【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

縊死な感覚

2007年09月25日 12時17分19秒 | トカレフ 2 
  


縊死ナ締マル感覚



夜の続きで早朝に、中央卸市場で一仕事やらかしても、疲れを知らぬ縄澤だった。
朝一番の定時連絡を本署にと、電話を借りようとして駅裏派出所にやってきた。
狭い派出署内の見知った警官らに朝の挨拶、頷き交わし、ダイヤル廻す仕草で電話を借りると。
受付カウンターの向こう側の、机の上の受話器を摑もうとしたら、眼の前の電話機が鳴った。

直ぐに、横から伸びてきた手が、摑もうとした受話器を取り上げた。

頷き返事で応対する警察官の喋り、徹夜勤務の夜勤明け、終了間近な気だるげな感じだった。
警官が電話の相手と交わす言葉、傍で朝刊を覗きながら流し聞いていた縄澤。
警官の切れ目な応対言葉から、何かを嗅ぎ取った。

自分が電話に出た方が、よくはないかと。


「なんかややっこしいぃんかッ?」

「夜中に空き巣にやれれたゆうてます 」

受話器を耳から離さず、目脂を指先で擦り落としながら言う。

「何処や?」

「○○町の○○アパートです 」

「貸せッ 」

警官の耳に貼りついていた黒色受話器、毟るような感じで取り上げた。
縄澤、受話器に幾つかの質問喋った。 直ぐに電話の向こうの相手が誰か、感づいた。
口が勝手に事務的にと電話の向こう側に訪いかけ、腹の中では、ほくそえんでいた。

当たりやッ!

感づくと、直ぐに行動するのが優秀な猟犬の性(サガ)。
縄澤、まだ相手が何かを話してる受話器に、隔てるように物言う。

「ほな、直ぐに行かせて貰いますわッ!」

最後の言葉を言い終わる前に、受話器を叩きつけ戻してた。
派出所の出入り口めざして大股で歩き出すと、連れの刑事が追う。

「縄澤さん、なんかあるんかぁ?」

背中に問われ、吐きだし言葉で応じた。

「なかったら、動けんのんかッ!」

「済んませんッ! 車ッ動かしてきますわッ!」


「今日は、おもろぉなるでッ!」


縄澤の肩押し退け、外に飛び出す若い刑事の丸めた背中、追いながらだった。



親の持ちもんのアパートの一室を、自分の寝グラとしている大家の息子が、午前様で夜遊びから帰宅した。
自分の部屋が在る二階へと鉄の階段上がると、薄暗い通路に見慣れない男二人が立っていた。
もう直ぐ寿命間近な切れかけた、通路灯の裸電燈の光を隔てていたので、不気味な影のように立っていた。


「あんたら、此処でなにしてますのん?」

中年半ばな息子、こんな夜更けにぃ? っと訝って。

「なにやぁ?お前だれやッ!」 背が低いほうが。

「オッきい声ださんでえぇやん、迷惑やッ!」

「なんが迷惑ちゅうねん 」 小男の後ろから、丸坊主頭でデブな男が。

「コナイナ夜中に、此処でなにしてますのん?」

「お前、此処のモン(者)かッ?」 チビが、部屋の扉を顎で差した。

「ウチの店子の部屋や、アンタら知り合いか?」

「ウチぃ? ナンや大家か?」

「息子や、あんたらこない晩いのに、勝手にウロウロせんといて欲しいわッ!」

「そんなら大人しゅうしたるさかいに、鍵ぃ出せや 」

「知り合いなんか?」

「ゴチャゴチャゆうとらんと鍵、貸せゆうとるんやッ!」


デブが脅し言葉で喋り、前に出て二人で狭い通路を塞ぐ。


「なんでワケ(理由)も言わんヤツに貸さなあかんねんッ!」

「なんやあぁ!イッペン絞めたろかッワレッ!」

「まぁえぇがな、こいつかて立場があるやろさかいにな 」


チビがデブを押さえる形で決めようとしていた。
 
息子、コイツラ ≪慣れてる≫ッと、此の時ぃ想ったそうです。
この二人は、こんな形で物事を仕切ってきたのだろうと。

ッデ、チビ、寒い夜更けなのに言います。


「なんやお前と喋ッとったら、暑ぅなったわ 」


襟首を指で引張り、首の付け根の青黒い墨絵(刺青)わざと僅かに覗かせ見せた。
それ、薄暗い明かりの下で観ると、不気味さがぁ・・・・・
襟を引張った指にも、墨で掘られた細い輪ッ架が チラリ見ッ!とだった。


「コラッ!お前ッ、にぃやん暑がらせたらあかんがなッ! 」 デブ、一歩近づいてきた。


鉄の階段鳴らして、誰かが上がって来る。 三人、固まって耳を欹てる。


「どないしたんや 」

「あぁ、おやっさん、この人らが無茶言いますんやッ!」

「どなたさんかいな?」

「大家か?」 チビ。

「そぉやえけど、何方さんかいなぁ? 」

「○○○のもんやッ 」

「そぉか、済まんけど他の部屋の人らがお帰りなんや、上で騒いでるさかいに行けんゆうてますんや 」

「どいつが文句ゆうてるんやッ! 」 デブ、階下に聴こえるような大声。

「チョット着てもらえるか?」

「何処にやッ!」


「ウチの家にですがな 」


チビが大家と共に、アパートの敷地内の大家の家に行った。
デブは、イッショニ来て欲しいと誘う大家の言葉を、部屋の前に居ると突っぱねる。
息子は、自分の部屋に一先ず帰るために通路の奥にと。


「こないな夜中に騒いではると、警察に言わなぁアカンようになるけどな 」

「ゆうたらえぇがな、好きにせぇや 」

「あの部屋の人になんの御用がありますねん?」

「それ聞いてどないするねん、おやっさんかて儂らが出張るチュウ意味、判っとろぉもん 」

「まぁ・・・・・察しはつきますけどなぁ、迷惑なんは迷惑やねん 」

「チョット煩ぁにしたからゆうて、なんぼのもんやねん、口ぃ挿まんほうがええでッ!」

「あんた、口ぃ利き方気ぃつけた方がえぇんとちゃうかぁ 」

「ナンや! なんぞ文句があるんか? 」

「ないこともないけどなぁ、あんたんとこの○○は、わしも知らん仲やないねん 」

「なッなんやぁ、○○さん知っとんかぁ?」


「そやから、口ぃ気ぃつけんかいな 」


実はこの大家の爺さん、今はボロアパートの大家を託っていますが、若い頃にはケッコウナ遊び人。
其れも渡世家業な一匹狼を謳い文句に、夜の騒ぎ街辺りでは可也な名を馳せたお方でした。
今は、見た目は老いに一歩踏み出したようには観えますが、少しはその筋では有名人やったお方です。
ドサ廻りの名も売れてないような旅芸人らが、地方に往って興行を打つときに、其々の地元で世話になるのが
此のオヤジさんのような、金に潤沢な地方の名士や、顔役風情な方々。
此の大家、大相撲の地方興行の折には、勧進元を勤めていた程の財産家で、当時の顔役。

若かりし頃の爺さん、何処の組織にも身を置かなかったからか、戦後の一時代。
喧嘩や出入り討ち入りなどの、揉め事騒動の手打式など、立会人にと、なにかと便利にされたお方。


チビ、口は穏やかな物言いの初老の男が、急に大きく見えたのかも。
少しは、丁寧言葉になりました。


「オヤッサン、ワイらあの部屋で探しもんしたいだけですねん 」

「なんぉ探すんや、こないな夜更けになぁ?」

「それゆうと、ワイの首が撥ねますがな、勘弁してぇなぁ 」

っと自分の首を、墨の指輪が見えるように手のひらで撫でます。

「ワケも言えんのやったら、迷惑なだけやなぁ 」

ジィさん我、関せずな風情で煙草を燻らせ、煙を吐く。

「そこんとこ、判って欲しいんですわ 」


玄関引き戸が勢いよく開けられ、息子が血相変えて飛び込んで着たッ!

