、苦悩の褥モドキに包みます

冷たく醒めた意識の底で 幾度も繰り返され響きます
何気に僕に告げた 君が自分では気づかぬ優しき 残酷甘声が 
 
死ねと 亡くなれと 逝けばと
告げる言葉と同じ意味言葉 

 胸に刺さります



昨日の告白の朝の 眩いお日様 お昼には雲隠れ 
 其のまま雲に隠れ 夕方には沈みました 

 星無い黒き透き通る天の夜に 溺れました



やっとの丑三つ時頃 突然っ 
裏山鎮守の森から夜鴉の狂い鳴き声 
 奔って降りてきます 

 縁側障子の白き和紙 震わせました



 天の漆黒闇から 雨が

暗さを見詰め 観えぬ二人寝褥部屋の 暗黒天井 
微か聴こえの土打つ雨飛礫音 直ぐにエロスな濡れ音 

 雫音 音 音 


 息 甘き腐臭が微かに
 想い 断ち切れなく徒然に
 覚悟 未練が迫ります
 意識の交合は 擦れ違い

 唯 意味無く 
   ぁ!っ 嗚呼っと 

 闇の向こうから最後に 闇聞こえ



朝は 未だまだ訪れません
夜は 未だまだ此れからです
暗闇は 永久にと離しません

何故なら 貴女を逃がさないから


何時までも 情念の暗さが抱き締めました



 終わりの 最後まで



      
             

夜の酩酊逃走世界 !

2006年05月24日 01時11分01秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  

  【 逃走 】

「あの二人はなぁ 兄妹なんやでぇ 」
「ぇ! そぉかぁ やっやっぱりそっそぉなんかぁ! 」
「うんっ 永い事離れ離れやったけどぉ 
      やっと逢えたらぁなぁ、なさぬ仲のふたりやったなぁ」

っと おかぁはんっ 言い終わると茶碗酒呷りました。
自分 どぉ相槌を打っていいか判りませんでしたから おかぁはんと同じ様に
自分の湯飲み茶碗 呷りました。

意識の底の酩酊は、もぉトックニ胸の中で広がっていました。
酔いは酒ではなくって、遣り切れなさの想いが広がるからでした。

  

今夜の騒ぎを見届けた自分たちは、狂乱的大騒ぎの店から出る時 
真二に言われて赤い爪が案内してくれた、
店の奥の従業員の女の子達が着替たり 休憩するロッカールームにある裏口から 
 暗い路地裏に出ました。
裏口のドアは最後に 真二が内側から閉めました。
ドアを閉めるとき、真二とつねちゃんが言い争います。

「えぇかっ ぜんぶわいがしたんやからなっ なんも言うたらあかんぞっ! 」
「真ちゃんっ! わてが刺したんやでっ自首するんはわいやんかぁあ!ぁ 」
「アホッ! 言うなっ! 言うたら殺すぞっコラッ! 」

真二の眼つきと面顔、 何かの覚悟の気持ちが表情に表れていました。
其の覚悟の為 目尻が吊り上って頬 引き攣っていました。 

 そやけど口元は、微笑んでいました。

「真ちゃんっ ゴメンなぁ~!カンニンやでぇ!! 」
「えぇっ 分かってるさかいに気にするな なっ 」

ドアっ 金属同士がぶつかる音響き 閉まりました。
赤い爪 暗闇路地に吸い込まれる軋る様な嗚咽と共に 鉄の扉に縋ってました。

それから暫くすると パトカーと救急車ののサイレンや
警察関係の人々の怒号が表でし始めました。
自分たち、表に回って野次馬の群れに混ざりました。

つねちゃん、自分の背中に顔を伏せて泣いてました。
自分の背中 涙で濡れ続けました。 
堪える事無く赤い爪 何時までも啼いていました。

真二さん店から連行される時 自分達の方を観ました。頬ぉ蒼褪めてます。
其の後ろから清美が 婦人警官に肩を抱かれる様にして連れられていました。
顔 白いハンカチで覆われていました。
自分、もぉ何も考える力も失せ パトカーの屋根でクルクル回る真っ赤な回転灯 
ボンヤリ眺めるだけでした。

 其の時っ!
 怒号が湧きます 警察車両の群れの向こうから 突然っ!

