【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

 ボクのこころ

2006年07月21日 02時58分15秒 | メタルのお話し 
  
    
ボクは なまえは きんたろお て いいます
ボクの おとおさんは やさしいです
ボクの おかあさんも やさしいです

ボクは おとおさんを とおちゃんって いいます
おかあさんを呼ぶときは かあちゃんって いいます
どおしてかとゆうと とおちゃんが ボクにいいます

 ほれぇ金ぅ、かぁちゃんとこに いきぃ~ って

そしてかあちゃんも いいます

 きぃん、とぉちゃんが呼んでるよぉ~ って

さいしょはナンのことか わかりませんでした
だってね ことばのいみが わからなかったから


ボクおさいしょに とぉちゃんがみつけたのわ 
ボクが生まれたおうちの近くでね 
とぉちゃんが おしごとをしていたからだそおだよ
そおだよっていったのは そのときは ボクはまだ小さくって
犬ごも はなせなかったからだよ

とぉちゃんがよく ボクが生まれたおうちに つれていっくてれるよ
そのときは かぁちゃんも いっしょだよ

 きぃん、さとがえりだねぇ よかったねぇ~! 

って いくときにじどうしゃのなかで
かぁちゃんが いつもこおいいます 
だから かぁちゃんの お口をなめます 
そおしたら 

 もぉ~うれしいか ねぇきんぅ うれしいかぁ

っと、かぁちゃんは ボクをもちあげてゆすりながら うれしそおにいうの
ボクは くびをのばして かぁちゃんのお口をなめます
かぁちゃんが よろこんでくれるから

ボクが生まれたおうちはね せんろのふみきりの そばだったんだ
だからいまでもね とぉちゃんかぁちゃんと じどうしゃにのってると
ふみきりがカンカンなってると みみがかってにうごくんだ
かぁちゃんのひざにのってね どあにてをかけてせのびをしながら
ハナをガラスにくっつけて まどから音のするほうを さがすんだ

 カンカンの音 なんだかうれしくなる音なんだ


ボクね 生まれたおうちがちかずくと わかるんだよ
なんでかなあ?

ボクがいえについたら おおよろこびしてくれるよ
うまれたおうちの おとおさんもおかあさんも
ボクも ふたりにあえてうれしいです 
それとね ボクの兄弟にもあえるから うれしいです

モチロン ぼくを生んでくれたかあさんにもね 
 あえるからだよ


 どおしてなの? 

たのしいことってね すぐにすぎるのかなあ?
うまれたおうちにいるときって すぐにおわるよお
 なんでかなあ?
でもね はじめのころよりも いまのほおが ガマンできるんだ
またいつでもこれるから とぉちゃんとかぁちゃんとでね


このあいだね ボク すこし弱ってたんだ
そしたらそのとき とぉちゃんがボクを おいしゃにつれていったんだ
ボクそこのおいしゃさん すきだよ せんせいもほかの人も やさしいから
いくとね だいのうえで いろんなことをしてくれるんだよ

おとといわまえの日にボク すこしはいたんだ
そしたらとぉちゃんがね しんぱいしてた

「これ、あした先生ぇにみせるから あらわんといてなぁ」
「ぅん、みせてぇ どぉして緑色してるんかなぁ、おとぉさん」
「ぅん、たぶん いえきが出てるんと ちがうんかなぁ」
「・・・・かあいそうやねぇ きぃんぅ~」

 ていいながら かぁちゃんが
 だっこしてくれて ギュゥってするんだ

ボクは じぶんのハウスをね 緑色にしてしまいました
かぁちゃんがみつけてとぉちゃんに なんだかこわそうにはなしてた

「だいじょうぶかなぁ おとぉさん」
「だいじょうぶやでぇ せんせぇも もどすかもしれへん ゆうてたさかいになぁ」
「そぉ そぉやろかぁ・・・」

ボクね とぉちゃんとかぁちゃんがはなしてるの わかるんだ
ほかの人のわ わかんないよ
あ、じーちゃんと ばーちゃんのわ わかるよ
それと、ヒデにぃちゃんのもね
ボク しゃべれないけどね

