【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

あの時代

2008年05月28日 13時22分22秒 | トカレフ 2 
帝国ノ終焉  


【滿洲國】

満州国元号
 大同 1932年3月1日~1934年2月28日
 康徳 1934年3月1日~1945年8月18日

大同元年(1932年) 国号を満州国と制定
康徳元年(1934年) 愛新覚羅溥儀満州国皇帝即位
康徳12年8月18日 皇帝溥儀退位宣言 満州国崩壊


康徳12年8月(1945年) 昭和20年8月
 盛夏 太平洋戦争末期

国境の向こう側では。

歴史の中に埋没し、幻となって消え去ってしまった大陸の国、満州国。
その満州国の北方、赤色革命で誕生した ソビエト社会主義共和国連邦との国境線は、
亜細亜大陸の東方、日本海へと続いておりました。

先の第二次大戦中 ソビエト連邦は、欧州戦線でナチス独逸軍との戦いに勝利し、
自国の戦争は終焉を迎えたにも関わらず、強大な赤い軍隊を祖国に凱旋さずに、
満州国との国境線近くにと大移動させ、大日本帝国との戦争に備え始めておりました。

ナチス独逸軍との数年越しの激し戦闘で、飛行機、戦車などの近代兵器による戦争とはどのようなものかと、
十分過ぎるくらいに豊富に学んだ赤い国の赤軍兵士たちは、長期に渡る過酷な戦いで疲弊していたので、
漸く故郷に帰れると思っていましたが、欧州戦勝利に酔いしれる間もなく、戦闘で使用した武器弾薬などの、
近代的兵器や莫大な軍需物資と共に、欧州と亜細亜を結ぶシベリア鉄道の貨車に載せられ、
遥か東方の、ソ満国境付近や日本海の北方、樺太方面へと大移動をさせられていました。


当時、満州国北の守りは、大日本帝国陸軍の関東軍部隊が担当していました。
長い国境線を挟み対峙するソビエト連邦は、日ソ平和条約が締結していても満州国存続の脅威だった。
故に関東軍は帝国陸軍の中でも、各種兵科数の多さや、多種多様な火器類の兵装など優遇しされ、
対ソ戦に備えた最新式の戦車など近代的兵器を装備をし、本土の陸軍部隊より軍備が整っていた。
軍事訓練も、国境防衛戦だけに限らず、ソビエト領土に侵攻する事も視野に入れた激しいものでした。
だが当時の世界各国陸軍の軍事力の状況は、帝国陸軍の軍部が予想するようなものではなく、
戦車や火砲などの兵器を造る鉄鋼だけを見ても、資源を輸入に頼る国の装備する兵装は、
一部を除き世界の水準には達しない兵器が多く、其れを装備するにも数が少なすぎるのに、

我は無敵だ世界最強の軍隊だ。 ッと 関東軍は自画自賛していました。

太平洋戦争開戦時、帝国海軍の米軍ハワイ基地奇襲作戦成功と、其れに呼応した、
南洋諸島攻略戦と、東南亜細亜各国での勝利の勢いに乗る帝国陸軍でしたが、
太平洋戦争が開戦する以前から軍部には、懸念するものがありました。
其れは、赤色革命成功で台頭してきた共産国家の ソビエト連邦の存在でした。
軍部は近い将来、対ソビエト戦は必ず勃発するであろうと想定し、傀儡国家満州国北方の、
ソ満国境付近で、数次にわたる関東軍軍事演習を実施しながら軍備を整えていました。
演習や軍事教練で鍛えられた若い現役兵士が勤務する、精強無比だと豪語する、
精鋭部隊が抽出されては、続々と南太平洋の南方戦線にと、移動させられます。


物量に勝る連合軍相手の太平洋での戦いは、日本軍が予想もしなかった激しい消耗戦でした。
戦争を遂行するための資源に乏しい日本は、次第に劣勢状態に陥り戦況は悪化する一方。
軍部は悪化する戦線を立て直したかったが、日本軍は太平洋と亜細亜全域に戦線が広がり、
其の為に南方に回せる戦力が枯渇状態で、如何したものかと熟慮の結果、白羽の矢が立ったのが、
対ソビエト戦に備え軍備が整っていた満州国防衛部隊の関東軍。

