【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

【 青春哀話 】

2007年01月23日 10時12分18秒 | 無くした世界 
   



「あんたなんか 死んじまえばいいのよ! 」


此の言葉が 如何して言えるのか 
聴けるか 不思議でした
四畳半一間の世界 何の音も無く
消えて逝くのが 解かりました

二年弱の 同棲
気持ちが 互いに離れていくのが 解かりました


でも 「死ねばいい 」 


今までの 今日までの 二人の歴史の否定


何故 っの答えが見つからず
心が 動揺で揺れます
意識の表面に 限りない細波が
湧いては消え 消えては生まれます

 疑いが生まれます

お互いが 傷を抉り始めます
悲しみがです 生まれます
其れが怒りと憎しみに 変化します
抑えようの無い 何かの衝動が蠢き始めます

 孤独に逃げた 心に

啼いて言います

「解からなかったの! 」

迫る言葉が 連なります

「鈍感! 自分勝手な男よおぉ あんたわぁ!
 何も気づかなくってぇ おめでたいわねぇ あんたわぁあ! 」



少しずつ 少しずつ
気持ちが 萎えて逝きます

少しずつ 少しずつ
現実逃避が始まります


責める言葉が 何処か遠くでと

自分世界が 出来上がります
其処で 意識が浮遊し始めます
何も無い世界 です
だから 意識が遠のきます

何処かで 言葉の 音 鳴っています

「本当にぃ出て行くわよ それでいいの? 本気よ いいの? 」

意味が 解かりません
言葉が 心を射るだけの 音
意識が 何もかも拒絶します



黙って 部屋の外に出ました
背中で 音 響いています

後ろ手で ドアを閉めたら

バスの警笛 トラックの騒音
幼稚園の 送迎バスから降りる 子供の声
明るく迎える 親の声

木枯らしが 舞っていました


深夜に 酔っぱらって帰ったら
部屋には昼までの 雰囲気が無かった
孤独が居て 寂寥とした寂しさが 住み着いていました。


薄暗い台所の流しの中で 何かが割れていました
勢い良く 窓を開けたら
二つの 夫婦湯飲みの割れ口が
開けた窓から入る月明かりで 光っていました

破片を取り上げると 親指の先を切りました
思わず離した破片が落ち 部屋の中を音が奔りました 
指先に 赤い血球が産まれ 月の光で輝きました

舐めると 鉄の錆び味

唾を吐くと 滲むような赤い血が 
混ざっていました


流しの下から一升瓶を出し 喇叭呑みしました
ひと呑みごとに 酩酊が迫るのが 解かりました


寒さで気が付くと 玄関の框で 俯いて寝込んでいました
顔の下に 水が溜まっていました
舐めると しょっぱかった

誘い水で 涙が溢れてきました
  

青春が 終わろうとしていました


十九の冬の 事でした




       

惚けても忘れません

2007年01月17日 13時16分15秒 | メタルのお話し 



毎年ですけど 此の時季になりますと
心が穏やかじゃぁ なくなります。

其れまでだったら楽しかった正月が、あの時からですね
震災のことを想い出すための、節目になってしまいました。

一月も半ばが過ぎようとしますと、チョット口では言い表せないような気分に。
年々、忘れていくかもぅ って、想っていたけど、どぅもねぇ。

震災の時に生まれた、いつも何かに怯えていたような、感覚的気持ち。
あれから十二年経ちますと、流石に此の頃の、普段の生活の中では
心の何処かに潜っているようです。

其れがですね、ヤッパリ十七日が近づいてきますとぅ
何時の間にか、心イッパイにぃ 為ってます。


昨夜のテレビの報道で、その時に赤ちゃんを亡くしてしまったお母さんが
当時を偲んでのインタビューにですね、最初は笑顔で。
だけど、おじょうチャンのことに話が及びますと、言葉に詰まられていました。
何かを言わなければと、必死で頑張っておられるのがですね
わたしら夫婦のですよ、晩御飯の途中の箸もつ手ぇ、動かなくしました。
ビデオの中のおじょうチャン。 本当に可愛いお子さんです。

もぉなぁ! ご飯食べてるのか、泣いてるのか
ドッチやねん!  っと、二人で。

去年も、こんな調子でした。
何も、忘れてなんかいませんでした。


わたし、此の歳になりますと、大概物忘れが。
普段は、人さんの名前も思い出さないこと、多々あります。
往った筈の場所が、思い出せずに困ったことも。
顔は解っていても、名前が全然。
買い物に行っても、何を買うはずやったかなぁ?

他にもたくさん、こんなふうぅ。


だけど、震災だけは違うみたいです。
普段の生活の時には、なんともなく生活できますよ。
何にもなかったみたいにね。
其れがですね、テレビや何かで、聞いたり見たりのきっかけで
直ぐに 心が滅多と遣られてしまいます。


まぁ、歳相応にですよ、涙脆くはなってきてますけどもぅ
わたし、其れで良いんです。 って、思っています。

年毎にテレビなどでも、震災を取り上げなくなってます。
たぶん、戦時中の空襲が、今じゃぁ年老いた大人たちの心の中だけにぃ。
震災の記憶も、此れと同じなんかなぁ。

わたしね、想います。
震災の時の記憶が、苛めや他のなんかで壊れた子供の心。
ちゃんと治せるのと違うんやろかぁ っと。

みんなが助け合ったし、お互いが励ましあったやんかぁ! 
如何して其のことを、もっとぉぅ って。


歳ぃ いきますとですよ、わたしの口が勝手に
愚痴愚痴 ってですねぇ。



死ぬまで、憶えていてやるねん!
絶対、惚けても忘れてやるもんか!



   

妹へ 【 手紙 】

2007年01月15日 02時13分47秒 | メタルのお話し 
  


前略。 先日は、久しぶりに御逢い出来て、嬉しかったですよ。
私が今まで想像していたよりも、貴女が元気そうだったので、少し安心しました。
逢う前は、色々と想っておりました。 

以前貴女が、今住んでる土地を代えるかもしれない、っと
便りに書いてあるのを読んだ時、何事かと本当に驚きました。
だから此の前、あの日に貴女が街で私の目の前に現れた時
とっても緊張しているみたいだったから、私の心の中にね
不安な気持ちが、突然溢れ出てきていました。

私はですね、貴女の不幸そうな顔を見るのが
此の世の中で、一番キライなんだよ。


なんだかね、あの日はね
私は貴女に初めて逢ったような 気分になってたよ。
私は貴女を見知らぬふりで見ていました。
だから、初めて出逢ってしまった貴女は
想像していたよりも、随分と、大人になってました。

私はね、あの時、そんな貴女の姿が
横断歩道を渡って此方に近づいて来るのを
本当に眩しくって、まともに見る事が出来ませんでした。


私の口は、貴女との話に、勝手に利いていました。
本当は、もっと色々なことを聞きたかったんだけど、口が勝手にだったよ。
たぶん、大人の貴女に初めて逢って、恥ずかしかったからですね。
全然聞きたかったこととは違う事ばかり、私は話してしまいました。


此の先、貴女が、幸せになる事を願っていますからね。
何処に往っても、何処に住んでも、貴女が幸せになっていることを、願います。



追伸

お土産の、私が大好きなチョコレート
おいしかったですよ
妻も、美味しいって、感激していました。
ありがとう。

またね、来て下さいな。


さようなら
何時までも、お元気で。



 

 素敵な ストッリッパー!