ボクがしゃべると ほかのともだちとおなじことばでしか 
しゃべれないんだ わんわん って
でも とぉちゃんもかぁちゃんも ボクのしゃべるの わかるよ
だからボクも とぉちゃんかぁちゃんがしゃべるの わかるんだ
だけど しらない人のことばは わかんないよ

とぉちゃんが せんせぇがもどすかもって かぁちゃんにいったけど
せんせぇわ そんなこといってないよ
とぉちゃんが かぁちゃんおしんぱいさせないように いったんだ
ボクね、しゃべれないけど とぉちゃんとかぁちゃんのこころ 見えるんだよ
こころわね、ほかの人のこころも 見える

 いっぱい 見えるんだ

ボクお すきな人のこころ 
ボクが すきな人のこころ 
ボクね わかるんだ

ぼくね 人がすきなんだ
だから 人がかなしむのキライだよ 
人がなくのも キライだよ
こころがわかると ボク くるしくなろこともある
だけどいっしょに ボクとおなじこころに 
とぉちゃんかぁちゃんの こころなってる

ふたりがよろこぶとね ボクね うれしい
ふたりがわらうとね すごくね うれしい
 ボクね うれしい

 ふたりが ボクね うれしい

ふたりが ぼくおしんぱいするこころ ボクねかなしい 
だからね はやくよくなりたい

 ふたりがうれしいこころに なってほしい


いまね とぉちゃんのさぎょうぎの フトコロにはいってるんだ
あったかくてきもちいいから ねるんだ
きもちいいから ねるんだよ



とぉちゃん ぼくがねるとね
よろこぶんだよ


 ボクね うれしい




         

暗闇宴会  

2006年07月20日 02時23分53秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
   
 

酒類問屋の二代目若大将が言うたとうり シャッター 可也の重さでした。
奥歯を噛み締め、オモイッキリ息ぃ詰めて、やっとの力で引き上げ開いた。
此処ら辺りでは可也ぃ名の通った 老舗の某酒問屋のです。 
戦前から一度も建替えなしの、いかにも古色蒼然とした赤煉瓦壁造り倉庫
其の両開きの鉄扉っの前に、後から防犯を増す為に取り付けられた

 今では古いタイプになってしまった 電動シャッター


電源が入っていない為に、動きが渋く此れでもかと重たいシャッター 
っを引き上げる時っ、今頃になって酔いが ドッカン!っと追いついて来た。
其れでも!、ヤット!っ の思いで引き上げる。
っと、赤い錆色が表面を覆った、古い鉄の扉が現れた。



倉庫の敷地の外から照らす街灯を背に 肩で大きく息継ぎしながら 
闇を透かして手元を覗き視ると、現れた鉄扉の 鉄製の太い横棒閂にぶら下がる 
時代劇の牢屋のシーンに使う小道具みたいな 昔風の大きな錠前っが。

動悸も激しく乱れた息なんとか殺しながら 手探りで掴んだ錠前に
預かっていた此れも可也な古さの鍵を 指先で鍵穴見つけて差し込みました。 
鉄扉。シャッターみたいに駄々コネナイデ錆び付きの軋み音も無く
素直に開きました。 人一人がなんとか抜けられる位に。

酒屋倉庫の独特の、色々な酒精と黴臭さ、それに埃っぽさが混ざった匂い
っが、倉庫の中に突っ込んだ 自分の顔を舐める様に襲ってきました。


両開きの鉄扉 大きく開け放つと、斜めに差し込む銀白色月明かり
倉庫のコンクリ土間に降り注ぎ、土間を白く浮き上がらせます。
壁際に、大瓶ビールの木箱ケースや、空の日本酒の一升瓶が詰まった木枠箱
何段にも積み上げられ、その空瓶から酒精の匂いぃ益々とぉ