「おやっさん、部屋めんでるわッ!」 (壊してるッ!)

チビ、ニヤリと顔がほころんだッ!


「お前、計ったんかッ!」 爺さん。

「コラッ!なに偉そうにしてるんやッ!ボケッ!誰ぉ知ってるやっとぉ?」

「ナッ!何ぉするきやッ!」

「部屋ぁ改めるチュウてるやろ、大人しゅうしとったらええんやッ!」

「警察やッ!おやっさんッ!」

「待ったらんかい、チョットの辛抱チャウんか、ワレッ!」 チビ。

「言わんでえぇ 」 オヤッサン。

「なんでやッ!コナイナ奴に嘗められてますんやでッ!」

「言うたらえぇがな、ナンボでもゆえやッ!」

「判った、そやから他の人に迷惑だけはかけんといてくれッ!」

「ぁあッ あんたに免じてそないしたるわ、そやから息子ぉ大人しゅうにさしとけやッ!」

「おやっさんッ!」

「ァホ!もぉぅえぇんやッ」


「ヤット判りくさったんか、ボケが!時代がもぅ昔とチャウんやッ!」


チビが表に出たので、親子もあとから表に出た。
夜の中を窺い観ると、背中に組の名が大きく染められた、職人半纏を纏った男たちがいる。
アパートの二階から、物を壊す音がしてくる。
半纏の男たち其々が、鉄のバールや大きな木槌など、家の解体道具を提げるか担いでいる。

此の大騒ぎなのに、どの部屋からも住人は出てこない。
警察が此方にと、近づいて来ているような、パトのサイレンノも鳴り響かない。
誰もが、此の騒動に巻き込まれまいと、しているのだろう。

荒々しい男達の声が、二階から降ってくるッ!


「ぉいッ!何処にもないがな、ソッチはどないやねんッ!」

「在るかぁ、なぁ~んも見つからへんがな 」

木が叩き割られる音の合間に、声が交わされる。

「モット、よぉぅ探さんかッ!」 下から禿げボウズの、デブ。


大家親子、唯ぁ無言で見物しているだけだった。
自分らの世界が、無法な土足で踏み込まれたことよりも、
アパートの店子を守って遣れないことの方がと。

恐らく不甲斐ないと悔やむものが、二人の心、蝕まれる酷い顔つきだった。

二人は黙って、破壊の様子を眺めていた。


「ほな、大人しゅうに帰ったるわ 」 デブ。

「オヤッサン、文句あるんなら○○さん通してゆうてんか?なッ!」


捨て台詞を残して男たちが消えたのが、空が白みかけた朝方だった。




「ッデ、なんでそん時にぃ警察に通報せぇへんかったんやッ?」

縄澤が、後ろに若い刑事を従えて、訊く。
爺さんと息子、互いに顔を見合わせると、爺さん顔が堕ち込みだす。
息子は、何かの憤りで顔が真っ赤に為ってきた。


「あんたら、ゆうたら助けてくれたんか?」 息子

「助けるもなんも、連絡くれんかったらコッチも判らんやろッ!」 縄澤

「もぅえぇがな、もぅ 」

「オヤッサンぅ、そやけどぉ 」


「もぉええんやッ!」


自分、如何にもなぁっと、想いが深まるばかりでした。


「ぉい、なにか盗られたんか?」


縄澤、肩越しに振り返り、少し離れた所で煙草を吸っている自分に声、かけて来る。


「ナニ盗られますんや?」

「儂が訊いてるねん、応えんかいなッ!」

「そやから、なにが盗られたらえぇねん、なぁ?」


「巧いこと隠したんやなぁ、お前ッ 」 縄澤、口を歪めながら笑った。


首だけが此方を見据え、目ぇ、全然笑わない冷たい目ン玉ぁしてました。

縄澤、瞬きせずにユックリと挙げた腕の手招きで、コッチに来いと仕草言葉ッ!

自分、小動物が獣に睨まれる心境は、コナイナ感じ?なんかぁ・・・・・・ット。



背中で冷や汗噴き出し、躯は固くな塊と為って竦んでしまった自分、遣った。




  

空き巣と言い訳

2007年09月16日 01時50分37秒 | トカレフ 2 
  


獣たちの世界では、群れの中で一番強い者が其の集団を率います。
強さなことが正義なんだから、仲間を疑うことなんてないんでしょう。

人は人を疑います。

だから、其の相手が眼の前から居なくなると、
胸の奥での疑惑は、尚更らに深まるのでしょう。
事実なにもなくても疑うことで、妄想する猜疑心を現実の如くにと感じるから。
なにが正しいなんて、凡て思い込みだから如何にでもと。

納得尽くめで、言い包めましょうかと。



【空き巣狙い撃ち】


寝不足と、歩き疲れたからだろう、脳の痺れを感じながら古い木造アパート、鉄の階段登った。
合板製ドアの錠前鍵穴に、鍵を差し込んだらドアを開ける気がしなくなった。
穴に差し込んだ鍵を摘む指先が、いつもの感覚じゃぁないと。
鍵は穴の途中で止まり、鍵穴の奥まで入らなかった。

誰かが、無理にドアを開こうとした。


廊下の端から端にと、顔を振った。 誰も居なかった。
屈んで新聞受けの蓋を押し、中を覗いても暗い向こう側に
嵌め殺しのスリ硝子が、明り取りの小窓に為った内側扉が見えるだけ。
其の内側扉、少しだけ開いていました。

出かけるときには、キッチリ閉めていたはず。

暫く、何かの気配はないかと覗き込んでいたが、そんな様子はないようなので
アパート二階裏側、三左衛門川(別名三段掘)の在る方に続いてる通路を裏側にと。
裏側にはベランダ代わりの、アパートの端から端まで通しの、非常用の通路が通っています。
その通路は、アパートの住民の共同通路で、其処には何も置いてはいけない規則でした。
火災や何かのおりに避難通路と為るから、邪魔になる物は置いてはけない規則。

手前から二軒目、欄間の在る掃きだし窓に、カーテンも吊られていないのが自分の部屋だった。
硝子越しに部屋の中を覗くと、所帯道具と呼べるようなものは殆どなかったけど。
部屋の中は、畳が雑な感じで何枚も捲られていて、無茶苦茶な状態だった。

押入れの襖は外され、中に仕舞っておいた布団は、畳がなくなった座板の上へ投げ出されていた。
天井も何箇所か破られていて、其処から埃が舞い落ちたのだろう、煤けたように布団は汚れていた。
座板も天井と同じように、所々板がなくなって、四角い穴が空いている。
奥の方、玄関横の台所も、コッチの和室と同じようだと見て取れた。
此の観てくれ状況なら、何かをと、徹底的な家捜しが行われたんだろう。