太平洋での戦線維持と、あわよくば攻勢に出んものと関東軍精鋭部隊が増援の為に、
対ソ連戦に備え備蓄していた軍需物資と共に抽出され、南方にと移送されます。
だが部隊を乗船させた輸送船が、消耗戦線に到着するまでの航海中に敵潜水艦や爆撃機の攻撃に遭い、
数え切れないほどの船舶と共に、数多くの陸軍の精鋭部隊が貴重な増援物資と共に、
南海の深い海底にと、兵士の無念な悔しさ噛む想い諸共沈んで逝きました。


戦争も、日本軍が緒戦の勝利で我は無敵だと思い上って酔いしれている間に、
連合国は初期の敗退を戦訓として取り入れた戦略と、亜米利加国の豊富な資源と、
それを活用しての、当時の日本では考えられえないような、高度な工業生産能力全てを、
戦争遂行に必要な物だけを製造するように絞り、最新式の電波兵器や航空機など、
莫大な軍需物資を製造し、連合国軍は強大な軍事力を持つにいたった。
開戦時の敗退し続けてていた、弱体な連合軍とはマッタク違う軍隊にと、変貌していた。

物量戦で挑まれると後が続かない日本軍。報復的攻勢作戦で挑まれては負け続け、
次々と南洋諸島の島々や、東南亜細亜の占領地を陥れられていました。

軍事目的に利用できる資源が限られていた日本。
占領地からの資源の輸入も、敵潜水艦などの徹底した妨害で阻止され、
物資豊富な連合国相手との消耗戦が長引けば、戦況も悪化し劣勢状態。
次第に追い詰められた軍は、転進と称しては占領地から撤退したり、
戦線を維持する為に派遣される増援部隊や物資の輸送も阻止されては、
島に上陸侵攻してきた米軍に対し、守備隊兵士全員の玉砕戦でしか対抗できなかった。

満州で備蓄していた大量の軍需物資は、激しい軍事訓練で鍛えられた部隊と共に、
南太平洋戦線に移動させられ、無敵皇軍だったはずの関東軍は段々と見る影もなき、
末期的見掛け倒しの張子の虎にと御変身。
為に満州国北の守り、ソ連邦との国境防衛線は、ズタズタの細切れ状態。

綻びダラケの隙間ダラケ。


南方に移動しないで満州に居残った部隊の国境守備隊では、兵士の定員割れも甚だしく。
進入してくる敵機を邀撃し、防空と制空権確保に努める戦闘機や爆撃機などの航空機。
満州の広大な大平原での陸上戦に用い、大いに貢献する筈だった虎の子の戦車などの車両。
長い国境線の重要拠点に構築された要塞や、守備隊陣地に据えられ北方のソ連軍に対し、
睨みを効かしていた大砲などの重火器類は取り外され、その殆どが南洋の消耗戦線にと抽出され、
貨物輸送船での航海中に攻撃を受け、兵員諸共撃沈させられていたので、
満洲残留部隊の戦争に備える兵装などの軍備は、お粗末極まるような状態でした。

それでも根強く、我は無敵だと表向きには豪語していた関東軍。

実態は精鋭なベテランの現役兵士も数少なく、戦う為の兵器などの軍備も整っていない、
中身は、マッタクの丸裸の丸腰状態。
欧州戦線で、ナチス独逸軍相手の激烈な近代戦に勝利した赤軍相手では、
マトモニ戦える、本物の戦争に通用するような、精強精鋭な軍隊ではなかった。


戦争も終焉近く為ってきますと、戦いを遂行するのに必要な戦略物資が不足してきます。 
兵士などの人的資源も例外じゃぁナク、兵士どころか農夫、漁師、工場の労働者など、
総ての産業の働き手が枯渇し、それを補うことも困難になります。
その残り少ない働き手までもが軍隊に徴用されれば、必然的に労働力が手薄になり、
代わりに未成年者の女子らが勤労奉仕隊となり、工場などで労働を担います。