自分っ奥の方で、舶来ウイスキーが詰まってるだろうっな木箱を見つけて、座りました。
息を何とか整えもって 暗闇から表を見詰めます。


此処まで来るのに おかぁはんに借りて飛ばして乗って来た、
可也な年季の入った、荷台のデッカイ仕入れ用の綺麗に良く磨き込まれた
黒色自転車 表にスタンド立てて置いています。

その自転車の二つのタイヤの影ぇ、コンクリ土間に映っています
なにやら此方に向けた 楕円形の形にデフォルメされた影で。

自分、煙草を三本続けて吸いました。暇つぶしに。
吸殻、指先で弾いて表に飛ばしました。
赤く輝く小さな点 クルクル回りながら飛んでゆき 落ちました。
地面で弾むと 線香花火みたいにぃ 火花がぁ ・・・・ !っ 

瞬間輝き火花を観ていた自分 喉ぉ 強烈にぃ乾き続けていました。
煙草のイガラッポイ味ぃ 口の中で暴れていました。
乾いた喉の粘膜には、何かが絡み着いてる様やった。
無性にぃ堪え切れないほど 何かが飲みたかった。

出来る事なら、カリカリに冷えた生のビールがぁ・・・・っと。
自分アホな事をぉ・・・こんなんやったら、小便も絞り出んなぁ・・・・っと。



突然っ聴こえてきました、外の暗さの中から囁く様な声が

「こぉじっ 何処や? 」 って

夜の暗さの向こうは闇雲に 暗さだけじゃぁないねん。
黒色が中身を隠しているだけで 闇の中でしか見えない事もあるねん。

「こぉじぃっ どこやねん!っ 」

土間に ユックリと影が伸び出てきた。

自分っ返事の代わりに 闇の奥にまでも微かに聴こえる様に
口の上顎粘膜を舌で打つ音 微かにぃ。其の舌打ち音が目印合図でした。
真二、街灯の明かりを背に、窺っているようでした。
その合図に向かって 酒屋の倉庫の暗闇に入るの 

 躊躇しました。


思わず何かに縋りたい気持ちがっ やろかぁ真二 肩越しに後ろを振り返ると
背後の街灯 電球の芯切れかけ、点滅してた。
消えかけ街灯 電燈の笠斜めに傾いで錆びが浮き 蜘蛛の巣に覆われていました
此の時期にしては気の早い夜虫ぃ 纏いつき飛んでいるん 見えた。

自分、こないなぁ時期に虫かぁ っと 想いました。

視線をぉ倉庫の入り口に戻すと 真二の立っている影 動いた。

「こぉじっ 気ぃ使わせてわるかったな 」
「ぇえよっ 気にすななぁ 」 

真二が上着の懐から 煙草の箱ぉ取り出すとき、
左の手首に嵌められた手錠、月明かりを金属輪っかで冷たく反射し

 ぶらぶら揺れて 吊り下がっていた。 

 影の中に白い歯が見え 煙草が銜えられた 


「 ・・・・えぇかぁ そぉかぁ 」
「 ぅんっ えぇ 」
「 こぉじぃ ・・・・喉っ乾かへんかぁ? 」
「 ぁあ、乾いたなぁ ・・・ 此処やったら呑み放題やでっ 」
「 そやなっ 呑もかぁ 」

っで、二人で手探りもって倉庫の中を探検
暫く探して木蓋が開いてる 洋酒の木箱からでした。
見えないけど銘柄は、化粧箱の感じと箱から取り出した瓶の形から 
たぶんスコッチの スイングかと。

土間に瓶を そぉぅっと置いて首を摘んで傾け 手を離すと瓶
暫く揺れ動き続け 中の琥珀色液体 青白色の月明かりをぉ・・・やった。



「この酒ぇ あんまし旨いことないなぁ 」
何度か、二人の間を瓶が行き来してから、自分が言いました。

「うんっ女ぁ口説く時にぃ面白がらせるんやったらえぇ そんな酒やでぇ 」
「 そぉやなぁ 」


自分ら 立て続けに煙草を何本も吸いました。酒の肴にする為に。
酒瓶っ幾度も二人の間で手渡しあいました。喉の渇きを癒せるとぉ・・・。
酔い、なかなか巡ってはきてくれませんぅ ・・・。