自分、煙草が無性に吸いたかったけど、生憎と切らしていた。
だけど無いと判っていても無意識に、部屋の中を眺めながらアッチコッチとトポケットを弄る。

自分、アマリのことなので、舌打ちの癖、出もしなかった。
代わりに大きな溜め息が一つ、吐きぃ・・・・・・ッチ!っと。
バイト明けの眠気や疲れなんか、何処かに吹っ飛んでいってた。

煙草が、吸いたくて堪らなかった。

和室の開きの襖の中に、買い置きが在ったけども、其処も荒らされているので諦めた。


「アンタが居らんときになぁ、アイツら来よったんや 」

「・・・・・ッで?」

「わしらぁで止めたんやけど、アカンかった 」

「・・・・・・ナンで警察に言わんねん?」

「ナンでッテ・・・・ユッゆうても良かったんかぁ?」

「えぇがな・・・・ナンであかんねん? 」


大家の爺さん、眼を逸らした。


爺さんがサッキから此方にと差し出してる、ヒシャゲかけたヨレヨレな煙草のパッケージ。
其処から斜めに一本突き出た煙草を、指で摘んで抜き、唇で挿んで銜えた。
ライターを取り出そうとしたら爺さん、エラい勢いでマッチ点けて煙草に近づけてきた。

自分、マッチの硫黄が燃える匂いと共に煙を、大きく肺にと吸い込んだ。
一瞬、立眩みがしそうに為るのを堪え、ユックリト煙を吐き出した。


「ワイらな、済まんけどゴタゴタにぃ巻き込まれとぉないんや・・・・・ 」

横から話し出した大家の息子の声、掠れ気味やった。

「判ってる、そやからナンで警察に言わんかったんや?」

「あんたが困る、思うたんや 」

「ナンでワイが困るねん、なッ?」

「ソリャァ、なんでッテ・・・・・・」


タブン、この親子は、自分が何かの事件(暴力団絡み)にでも巻き込まれてる。
だから、関わりあってトバッチリが自分らに及ぶのかもと、警戒したのだろう。
其れと、此のアパートの在る界隈は、日頃から何かと警察沙汰が多すぎる地域だった。

此処らの賃貸アパートや借家なんかの家賃は、他の地区に比べたら安いと評判だった。
だからと言う訳じゃぁないけど、街中の歓楽街に近いせいか、
入居している店子も、深夜のお水仕事関係が多く、それ以外でも一見すると
何を生業にしているのかと見極め難い、怪しいヤツが殆どだった。

何と無く此の付近、治外法権的な雰囲気がぁ・・・・・ッチ!


「チョット、電話ぁ貸してくれてないやろか?」

自分、返事も聞かずに眼の前の、爺さんと息子の間を割って、
勝手に大家の玄関んの引き戸を開け、家の中のに入った。
昔の古い造りの家なので、二坪ほどの玄関は土が剥き出しで、上がり框がくの字。
くの字の奥の突き当たりに、地面から浮き上がったような、大きな開きの履物箪笥が在る。

其の上に、ダイヤル式の黒色電話機。 受話器を摑んで振り返り、尋ねた。


「駅裏の派出所の番号、何番や?」

息子が、怪訝そうな顔で言う。

「其処ん紙に書いてるわ・・・・」


指差された薄茶色く変色した漆喰壁に、此れも黄色くなってる紙が貼られてた。


「赤い字ぃやがな 」

「ぉおきになッ 」


「すんませんけどなぁ、空き巣が入ってますねん着てくれてないやろか 」


受話器の向こうで、複数の人の言葉の遣り取りがあった。
直ぐに、サッキとは違う人間が出て喋る。


「空き巣って、どんなんですのん? 」

「サッキ帰ってきたら、部屋の中ぁ荒らされてますねん・・・・・?」


自分、マサカなぁっと。

こいつの声、なんかぁ聞き覚えがある声やでッ! っと。
受話器を握ってた手のひら、汗で濡れてきていました。
最初に説明した住所を再び聞かれたし、同じように名前も問われたので答えた。

受話器を戻して、玄関から外に出ようとしたら、爺さんが引きとめた。


「あんた、朝飯ぃまだなんとチャウんか 」

「ぁあ、まだや 」

「食べてくれてないかぁ?」

「なんでや?」

「腹が減ってたら、巧いこと喋れんさかいになぁ 」

「なんも要らんけど、茶ぁイッパイくれてないか 」


爺さんが言うとおりやった、何かが腹の中に入っていなかったら、
今から色んな事を訊かれても、巧くは返答できないやろぅ

・・・・喰えん、爺ぃやッ!

家の奥から大家の息子が、盆に載せた湯飲み茶碗を、
中身が零れないようにと、覚束なげな、慣れない感じで運んでくる。
茶碗、取り上げたら、玄関引き戸を開け放った外から、
アパート敷地内駐車場の砂利が、タイヤに踏まれる音がした。

茶碗を静かに框に置き、外に出た。
サッキ感じていた≪マサカ≫が、遣って来ていた。


派出所の警官が来ないで、覆面パトに乗って、縄澤が遣って来てた。
助手席側のドア、勢い良く開けられると


「お前、よぉぅ災難に遭うみたいやなッ! 」


ット、言いながら降りてくる縄澤の姿、屈んで潜んでた獣が姿を表すようだった。

縄澤の顔、此の上も無く、嬉しそうな顔やった。


こいつ、モシ化したら自分と同じ種類の人間なんかもぅ、っと。
ッデ、イヤイヤ、タだの疲れも知らぬ、化け物なんやでッ!

ッチ!・・・・最悪の災難はッ!お前やろもッ!
自分、心で毒吐いてました。


煙草が吸いたいなぁ、っとも。 



   

猜疑ナ 嘘ヲ 喋ルトォ・・・ッチ!

2007年09月11日 10時30分14秒 | トカレフ 2 
  



「ちぃ~ふ、あんたのんとちゃうんか? 」


っと、自分の肩越しに後ろを指差ゝれて訊かれました。
そんなことを言われなくても、何を言ってるのかは分かっていた。

自然や、自然な感じやっ!
ユックリなんやで、落ち着いて振り返るんやでッ!

っと、心に言い聞かせた。


「なにがですねん? 」

「ぁれや、お前のんやろぉ違うんか?なッ!」


っと、喋りながら此方にと、下から覗き込むように近づく顔、笑っていた。
だけど目つきはそぉじゃぁなかった、黒目の部分が言いようのない冷たさだった。
その二つの目ン玉、見つめられた人を十分に、物怖じさせてしまう沈んだような、
鋭く尖がった黒曜石のような、黒色暗さで占められていた。

この男、青果市場では通称 ≪松屋の大将≫ っと呼ばれていました。
その大将の店の屋号は≪松屋≫。 市場のなかでは老舗の方の仲卸業者でした。

青果市場の場所は国鉄○○駅、西側踏み切り、何本もの上下線の線路を渡り。
駅裏市街地開発で建物が取り壊されて空き地が目立つ、小さな商店街を抜けると、
直ぐに現れる、レンガ造りの古い紡績工場跡地の周囲を取り囲む、高い塀に沿って
南へと下ると、これもまた周りを高い塀に囲まれている場所にぶつかる。