警官や刑事らしき人々が何かを叫び話ながら一つの流れになって 
 何かを追う様に表通りを走ります。

「逃げたっ! 追わんかい! 」
「路地やっ 其処のやぁっ! 」

つねちゃん、自分の背中にくっついて小声で言いました。
「ぇ! 真ちゃん逃げたん? 」
「!っ するつもりなんやあっ! 」 自分マサカと思いながら
「やぱりかぁ ! 」

つねちゃんと自分 慌てて警察の群れを追いました。

真二っ 勝手知ったる夜の路地裏に逃げ込みました。

自分 真二が往くのはあそこしかないなぁ 
っと 走り出しながら思いこぉ考えました。

 止めん方が えぇんやろかなぁ  っと。


 永い夜が終わる始まりでした



「かきちゃん あんたかて人ぉ殺したい想ぉうたことないんかぁ 」
おかぁはんが細腕で一升瓶持ち上げ こっちの茶碗に傾けながら聞いて来ました。
「ぉかあはん あるでっ なんぼでもあるがなっ 」
自分茶碗に細く注がれる酒を視 寝ろと誘う酩酊を堪えながら言いました。


 夜の硝子戸隙間風の啼き音 やっぱし悲鳴みたいやなぁ ってね
  自分が啼きたいのを堪えて 想いました。


  

    

終わりの仕方

2006年05月17日 02時54分24秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  

 【 !っ ロクデナシ 】


おかぁはんっ 一息で呑み干しはった。 
其れぇ 今ぁ呑み込んだ冷酒とは違う何かを っでした。
眉間に縦に深い皺刻み、眼を瞑った顔 正面に向け、
両手で掴んだ湯飲み茶碗 カウンターに静かに置いて言いました

「真二の亡くなったオトウサンはなぁ えぇ男ぉやったけどぉ 物凄いロクデナシやったなぁ 」

自分、相槌の代わりに一升酒瓶を傾けて 空の湯飲みに注ぎました。

「昔なぁ 洞爺丸台風ってゆうのがあったん あんたぁ知ってるかぁ? 」
「 ぃいやぁ 知らんっ? 」
「そぉかぁ そぉやわなぁ 知らんやろなぁ ・・・ 」

暫くは二人ぃ 湯飲み茶碗酒 啜っていました。
自分 途切れた話の続きを待って
おかぁはん どぉ話そうか迷って 


「随分昔になるなぁ ・・・・ 昔ぃ北の方でなぁ ・・・・

  本州と北海道の間の海峡をなぁ 往き帰するのにぃ青函連絡船があったんやぁ
  その青森と函館の間を 洞爺丸っちゅう船が行き来してたんやぁ
  わたしらなっ その船に乗ってたんよぉ
  真二の家族も乗ってた 親子四人でなっ
  わたしらわぁ新婚やったわぁ ・・・・ !ぁ∼懐かしいなったぁ 」

「ぉかぁはん、亡くなった旦はんかぁ ? 」
「  他に誰がおるんやっ! 」
「!ぅ すんませんっ 」

横目でおかぁはん 盗み見したら 
右手で握った湯飲み茶碗 刺す様にジッと見詰めてた。

「あの人なっ 優しかったわぁ! 其れに綺麗な顔してました ほんまにぃ 」
「 ・・・・ぅん 」
      
 っと 返答しました。

外ぉ あんがい強い風っ 吹いていました。
古い硝子の引き戸、風に呷られ揺れ ガタガタゆうてます。
切り込む様に音立てて吹き込む隙間風 何時までも啼いていました。

 遠くでの 何かの悲鳴みたいに




真二 自分の隣に座りました。
自分 今ぁ何故に隣にとぉ・・・・・
奥のボックス席やろぉ っと。
 
「つねちゃん 水ぅもらえるかぁ 」
「ぅんっ 」

直ぐに差し出された八オンスグラスに ナミナミトぉでした。
出し終えた赤い爪 真二の顔から目線を離しませんでした。

「真ちゃん うちになんかぁできるかぁ? 」
「 ・・・・・ なぁんもぉ無いでぇっ どないしたんやぁ? 」
「ぇ! ぅぅんっなんもせんっ 」
「おかしなやっちゃなぁ! なぁちぃふぅ? 」
「ぁ ぇ! そっそやなぁ 」