お互いにぃ無言でぇ ・・・やった。

本題に入るのが どうかなぁ? って

遠く近くで パトカーの甲高い悲鳴がぁ



タイヤが転がる音がした 二人顔を表の暗闇に向けると
エンジンを切って、惰性で走ってきた明かり消した車が 停まった
ブレーキの赤ランプ 辺りを赤色に染めた

ドアが開くと 室内灯が点いた。
見覚えのある髪型が見え 直ぐに天井に手が伸び明かりが消された。

「なんであいつがくるんやっ! 」 真二
「知らんっ ? 」 自分


此れじゃぁ夜が益々 ヤヤッコシクなってくるなぁ ・・・っと。
自分っ酒精ボケした水銀頭でぇ そぉぅね想いました。



       
    

なに思う 君想う

2006年07月16日 03時24分59秒 | 無くした世界 

【 初心 】

今日みたいな、夏の終わりの様な嵐の日、色々な事を振り返ってしまいますね。
それも。あまり想い出したくも無い事をです。
何だかなぁ、想い出してもどうしようかと。

でもね、少し話してみましょうか。
少しだけね。


昔ぃ、未だわたしが若かった頃のお話しです。

そのころはね 今の時代みたいにね。
何処ででも話せる携帯や、自分で所有してる自動車なんて無かったしね。
あっても少しの人だけですよ。
お互いの連絡は自宅の電話か、公衆電話。
何処かに移動するにはバスか電車。近場は自転車かな。
もしも遠くに離れたら、お手紙。かなぁ。

そんなね、今なら不便極まりない時代。



あのね、此処にね、一人の若者。居たとしましょう。
この若者。あんがい、奥手。ぅん?ぁ~!オクテってね。未成熟なって意味。
初心(うぶ)ともね。
若者、恋をしました。うら若い乙女に。

娘に恋をしてその日から、若者の観てる 周りの世の中が薔薇色に!
でも。時々。ストンって落ち込みます。
訳も解からずに。どうしようもなくです。
何故って、恋の駆け引きなんて生まれて此の方 した事ないから。

勿論、娘の方もですよ。

薔薇色に観えていた世間がね、真っ暗な闇もあるって、そのころすでに、お気づき。
それで若者。ある意味、早熟。ある部分がね。意識のね。

初めてお互いを意識し始めたのは、若者が娘と出会った場所。
とある小学校のね、職員室。そこでね、娘はね働いてました。
うん?いいえ。教師じゃぁないですよ。
娘さん。未だね、16才。学校職員(事務仕事)ですよ。
お昼は働き、夜に学び舎に。定時制のね。当時は夜間高校って、いってましたかね。

夏休みで学校にはね、生徒も先生もいません。
校舎が静かに佇みます。人がね、殆んど居ない学校。不思議な感じ。

暑い昼下がりのある日。そこの職員室にね、1人の若者がある仕事で訪問。
たまたま可愛い若い乙女が応対。若者さん、この娘にコロリとね、マイリマシタ。
まっ、無理も無いことで。若者、それまでの環境が周りに男ばかりの環境。
異性と知り合う、出会うチャンスなんか、滅多となかったからね。

だから、恋をですよ。初めてのね。
娘に抱きます、仄かで淡い 恋心を。

若者 仕事が終わって嫌嫌愚図愚図と 仕方なく帰社。
でもね、心が落ち着きません。頭の中で恋する彼女が 悶々と、だから。
何故に、何か話を出来なかったのかと、意気地無しな自分がと。責めます。
ここで、ここでです。普段なら、ここで挫折。

でもね、何故か。心の奥の何処か。その深い処から不思議な何かが。
今まで感じた事も無い、何かの力がね。
今までとは違った行動をね、若者に執らせます。
直ぐに近くの公衆電話まで(勿論。会社にも電話、ありますけどね)
兎も角、外からと。自転車のペダルを漕ぎました。