それが、○○中央卸市場。

警備員詰め所が在る正門から入り、そのまま奥にと突き当たったのが、
三階建ての卸市場総合ビル。 ビルの一階が早朝に競り市(セリイチ)がたつ場でした。
建物の中には、青果卸店や他と共同の、大きな部屋みたいな各種の冷蔵庫が幾つも在った。
同じ敷地内には、水産物の鮮魚、塩干、練製品などの仲卸業者の施設も在った。

大将と自分が立っている、早朝の仕入れなどで行き交う商売人で溢れた狭い通路では
二人ともが周りに邪魔なのは良く解っていた。
だけど誰もがこの人には文句を言わなかった。
直ぐに、自分たちが立っている通路を行き交う人が少なくなった。
他の商売人らは直ぐ横の、他の通路を忙しそうにしながら行き交っていました。

その人たち、ケッシテ自分と大将には目も暮れようともしなかった。
自分の眼の前の男と、偶然にでも眼が合えば、何かの災厄に遭うのかと。
急くように行き交う人の後姿に、そんな感じがしていました。


「タイショぉ、忙しいぃのになんですのぉ?」

っと自分、大将の太長い指が、自分を通り越して後ろを指差してるのに、
今初めて気づいたようにと、必死で演技して喋りながら振り返りました。

「あんたの自転車やろぉ? 」 右肩越しに、耳元でぇ

首だけで右後ろを振り返ると、猜疑の視線が威嚇するように此方に注がれてます。

「松也はん、何処にありましたんや? 」

自分、前屈みに為って握り締めていたネコ(一輪車)の握り棒ぉ操作して、
青果の詰まった重い木箱が三段に積まれた荷が、転ばぬようにと。
息つめもって土間コンの床に静かに停めた。
背中が熱を浴びつつっ! っとだった。

猜疑な鋭い視線が、自分の背中に浴びせられ、刺し貫こうとしていたから。


「番外地の線路際に置いてあった 」

「ほぅかぁ・・・・すいませんけど、夕べは自分、ヨッパラッテたさかいになぁ 」

「ぅん、聴いてるで、そやけどバイトに来れんちゅうて連絡するくらいやったらなぁ・・・!」

「はぁ・・・・わい、連絡いれてましたんかぁ?」

「なんや、憶えてないんか? 」

「・・・・・ちょっとぉぅ 」


「よっしゃ、降ろすんてっとうたるわ 」


サッギでの鋭い目つき顔の表情が、一変していました。
穏やかな笑顔の、いつもの卸し市場の大将の顔に為ってます。

「すいません、自分でやりますわ 」

「ナニ遠慮してるんや、ホレ、登らんかぃ 」

痛いほどケツを勢いよく叩かれた。

オート三輪の荷台に登り、横倒しになってる自転車を抱えて、
自分の自転車だけに目線を定め、ケッシテ下の松也さんを見ないようにした。

「よっしゃ、離しんか、OKオッケ~ 」

荷台から飛び降りるときに、松也さんと眼が遭う。
顔は笑っていたけど、細めた眼が、冷たい眼差しで此方を視ていた。


「どや、もぅ忙しいぃないやろ、朝飯喰ってゆくかぁ 」

「ぉおきにぃ、そやけどもぅ眠たいねん、帰りますわ 」

「なんや奢ったろか思うたのになぁ 」


「ぉ!パンクなんかぁ?」

「そぉみたいですわぁ 」

「ほんなら、降ろすんやなかったなぁ 」

「はぁ・・・・・歩いて帰りますさかいにぃ 」

「家まで送ってゆくがな、載せたらえぇ 」

「えぇわぁ、大将ぉ 」

「なんや、パンク修理せぇへんのんか?」

「今度くるときにぃ道具ぅ、モって来ますさかいにぃ 」


「ほぉか、好きにしたらえぇがな 」 ッと聞いたとき


自分のアパードで送られて、住処を知られたくはなかったので、良かったと。
だけど直ぐに、自分を大将がアマリにも簡単に開放したのが、気に為りだした。
大将、大声で通路に沿って並んでる店舗の人たちに、声かけながら歩いて行った。
その後姿、少し猫背の背中が歩く歩調に合わせて、猪首と共に、左右に蠢いていた。


事務所の入り口直ぐのトイレの傍ら、狭く仕切られた小さな流し台の横で、
店から借りている、長靴や作業着から、私服に着替えていると声が仕切りの向こうから。

「かッきゃん、躯ん調子どないやねん?」

昨日の晩に、バイトを休むと電話連絡したときに、託を頼んだ店の番頭格の男だった。
着替え終わって仕切りから出ると、近寄ってきた。


「ぅん、ダイブえぇねん、おぉきにな 」

「自分なぁ、社長(松也)にぃなんかしたんか?」

「ぇ!ナンかってッ?」

「タイショ、なんやぁ怒ってたんやけどなぁ 」

「サッキ三輪トラックで帰ってきはったから、挨拶したんやけどなんもなかったでッ」

「ぁあ、自転車見つけたさかいにモってきたゆうとった 」

「ぅん、お蔭さんで助かったんやけどなぁ、パンクしてますねん 」

「へぇ・・・・・ワイ乗ッテみたけど、どないもなかったで 」

「・・・・・虫ゴムが、おかしゅうに為ってもたんとチャウかぁ 」


ナンデや? パンクしてなかったんが、サッキはパンクやッって・・・・・ッチ!


「○○さん、すまんけどワイが休むって社長にぃ言うてくれはったんやろかぁ 」

「ぁ~、言うた。そやけどワシがゆう前にぃアイツぅ休むんとチャウかぁ、言うてたわ 」


あの晩、ヤッパシ自分があの場に居ったの、気づかれてたのかッ!
それなら如何して、サッキはモット追究してこないのか?
モシも気づかれているのなら、あの大将がおとなしく自分を解放するかぁ?


「ぉい、無事によぉ帰してもろぉたやないか 」

振り返ると、いつの間にか自分の後ろに、覆面パトが付いてきていた。
助手席側の窓から、縄澤が首を傾け出していた。
パト、横に並んだ。 運転手は夕べのヤツと違う男やった。

「顔色モノゴッツ悪いでッ!お前ッ」

「ドナイもないですがな、まだワイに御用がありますのん?」

「ナンやお前、自転車どないしたんや 」

「パンクですわ、ワイよりあんたの方が顔色悪いんチャウのッ 」


市場入り口の、守衛詰め所まで横並びヤッタ。


「ワイ、帰りますんや、もぉえぇんとチャイますの?」

「ナンや、儂と喋ってたら都合悪いんか?」

「・・・・・・いぃや 」

「家まで送ったろか? 」


「シツコイんとチャイますのんッ!」


自分を追い越した。 門を出た所、車道の手前、歩道を塞いで停まってる。


「ぉいッ、ソッチは家とチャウやろも!」

「用事ぃ済ませますねん 」

「お前、気ぃつけなアカンで 」

「ナニ心配してくれてますねん?」


「お前、言わんでも判っとろぅもんッ!」


≪あぁ、判ってるッ!お前に言われんでも判ってるがなッ!呆けッ!≫

ット、自分、口から出かけてた。
だけども、覆面パトの車の屋根の向こうから、大将のオート三輪トラックが近づいて着てたので
怒鳴らずに済んでしまった。


「ちぃふ、自転車修理にモっていったからな 」

「ぇ!ぁッ済みません。気ぃ使ってもろて助かりましたわ 」

「アイツらなんの用事やねん?」

タイショウが顎で示しながら、遠のく覆面パトを望みながらヤッタ。

「夕べ番外地で飯ぃ喰うてましたら、居ったんですわ、ナンや知らんけど訊いてきますねん 」

「なんがや? 」

「はぁ・・・・よぉ判りませんぅ 」


「お前、なんぞ犯したんか?」

「ぇ!なんかッテ?」


タイショウ、三輪トラックの真ん中の運転席に御サマって、バーハンドル大名握りしたまま
此方に顔を向けずに、前を向いて訊いてきた。
時々、空冷発動機、轟くように唸らせていました。
その唸り音、何処かに潜んでる獣が、唸ってますようにでした。


「タイショウ、暫くバイトぉ、来んでもえぇやろかぁ?」

「お前の好きにしたら、えぇがな 」


おかしい? 眼ぇが他の事を告げてるでッ!