赤い爪 悲しげな顔でカウンターの中から出て 
店の奥の スタッフ専用出入り口カーテンの中に 消えました。
直ぐに出て戻ってきた時には 何時もの二の腕剥き出し赤いドレス衣装でしたが
首には さっきまでの黒い蝶ネクタイじゃぁ無く代わりに
真紅のリボンみたいな 蝶ネクタイを締めていました。

「真ちゃん 此れぇ似合うかぁ ?っ 」
「あぁ よぉ似合うでぇ 」
「 ぉおきにぃ ! 」

っと、ネクタイに負けないくらいに真っ赤な顔で 言いました。
突然っ 怒鳴り声が聴こえて来ました。
後ろっからっ!  店の中が凍りつきました。

 此の店の客 其々の動きも 

真二っ スツールを後ろに倒しながら 素早く奥に向かって走る
上着の背中捲れて 締めてるベルトが観えてます
其の腰のベルトに挿まれていました 自分がクロークに預けた細く絞った紙袋。

他の見知った顔の カウンターに座っていた客たちも 
真二に釣られて 奥にでした。

自分 加わろうとして走りかけたら、さっき真二が倒したスツールの脚に躓き
オモイッキリ前のめりに倒れ 絨毯に頬がっ!

慌てて起き上がろうと顔 上げかけたら目前スレスレ 
赤い爪の踵の細高い金色パンプス ギリギリ掠めてでしたっ
立ち上がって走ろうとしたら 赤い爪 パンプスを脱ぎ捨てました
履き捨てられた二つのパンプスっ 薄暗い絨毯の上

 別々の方角に飛んで 転がりますっ 

赤い爪の二つの白い足裏と脹脛 遠のきます 
タイトな裾割れドレス 捲くれて綺麗な素足が覗きます。
形のいいお尻の影 揺れていました。

『クッソォ!っ こんなんに負けるかぁ ! 』 っと 

 自分 そぉ思いなが皆の後からでした。 




「物凄い台風で連絡船がぁ沈んだんやぁ∼ 
      あの晩わぁ 人がいっぱい亡くなったんよぉ! 」
「子供の真二さんも乗ってたんかぁ 」

 おかぁはん、口に含んだ酒ぇ ゆっくり呑み込んでぇ 「ぅん 」 って 

「 っで? 」
「真二の二親 そん時にぃ死んでもたぁ ・・・

  わたしらかてなぁモシカしてたら あん時に死んでたかもなぁ
  だからなぁホンマに真二の親が亡くなってしまったって 
  誰もが思ったよぉ そぉ思っても仕方がなかったんやぁ ・・・・ 」
 



薄暗いボックス席っで あの男が清美を殴っていました。
 
「ぉとおさん許してぇ! 」 っと清美が悲鳴言葉で
『なにがオトンやぁ! 』 っと、自分。胸でっ!

振り上げた男の腕 背後から真二が掴みます
 
「なっ なにするんやあっ! 」 っと、男が
「やめて下さい 殴るならわいぉ殴れっ ! 」
「なっなにぬかすかぁ ! 」

後から 勢いで続いてたみんなの脚 急に停まりました。

立ち止まった皆の影の隙間から 覗き見える真二の後姿 
後ろに回した左手が 背中の下側 腰の辺りを弄ります 
ベルトに挿んだ紙の袋を求めて

自分 影を掻き分けて前に出ようとしたら、赤い爪が真二の背後にっ
つねちゃん、ベルトに挿んだ紙袋 抜き取りました。
此方に身体を向け 紙包みを破り中から取り出しました。

 細身のナイフを

此れ、自分が店の若ボンに頼んで誂えてもらた 得物です。
若ボン 趣味でカスタムナイフ作っています。
あの時、キットこんな状況がぁあるかもぉ・・・・・っと。
其れで若ボンにでした。


薄暗い此の店の照明でも 刃物の刃 冷たく光っていました。
切っ先鋭い金属刃物の光を映した つねちゃんの眼も煌いていました。
ナイフの象牙の柄 両手で握り、煌く眼でコッチを見た様なぁ・・・・ ぁ!