仕事着の背中を汗で濡らし、自転車で公衆電話ボックス。
ボックス、扉を開くと熱風が。顔に。

夏。真っ盛りの太陽。昼下がりのね。
ガンガン照り付けています、ボックスに。中は、熱々のオーブン状態。
握った受話器が、手のひらで、ジュって音が出そうなくらいの熱さ!
思わずに、戻しますね。受話器を。戸惑いと共に、戻した受話器 暫らく見詰めます。

若者、迷います。なかなか、再び受話器を取って 電話する決心が。
若者、あんがい普段から、気がね弱い。
でもね、恋心がね勇気をね。奮わせます。
その勇気が、背中を押します。だから、受話器。

最初に電話を取ったのは、男の人。
若者、彼女の名前を知りませんからね、シドロモドロでね。
受付の人をって。若い方の人をって。

これね、今じゃぁ多分。駄目でしょうね。
ストーカーか、何かと勘違いされますからね。
知らない人でも、何がしかの信頼関係がね。
起こりえる、良い時代だったんでしょうね。
それとね、多分。タブンですよ。この、電話を受けてくれた男の人。
自分にも、何がしかの想いが。
タブンですよ、自分も若いころに同じ様なと。
だからね、タブン。気を利かせてくれたのかも、タブン。

彼女が電話を代わります。モシモシって。
若者、突然。言葉が出ません。
何かを言おうとしても、詰まります。
暫らく彼女も無言のお付き合い。あれあれぇ。

「ぁのぉ、どなたぁ」っで、キッカケが。

後からね、想い出しても何を話したか。
ただね、身体がね。夏の暑さだけではない、熱がね。
イッパイ イッパイね、詰まってた様な。

何かを必死で話す唇が、受話器の話すほうに当たり続け。
握る右手から汗が肘まで伝います。
流れる汗が、眼に。無意識にキツク眼を閉じて、拭う代わりに。
左手が、コイル状のコードーを独りでに、グルグルと舞わす様に。

狭い周りの壁から、外の暑さが迫り続けます。

「はい、じゃぁいきます」
「そやからね、だから・・・ぅ!えぇっ ぁあ~・・・・・ゥソぉ」

若者。何の準備も。まさかね、まさか。受けてくれるとは。
だから再び、言葉に。絶句!

「何処にですかぁ」
「ぁ。え。ぅん。じゃぁ・・・・・」

まぁ、なんとか。

「じゃぁ 日曜にぃ それじゃぁ・・・・」

っと言って、相手が電話を切るのを待って、本当にね。
静かに、ゆっくりとぉ。受話器をフックに戻しました。
息、詰めて。

ボックス出て、自転車のサドルに跨ると。
益々流れ出る汗と共に、詰めてた大きな溜め息みたいな塊が。はぁ~!っと。

思わず、ガッツポ~ズが。自然にね。
ヤッタア~!

舗道のね、街往く人の波ね。かわしながらの自転車暴走行為。
何やらの、興奮状のね。雄叫びの様な声上げてね。

それからの、日曜までの数日間。
若者、ニヤニヤしどうし。
周りの大人は、何か良いことがあったかと。
いや何もと、ニヤついて。お返事。
まぁ、色気づいてと。言われても。ニヤニヤ。

でもね、眠れません。心配で。
本当に来てくれるかなぁ。
もしぃ、来なかったら。
来てくれても、なに話そう。
もぉ~!アレヤコレヤノね。お悩み状態。

確かめの電話をしようかなぁ。
イヤイヤ、そんなことをしたら。とか。

なんでもかんでもの。訳解からないことで。
蒸し暑い夏の夜の 布団の中でね。
悶々!寝返り寝返り。転々、転々。


だからね。
デ~トの待ち合わせの場所に、早めに行きました。

自分よりも早く、彼女が。

夏の眩しい陽射しを浴びて、静かに佇む姿を見つけた時。
若者、思わず何処かに隠れようかと。
それよりも早く、彼女がこっちを。

白い歯が、再び眩しく。



若者さん。完全試合でね、完璧に打ち負かされました。



不便な時代がね、なにやらね。
懐かしいんですよぉ。



あれあれぇ、歳がね。バレバレぇ~!