自分、そぉぅ感じました。





泡盛

2007年09月07日 02時02分40秒 | メタルのお話し 
  

三十数年を経て、久しぶりに飲む此の酒は、初めの一啜りを口に含みますと。

舌が泡盛酒の味を覚えていたことにですよ、わたしはなんだかね、嬉しくなりました。


以前は、此の泡盛独特の風味がね、わたしには馴染めませんでしたよ。

だけど今ね、改めて飲んでみますとそぉじゃぁなかった。

たぶんね、たぶんですけども、わたしの舌はあれから、色々な味を経験しましたからね

自分を主張しなくなったのかな。


泡盛は、口に含みますと、柔らかいですよ。

口蓋と、舌と、喉の奥までと、粘膜を優しげに洗いました。

飲み込んだら、心が温かくな感覚を憶えさせます。

お腹の中で、熱きものが広がってきますから、熱さが温もりにと為るのかな。


たぶん、昔の人の想いがかな、温もりから教えてくださるのかも。



  

夏の 雪

2007年09月05日 23時37分22秒 | 異次元世界 
  


夏の昼下がりに降る雪、輝く真昼の闇に飛び交う、蛍のようだった。
乱舞な無数の蛍虫 光る尾っぽ眩しき夏の太陽で焦がし、白さで光らせてた。

「そやから何遍も言うとるやろッ!視たんや、雪が降っとるんやッ!」

あいつ、胸の真ん中真っ赤にさせ、言ってました・・・・。たぶん言ってた。
口が動くたびに何か、聴こえ難い何かを言うたびに、胸からブクブク っと
蟹にみたいに赤い泡、吹いとった。

「なんやッ! なんがやッ! なんがやッ!」

あいつ、幾ら聞いても返事せんかった。


人の躯が何かの抜け殻なら、毛布もつより頼りなかった。

と、知りました。


落ちるかと、低さナ感じの太陽に焦がされ、陽炎が立ち昇る、黒い舗装道路の向こう側。
焼ける道の中央白線隠し、地面スレスレに浮かんでいました。
幻視かな逃げ水蜃気楼。

近寄れば、逃げて消え逝く朧な水面、青い空映していました。
焦げる道の真ん中に、池が掘られてるのかと。

サッギで、あいつが跨り駆ってた単車 遥か向こう側でパイプ鍍金ハンドル
酷くひん曲がって青い池の真ん中で、半分沈んで横倒しになっていた。
単車の燃料タンク破れ目から流れ出た、薄赤いワイン色の燃料。
道路の熱さで揮発させられ、揺らぐ陽炎のように、空気メラメラさせていました。

自分、発火するのは時間の問題だな、っと。


自分たち此の日が、仲間とつるんで走るのは、最後の日に為るはずだった。

或る日、「おれ、所帯もつかもしれんで 」 ットあいつ仲間に告白した。

「お前、夕べなにしたんや?」

「ドッカ悪いんかぁ?」


「冗談 チャウねん 」


突然、仲間から取り囲まれた。


「ボケ、イッチョ前にぃナニ言うねんッ!」 ボコッ!

「冗談チャウぅ~? ホナなんやッ!」 ボッコンッ!

「誰が悲しむ思うとんか、ボケッ!」 グッ!

「浣腸ぉ~!」

「ギャッ!」 ケツ渋ッう~!

「もぉ一回やッ、指浣腸したれッ!」

「ヨッシャ、動けんように押さえとけや 」


「もぉぅえぇ!ソンくらいでえぇやろもッ! 」


あいつ、いつもに似合わん、チョット恥ずかしそうな顔やった。
首まで真っ赤にさせ、物凄く嬉しそうだった。
おれら、ただ嬉しかった。 仲間の一人が女と所帯。

いつでも訪ねて行けれる。

そんな家が出来るからと想うたからやった。


「最後の独身オダブツ卒業ハシリやなぁ!」

「お祝いやでぇ・・・・・キッツイなぁ!」

「ケツに乗せるんかぁ?」

「ぉ~!ホンマや乗せたれや、おれらも嫁ハン拝みたいがなッ!」



「あいつぅ、来よるんかぁ?」

「女ぁ、恥ずかしいぃ為ってんとチャウかぁ?」


「ぁッ!来よるッ 」


ケツ(後ろ)に乗っかってる女、サングラスしてた。 長い髪、ポニーテールに結んでた。

あいつ得意げに、道幅イッパイに、スラロームしながら近寄ってきた。


「夏に見る雪は、秋に見る桜の散るが如く ッテかぁ?」

「勿体無いなぁ、アイツになぁ・・・・ッチ!」

「クッソゥ!えぇ娘(コ)ぅ見つけヨッタなぁ!」


女がケツから降りてメット脱いだら、あいつに判らんように、みんなは呻いた。


「お前の女、夏の雪やで 」

「ウチがですかぁ?」


メット脱いだら、みんながヒヤ化しモって、想像した以上の上玉やった。


「ぅん、意味なぁ滅多と居らん、別嬪ちゅうねん 」

「ぅち、恥ずかしかぁ!」

「国ぃ何処ね?」


「○ュゥ○ュゥの、○○ですぅ 」


駅裏の、紡績工場で働いてるって、言ってました。



道路の側溝の向こう側、藪の中まで吹っ飛ばされた女が、後から見つかった。

対向車線のスポーツセダン、センターラインを跨いであいにつぶつかって、止まりもしないで逃げた。
直ぐに仲間が追いかけて、現場まで連れ戻した。

運転していた若者、顔つきが判らん位に、゛コボコにされていた。


「このガキ、謝らんのやで 」 泣きながらやった。

「こんガキ、道に寝かせろッ!ワイが轢き殺したるッ!」


自分、何も言わんと若者の躯ぁ、道の真ん中まで引き摺るようにして、持って行った。


「お前、ホンマに謝らんかったら殺すでッ!コラ 」


鼻血と鼻水塗れの、腫れぼったい横顔に、唾飛ばしモって囁いた。

コッチに顔向け殴りつけた。 何回怒突いたかは、憶えていません。


「どや、謝る気ぃに為ったんかッ!」 今度は怒鳴った。


口が動いたような気がしたので、胸倉から手ぇ離したら、地面に落ちた後頭部から、鈍い音がした。

遠くで、パトと救急車の緊急サイレンの音が鳴ってるのが聴こえ、次第に音が近寄ってくる。


「お前ら、もぅえぇさかいに、ドッカに行かんか 」

「ナンデや? 居るがな 」

「あんなんしたんや、コッチかてただで済まんのやで!」


道路に転がってる若者、顎で指しながらやった。


女は頚椎の捻挫と、軽い擦り傷打撲で済んだけど、数日入院した。
此の女とは、此れが最初で最後の出会いだった。
女の国元から、事故の連絡を受け、心配した親御さんがやってきた。
女が入院していた病院から、退院するとそのまゝ国まで連れ帰ってしまった。


おれら、事故の現場を後にしようとしたら、単車が燃えた。
道路の脇まで流れ出してたガソリンに引火した。

横風で流れる黒煙突っ切って、事故現場から離れた。

最初の角を曲がるとき、パトと救急車と擦れ違った。
後を追って振り返ると、燃え上がる黒煙が、晴れた空高く昇っていました。



夏は、想いでなんかじゃぁない、悔いを連れて遣ってきます。

幻が、暑さななか夏の雪、降らせました。




      

またぁ誰かがぁ・・・・・!