ソ満国境を守る多くの守備隊駐屯地でも、次第に活きの良い若い現役兵士は居なくなり、
自軍の兵員割れを遺憾ともし難くなった日本軍、間に合わせの員数合わせの為、
軍隊勤務を既に一度は勤めて退役した中高年層を再召集し、それでも不足するので、
招集年齢を引き下げ、幼顔の若年者まで臨時徴兵していきます。
満蒙開拓民団の、年配の男衆たちまでが現地応召させられて、老兵に。
その息子たちや甥っ子の、若年層の男子まで大慌てで招集した、幼年兵。
それらのニワカ兵士を無理にと、国境線の守備隊陣地に兎も角送り込んでの緊急派遣で、
皆は慣れぬ軍隊勤務に服務させられ、残り少なくなった現役兵と共に陣地に籠ります。



康徳12年8月(1945年) 昭和20年8月 盛夏 

敗戦間際に、ソ満国境守備隊陣地で任務についていたのは、臨時応召のニワカ兵士ばかり。
緊急事態で軍事教練や訓練など間に合わないからと、満足に戦い方も教えられず。
兵士に与えられた個人携行する武器といえば、旧式の小銃。
その銃も兵士全員に支給するほどの数も揃わず、銃に込める弾薬も不足していました。
兎も角、後から物資は必ず送ると空約束し、大急ぎで国境の守備任務に着かせます。
大陸の酷暑な八月には絶対必需な飲料水や、体力を維持する糧秣も十分に携行させず。
軍需物資の不足は、死に物狂いの敢闘精神で補って戦うのだ!
っと、無茶な訓示を言い聞かせては、国境の守りにと送り出していました。

近代戦は、精神論などマッタク通用せず、鋼鉄と其れを破壊する火力の融合なのだと。
当時の、此の国の軍隊では、マッタク教えてはくれませんでした。 

無理無茶な戦争の代償はいつも、何も知らされない者が背負わされます。
その払いきれないほどの重たいツケ、偉い人の誰もが責任を執ろうとしません。
逃げ場もない戦場で、無念を飲み込んで黙ることしかできぬ者が流す己の血と、
我の肉体の破壊とで賄い、無理にと補わされて、イチ個人の人生がお終いです。



ソ満国境近くの開拓民団村、近くには守備隊駐屯地が在る。

働き手の男衆を根こそぎと言っていいほど、軍隊に採られた多くの入植地では、
男衆が出征したあとに遺された家族の者、女子供、老人らが酪農や農作業をしようと。
だけど、頼れる男たちが居ないことには、どう頑張っても無理なことでした。
満州人を臨時で雇ったり、中国人農夫を手配しナントカ農業経営を維持しようとしました。
ソ連邦との国境線に近い僻地の開拓民団では、日が暮れて一日の農作業が終わると、
開拓民団の寄り合い所(集会所)に集まっては、日本に戻ったほうがいいのだろうか、
戻るならいつがよいのか、其れとも此のまま此処に留まるかと、
幾ら話し合っても結果が出ない、堂々巡りな相談を毎晩続けていました。


八月になる少し前から、未だ明けぬ夜明け前になると、農家の屋根スレスレや、
開墾畑を翳めるような低空飛行で、闇に溶け込むような黒色複葉機が飛んでいた。
八月に入ってからは明るい昼間に飛んでいた。

人々は、慄きながら言います。
真夜中に北の方角から、なにか得体のしれない大きな音が聞こえると。
音が煩くて、眠れないときがあるとも。



慄く望まぬもの、突然目覚めたように襲ってきた。




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薄墨の町の、と或るお方へ。

2008年05月26日 10時36分15秒 | 幻想世界(お伽噺) 
  



雨は、薄墨の雨は、夜を通して降る雨なんですけど、

雨音が、寝床のボクを慰めてくれてるようで聴き飽きないんです。

眠るまでのひと時、ジット静かに耳を澄まし聴いてゝも、飽きないんです。



静か雨の音、纏まれば、耳の奥に溜まります。

静か濁音で、ボクの俗な世間で、妖しくまみれた意識を澄ませます。

夜の道、小雨なら、薄墨に棲まいし物の怪どもと歩きたい。


水溜り、小さき波紋で模様する粒な雨なら、紺色鼻緒の下駄で歩きたい。

油紙貼りし番傘なんぞを、竹林のザワメキのなかで差し、寂しさ抱いて歩きたい。



薄墨で造られし酒を呑みたいなぁ。

酒蔵並ぶ町並みには、軒に新酒の杉玉吊られているのかなぁ。



緩き風にソボ降る雨が舞う通りから、ひとつ路地奥に在りし地元の者が常連な飲み屋。


薄墨訛りの喋り飛び交う、行燈灯せし薄暗きが心癒しな店の内。

ポツリと、独り手酌で呑んでたら、仲間に入れと呼びかけてくれるかなぁ。

そぉなればボクはキット、恥ずかしいけど嬉しくて、微笑みながら目に涙。


何故ッ泣く?