            

夜更けの マッチ擦る心

2006年07月07日 02時54分32秒 | 幻想世界(お伽噺) 
  
 

   
昨日 お手紙が来ました あの人から
読むのが怖くって 文机の引き出しに 直ぐに入れてしまいました
その時から 胸の高鳴りが続きます

 夜更けまでも


外は 雪の降る音がしています
障子がそう伝えてきます 雪明りで

 ねむれませんっ


雪の冷たさが 独り寝の褥の中にもです
熱の軀 だけど心は狂い寒さ 冷えびえと
冷たい足先が 願う夢想の世界に誘わないで 
寝るなと 限りにと 想えと


薄暗な雪明りで覗いて 視えます 
漆喰壁の向こうは 凍える雪が描く 無垢色の世界
黒色の夜に降る雪が照らす 乾いた熱情 垣間見せます
冴え冴えな鮮やかさで 魅せて描きます

 想う気持ちを


冷える黒色空気の中で文机 亡き人の書斎に蹲っています
独りの夜の寂しヶ淵の 直ぐ横で
わたしを遺して 自分だけ逝った良き人の 愛でた煙草盆が
子供の様に 隣で蹲っています
小さく 身を縮める様にして
寄り添っています


わたしが お誕生日の日に送った品 煙草盆 
逝った人が その日の その夕方まで愛用してくださっていました
書斎の灯を消すとき 盆が睨んでいるようでした

 そっと、襖を閉めました


引き出しの奥の届いた手紙が 読まない恐怖で わたしを覚醒し続けます
勝手な想像で 返事のお手紙の中の言葉が 独り歩きをします
胸の中を 何かが這いずり回っています
意識の息苦しさが 直りません

 だから、ねむれません


何度も厠へと 何度も
宵の口に召しました 亡き人置忘れの泡酒をですよ
気まぐれ任せに 忘れさに 何杯もね
酔えればと 忘れればと 幾度も呷りました

 忘却は訪れませんでした 

 ねむれません


夜の遠くで 微かな列車の過ぎ往く音 っと 踏切の警鐘の音
あれ以来 夜毎 聴き馴染みます 
わたしは冷たい頬染め お布団を顎まで

雪明りの窓が冷たそう
きっと 視えない暗さの中の吐く息は 熱い白さで天井にと
褥に降る冷たさは 外でも白く積もって往きます
閨房の此処にも わたしの想う人にも 何処にでも

冴えます 益々意識が狂う苦しさ
迎えます 妄想を 限りなく続かせ紡ぐでしょう
胎児の形で 指の爪 齧ります

 深爪で 痛さが


凍える部屋は 熱情の煉獄 冷たい覚悟の座敷牢
寂寥が 支配しています



覚悟で起き上がり 閨から出ます
障子を開けたら 掃き出し窓硝子の露が 凍っていました
斑模様の削り硝子の様に
冷たい廊下に素足で 静かに踏みます 
床鳴りの 密かな軋み音 夜の深海からかと

軋み音は 廊下の奥まで
素足の歩く後からついて来ました

書斎の前の掃き出し雨戸は 
夫が逝きましてからは 閉め切ったままです
だから 廊下は真っ暗闇でした 
何も観えず軋む足音だけが ついてきました
手探りで障子を 引き開けます 
摺り足で敷居を跨ぎます

暗さの中で 卓上スタンドのスイッチ紐を手探り 点灯しましたら
文机に載ってる螺鈿模様飾りの 朱漆の文箱
貝殻裏模様が 闇に虹色彩色になって わたしの眼に 明るい影の様に映りました
白い和紙で巻いた自刃の 切っ先鋭い短刀を掴む想いで 前に正座いたします
引き出しが 少し開いてました