2007年09月04日 01時00分40秒 | 大人の寓話




世の中にはね、聞けばね、≪嘘ッお~!≫ ッテ話は五万とありますなぁ。
トクニね、某隣国の中華な伝奇ものなんかぉ、日本人のわたしなんかゞお聴き致しますと。

「まッさかぁ! そぅれは無いやろぉ?」 ッテです。


普通人がですよ、行ってみたいっとか、入山してやるなどと、
トッテモトテモっ及びもつかないような。

天に高く浮かんだ雲を、下から突き刺す険しく尖がった山々に、
キッとお住まいだと言われております、凄く高齢な仙人ナ御老人。
其の仙人伝説なんかですね、わたしなんかゞお聞き致しますと。

「嘘ちゃうかぁ?」 ット、勘ぐる事、甚だしいコトだらけッ!

お空に浮かんだ雲に乗りよるは、絶対に舌触りどころか、マッタク味もないようなデッセ
見るからにやね、儚げそうな真っ白な霞だけを食ってね、生きられるわッテ。

ソラあんさん、嘘やがなッ


【注】:モシも霞みにお味がするとしますと、カの国は今、偉大なる公害問題が、ぁ、ィャ
   まぁ・・・・・異常事態為る、広域公害大発生中なんです。ハイ
   ですから、酸性雨とかの原因の一つの光化学スモッグ(ニッポンジャァ死語)なんかの
   お味がするかもなぁ・・・・・ット。 


≪孫悟空≫ なんか、嘘バッカシッ!
≪嘘告為:ウソコクナ≫ ッヤデッ!

頭の天ッペンの毛ぇがなぁ(キッとクセ毛やわ)、人さんよりも三本タラン(-:マイナス)賢猿が。
コトもあろうにアンサン、雲に乗ってッテ、その雲を ≪猿≫が 思いのまゝに操縦したりしてッとか。
≪豚:トン≫が 二足歩行してヤデ、オマケに人間みたいに人語を喋りよッテなぁ
沼地や川や、淀んだ池に住みハッテ生きたはる ≪カッパ≫がなぁ、陸を歩いてまッ!

ッテあんさん、嘘バッカシッ やぁ~んッ!

他にもヨクヨク探せばなぁ、辻褄の合わないことイッパイですやん。

ですけどね、強ち(アナガチ)嘘だとは決めつけない方が、いぃかもぅ・・・・
現代の、と或る亡国の、ぁ!チャイマッ!・・・・・・某国ナンヤ。

祭り事をやらかしはッテる、ケッコウ妖怪以上のド迫力な人さんッ!ら。

ダッテねぇ、その国の国民も馬鹿じゃぁあるまいしぃ、どない解釈してもデッセ


「嘘ッ!やぁあ~んッ!」


ほんまになぁそないな説明で ≪信じてもらえる≫ ッテ想ってはるんかなぁ?
だけど、どうやら、悪漢政治家さんら、トッテモ大きな勘違いッ!

幾らね、わたしらが、常識ある柔和な国民性でもね、

≪ァんッ!舐めとんかあぁ、ワレッ!あぁんッ!≫

ッテなぁもんやねん。


大切なお国の祭り事を国民から、委託されてるはずなんやけど
罰当たりにもなぁ、そんなことになってるとも、コレポコチンも想わずに、わッ!

(ワタクシ只今見境もナク失言イタシマシタ。御免なさい。↑此処「コレッポッチ」デス)


まぁアンサンこ奴ら、ナニを勘違いしてか、自分らはナにやっても許されるット

或る種なぁ、選ばれし民なんやでワイら ットな、
非常にぃズレた選民感覚な尊大すぎるお気持ちで
お国の政治を司ってはるさかいにぃ

≪トッテモ自分らはエライッ!≫

ット、甚だ勘違いしているエライ人(?)ダラケ・・・・・。


なんだかぁ、そんな人がぁ妖怪みたいな、コリャぁ怪しいぞッテなぁ
化け狸ッ的なお顔にぃ観えてくるのは、ワタイだけかぁ?


ッデ、七夕からのウットコの壮大な、オチャラケお話し。
ケッコウ、嘘ダラケやけどぅ、えぇやんなぁ・・・・・ねッ?




此処からは、中篇の後編 ≪其の四≫ からの続きの

≪ 其の伍 ≫なんデッセ。

(長い休憩のあとやからね、おマチガイのなきように)



「爺さんやもぉチョッぃ下、ぁッ!違うがな反対やッテ右ミギミギ、ぁッ!ソコソコ肩甲骨のトコ 」

「ぇ~ッいッもぉぅ!煩いわッ!ゴチャゴチャ言いさらしてなんやねんッ!」

「なんやねんッ!ッテ、あんたが、ゆうたとこシッカリ掻いてくれぇ・・へんッテぇ・・」

「なんや?なにぃ言いよどんでるんや 」


ッデ婆ぁさん、急にお顔が俯き加減になり、口の中で念仏らしきものを、ゴニョゴニョぉ・・・
それ視た爺さん、別に驚きもせず、ジット待ってます、婆ぁさんが再び動き出すのを。
暫くは爺ぃ婆ぁ、ふたりとも動こうとはいたしません。

爺チャンは、婆チャンの背中に両手を添えさせたまま。
婆チャンは、下向いて念仏らしき物を、お呟き状態。

ッデ、火災の原因の天から降ってきた、表面が薄緑色にピカピカと艶もよろしくな
トッテモ大きくてゴリッパな一物ッぁ!・・・・トッテモ大きな竹筒みたいなもの、デス。
そやつは今も燻り続けてる、元は老夫婦の愛の巣だった残骸っと言うかぁ焼け跡の真ん中に、
雄々しくも(?)少し斜めに傾き加減で、ズッポリっと、突き刺さってます。

ジッちゃんの、バッちゃんの背中にくっ付けたまゝの手のひらから、ブゥ~!ッテ微かな音が。
背中と手のひらの間と言いましょうか、ジッちゃんのバッちゃんにくっ付いた
手の平の輪郭状に、初め微かに≪ブンッ≫て鳴って、緑色の光が輝いてきました。

ット其処にやって来たのは、≪金太郎≫の為れの果て。

「ジッちゃん、バッちゃん、遊ぼうよぉ~ 」

っと、チットモ可愛くもナイ恐ろしげな図体のデッカさに、似合いもしない赤ちゃんマニアな、甘え言葉、言いよッタ。

だけどねぇ、ジジババ二人はマッタクなぁ、動きません。
お二人の近くに寄りますと、お二人からは微かな音が鳴ってますねん。

≪ブゥ~ン・・・・≫ッテ、

金太郎の為れの果て、不思議そうにデッカイ躯を屈ませて、ジジババの顔を下から覗きます。

バッちゃんは、宇和間豚を半分、ぁッマタヤ、ッチ!