ット、誘いしお方に問われゝば、ボクは、チョット格好つけながら言いましょう。

此処が、幻かと気づかさない優しさが、ボクを泣かすのさ。 ッテ

外は、雨上がり、夜の雲の割れ目から シャクレタような月が覗きます。


水溜り鏡に、瓦斯燈が逆さで映って揺れてます。



ボクが、懐かし心で迷い込み、何方と想われ心で創る薄墨の町。



ぇッ 何処に在るかッテ?  問われてもぉ・・・・・・ぅ



ボクが夜中に迷い子になったとき、優しいナニかに導かれ、辿りついた処です。

薄墨の町を覗けば、真珠の如き言葉が溢れ、言葉に酔わされてしまいます。

ボクは真珠の霊(タマ)に付き添われて歩きながら、迷いこんだのを嬉しがります。


其処に住まいし方々は、親戚ならばいぃのになぁ。ッテ



古き階段板を踏めば、後ろの廊下の奥まで聞こえそうな軋み音。

静かに踏みしめ登れば、薄暗き上から、雨垂れ音みたいな豆撒く音がする。

観れば、真珠輝きの小さき玉が一粒、階段跳ねながら。


身を、階段壁に寄せました。

ボクの素足の甲を優しげに打ち、下にと。



目覚めることなく、いつまでも、いつまでも、居りたいなぁ。







わたしのような者にくださった ≪一遍≫ へのお礼です。

 ありがとうございます。


   


終わった時代

2008年05月23日 14時22分25秒 | トカレフ 2 
  


月の明かりが射しこまず、マッタクの暗闇ならば、キット闇は優しさで包んでくれたんだろぉぅ。



此処から何処かにと逃れることもできず、タダ床板の上で横たわることしかできない。
心には、遣りきれぬ想いだけがフツフツと湧いてきては悔いとなり、
今の状況に陥った境遇を嘆くことも叶わず。
聞きたくもない部屋の中の会話が聞こえてくるが、耳を塞げない。

胸の中は諦めに支配されだし可なり滅入り始めた思考じゃぁ、
聞くなッ、ヤメロッ! ット自分に言い聞かせてみても、
何でや?ット 求める好奇心を鎮めることもできずに、
次第に興味が湧いてきて、ジット動かないフリで聞き耳をたてていた。


あの時の状況は、今でも時々、想わぬ時に頭の中に鮮明に蘇ります。
自分が求めずとも、記憶から遠のくものはなく
忘れるものは想いだしたくもない、昔の忘れ形見の片鱗だけかも。


窓から月光の冴えた銀色な静か光が斜めに降り注ぐ。
其の光景を背景にし、異人が横たわる寝台を囲みながら酒を酌み交わし、
異人と同じ言葉で喋り合う話の内容はマッタク理解できず、
何処か異次元な国の言葉にしか、自分には聞こえなかった。


「ぁんたぁ、飲むかぁ?」


ヤット聞こえた知り言葉が、誰に向けられたものか判らなかった。

「コレ、かッキャン・・・・ 」

ット、床板を軋ませながら近寄ってきた。 バァさんが。


床板に頬を載せ眺める低き視界は、横向きな、其れなりな感じで観えていた。
銀色な窓からの月明かりを背負い、光の陰の中でバァさんの影が蹲る。
そして、バァさんの影の中に透明な液体が満たされた、ファショングラスが浮かんでいた。


「ワイやったら、いらへんで 」

「遠慮せんでえぇんや、飲みんか、なッ 」

「喉ッ乾いとらんッ! 」

「水やないがな、ホレ、露西亜の酒や 」


自分、慣れた感じで首を持ち上げられ、唇に硝子が触れた。

「ぃッいらんッ!」

っと言おうとしたら、開いた唇の隙間から液体が流れ込んだ。
直ぐに口から出そうとしたら顎下に手が添えられ、持ち上げるようにされて口を塞がれた。
吐き出すこともできず飲み込まされたら、再び咳が出かけむせる。