 誘うように


戸惑いで眼が泳ぐと 留まりました 
亡き人が愛飲していました 煙草の短筒缶に
他国の異人さんが描いた 鳩の印のピース化粧缶
薄鉄の蓋を開けたら あの人の忘れ匂いが 嗅げました
脳裏に 過ぎ去った昔の想い出が再び
そこに 死に際の笑顔が
忘れた筈の 想いの欠片が匂ったから

 刹那で蓋 無理やり閉じました 

両の手の 二つの手のひらで包んで膝の上 
俯いて暫くしたら 雫が落ちてきます手の甲に 点々
許しを請う想いが 点々で
きつく 強く掴んで握り締めて 包んだ手の甲に
一滴 二滴っと 重なり落ちました

点々雫の温もりで きつくが緩みました 想いの力が 点々で
卓上スタンドの 電球覆いの着色硝子傘 
綺麗な明かりが困っていました 照らしてるのが嗚咽でしたから
だから 塗れた手で消してあげました 明かりを

 再び闇が 訪れてくれました
 書斎に 何かが居る様に 背中が感じていました


闇の中で缶の中の残り少ない 数本しか残っていない
両切り煙草の中から一本 摘みました 震える指で
小刻みに震える紙巻煙草を 唇に挿みました
その時 鼻で吸う息の中に 煙草の匂いがしました


傍らを弄って煙草盆から マッチ箱 
中箱を小指で押しました
視えるなら 小さな赤い頭薬 仲良し気に並んでいますでしょう
指で摘んで 人差し指を添えて 箱の側薬で擦ります

 火花が咲き 炎が立ちました

 初めに儚げな 薄い青い煙が 照らされ昇ります
 燃焼する 硫黄の焦げる匂いも 嗅げます


吸いました あの人を真似て
煙の強い きつさが喉を襲いました
咳き込みます 激しく 何回も
息苦しさが募ります 
指に挟んだ煙草の赤い火が 闇に描きます
咳き込むたびに くるくると上下に 点が流れて描きます

誰かが背中を擦ってくれてます 誰かが
薄着の 寝巻き浴衣布地の背中 幻覚温もり
幻想人に ごめんなさいと 暗がり謝り

 奥歯噛み締めた 堪え嗚咽が追いました


引き出しを慌しく開けて 手紙を掴んで 手紙とマッチを懐に
煙草を銜えたまま 手を伸ばして 暗闇見当で障子を引き 手探り廊下に
動かぬ雨戸を息止め引けば やっと つま先に漂いこむ冷気
堪えて 引き続けます

 顔を上げれば 暗い庭に化粧雪


裸足で雪を踏みました 指先が雪を食みます
腰を落として 懐から手紙を
マッチを擦り 炎を手紙に
燃えるマッチを投げると 消えながら降る雪の中に

 紛れました

 燃え尽きた紙の灰が 白い雪の中で縮んでいました



随分長い時間 それ 視ていました
時折 マッチを擦りながら
全部のマッチを 擦りながら

降り積もる雪の中に
マッチの棒と 手紙と 煙草の吸殻の燃え滓が 
埋もれて隠れるまで
寒さを堪えて 視ていました



 雨戸は開けたままでした




  
                     

 赤い夜 ・・・・【夜の赤に染まる 雪女】 改め

2006年07月04日 03時25分19秒 | 幻想世界(お伽噺) 
  


男はいつも気侭でした だから女の心は あてなく揺れ続けます
男が 自分とは違う世界に往ってしまった っと気づかないままなら 
此の世の果てまでもと 二人はと 想い続けます 
なのに何故 何処かに 何処とも知れずに消えて逝く