(ウットコのパソコン、ほんまに壊れかけッ!)

バッちゃん、上目蓋を半分閉じて半目状態。
お口は半開きなまゝで動いてもいないのに、念仏みないなナンカをしきりにお呟き。
ジッちゃんは、マナコきっかりと開きっぱなしで、火事場の明かりでキラキラナ瞳は、
バッちゃんの背中に注がれ状態。

金太郎の為れの果てぇ・・・・・

ぇ~ット、チョット呼び名が長すぎて、コレ股邪魔臭い。

ヨッテ、≪金太郎の為れの果て≫カラ≪金タ≫に変換やぁ~!


【注】:作者のおウチには、カワイイ家族の仔のなぁ、≪金太郎≫ッテお名前の
    ヨーキー犬が居ますんやぁ、此処で登場してます≪金タ≫とお名前は
    似ておりますけどなぁ、賢さで言いますとぅ、ウットコの≪金ハン≫
    っの方が、賢いんですよ。余計ナンやけどぅ誤解の無いようにぃ。


「なんや、金ちゃんきてたんかぁ 」

「・・・・・・ジッちゃん、ドッカおかしぃ為ったんかぁ?」

「誰がや? 」

「ジッちゃんがぁ・・・・」

「ワテがぁ? 」

「・・・・・爺ぃボケたんかぁ?!」

「ナンがや、誰に言いクさってるんやッ!ナメとんかぁ、ワレッ!」


アラアラ・・・・如何したものか爺様、トッテモ野生にお戻りでッ!


ット、此処で、ババァ一声挙げハッタ。

「リセット完了ぉ~!ッ」





中編の後編の終わりごろ、此処まで。

≪其の六≫にへと、つづく。


 

困ったときの ≪依存症おじさん≫

2007年09月01日 09時36分23秒 | メタルのお話し 
 
なんですよ。

此の ≪依存症おじさん≫ のことですけど、
わたくしこぅお呼びしています ≪教授≫ッテ。

此の方、凄く博識な人なんですよ。
だから頭の中は、色んなモノの知識に溢れ変えってるんでしょうなぁ。

ッデ、今回も、記事にナニを書き込もうかと、思い悩んだらぁ・・・・・・ヤッパシッ!
悩むくらいなら、何処かからパクってきたらぁ・・・簡単ヤカラぁ・悩まんでえぇさかいにぃ・・・


そやからね、≪おじさんの依存症日記。≫ からの、パクリです。ハイ


此処最近、著作権がドウタラコウタラ、っと煩いんですけども、パクリです。

ッデ、この教授、わたしと同じで、夜中に徘徊してますようで。
ヨッパラッテね、ブログ界隈をですよ、何処と言ってアテもなく彷徨うことがなぁ・・・・・スキかもぅ?


【注】:先日、教授から、一報が。

「自分は、夜更けてからは、徘徊なんぞは致さん」 ぞッテ、御連絡が。
 だからわたくしの、勝手な思い込み違いでした。

  御免なさい教授。


じゃぁ、どうせパクルついでに、なんならぁ・・・・・

タイトルのぉ ≪8月30日【…新宿だった】≫ ッも頂こうと思ったけども、
それは止めました。

其処まで致しますと、記事をパクられた教授にね、大変失礼ですかと。
それにですね、今後のお付き合いにですよ、これが原因で、
差し障りなど御座いますと、困りますからね。


          

わたくし、≪華の東京≫ には、若いころに行ったきりで(確かぁ、五反田だったかと)
あれから、ぅん十年、日本の首都はいまだに覗いた事はございません。

そやからなぁ・・・・・≪山手線占い≫ ッテ言われても、どないな線なんだかぁ?



【わかる性格と恋愛】

「我が道歩みまくり、的確几帳面な理性派」・・・・そぉぅかなぁ?

「煩悩多し、破滅的理性欠如型」 ッテやったら納得かなぁ・・・・


【どないな性格やぁ?】

≪感情に流されるということがほとんどない理性的かつ合理的な人。几帳面なので仕事をこなす能力は抜群。組織の中で実力を発揮する。自他ともに厳しく、ドライなので敬遠されがちだが、ノセると意外におしゃべり好きだったり、おバカなこともやる親しみやすい面も。鋭い直感力があり、自分の道の選択はいつも的確な“我が道”謳歌タイプ。≫

【恋愛の傾向】:ゆうときますけど、ワタイ既婚者デッセ。

≪恋愛にも的確な目をもつので、一度始まった恋愛は長続き。しかし相手をシビアに選別しすぎて、自分のピュアな恋愛感情を見逃しがち。決して間違いはおきないタイプだが、あまりにも理想が高すぎていつまでたっても「出会いがなさすぎる」と自業自得のアリ地獄。恋愛から縁遠い道で、とぐろを巻く可能性が高い。 ≫

ッテ、異常、ぁ!ぃゃ、以上がッ占いの結果です。


           

わたしね、高田馬場駅がね、どんな所かもマッタク知りません。
殆ど、播州地方から出たこともないような、痴呆人、ぁ!股やッ!わッ!・・・・・地方人。


サテ、楽しい時間を過ごすことができました。
教授、ありがとうございますぅ~!


ホンマに、おぉきにッ!



    

冬の晩には寒々な決心。

2007年09月01日 02時12分05秒 | トカレフ 2 
  



深夜、番外地近くの踏み切りに行くまでの、線路に沿った舗道に。
車体の左半分乗り上げ、斜めに為って停車した、某、黒色国産セダン。
その後部座席に座った自分に、刑事の縄澤が訊いてきた。

「夕べお前ぇ、ナニしてたんや?」

助手席の、背凭れの上から自分に訊いてくる。

覆面パトカーの暗い車内は、エンジン切ってたので、静かだったけど暖房が効いてなかった。
運転席のハンチングを被った私服の男、ワッパを握ったままの姿勢で、後ろを振り向きもしない。

「ナニって・・・・・縄澤はん、コレってどないな事なんやろぉ?」

「職務質問やッ!」

縄澤が続けざまに吸う煙草の煙、車室に充満しだす。
自分、煙たさよりも酒の酔いで嗅ぐ、イガライ煙の臭いが堪らないほど厭だった。
この男の躯から吐き出された煙なんだッ!っと、考えるだけで気分が悪くなってくる。

「済まんけど、夕べはヨッパラッテたさかいに、ナンも覚えてへんわ 」

「ナに謝るんやッ、ナンゾ悪さでもしたんか!」

「ワッ!悪さッテ・・・・ 」

自分、縄澤の想わぬ突っ込みに窮し、ツマってしまい黙るしかなかった。


パトの後ろの窓、通りすがりの車のヘッドライトが、舐めるように照らす。
縄澤、顔を照らされる前に運転席に向け、明かりから逃げた。
その時、縄澤の耳朶下、顎の付け根辺りに、茶色い痣が刹那で覗けた。