2007年01月13日 14時45分41秒 | 無くした世界 
  

   ・・・stripper・・・♡キャ! 其の一



  随分と若い頃にですよ
 夜の世界で過ごしていた頃の お話です


その当時は今みたいに 夜の大人の社交場の倶楽部はですね
分業体制なんて 無かった時代でした。

そりゃぁ、チーフとかサブマネージャーとか、チィママとかね
他にも呼び名は色々でしたけど、ありました。
でもね、小さなお店の倶楽部やスナック、他にはバー、スタンド等はね
手が空いてる者が 気を利かせて何でも致します。 

 何でもね ・・・・


勿論 今の世みたいに色々な仕事を訓えてくれる 
職業訓練所なんて、わたしが住んでた処には、未だありませんでしたよ。
まぁ、そんなものがあってもね、そんな所ではね、夜のお仕事の遣りかたなんてっ!
兎に角、「水商売」 って呼ばれていた時代の事です。 

 ですからね。 盗むんです。


仕事の遣り方をですよ。 先輩方の仕事振りを必死で眺めて
どうやって働いているのかをね、目で覚えるんですよ。
決してですよ、黙っていたからて、先輩の誰かが教えてくれる
なんてね そんな甘いことは無かったですよ

そりゃぁ最初はね、勿論基本的なことはですよ
可也な厳しさで憶えさせられました。
だけどっ、最初だけです。 後は自分で盗みますねん。

 盗人家業が暫くわぁ~! やった。



「コラッ かきぃ お前ナァ イッペン連れてったろかぁ ドヤ? 」
「ぇっ! ホンマでっすんかぁ! 」
「ヨッシャ 今夜や 」
「コッ今夜でっかっ! 」
「嫌かぁ? 」
「ィッ嫌やぁ言うてまへんガナァ~ 」

想いも点かない提案やったぁ~!
其れからの 店が終わるまでの時間の流れが遅いねんっ!
通った料理の注文かて 受けたはいいけど、失敗続きぃ!
洗い場の手伝いしたら皿は割るし、濡れた厨房の土間で滑った~!
心此処に在らずでっせ~!

 っと。


っで、店(倶楽部)がハネテから劇場に連れて往ってくれました。
劇場言うてもでっせ、小屋チュウ方がぁ・・・・やった。

 小屋の前でモギリのオバチャンが 銜え煙草で言います。
 わたいの顔を覗き込む様にして

「なんやぁ、エライうぶ(初心)そうなん連れてきおったなぁ! 」 っと

 わたい、半分に千切られた入場券受け取りもって言いました

「新鮮かぁ ? 」 って 

「アホなこと言いやぁ~!
  あんたみたいなんなぁ世話が焼けるだけやぁ手取足取りやからなぁ ゥフフフフ 」
「阿保っ!ナニゴチャゴチャ言うてからにぃ サッサト入らんかぁボケ!ッぇ 」

先輩の声に背中押されて 狭い入り口に架かってる 
手垢で汚れた暖簾みたいな布を捲って暗い場内にぃ。
壁と想われる処から舞台の周りにかけて、幾つもの赤い堤燈が吊り下げてあった。

堤燈の明るさではね、薄暗すぎてぇ・・・・
けどね、その暗い雰囲気がぁ今からのぉっと、妄想をぉ・・・・やった。

 何かの匂い 微かに漂ってましたで~
 今から想うとぉ 淫靡なぁ香りがぁなぁ・・・・! 


暗さに少し慣れてきたら、小屋の中が見渡せる様になりました。
真ん中に張り出し舞台があり、その周りを囲むように客席がぁ
舞台の上の古びた緞帳 っの両奥の袖には、踊り子の舞台出入り口
客の入りは 此の時間(深夜の夜更けのやったとぉ?)やっとぉ・・・
疎らな感じで お互いに少し距離を置いて座ってました 
暗さが救いやなぁっと、想いました。

 知ってる客と鉢合わせなんかしてみぃ 後で店で何を言われることかぁ!


突然、舞台の真ん中に 斜めスッポットライトの光の柱がぁ
その中にキッチリ黒尽くめスーツ姿の 此処の支配人らしき男が現れました。

 っで。マイクを窄めた唇に持ってゆき
 ふっ!と一息吹きかけ お話をぉ~

「ご来場のみな様ぁ今暫くのお時間で お待ちかねの素敵なショウが始まります
 みな様におかれましてはぁ 此の深夜の此の時間に此処へ御足をお運びくださり
 私ども一同誠に感謝致しております。
 
 『★こらぁ~!市会(議員選挙)にぃ打って出るんかぁ~! 早ぁせぇやぁ~!』
    ↑客席からぁ↑↗
     ヤメェ~ っと、可也な声でぇ!

  支配人ハン 此処で小さく一息ツイテェ
 
 ハイハイまぁまぁあぁ~!そないに慌てんかて夜は永ぁ~いんっでせ。もぉ! 
  ぁ、えぇ~、ですからぁ

 失礼ながら言いますとぉ 真夜中の此の時間にぃ
 此処にイラッシャル方々、タブンお心ぉ寂しい人ばかりかと
 ですが皆様ぁ 今宵は貴方のその寂しい心をです
 優しくぅもてなして見せましょうかと
 素敵な淑女がぁ皆様を 待ち焦がれています
 尚、今宵の姫は どのコも皆様がキット
 お気に入りくださ りぃ 

 『★もぉえぇさかいにぃ、始めんかぁ~!』 」
    コレッ↑ 客席からぁ~ ↑

 わても、ソヤソヤァ~!!っと、周りと一緒になって   

 っで、支配人ハン 袖に引っ込みながら呟く様なぁ
   ハイハイって小さな声 マイクが拾ってた。
 
 
 っで、男が袖に引っ込んで、ドッカノスピーカーからダミ声がっ!

「只今より開演にいたしまずっ 
  何方様も踊り子さんえの拍手、花束ぁはケッコウでんすが
  舞台への上がりや、お触りぃなど か!た!く!厳禁いたしておりまず
  どぉか、此れをフマエマシテ 楽しく御観覧致して下さいませ

   それでは ミス バイオレットロ~ズさん ハリキッテどぉぞ~! 」


っで、現れたました。 ドグショイほどの金色髪の ケッコウ若くってカアァイィィ~踊り子ハン 
っと、何故か。 外国名なのにアジア系の人みたい?
ホンデ、舞台セットがドッカノ外国の街角風やのにぃ 舞台の方から流れてきた曲ぅ 
    何故か日本調の琴の調べがぁ~!
 