傷んだ咽喉の粘膜が、火の酒の熱味で責められた。

「我慢しぃ!ッ呑むんやッ 」

喉の奥から熱せられた塊が食道を焼きながら下り、胸の中を通って胃袋にと。
胃粘膜壁が急速に熱で覆われるような感覚がし、直ぐに腹の辺りに暖かさが貯まり始める。

自分、唇のグラスを思わず払い除けようとした。

「ナニするねんッ!」

振り上げ途中のワイの手首が強い力で掴まれた。
バァさんに顎を掴まれていたので、目玉を動かし上目使いで視る。
医者が中腰で屈みこんでコッチに片腕を伸ばし手首を掴んでいた。

「おとなしゅうに飲んだらえぇねん 」

ット、ワイの顔を覗き込みながら言う。

ロイド眼鏡の白っぽく光る二つのレンズ、ワイを諭すように頷く。
言うことを素直に聞くしかできななかった。 だけど、不思議やった。
我慢して露西亜の酒を飲み下していたら、不思議やった。
あれほど咳きこんで、激しく感じていた喉の痛みが消えてゆく。

「どんなんや?痛みは?」

掴まれていたワイの手首が放されたので、バァさんのグラス持つ細い手首を掴んだ。
ワイの手にバァさんの掌が添えられると、焼けつく味の次に来たのは、
痛みを熱さな酒で包んで、痛み止めされたような感覚でした。
医者が、ワイの背中を壁に凭れるように上躯を起こしてくれた。
壁際に胡坐をかくように座ると、バァさんがワイの掌にグラスを握らせ言う。

「コレ、持っとき 」

「足らんかったらゆうんやで 」 ット、医者が言いながら、

ワイの目の前の床に、露西亜の酒が半分くらい詰まった透明の瓶を置くと寝台に戻る。
瓶の中では、透きとおった液体が月明かりを映し、煌めき揺れていた。


バァさん、煙草に火を点けると、喋った。

「ぁんたには、迷惑バッカシかけてもたなぁ 」

ッテ喋るとき、言葉と一緒に煙が口と鼻から出てきて、自然な感じでワイの口元に煙草を近づける。
ワイ、当り前な感じで唇を薄く開き、煙草を銜えた。
サッキ大咳した後なので用心しながら少し煙を吸ったら、大丈夫だった。


自分、訊きました。

「どないなん? 」

「どないって? 」

ワイの顔の真ん前近くで静止していました、バァさんの顔。

バァさん、立ち上がりかけの中腰姿勢のまま逆訊きしてきた。
訊きかたは、歳いっても綺麗な切れ長の目を、尚更細めに眇めながらだった。
ワイの目玉を覗き込んでた顔が少し離れると、バァさん再び腰を下ろした。
ワイと同じように床に胡坐座り。


≪バァさんの面、あの時は部屋が暗かったし、自分も頭が酒精で遣られかけていて、
アンマシ窺がえなかったんやけど、今想い出すとナンヤぁ妙に、妖しいぃ雰囲気漂わせていた。≫


「ワイな、なんも解らとコのザマ(様)やねん、もぉぅ勘弁してくれやッ なッ!」

「ナニが解らないんよ ? 」


自分、突然気づきました。部屋の中が静かなのを。
医者も、ママぁも、異人までもが、黙りこんでジット聞き耳を立てることに。


「訊いてどないしますねん?」

「どないするって、訊かなわからんやろ、ナニかいなワイだけが蚊帳の外なんか?」


バァさん返事の代わりに傍らの瓶を掴んだ。
ワイが床に置いた飲みかけのグラスに、露西亜の酒を注ぎたした。
ナミナミと溢れそうなグラスを口元まではユックリと運び、唇が触れると後は一息で飲み乾したッ!


バァさん、俯き加減で銜えた煙草に、燐寸の火を近づけると言いました。

「ホンマニ聴きたいんやな? 」

「訊きたいがなッ! 」


指先で摘まんだ燐寸の軸の黄色ッポイ炎が、喋る息で揺れていました。
小さな炎に照らされたバァさんの顔、歳には似合わん、妖しさでイッパイやったッ!