 つねちゃん、前に立つ真二の身体を自分の身体で押し退けたっ

躯ごと前のめりに突っ伏す様にでした。
つねちゃんっ ボックス席の背凭れの向こうにっ  

 悲鳴がっ! 清美のっ




「なぁかきちゃん、運命なぁ あるなぁ 」
「 ・・・・・ ぅん 」
「わたしも 真二の家族もぉ あの船に乗らんかったらなぁ ・・・・ 」





                 

深夜倶楽部 閉店間際

2006年05月07日 01時39分32秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 


 【 噂のぉ・・・・ 】

 もぉ とっくに店は終わっている筈なのに っでした。

今からの時間 此処の店には 夜の勤め人さんらが仕事の帰りに寄り道をと
ボチボチと集まって来ます。そして、座るのは殆どがカウンター席です。
お互いに顔を合わせると、今夜はうなずき挨拶を でした。

「ちぃふっ 今日は早いなぁ 」
「あっ マネェージャァはん おはよぉ どないでしたぁ? 」
「ボチボチやなぁ どんなん 」
「今日は自分っ お休みしてましたさかいにぃ店はどないやろかなぁ 」
「 そぉかぁ、大変やねんなぁ 」
「 !っ  はぁ 」

此の人 他所の店のマネージャーさんです。
今まで あまり話した事もない此の方 どぉゆう訳か今夜は 隣に座って着ました。

赤い爪のバァ∼テン。
「マネェジャァ お疲れさまぁ∼ いつものぉ? 」 っと此の人の前に
スワトウ刺繍のコースター っと 小さなクリスタル硝子の灰皿 
 並べながら言いました。


「ぅんっ ちぃふぅにもやってかぁ 」
「えっ、ぁ、すいませぇんぅ 」
「ちぃふ なんかワシに出来る事あるかぁ 」
「ぇ、ぁ、おぉきにですっ 別にないですよぉ 」
「そぉかぁ、 まぁ なんかあったら言うてかぁ 」
「 っはぃい 」


赤い爪の指 二つのショットグラス 目の前に行儀良く並べます
注がれる生の琥珀色の液体 ダウンライトの光で煌きながらでした

「どおぅぞぉ 」 赤い爪の女 伏目がちに言いました。

自分とマネェジャァ、其々のグラスを指で摘む様にし 互いの目の前に掲げます。

「お疲れさんでしたぁ 」
「うんっ 巧くいくとえぇのになぁ、願うからなぁ 」
「はいっぃ 」

お互いに 顔を見もって頷き合い 生のウイスキー っダブルを 
ショットグラスで一気に引っ掛けます。
自分 顔を仰向けにして喉に流し込みました。酒精の冷たい熱さをぉ  !っ
 胃の腑が焼けどしそうなっ 熱さをでした。
眼を瞑ると目蓋の裏で酒精が 真っ赤な火花を散らします


 けど、心は益々の 落ち着き冷たさがぁ やったっ




         

夜の見習い 若ボン君 

2006年05月03日 02時32分41秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 


 若ボン 

 【見習い】


 未だまだ時間は ユックリとしか進まんなぁ  

ダウンライトの光が 腕時計文字盤硝子で黄色く反射していました。
俯きもって煙草を銜えると すかさず耳元で金属音と発火石を擦る音
目の前に 火が点いたジッポがっ

「おぉきになぁ 」 煙ぃ吐き出しもってっ
「 いぃよぉ∼ 」 消さないジッポで 自分も一服点けてます。
「なぁ つねちゃん 今夜ぁなんか変やなぁ? 」
「ぇ! ぁあ∼っ ぅん。 へっ変やねぇ  ! 」

赤い爪の女。昔の愛称で呼んでやったら 顔面
真っ赤にしよったっ なに恥らってますんかねぇ !