        キントンテンシャンポロロンシャンコラッモッテケドロボウスキスキカァチャン っとぉ

カノ有名な宮城道雄ハンがぁ 丹精込めてお創りにナリハッタ 綺麗な野菜ぃチャウ!
(↑ぁ!モォ 歳がバレバレやんかぁ~!)キレイナ「優しいぃ」 曲でんなぁ・・・・ヘヘッ!   




アレェ?・・・・こんなお話とわぁ違う筈やったんやけどなぁ
何処で、ドナイニィ狂ってきたんかなぁ?
もっと、違う内容にぃ為る筈やったんやけどもなぁ!



 まっ、此の続きで修正したらえぇかぁ~!




   続く・・・・カモォ?



      

 踊り妓 終わり  

2007年01月10日 02時28分48秒 |  【 踊り妓 】   
  


見舞いにぃ行かなかったのは、逃げたかったはずじゃぁなかった。
唯ぁ自分、アイツの顔を視るのが 恐くて辛かった。
タブン、アイツも同じでぇ、来て欲しくなかったと想う。

自分ぅ、今は兎も角 此れから先もぅ
其の事をぉ 悔やまんと想うねん。

知らせを聞いたときぃ、ヤッパシかぁ!
って、けど!ぅ、ナンデや!ナンで今なんや!!
何回も、何回もぅ! ナンデや、なんでやぁ!

・ ・ ・ ・ ナンでやぁ!

あの日以来、ギョウサンぅ酒ぇ 飲みました。
でもなぁ、酩酊はなぁ、訪れては暮れませんでしたぁ~!
暗さな気持ちがぁ、真っ暗さな心にぃ!
幾ら救いを求めてもなぁ、あかんもんやねん。



その年の秋にぃ F わぁ手術した。
でもぉ、そのまま帰ってこなかった。
二度目の手術と、ママに葬式の後で聞いた。


「あのこぉ、F なぁ童貞やったんやってぇ、知ってたんかぁ?あんたぁ 」
「うん、うすうすなぁ。 そやさかいにぃ、みさこはんに頼んだんかぁ! 」
「そうやぁ、他の誰に頼める?あの娘(こ)しかおらんかったんやでぇ 」
「ぅん。 おおきにやったなぁ、ママぁ 」
「うん、もぉええかぁ! 今日わぁ、あんたに聴いてもらうでぇ、ええかぁ? 」
「 ぇ! ・ ・ ・ ・ 聞かんとぉ あかんかぁ? 」
「うちぃかてなぁ、誰かにぃ聞いてもらわんかったら、気ぃオカシュウなるなぁ! 」

墓石の天辺にぃ柄杓で、バケツの水ぅ掛けながら
ママぁが振り返り様にぃ、ワイにぃ水っ! 掛けた。

「冷たいなぁ ママぁ 」

っと、喋った口調。 自分でもぅ、驚くほどの静かな語り口ぃやった。

「なぁ、冷たいなぁ。 コッチの(石の)中の方がぁモットやろなぁ 」
「ぁあ、そうやろなぁ 」
「あんたぁ チョットわぁ大人にぃ為ったみたいやなぁ! 」
「知るかっ! 」

ママぁ、隣のぅ墓の石灯篭にぃ腰ぃ降ろして、煙草ぉ銜えた。
自分、ジッポで火ぃ 点けてあげた。

「あん時ぃなぁ ・ ・ ・ ・ 」

尖がらせた唇から、紫煙吹いて喋り始めました。



あの日、みさこはんがぁ
舞台が終わって劇場の裏口から出たら、Fが待っていた。
そんな事は初めてやったから、みさこはん驚いた。
驚くぅみさこはん連れて、Fぅ 二人でオデン屋で晩飯ぃ。
それからぁ、ママぁの処(ボギィー)。

二人とも、よぉ笑っていたって!

っで、アパートに帰ったら、いつもなら別々にぃ 風呂入って寝る。
自分、想像してたけど、二人ぃ一度もぉ、同衾した事ぉなかったそうやぁ!
だけどぅ其の日わぁ Fがぁ 一緒や言うて誘った。


「そうかぁ、あいつなぁ なんかぁ吹っ切れたみたいにぃ、明るくなったもんなぁ! 」
「うん、ふたりともなぁ、救われたんやでぇ 」
「えぇ! 二人ともって、なにやねん? 」
「あんなぁ、あの日なぁ お風呂でなぁ ・ ・ ・ ・ 」


風呂場で、初めて視る Fの手術痕。
どないにぃ見てもぅ 傷わぁ傷。

みさこはん、Fの身体洗おうとしたら、Fが先にぃみさこはん洗い出した。

「此処さきに洗って 」

みさこはん、左の乳房の下ぁ 指ぃ差して言った。
舞台化粧ぉのぅ ドォーラン流れたら 傷ぅ出てきた。
鋭い切っ先のぅ、匕首かなんかのぅ、刃傷痕ぅ!

心中沙汰の、死に損ないの傷!ッ



「そうかぁ、しらんかったわぁ! 」

自分、墓場からの帰りの車の運転手。

「そう言えばなぁ、みさこはん。 長崎の話しぃ、途中でやめた事あったなぁ 」
「Fなぁ、生きたいゆうてたねんでぇ!」
「 ! ・ ・ ・ ・ ・ 」
「みさこがなぁ生きれ、生きなぁだめ ! っとぉ、って言うねん!ゆうってたわぁ! 」

雨も降らんのに、フロントガラスが見難いわぁ!

「あぁ、そうそう! みさこがぁこれ、あんたらに渡してって 」
「なになん? 」
「あんたらにわなぁ、感謝してもしきれん言うてたでぇ 」
「そうかぁ、そいでぇなになん? 」
「これ、なんやろなぁ? 」

小さな平たい紙包みが三つ。 ママの手のひらに載ってる。

「開けたらぁ 」
「チョット車停めてみぃ 」
「えぇさかいにぃ開けてみぃ 」
「じゃぁ、うちのん開けるわぁ 」
「なんやぁ、それならもっと早くに開けたらええねん 」
「そやけどなぁ、みんなぁでぇ・・・・!! 」

突然ママの嗚咽! 車を道路脇にぃ停めた。

「どないしたんやぁ!もぉ!ッ 」

ママぁの、震えながら差し出す手のひらから、わいの名前の包みをとった。
開くと、小さなぁ花びらが 自分の太腿にぃ 落ちた。
あの日、劇場で渡した花束の、押し花!

 上手にできてた!

包み紙の裏に、細かい文字ぃが書いてた。
所々に、タブン、涙の跡ぅがあった。
途中まで読めたけど、後わぁ見えませんでしたぁ。

もぉ!堪らんかった!
ママぁと二人で、泣いて泣いて泣いてぇ!