 二人の世界


わたしが嫁いだのは あなたがわたしに夢見させる
陰無い心の 無垢の世界

心の闇の底に 冬の世界が巡って来ると 硬く決して無くならないとの想い 
冷たさで融けて逝きます 

想いが影にならないのなら 無くなり様がないでしょう
其の想いが厳寒の真冬の炎 天の月から降る蒼光の焔なら

女の研ぎ澄まされた心に芽生えます 小さな焔が

女が常にと願い想う情念 男の虚ろぎな騙しの情愛 
共に決して混ざることなく焼かれます 意識の醒めた冷たい炎で

意識のいつの間にかの擦れ違い 慣れで重なる心 
褥は劫火を燃やす炉になって 氷の冷たき情念を隠し
消えかけた熾火が再びの焔の様に 女と男が気づかない間に 

 チロチロっと 鎌首持ち上げた生蛇の口から覗く
 赤き舌の如く 燃え始めます



街一番の高層マンション っのベランダで 激しく吹く風を堪えて見渡すと 
真夏でも溶けぬ白い雪を頂く青い山脈 驚くほど近くに感じられます 
夜風が吹き込む様にと開け放たれた 大きな一枚硝子の窓に 

 日陰とりの 竹簾

湿気を帯び始めた風 空中に小さく鳴らします
金色(こんじき)の風鈴 リンと 一度だけ
吊り下げた赤い小さな短冊 微かに揺れて

 闇夜に小さく響きました


零時を過ぎた真夜中の 雨降る合図 稲光
もう直ぐにも雨がと 吹き込む風に湿り気が 

女の肌に冷たさが それでも流れる汗
男の肌に 欲する汗が止め処なく 

男が 激しく求める女の唇 
女が 意識を焦がして首を捻って 逃げます

女のなに想おう肌 冷たい汗肌に男の垂れる汗 
男の熱持つ汗と混ざり合い


冷たい焔の炎の心が 決めさせます 絶てと
女の噛み締めた唇を割って 差し込まれた熱い舌
滑る歯茎を擽り思わず緩んだ歯の隙間から 女の前歯の裏に

 女の意識が 嗚呼と
 

氷の世界に組み伏せられし女の躯 求め来る男の首に回したる
細き哀しき艶の腕 

夏には光り輝く綺麗な湖水の 真冬の白く凍れる湖面のように固まりました

 男の躯 胸に引き寄せ想いを絶つために



 嗚咽を堪えて開いた上下の前歯 
 差し込まれた柔らかさを噛み裂き 合わさりました



激しき雷光 闇夜を照らして奔ります 刹那の同時に雷鳴 幾度も
キツク瞑った目蓋裏 瞳の奥に稲妻の 光の残像遺し轟き音 
其れ 何かの物音隠します 部屋の気持がっです 

 隠されます 

一人になってしまった命の遣り取りの 雰囲気がです

 隠されます


暗がりで女 闇を梳く様に立ち上がると また風が
竹簾が振られ揺れます 烈風で
濡れた髪もです 風が梳き乱れさせます

雨が 降り続けます
轟と成る雨音と共に


夜の暗さの中に 仄かに汗光りの肌影 
露な乳房の影の胸に 血の赤い雫 
細い顎から滴り落ちました 柔き膨らみ谷間に


無限かと 幾度も瞬く稲妻光り 部屋の情景切り取ります 
まるで連続して光り瞬く ストロボライト
稲妻の 瞬く刹那刹那で落ちる赤血玉 瞬く光りで空中に留まりながら落ちます
赤い粒の雪か っとの様に落ち続けます


突風が 部屋に
白壁に描かれる血飛沫模様の 雪景色
吹かれる風に揺れもせず 赤き景色の前に立つ
一糸纏わぬ 凍える夏の夜の 女


蒸せる夏の夜の 赤く凍りつく血化粧 赤く熱い冬の雪女
裏切りを許さぬ 赤く凍える雪女

 情愛の情けで 男を苦しませずにと

 氷の心が泣いていました 何故にと



裸の肌に降る 慰め雨
涙が雨と混じって 

 ベランダから 



夏の終わりの夜 最後に 再びの雷鳴
雷光が想いの部屋を光りで満たして 隠しました

光りが醒めると 誰も居なくなっています 
一つの骸を残して



 誰も