パトの傍を、車が掠めて走り去る。 風圧で車体が揺れた。

「お前があそこに(バァさんの店)居ったんは判ってるんや、ナンゾ観たんと違うんか?」

「晩飯喰うてましたんやけどなぁ 」

「ほんでぇ?」

「ほんでッテ?」

「それからどないしてん?」

「帰ったと思いますけどなぁ 」

「思うって?」


「なんかぁ、ワイに嫌疑でもかゝってますんか?」

「難しいぃ言葉、知ってるなぁ・・・・ 」


「 ・・・・・酔ってたさかいに、なんも覚えてませんのんやけどなぁ 」


「お前、店が終わってから、松屋に行ってるやろ?」

「行ってるけど、それがどぉやと言うんです?」

「夕べ、バイト休むって連絡してるなぁ・・・・ 」

ッチ! 自分、心で舌打った。

「ハァ・・・・・それが、なんかぁ?」

縄澤、暗くて顔の表情は見えんかったけど、狭い後部座席の真ん中で
胡坐をかいて座っているワイを、ジッと見つめてるはずや。
時々、縄澤の黒い影の中で、煙草の小さな赤い点、瞬き輝く。

「窓、開けてもよろしぃか 」

「なんでや?」

「煙たいわ 」

「送ったる 」

「ハァ?」

「松屋まで送ったるゆうとんや 」

 
「・・・・・ナンでゞすんか?送ってもらわんでもよろしいけどな 」


「遠慮するなや 」

「遠慮と違いますけどなぁ 」

「ホナなんや?」


「まだぁ飯ぃ食いたいねん 」


再び暫く、無言が支配する、寒さが益々な車の中。

自分、煙たさ以外のせいで、息が詰まりそぅやった。
運転席のハンチング、ピクリとも動きません。
縄澤、助手席背凭れ上から後ろを振り返った態勢で、マッタク動動かない。
獰猛な肉食獣が身を屈め、闇に隠れ、獲物を捕捉しようとしているようだった。


突然ッ 踏み切り警鐘連打音ッ! 縄澤フロントガラスの方に向き直った。
結露して曇ったフロント硝子の向こうで、点滅しだした踏み切り警告灯。
赤の輝き、硝子の曇りで滲んだような瞬き輝き。

自分ユックリト、静かに音発てないようにしながら、詰めてた息ぃ細く吐き出す。

踏み切り遮断機棒、下りるのが、赤の点滅に照らされた朧気な影で見える。
縄澤、暫く曇り硝子を眺めてから、再び此方に向き直り漸く喋った。

「胃ぃの具合がえぇことないんやろ、喰い過ぎたらあかんで、なぁッ!」

語尾の方の声、踏み切りを轟音上げて通過する、夜行列車の為に聴こえ難かった。


覆面パトから、漸く解放されたのは、夜行列車が通過して、暫く経ってからだった。
縄澤、無言で後ろのドアを開け、ワイが降りるのを待った。
自分、縄澤の履いてた艶ない官給品の靴、俯き加減で見ながら降りました。

縄澤、勢い良くドアを閉めたあと言った。

「お前、アンガイ解り易いヤチャ(奴)な 」

「ナニがですんか?」

「言わんでも、お前やったらよぉ判っとろぉもん!」


覆面パド発進、直ぐに左折し、一旦停止もしないで踏み切りに乗り入れた。
其のまま速度を上げながら、車体を上下に揺すりモって渡り終えた。
自分、パトの後部ライトが、闇に小さくなって消えるまで、夜露が降り始めた舗道で見送ってた。

ナンだか息が苦しく為ったと感じ、息を詰めてたのに気がついた。
自分、夜を見上げ、大きく息を貪り吸った。


『クッソウッ、ナンやねんッ!捕まえるんならサッサト捕まえんかいッ!ボケがぁ!』

っと、腹の其処でしか言えませんでした。



「お疲れさんやったなぁ!」

結露で曇った店の戸を、引き開けたらバァさんが声かけてきた。

「ぅん、ナンでもないがな 」

っと言いながら店に入ると、温かいおでん鍋の汁の匂いが、顔を嘗めた。
バァさんと自分、互いに眼を合わせるのがなんだか、気恥ずかしかった。

自分、想いだした。 ぁ~!夕べもこんな感じだったッテ。 


「飲むかぁ?ウチの奢りや要らんかぁ・・・・」

「要らん、もぅえぇ 」

「アイツなぁ、あんたのコトなぁ、煩ぁに訊いてきよったわ、そやから夕べはな

 ギョウサン呑んどった、ゆうといたんやけどな、ホンでよかったんかぁ?」


「ぅん、ぇえわ、おぉきに 」


「ほんまに要らんのんか? 」

「ホナ、半分注いでんか 」

バァさん一升瓶の首摑んで、おでん鍋越しにカウンターのコップに注ごうとしてた。

「あんなぁ、頼みが在るんやけどなぁ?」

一升瓶ぉ、途中まで傾けかけてたバァさん、動きが固まった。 

「なんやねん?」

「嫌やったらえぇねん・・・・・ 」

「っねんッテ、なにがやねん?」


少し目尻が吊りあがった二つの眼でバァさん、ワイの眼の奥を覗き込みながら、聴いてきた。
瓶が傾きコップの縁に触れる音、ヒヤがコップに注がれる音、薬缶の沸騰音と競い合っていた。

自分、上着の懐に手を突っ込むと、バァさん直ぐに動きが止まった。
ママぁの西陣織の財布ぅ摑んで取り出すと、バァさん再び動きだした。

「ナンやねんッ! ヤッパかいなと想ぉたで、吃驚させなぁやッ!」

「ナンでワイが刺さなぁ アカンねんなッ!」

「冗談やぁワルイなッ、ほんでソレ、ドナイしたんや?」

一升瓶のコルクの栓、摘んだ指で財布を示して言う。

「店のママのんやけどなぁ、訳ありでぇチョット預かってますんや 」

「何処の店?」

「ウチの店やがなぁ 」

「倶楽部、○○○のかぁ?」

「そぉやぁ 」

「ホナ、此れぇ○○子のん、かぁ?」

「ママは 何人も居らんけどなぁ・・・・・」

「貸してみぃ 」

バァさん、受け取ると何かを確かめる様に、手触りしだす。


「モノホンやわ、流石やわぁ! 」

「そんなんに、ガセやパッチキもん(偽物)が在るんか!」


「あんたぁ、ナンでウチが預かるんや?」 バァさん、返事もせんと言う。


「今から松屋に行くねん、そやからやんか 」

「もぉぅ晩いんとチャウんかいな?」


「行かんとアカン事情が在るねん 」


バァさん、黙り込んでしまったけど、ワイの顔から目線を動かさんかった。



「チョット、コレ持ってくかぁ?」

ばぁさん、出刃包丁、新聞紙に包もうとしていた。


「要らんがな、大丈夫やさかいに 」



店出て舗道を歩きかけたら、後ろで、慌てた様な引き戸が開く音がした。

ワイの背中に声が掛かる。

「危のぅ為ったら、兎も角逃げるんやでッ!」


自分、返事せんと、後ろ肩で手ぇ振った。

呟いた、「判っとる、逃げるん巧いさかいに大丈夫や 」 っと。


振り返って、バァさんに言えんかったのは、

もぉぅ! 嘘の積み重ねが厭やったからやったッ

それと、自分にも言い聞かせたかった。



 タブン 大丈夫なんやッ! ッテ