泣き喚きましたぁ~!



  お終い。


  

水の中の 出来事 。

2007年01月09日 14時42分46秒 |  【 踊り妓 】   
    


目覚めた時ぃ 直ぐにぃ

昨夜ボギィーママぁに、強引にぃ約束させられた
今日の夕方にぃ観に行く 「踊り」 のコトが、頭に浮かんだ。
出来ることなら、此の侭ぁ、明日の朝まで寝続けていたかった。 
布団の中で、悶々ッと為って、愚図愚図ぅっとしていた。
布団、頭から被って、ワザとな一人寝たフリぃやった。

寝起きの耳が、微かなぁ、アパートの狭い階段を、駆け上がってくる音ぅ拾った。
足音は、運動靴。 毎日ぃ今頃の時間にぃなるとぉぅ聴こえるぅ
聞々ぃ慣れたゴム底のぅ靴の音 っと、固いぃ木ぃが軋む音ぅでした。
二階の廊下ぉぅ、軽やかにぃ走ってきていた。

近づいた足音ぅが止んだら、自分の部屋の小さな玄関から音が。
薄いベニヤ作りの 開きの扉の、金属の郵便受け蓋が、内側に開く音。
続いて、夕刊新聞紙が、土間に落ちる音。
っで、扉の横の呼び鈴(ブザー)ボタンが、乱暴に二回叩かれる音。
二回鳴ったブザーの音が消える間にぃ、足音、遠のいて行った。

「チッ! 」 舌打ちして、起きました。



チャリンコ(自転車)で夕方頃ぅ、ママぁの店にぃ着いたらぁ、Fが居った。
今ぁ 起きたぁみたいな、ツンツンって跳ねた髪の毛してる。
開店前のぅ、店の掃除のぉ お手伝いしてたぁ。
自分は、店の妓が入れてくれた、珈琲啜っりながら
持ってきた夕刊広げて、読んでる振りぃしてた。
時々ぃ腕時計、盗み見しながらやった。

おっちゃんが、未だやったから。

やっぱしぃ、酒の上の約束わぁ、アンガイぃ守れんもんなぁ!
って、想っていたら、店の白い扉が開け放たれた向こうから、聞こえてきた。
店の前の裏路地の向こうの、通りにぃ、トラックが急停止する音が。

路地に、ジィーゼルエンジンの音が響いて、重たいドアが閉まる音。
大声で、ナニやら礼ぉぅ、怒鳴ってるようなぁ ・ ・ ・ ・ !
直ぐに、乱暴に地面蹴る靴音。 走ってくる靴音。
おっちゃん、安全靴踏み鳴らして、走って来はった。

大きな風呂敷包みぃ 抱えてっ!


「わぁ~! マッまにおうたかぁ? 」

黄色いヘルメット、カウンタァ~に置きながら息整えてる。

「なにぃ、急いでるんねぇ! 」 今はまだ、化粧ッけのマッタクない、能面顔のママ。
「なにぃ、言うてるやぁ~ママ!っ、みさちゃんの踊り観るんやでぇ!
  間に合わんかったら、あかんやろぉ! 」

「!ッ、ふぅ~ん そうかぁ、でぇそれえなんやねんなぁ? 」
「これかぁ、これなぁ ・ ・ ・ ! 」


喋りながらぁ、大事そうにぃ風呂敷包みのぉ、結び目ぇ解いたぁ。
広げたら、見るからに仕立ての良さそうな、上等なぁ礼服がぁ! ・ ・ ・ 出てきた!!
真更なぁ、ピカピカにぃ磨きこんだ、革靴もぉ!
踝のところにぃ、アルファベットの崩し文字がぁ刺繍された、靴下もぉ!
襟がキッチリ立ってる、真っ白なぁワイシャツぅ~!


「此れにぃ着替えるさかいになぁ 」 

腰のぅ安全帯ベルトぉぅ緩めて、ニッカズボン脱ぎ始める!

「あんたぁ、ウチかてぇ女なんやでぇ~! 」

笑いながらママぁ、目配せぇ こっちに飛ばした。


走りましたわぁ! 近くの貸衣装屋さんまでぇ!
行くって、ママがぁ電話で言っててくれてたさかいにぃ
直ぐに取って帰って 裸ぁ~!
掃除してた店の妓たちぃが、おおハシャギ!

Fだけがぁ、静かにしてたなぁ。
なにがぁ? 始まるねん? やった。

着替えたら、ママが言うたわぁ!
まぁ~! 普段見ぃひん格好ぉ、見れたわぁ! って。

 ニヤニヤぁ、お笑いでんねん。



「えぇ! コッ、此処? ・ ・ ・ ぉぅ! 」

 格ッ好ぅ、キッチリお決めのぅ、オッチャン。 花束ぁ抱いてます。

「そぉうやぁ~、何ッ処にぃ行くぅ想うてたん? 」

 ママぁ、涼しく言い放ちました。

「!ッ おぅ! えッ!ぇ ・ ・ ・ ・ 何でぇ? 」
「何でってぇ、何ッ処にぃ行く想ってたん、日劇かぁ?市民会館かぁ?あんたぁ 」
「ソッそやけどぉ、此処ってぇ! ぁあぁ~ぁぃやぁ~! ほんまかぁ!ぁ 」
「なに虚ってまんねん!アンサン! さぁ~入るでぇ 」
「あぁ! いやっ、うん! ワッわかったわぁ!しゃあないわぁ! 」


入って、一番後ろ付近の席にぃ座って、開演時間待ちぃ。
キッと日頃は、職人相手にぃ、タブン怒鳴り散らしてるかもなぁ おっちゃん。
静かにぃ座って、落ち着きなくぅ太腿ぅ 揺すってる。

ママぁわぁ 消えはった。 仕方ぁないわなぁ!
Fわぁ、物珍しそうにぃ アッチこっちぃ見回してた。


みさこはん、此の世界でわぁ 新人さん。
だからぁ、演目の一番最初が 出番やった。

灯りが消えて、琴乃音。
舞台のぅ両袖の上辺りからから、虹色のスポットライトが走りました。
其れが消え、小さな劇場内が真っ暗になたら、舞台の真上からのぅ光の柱ぁ!

眩しい光の中にぃ、赤色だけのぅ、簡素な浴衣姿の女はん!

煌びやかな扇で隠して、伏せてた顔ぅ上げたら
昨晩にぃ見たぁ みさこはんとわぁ 違う顔してた。
元の顔が判らん位にぃ、舞台化粧がケバかった。
細いぃ首筋にぃ真っ白な、白粉がぁ~!

けど、みさこはんでした。
自分、眼の遣り場にぃ ・ ・ ・ ・ !ッ

おっちゃん、横目で視たらぁ顔ぅ 下にぃ やった。
自分、肘で思いっクソぉぅ! 突いた!
おっちゃん。 呻いた!