数回、大きく胸を膨らませながら煙草を燻らせると喋りだした。


「あんたには、あの時代がぁ・・・・・ワカランやろなぁ 」

「ジダイぃ? ッテなんやネン? 」



自分、間違いを犯しました。

世の中には、訊かんで良いもんならば、聴かずに置いとくモンも在る。
ッテ、此の時には知る由もなかったから。



自分、バァさんの噺の途中で再び、床に寝転びたくなっていました。
何も聞かず、何も知らなくて済むものならば、唯、ヨッパラッテ眠りたかった。

だけど寝れば、月の銀色の光の陰で横たわり、周りを薄暗さで満たされて寝れば、
其処はマルデ、負傷者で溢れ返った、阿鼻叫喚ナ状況の野戦病院の中で、キット横たわっているのだろう。




長い夜が、永久(トワ)な夜になりました。




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既視感ナ長イ夜

2008年05月19日 01時54分44秒 | トカレフ 2 
  


眩暈は治まらなかった。 視界の中に深くと暗さが広がってきていた。
イッソのこと、このまま意識が堕ちてくれたらばと。
自分、何処かに逃げられないものかと、願いました。
部屋の中には異人が醸し出す怪しいもの、イッパイに詰まっているようだった。


呼吸が困難になってきた。 断続的にしか息ができないッ!
胸が、肺が、熱く熱を浴び始めていた。
心臓の鼓動が、激しいコメカミの血管脈動で感じられる。

息できぬ苦しさが、妖しげな気持ちよさげに為りかけていた。


異人の腹の上で顔を横向きに押さえつけられ覗く、元々暗い部屋の中の風景。
視野が狭まりながら真っ赤に染まり、真っ赤から赤黒い世界にへと堕ちてゆく。
此の侭、苦しさから逃れられないのなら モット暗さを増してきて、
再びあの夜の時に戻るんだろうかと。

あの晩、国鉄駅近くのバァさんの店がある番外地と、駅裏に抜ける踏切の間の線路内で、
鉄のレールの傍らで恐怖に駆られ暗闇透かし覗いた、異人の青い瞳が脳裏に蘇ってきていた。


段々と既視感は自分を虜にしながら薄れていき、代わりに諦め感を強めながらだった。
必死で起き上がろうとしたけど、躯が自分の意思どうりに動かせない。
マルデ自分の躯じゃぁなく、猫に睨まれた小さな鼠が絶対的な恐怖のあまりに、
筋肉が引き攣り、凍り固まっているみたいに、だった。


「此の人が、ァレは何処に在ると訊いとるんやけどな?」

頭の上から降ってくる咳き込むように話す医者の声、自分の耳には、
何処か深い洞穴の奥から響いてくるようだった。

異人の矢継ぎ早な異国言葉は、唾の飛沫と共にワイに向けられ飛んでくる。

「チィフ、アンタに預けたもん還せゆうてるで 」

聴こえる咄嗟な感じの翻訳言葉、ワイの手首を掴んで放さない異人の、
熊の掌みたいな手指を、医者が一本一本引き剥がすようにしながらだった。
異人が喚き言葉を喋ると、怒鳴るよぅな異国言葉で医者が応じる。
ワイが無理な体勢で顔を埋めている異人の腹、喚くたびに大きく揺れるように蠢いた。
暫くはワイを間に挟んで、訳も解らない言い争いみたいな会話が飛び交っていた。


もぉぅコンナン!嫌やっ!堪忍してくれッ!止めんかいッ!
っと、怒鳴り散らしたかった。


ッデ、ワイ、自分の躯が想うように動かせなかったのは、アンガイ素直な異人の、

「ダァ 」 ット

呟くような声が聴こえ、痛いほどの強さで手首を掴んでいた腕とは違う、
片方の丸太みたいに頑丈そうな太い腕を、ワイの背中から医者が重たそうに降ろしたとき、
マッタク身動きできなかった原因はこれかと、漸く気づかされた。

ユックリと起き上がると、寝台から咄嗟な感じで後ろに飛び退いたッ!