今夜はなかなかに 何時もの酔いが巡ってきません。
まぁ、其の方がいいんですけどねっ 酔ってしまいますと観れないかもなぁ
けどっ、どうなんやろかぁ ? ほんまに真二ぃ するかなぁ
つねちゃん(赤い爪の女)が言ってた様にです。
此の店の常連客ではない者が 何人か着ています。
同じカウンター席に座り、此方を
お互い顔は見知ってますから、うなずき挨拶。

 其々 独りで来ています

変です、日頃なら。
お互いに喋りあうし 先に此の店に着ている者の横に座る。筈です。 
何かを牽制しているんでしょぉ。
其れに今の時間なら、自分の仕事(夜世界の)をしている筈。 
お互いに、何かから、何かを期待してるようなぁ 
 
 やはり噂がぁ でしょうかぁ?



昨日 店のバーテン見習いの若いモンが 聞いてきました。

「ちいふっ 真二さんどぉなんですんかぁ? 」

っと、見習いの 若いボンが聞いてきます
倶楽部の営業時間中の、入店客が切れ フロアーが少し落ち着いた頃に
此方の様子を窺うように 厨房の出入り口から上目使いで。
自分 此の時、薄暗い店の奥の方で影で動く 真二を眼で追っていました。


「 どぉって、何や? 」
「えっ、ぁ、 ぃいえっ いぃですっ 」
「えぇっとは なんやねんっ 」

 胸倉掴みそうなん 我慢しました。

「すいません。悪かったです 」
「 ぇえっ。 けど、何処までや? 」
「ぇ、どこって?っ 」
「何処まで知ってるんやあっ! 」

蹴るっ。 っと自分の気持ちを感じたから 堪えました。
多分、自分の顔色 変わっていたのかも。
無理に笑いました。作り笑顔でぇ

「ちっちぃふぅ これ言うたら怒りはるかもしらんけど、聞ぃてください 」
「   なんやっ 」
「自分 昨日の休みに、馴染みの店に飲みに行って  」
「おいっ!そこ。なにゴチャゴチャ言うてるねんっ!できたんかっ! 」
「ぁ はいっ 」

振り返ると真二が カウンターの中に入ってきていました
客の注文した料理を取りに。
だから、若ボンとの話は それっきり途切れたままに成ってしまいました。
此の若ボン。自分が此の店に連れてきました。
入店の為の 面接も試験も何も無く です。

 只っ

「まねぇじゃぁ∼ 此のコが此の前話してたモンです 」
「ぁあっ そぉかぁ、頼むでっ 」
「○○いいますっ よろしゅうお願いします 」
「じゃっ 厨房からしぃなっ 」
「はいっ 」

 此れで決まりでした。

此の若ボン 
自分の仕事は真面目にやってくれますし、言われること以上の事 致します。
自分が此の夜の世界に入る前の 昼間の世界で知ってたヤツでした。

 元々は陸上自衛隊 隊員です。

お国にお勤めしていたお陰で 色々な特殊技能資格を習得しています。
ですが、夜の此の世界に入ってからは 其の事は一切口に出しません。
 っし、自分も真二には言いませんでした。
そんなのは、何んにもならないのが此の業界の やり方だからです。
だけど、ある意味。以前の職業で秀でるヤツは 何処に往こうと其れなりの事があるっ
っと、思う様な仕事ぶりでした。


「ボンっ 頼みがあるんやけどなっ 」
「はいっ なんやろぉ? 」
「ぅん。店ぇ終わってからなぁ おかぁはんとこでなぁ 」
「じゃぁ、往きます 」
「ぁあ、待ってってかぁ 」

此の日 店の営業が終わりかける頃に ボンに言いました。

真二さんは、店が終わると 迎えに来た清美さんと一緒に帰ってゆきました。

「じゃぁ、誂えて来ます 」
「ぅん、たのんだでぇ 」
「ちぃふぅ、やっぱしぃ真ちゃんやるんかぁ 」
「おかぁはん、今のん聴かんかったことにしてなぁ 」
「    ぁぁ、わかった 」

っと、言って おかぁはん、お店を早仕舞い致しました。
流しの下から 一升酒瓶 取り出して言いました。

「此れ、わての奢りやさかいに呑みっ 」



此の夜は ボンと自分 痛飲致しました
其れから ボンと肩組んで帰る夜道
早春の穏やかな 夜風がでした。
 
二人ぃ 月観て吼えてました
 

 わざとの 大声でっ