「観てやらんのんなぁ ! 」
「 ぇ!・ ・クゥ~イッタァ! ・ ・ 」
「なにしにぃ来たんやぁ! ボケッ!帰れ! 」
「ッ! ・ ・ ・ ッテ 」
「観な、失礼と違うんかぁ! 観ぃひんかったらぁ帰れやぁ! 」
「ワァ、わかった! 観るがなぁ! 」


みさこはん、踊りながらぁ客席のぅ 真ん中までのぅ
張り出し舞台にぃ 滑るようなぁ脚さばきでやって来るぅ!


綺麗なぁ 乳房ぁしてたぁ!
綺麗なぁ 肩ぁしてる!
綺麗なぁ 腹 ・ ・ ・ ・ ぁ!
綺麗なぁ お尻ぃ してるねんやぁ !

踊りぃ お世辞にも上手くなかったぁ
それでもなぁ 一生懸命にぃ 踊ってはった!

一曲終わって 直ぐに場内が少し明るくなった。
客席がまぁまぁ、見渡せる程度のぅ灯りぃ。
続けて、次の曲ぅ。 みさこはん、踊りながら客席見て、捜す様な視線。

突然!Fが、持ってる花束ぁ持ち上げて、振り回したぁ!
おっちゃんもぅ 揚げた。 釣られて、わてもぉ!


他のお客さん、なんやぁって、こっち観だした。
まぁ~! ・ ・ ・ ぁ ワイらぁ 浮いてたわなぁ。
礼服着てるん わてらだけやでぇ!


おっちゃん、ナにぃ想うてかぁ、舞台めがけて小走りぃ!
自分、連れ戻しにぉ追いかけた!
追いついたら、おっちゃん、舞台の直ぐ下で、精一杯ぃ背伸びぃして見上げ
花束ぁ渡そうとして、捧げ持ってる。

みさこはん、驚いてた!

「みさこはん、綺麗やでぇ!ほんまにぃ綺麗やでぇ~! 」

おっちゃん、花束ぁ渡しながら言ってた。

「うん! ありがとうぅ!! 」
「これも、とってんかぁ 」

Fがぁ、おっちゃんのぅ肩越しにぃ、視線外しながら渡した。

「ぅうん、ありがとぉ! 」 泣き声やった。

わい、なぁんもぅ見えん様になってきた!
全部ぅ 水の中での出来事みたいやった。


慌てて席に戻った。

戻りかけに場内入り口見たらぁ、ママがぁ警備員と話してはった。
ママぁ、引き止めてくれてたんやぁ!


公演が全部終わって、劇場出る時ぃ
同伴出勤の、倶楽部の女はん達に見つかった。
なりが悪ぅて悪うて、ホンマニィたまらんかった!



  

夜が深まれば ・ ・ ・ ・、 心もぅ !

2007年01月09日 11時07分09秒 |  【 踊り妓 】   
【 続きですぅ 】




暗い夜道ぃには、気安さが生まれます。
夜の暗さが、お互いにぃ人を近くに感じさせます。
そしてぇ、今までどぉうしても 届かんかったもんでもぅ
摑めるようなぁ気ぃにぃ、させるかもぉ ・ ・ ・ ぅ。 

けどぉぅ ・ ・ ・ 、ナンかぁ ナンかぁ知らんけどぉ ・ ・ ・ ぅ。
ぅん 解ってる。 けどぉぅ、口にぃ出して言うとぉ
何ッ処かにぃ、何ッ処かにぃ
逃げて逝ってしまう かもなぁ ・ ・ ・ ・!ッ



大人の男のぅ躯から、力の抜けてしまった、お人さん。
此れほど運び難いもん! あんましぃ

ないでぇ~!


店の前の狭い裏路地から、タクシー停まってる道まで運び
乗せて、座らせて、シートにぃ倒れんように支える。
車内わぁ、煙草のヤニ臭いのと、饐えたようなぁ変な酒精の臭いがぁ~!
自分、あんまし酔っぱらてなかったけど、気分が悪く為ってきそうやった。
運ちゃんは、お慣れかしれんけどやぁ~!


運ちゃん、深夜晩くまで輪ッパ握って、酔い客乗せ
いい加減、嫌になってるんやろなぁ!
投げ遣り、問いかけみたいやった。

「どちらぁまでやぁ ? 」 っと。


「競馬場方面やってかぁ 」 知らん振りぃの わい。
「えッ!ぇ、知ってるんですかぁ? 」 Fぅ支えている女。
「うん、知ってるでぇ 」
「さっきぃ お店で知らないって 言ってましたやんかぁ? 」
「うん。 ママぁかて、知ってて言ってるんやでぇ 」
「ふぅ~ん ・ ・ ・ そうねぇ、わからんとぉ、うちぃ 」
「何処ぅ、国(故郷)ぃ? 」
「長崎ですぅ 」
「うん、えぇとこみたいやなぁ! 」
「ぅんぅ ・ ・ ・、 でもぉ ・ ・ ・、 いぃやぁよかとこですとぉ 」
「なんやぁ? どないしたん? 」
「うん、何でもないですぅ 」


Fのアパートまで、其れ以上 喋らんかった。
時々ぃ聴こえる音量絞ったタクシー無線とぅ、ワイパーが硝子ぅ擦る音ぅ
止まんかったですぅ、じっとぉ、降りるまで聴いてましたぁ!
近い所がぁ 永く乗ってるみたいにぃ感じましたぁ 。


よれよれなぁ Fぅ背負って、古いぃ木造襤褸アパート
外付けで雨で濡れた鉄の階段、滑らんようにぃ登って
漸くFの部屋の前。 Fぅ扉の反対側の、柵に背中をぅ。
F顎落ちで、首の後ろのぅ ボンの窪みが視えてた。

自分、息ぃ喘がせながら言いました。

「じゃぁ、カッ帰るなぁ~! ぁんたも早ぁにぃ寝るんやでぇ 」
「えぇ~! 晩いからぁ泊まっていってくださいぃ 」

っと、薄暗いぃ部屋の前で、バックの中にぃ手ぇ突っ込んで掻き回し
部屋の鍵ぃ捜してた、娘がぁ。


仕方がないので、玄関框に運び込んでやった。
其処にぃ、寝かせた。

「ぅん、えぇ。 タクシー待たしてるさかいにぃ、じゃぁ 」
「そぅですかぁ、でもぉ此の人ぉ、此処でよかやろかぁ! 」
「うん。 ナンならなぁ、毛布でも掛けてやってかぁ 」
「ぇ! ・ ・ ・ぁ、 はいぃ、ありがとうございましたぁ ! 」

「うん、じゃぁ」


ドア、背中で閉めた。
濡れた鉄の階段、静かに下りた。

ほんとうわぁ、部屋の中にあがって、布団に寝かせてやりたかったんやぁ~!
でもぉぅ あいつの生活ぅ見るのが、わいにわぁ 耐えられんかったぁ!
そやさかいにぃ、逃げてきましたんやぁ!