つもりが後ろに勢いよく倒れ、激しく背中と後頭部が壁に衝突した。
衝撃音、廊下や他の部屋にも轟いて聴こえそうなほどの音発てる。
押さえつけられ肺に留められていた息が、喉を削るよな音発てて出てきた。

壁際でナントカ踏ん張って立っているワイに医者が近寄り、ワイの両肩に手を置き、
ワイの顔面スレスレまで顔を寄せ訊いてくる。

「チィフ、ナニ預かってるんや?」

「ナッ ナツ! 」

ナニを?っと喋りかけたら、躯が堕ちるように前屈みに為り激しく咳が出た。
喉が痛いほど焼けるその咳のセイで、マタ気づかされた。
異人の腕が背中を圧迫押さえしながら、もう片方の大きな掌の指ではワイの喉首をかぁ!
ット気づかされると此の異人、コンナンするのに慣れてるわっ!
人の息の仕方を、首の絞め方で調整してる!ッ

今までに絶対ッ人をぉ・・・・・


停滞し熱くなっていた血液の流れが戻り、急激な感じで首筋の血管を駆け昇るッ!
暗く狭まっていた視界が多少は明るく開けてくる。
月の銀色な輝きに染まる部屋の中が見渡せるようになってくる。
だけど逆に躯の方がついていかなかった。
自分、背中を壁に凭せ掛けたまま、腰が抜けるような感じで床にと。


「ぁんたらナニ騒いでますんや?」

バァさんが部屋の扉の隙間から顔を覗かせ、訊いてくる。
扉を大きく開きながらバァさんが部屋に入ってくると、横たわるワイを全く無視し、
ワイの面のすぐ傍らを、バァさんの細い足くびが歩いていくのが、横向きの視界の中で視える。
バァさん、寝台に近寄ると覆い被さるようにしながら廊下の方を振り向きもしないで言う。

「お元気そぉやから、ァレこっちに持ってきてんかぁ 」

廊下から、ママぁの声が応じた。

床に崩折れ伏し瞼を閉じて聴くバァさんの声、何処か懐かしげな声やった。


そやけど、ナニを持ってこいやろなぁ?
もぉぅ、コレ以上の面倒ぉ堪忍してくれやぁ!


「先生ぇ、このコぉ大きゅぅなりましたやろぉ 」

「ぉッおぅ!、アイツ(シロタク運転手)がウチに担ぎ込んだ時には驚かされたけどな、直に判ったわ 」


ワイ、バァさんと医者の声で、もぉ此れ以上はないほど遣られた気分になった。
なになん?コノコって誰やねん? 反吐が出そうやった。

「おぃ、其処で吐いたらコッカら叩き出すさかいになっ!」

慌てて口の中に溜まった生唾飲み込んだら、荒れた喉に引っ掛かり再び激しく咳がっ!
今度は我慢なんかしなかったから、喉を焼けつかせながら咳は、限りなく迸り出続けた。
咳で顔が紅潮するのがわかり、熱もつ思考が意味なく空回りする。


自分、ヒョットしたら、後戻りなんかでけへんくらいに、ズッポリとぉ! ッテかぁ?



あの晩みたいな長い夜が 再び訪れてきた。




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サクサク、サクサクサク ッテ 動かなアカンッ! ッテ。

2008年05月13日 02時52分32秒 | メタルのお話し 
   


ウットコの、駄々っ子パソコンちゃん、ヤット、ご新規になりますネン。

まぁ、使ってるワテがロートルやからなぁ・・・・・・死にゾコナイ。


機械は新調でけても、人間サンわぁ取換えがでけしまへんさかいになぁ

脳味噌なんかぁ、ドナイカでけまへんやろかぁ?

意識が、澱み腐ってるなぁ・・・・・ァホッ!



せめて、パソコンはんくらいは、気ぃよぉに動いてほしいしなぁ・・・・・ネ。

空きメモリ-領域が、残りぃ5%ヤッテッ! マッタク動きマヘンッ!ストレスッ!お溜まりしてますネンッ!

そやけど、怠惰な生活にぃドップリお浸かりしてますよってなぁ・・・・・


コレデ、ナントカ、再生でけへんかなぁ?


(考えが甘いわなぁ?モット地道にやらなアキマヘンわなぁ?)



ッマ、エッカ オヤスミナサイ


  
追記、←ッテ打つのに、ギョウサン時間がいるねんで~!