タクシ~ィ 何ッ処かにぃ消えていた!
コナイナ時間やから、車も人もぅ ・ ・ ・ ・ ・ チクショウって呟いたぁ!
歩きました。 濡れてしまうけど、仕方がないなぁ っと。

夜明け近くにぃ自分のぅ 寝ぐらにぃ!
靴下ぁ、ビショビショにぃ 濡れてましたぁ~ぁ!!





   

水晶ぅのぉ 雨ぇ~!

2007年01月07日 03時09分19秒 |  【 踊り妓 】   
【 踊り妓 】 ですねん。
 つづき、ですねん。     



ボチボチっとぉぅ、騒いでた客ぅ、連れだって帰ります。
煙草の紫煙揺らして流れてた、有線の音量ぅ絞った演歌ぁ
聴き易ぅなってますぅ。


隣のオッチャン、ほんまにぃお酒、強いっわ!
幾らでも、ナンボでも呑める みたいやねん!
それに、態度が始めと変わりまへん。

 まいった参ったぁ!


おっちゃん、わいがぁ白呑んでるって聞いたら、言いますねん。

「そないなぁ安い酒、呑んだらアカン!これ呑めばええねん! 」
「えぇですわぁ、これがわいにぃ合ってるさかいにぃ 」
「なにゆうとんねん、遠慮せんでええから、これ呑んで! 」
「チィフゥ、頂きんかぁヘネシィ 」
「ママぁなに言うてますんやぁ、もぉ呑めんわぁ 」
「若いモンがぁ、アカン! 呑まんとオッチャン切れるでぇ! 」
「キッキレルってそないなぁ! ・ ・ ・ ・ッチ! 」
「そこの、姐さんもぉぅ呑みぃ 」
「うちぃですかぁ? 」 友人Fの背中擦って言いましたぁ。
「そや、呑んでんかぁ 」
「ありがとぉぅ、そんならぁ頂きますぅ 」

半分冗談脅しの飲ませ方。
接待慣れした遣り口ぃ。 オッチャン援護のぉママ。
今夜ぁ ・ ・ ・ ・ 、なぁんかぁオカシイねん?

「ねぇ~!チィフゥさんぅ、観に来てくれへんのんぅ? 」
「ぅん。 堪忍してぇなぁ 」
「そうなんかぁ、ダメとねぇ ・ ・ ・ ・  」

みぃハン、サッギで弾んでた声ぇ、落としてた。
隣のぅおっちゃん、其れおぅ見咎めてぇ ワイぃ睨みますぅ!
おっちゃんの唇ぅ  無言で開いてナニやらぁ・・・・ぁ!

動きがぁ!ボケっ!ッテェ ・ ・ ・ ッケ!


「姐さん、踊りの発表会でもあるんかぁ? 」

 中年オヤジのぅ猫撫で声でっせ! ッケ!

「いえぇ、そないにぃ いいのとぉ違ぅとぉ 」
「ならぁ、なんやねん? 」
「チョットぉ、もぉええやろぉ! 」
「ええやろおぅってママ、わしが聴いたらアカンのんかぁ? 」
「なにもアカンって、言ってないぃ・・・ナに、この妓の踊り。 見たいん? 」
「あぁ~!ぁ観たいでぇ。 わしかてなぁ、寄せんかいなぁ 」
「観るなゆうてないわぁ、もぉ~! 」
「じゃぁ、ええなっ、いつあるんやぁ? 」
「いつって、いっつでもぉ、明日でもしてますとぉ~! 」

言いながらみさこぅ、酔っても変わらんかった顔色がぁ、段々赤みが差してきた。
其れ視てたママさん、気負って何か言いたそうやなぁ?

「ワカッタ!ほんなら明日、もぉ~ぉ今日やけどねぇ、夕方の四時に此処、来て 」
「えぇ!今日かぁ?またぁ早いなぁ!ママぁ~! 」
「ぅん。 あんさんがぁ言い出したことやさかいになぁ 」
「仕事早ぁにぃ済ませて くるがぁなぁ 」
「うん、そないして 」
「あんたぁ、あんたもぉ来なぁ、アカンデぇ! 」 っと、ワイにぃ!
「えぇ~! なんでぇわいもなん? 」
「あんたぁ、Fの友達やないねんかぁ? 」
「っ、と、友達やぁ 」
「そんならぁ来(き)ぃ!来なぁアカン! 」

それで、話しがお決まり。!
うっもぉ、すっもぉ無い。! 


演歌が消えた店の中ぁ、換気扇が働いてる音してた。
冷蔵庫のぅ音もぉ ・ ・ ・ ・、 其れでもぅ静かで妙な雰囲気。
店の妓がぁ、ギョウサン詰まった営業用のゴミ袋提げて
カウンタァ~潜って出てきた。
其れぇ取り上げて、外にぃ出て行こうとしたら
カウンターの隅で、売り上げ伝票勘定してたママぁ
伝票、手提げ金庫に突っ込んで、慌ててスツールから降りぃ着いてくる。


「雨降ってるさかいにぃ、何で来るねん 」
「ぅん、ええやんかぁ。 たまぁ~にぃ、お姉さんとぅ歩くんもええやろおぉ 」
「冗談なぁ、きっついねん! 」
「なぁ、Fのん知ってるんやろぉ? 」
「 ぇ! ・ ・ ・ あぁ、知ってるでぇ ・ ・ ・ ・ 」
「なにおぉぅやぁ? 」
「なにって ・ ・ ・、わかるわなぁ!  」
「そうかぁ、ならぁええけどなあぁ~  」


其れからぁ、お互いぃ黙って街角のぅ、ゴミ袋のぅ集積場まで歩きぃ
わいぃ提げてたぁ袋ぅ、ギョウサン積まれたぁゴミ袋のぅ
山の上ぇ目掛けて、放り投げたぁ!
袋ぅ、天辺に落ちてぇ転げて落ちて、途中で止まった。

其れをぉぅ小雨の中ぁ、二人ぃ無言で観てた。
店に戻る間も、二人ぃ、なぁ~んもぅ喋らんかった。


細い肩のぉぅ、ママぁの赤いぃ髪の毛
小雨のぅ雫ぅ、イッパイぃくっ付いてた!
其れにぃ、通りすがりの車のぅヘッドライトぅ当たりぃ
綺羅綺羅って光って輝きぃ、水晶の粒みたいでぇ、綺麗やったぁ~!


ママぁのぅ、細いぃ肩紐のぅ真っ白なぁドレスのぅ、後姿ぁ!
降る雨がぁ霧雨に変わって、小粒なぁ液体ぃギョウサンくっついた
剥き出しの細い肩ぁ視てたらぁ ・ ・ ・ ・ ・ タブンぅ
ママぁの心の中にもぅ、自分と同じでぇ、雨垂れぇ!
ギョウサンぅやろうかなぁ? っと、想っていたらぁ!

ママぁ 急に立ち止りぃ振り返った。

「アンタもかぁ? 」 って、ママぁ!


車のぅ、ヘッドライトに照らされた、其の眼ぇ
雨以外のもので濡れてぇ 光ってましたぁ~!




  

酔わないとうぅ ・ ・ ・ ・ !

2007年01月06日 14時19分57秒 |  【 踊り妓 】   
  
【 踊り妓 】 っの、つづきです。



有線、ヤット聴こえるかどうかなぁ程にぃ音量絞って
流行 (はやり) のぅ演歌ぁ !
店内にぃ満ちてる酒精の匂い
煙草の煙とぅ混ざって、人の息にぃ吸い込まれてた。

濃いクぅ漂う紫煙揺らいで、店の雰囲気盛り上げてたなぁ ・ ・ ・ !



元々ぅ白木だった L字のカウンター。
今じゃぁとっくに、何ッ処かのぅ、浜に打ち揚げられた流木みたいな古木色。
其処には、無数の煙草の焦げ後点々。
アッチコッチにぃ、何かの、多分なにかの染みがぁ ・ ・ ・ ・、迷走地図模様。

眼の前にはぁ、吸殻盛り上げた、ウイスキィ~屋さんの硝子の景品灰皿。
よく手持ち無沙汰で折り曲げたぁ、和紙のコースター


この店に着たら自分、最初はだいたいぃ俯いて
背凭れが鍍金パイプのぅ スツールに座った。
腰を据えて面を上げると、カウンター越しのボトル棚下段のぅ
左の隅にぃ、お店の妓らのぅ化粧袋ぉ、積み上げてた。
其れぇ眺めもってぇ、互いにぃ肩ぁ窄ませ擦り合わせぇ、呑んでる常連客ぅ!


夜半過ぎ頃にはぁ、知らぬ同士の他人者でも、呑んだら近しぃお人ぉぅ!
互いがぁ聴く耳持たずにぃ、怒鳴りあってるみたいなぁ、お喋りいぃ!
今から想うと、あないなぁ会話。 よぉ成り立ってたなぁ~!

時々、カウンタァ~の中を行き来するお嬢たちが
中の土間に敷いてる簀 (すのこ)ぅ 軋ませていた。


左肩ぁ誰かに叩かれた。
顔ぅ向けたら、隣のF越しにぃ、女の白い腕が伸びていた。
ゴキゲン!仕上がりの、みさこはん。 やった。

「なぁ~? 今度ぉぅ見にきてんかぁ? ウチのぉ踊りぃ 」
「おいおいぃ、わいにも言わんことゆうなぁ! 」 酔眼が座り始めのF。
「ぁれ!っ、珍しぃ!! あんた(みさこ)がぁそないなん言うん 」 少々お疲れ気味のぅ、ボギィーママぁ。
「なんでやぁ~! 観にいかへんわぁ 」 唯の酔ッパライのぅ某倶楽部のぅチィ~フぅ。
「あんたぁ、観にいってやりんかぁ! 」
「ぇえぇ~! ぃ、いややでぇ! 」
「花束もって 行ったらええねん 」
「花束ぁ~あ! ・ ・ ・ ・、なんでワイが いかなアカンねん? 」
「この娘(こ)がぁ そないに言うてるさかいにぃやぁ、珍しぃねんでぇ! 」
「もぉ~ええっ! おかわりぃ 」
「なにぃ恥ずかしぃがってんねん、チョットこれっお代わりやてぇ 」

ママぁ、自分が呑んでたファショングラス、
指先ぃ揃えた両手で挟んで、横向いて離れた。

アイツなぁ、なにぃ勿体つけてんやろなぁ、・ ・ ・ ・ なぁ、ナニなにぃちゃん。
こっちにぃ、聞こえるぐらいの声で話してる!
もぉ~!


「ほれ、でけたで! 」 置きかたが痛い!
「おおきにぃ ・ ・ ・  」
「これ呑んで、勢いつけてやぁ~! 」
「なんで?ぇ 」
「こいつぅ、置いとくつもりなん? 」

細い顎振って示したF。 カウンタ~っで沈没。

「タクシ~ぃ 呼んだらええやんかぁ 」
「薄情ぉぅ 言わんときんかぁ! 」
「どないせぇ言うねんなぁ、わい、こいつの家しらんがなぁ 」
「うちぃ知ってますぅ! 」

って、ゴキゲンみさはん。 Fの背中撫でもって、オッシャッタ。

「なぁ~! タクシぃ~呼んだりぃなぁ 」
「あんたぁ、鈍ぅってアカン! 」
「なにぃ怒ってるんやぁ! 」
「アホぉ~! 」
「ぁ、あほぉって、なんやねん! 」

「まぁまぁ~まぁ 」

わいの肩掴んで隣のオッチャン。

「機嫌よぉ呑んで、なっなっ、ママもぅアカンでぇ、シツコイねん 」
「わいぃ、ご機嫌ぅえぇよぉぅ、どぉぅもすいませんぅ 」
「ぅん、喧嘩しとらへんわぁ!、この子とわぁ何時もこないなんやでぇ 」

ってママぁ、ぺティナイフ握って おっしゃった。
わいおぅ、子って言うなぁ! アホ~!
ナイフの切っ先ぃ、コッチャぁ向けるなぁ! 化けモンぅ!

・ ・ ・ ・ っと、心でやでぇ!


「うん、そうですねん 」
「そおぉかぁ? それならぁええけどぉなぁ、こっちの姐さん心配してるでぇ 」
「あぁ~、うちぃ別に心配してませぇん 」
「ほんまぁ?ならぁ~ええわぁ ・ ・ ・ ・ 姐さん踊りしてるんやてぇ? 」
「はぃ~いぃ、少しですぅ 」
「少しぃって、踊りに少しぃ? どないなん? 」
「どないってぇ? 」
「何の踊りかぁ やぁねん? 」
「ぅ、うん、そぉやねぇ、ぇえっとぉぅ、ニィにぃ日本ぅ舞踊ぅ~ですぅ 」
「ほぉ~!そぉかぁ 」
「 ・ ・ ・ ・ ハ、はいぃ 」
「姐さんやたら、えぇ腰ぃして細いさかいにぃ、踊ったらぁええやろぉなぁ! 」

ありゃ! ・ ・ ・ ・ お話しがぁ分かりませんの方角にぃ、行ってはる!


チョット、急用です。 野暮用ですけどなぁ。
続きぃ、股ぁ~


 ホナ、いってきますぅ


さあぁ さあぁ
今からお出掛け、おでかけでんねん。
いってきますぅ~ 



    

 「F」 っと、 踊り妓 。

2007年01月05日 14時56分32秒 |  【 踊り妓 】   
  


今夜 わたしのぅ お脳が真っ当ぅなら
酒精で 意識が痺れる事もなくなればぁ
想いもかけない言葉もぅ 浮かびません。


呑んで眠った明くる日ぃ。

目覚めて暫くしたら 蘇る虚憶えな記憶の中で
自分が吐いた言葉に 自分で驚いてしまう事が
多々 おます。

酔って物事を考えると、日ごろ使わない脳内神経がぁ 蠢くぅようでっせぇ。
まあぁ~、普段わぁ、眠っていた一種の狂気の部分が
目醒めるんでしょうかなぁ?

自分で後から幾ら考えても
「こないな事ぉぅ 幾らなんでも言わへんやろぉ! 」
っなぁ、ぐらい。 喋っていますねぇ~!




雨模様の 夜更けの繁華街。

一昔前の古い木造家屋と、雨の筋が何度も乾いて痕になり、外壁にぃ!
ウス汚れたビル肌のぅ 雑居ビル っが遺された裏通り
表の魚町(トトマチ)通りの南の筋 塩町通りぃやぁ~!

雨で濡れた道路にぃ、飲み屋の電飾看板が、切れ目無く並ぶぅ
其処の通りから 北に細い路地を入って、奥で突き当たるとぅ

 スナック 【 ボギィー 】 っがありました。


白ペンキ塗りの扉を肩で開けると、直ぐに煙草の紫煙 顔を舐めます。
漂うモクの煙掻き混ぜ、L字のカウンタァー前に陣取る
いつもの顔の、見知った常連客に詫びながら、割り込み座った。

「どしたん? 今夜わぁ早じまい したんかぁ? 」 オシボリ差し出しながらママ
「いぃやぁ~、サボりぃ 」 昔から仕事が嫌いな、某倶楽部のぅ チィ~フ
「なんやぁ、なんかぁあったんかぁ? 」 此処の常連さんで、チィ~フの友達の F。
「ないでぇ、なんもぅ 」


安モンの紙の座布団(コースター)にぃ、いつもの白 Wで。
ファッショングラスに浮かんだ氷、マドラーでステアーされ、回って踊ってる
少し眺めて、まるでショット(グラス)で遣るようにぃ、一気にぃ!

「なんや、エライ今夜はぁ 走るんやなぁ ! 」 F。
「 ・ ・ ・ ・ あかんのんかぁ! 」
「 ・ ・ ・ ・ ママぁ、お代わりしたってかぁ、ワイにつけといて、えぇで~ 」
「わるいなぁ ・ ・ ・ 」
「えぇがなぁ・ ・ ・ ・ 」

Fの横顔、何かを堪えてるみたいやった。


生(き)のウイスキーに浮かんだ、大き目の氷の塊ぃ、わざとぅ
露肌になったグラスと遊んで、鳴らすようにぃ、ママが置いてくれた。
其れぇ、鎮座する間もなく、持ち上げたら半開きなぁ唇にぃ付け
再びぃ、 一息にぃ!

喉の道がぁ、冷たさの熱さで焼けながら、琥珀色がぁ堕ちて逝きますぅ!
イッショニ口に含んだ 氷ぃ、噛んで砕き飲み込んだ。
冷たさが、熱さをもって逝きながら、喉を過ぎたら、咳が出そうにぃ

 グッ !・ ・ ・ ・ ・ 堪えたっ!


 店にぃ流れる歌わぁ 歌謡曲。
 ド演歌。

此処で決まって呑む酒わぁ、亀の甲羅のようなぁ角瓶のぅウイスキー。
チョット、小銭もちなら 「達磨」
ほんまに銭ッコぅ無いって、正直にぃ言えば 此の店
黙ってショット(Wのショットグラス)でぇ、ホワイトぅ 出してくれるぅ!


Fが、急に顔を!寄せてきた。 小声で喋ってきた。

「なぁ、この子なぁ、踊ってるねん 」 耳元で囁くけど、酒精も匂う。
「なんやぁ? それ? 」
「ほらぁ、この前教えたやろおぅ、舞台踊りぃ 」
「ぉほっ! ・ ・ ・ ぉぅ、この娘(こ)がぁ~? 」
「おぅぉ、そやでぇ! この娘ぅやねん ミサコはん言うねん 」
「あんたらぁ、なにぃこそこそぅ 言うてるんやぁ~! 」

煙草の煙、窄めた唇からぁ吐き出しぃ お喋りのミサコはん

「あぁ、なんでもないわな、みぃはん、こいつ倶楽部Rのチィ~フはん 」
「へぇ~! あっこの? ふぅ~ん 」
「ふぅ~んわぁ、ないやろぉ! 挨拶せいやぁ 」
「あっ! みさこいいますぅ、よろしゅうぅ 」
「うん、お初やねぇ 」
「おやすみですのん? 」
「いぃやぁ、サボりやねん 」
「あっ点けたげる 」

上手に細い指で、マッチ擦りはるぅ!
左掌でぇ赤い火ぃを覆って、点けてくれた。
硫黄の焼ける味ぃと 初っ端の煙ぃ、深く胸に吸い込んだ。

「踊ってるんやて? 」
「ぇっ! 聴いたんぅねぇ、あんたぁ言わんでええのにぃ! 」
「えぇやんかぁ、こいつになぁ気にぃせんでもえぇねんでぇ 」
「うん。 そないにぃ気ぃにせんでええよぉ 」
「ほんまぁ? 」
「ええわいなぁ! なんで、気にするねん? 」
「ほれ、なぁ~! 言うてくれてるがなぁ 」

「うん、おおきにいぃですぅ! 」


暫らく、世間話で会話の濁しぃ。
Fはん、ビヤカップの冷酒(ひやさけ)から 焼酎お湯わりにぃ。
みさはん、煙草を肴にぃ連続ビィ~ル呑みぃ。
わい、最初からズゥ~ット、ホワイトロック。


「なぁ?チィ~フぅ、どこぞにぃええ妓ぅ、おらん? 」

此処のママ、ロックお代わり作って小声ぇ。

「どないしたん? 」 自分、つられて小声。
「あの妓なぁ、逃げたんえぇ 」
「お休み違うんかぁ? 」
「違うがな!っ ほらぁ、ようぅ来てたやろぉ、青果のいっちゃん、あいつとやがなぁ~!もぉ! 」
「いっちゃん、市場に居らんへんかったん、逃げたさかいかぁ? 」
「そやねん!うちぃ女の妓ぅ、おらんようにしてもてなぁ!ほんまにお腹だちなんよぉ! 」
「うん、ほんなら気にかけてるさかいになぁ 」
「うん、お願いねぇ!此れぇうちの奢り、ゆっくり呑んでってええでぇ 」

伝票指先でぇ摘んで、他の客相手しにぃ離れた。



眠たいです。 そろそろ寝ます。
多分少しぃ、ホンマニ少しぃ~
絶対少しぃしかぁ、呑んでませんねん。
そやからぁ~、話のぅ続きぃ
股ぁ、できると思いぃますねん。


 おやすみなさいねぇ~