【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

キチガイ マッハ

2006年08月29日 12時12分21秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  



 夜の暗闇は、人を無口にします

冷たく醒めた黒色闇が 排気音と共に後ろに
無灯火セダン。 勝手知ったる細い裏道を選んで走ります。
車の窓は全開にしていました。
窓より流れ聴こえる音を 耳で嗅ぐためにでした。 
エンジンの排気音 それ、妨げようと。

 ヘッドライト消し 路地裏を走ります。

この季節 吹き込む風は冷たさが でした。 



「あのボンは 何処の出なんや! 」 爆音と渦巻く風に逆らって 運転席の真二が
「どこって? 」 上着の両襟をキッツク合わせながら 助手席の自分
「お国の兵隊さんやったんやってねぇ 」 赤い髪の毛逆巻かせ 後ろの席から女が
「・・・・・へっヘイタイってぇ歳 なんぼや つねぇ・・・ 」

「北の方かぁ? 」
「知らん 」
「聴かないよぉ 」
「そぉかぁ 」

「ちぃふっ わしが帰ったらな礼ぃせななぁ・・・・」
「!・・・・ぁ、ぁ~ 」

自分 何時頃になる話しなんかなぁ? っと。
急に悪酔いじゃない、乱れ脈拍がぁやった。

「ぅち、待ってるよぉ~! 」

爆音の中に 静かさが迫って来ていました。
心、まさか と乱れていました。



真二っ アクセル踏み込みよったっ! 
フロント硝子の 黒い影の裏町並みが 後に素っ飛んで逝く。
真二 爆音で聴こえない唸り声挙げ 奥歯噛み閉めもって 

「そっか おぉきにやなぁ 」 尤 アクセル !

横向いて真二ぃ視ると 両眼を大きく見開き 噛み締めた上顎で唇 
鼻にくっつきそうな位捲くれていた。 白い歯が覗けた。

自分 ダッシュボードに両手ついてました。 必死でっ!

「此の侭ぁ ドッカに逝けたらぁえぇのんにねぇ・・・」 阿保ぉ女がぁ!
 
眼 瞑らんと必死で開いていました。
瞑ったら何かに負ける っと思って。
巻き込む風が 目玉ぁ乾かしてもぉ やったっ!

フロントウインドウで 急激な両側に流れる暗闇景色
乗ってる車を呑み込む様な 錯覚がぁ!


時折、急ブレーキの叫び
躯ぁ横に持ってかれそうにぃ!
両手の肘っ 崩れそうにっ!
フロアー絨毯 突っ張る脚で捲くれてました

街灯の明かりが 一瞬で閃き輝いて ドッカニ!



突然! 嘔吐感。 
腹の上辺あたりから喉道に 登ります。
窓に身を乗せました。 車体が右に回り込みます。
自分っ 躯がぁ! ベルトを捕まれる感触っ!

罵声がらみの 「こぉちゃん! なにしてるんっ! 」 女が

前の席の間から女が半分身を乗り出して ベルトを掴んでました。

今度は左にぃ・・・・ 吐いた。 我慢できしません。
逆噴射止めれません。 喉が焼けます 胃液で。
風で吐瀉した未消化物が後ろの女に 悲鳴っ! 
まるで男の唸り声やった。


真二、甲高い笑い声でした。 
アクセルを緩めたのでしょう 風が穏やかになりました。
自分、釣られて一緒にぃ 笑いました。
嘔吐感なくなるまで吐いたら 胸の苦しさは消えていました。

赤い髪の女 後ろで毒突いてました。
「こぉちゃん、あんた殺すさかいになぁ 」

「ぇ~よ。 今かぁ 」
「全部済んでからやぁ・・・・ 」

「そぉかぁ たのむなぁ 」
「ぅん・・・・ 」


 突然 っ! 夜が輝きました。


後ろから 明かりが襲ってきました。
振り返ると、瞳を遣られました。 眩しさで !

「真ちゃん 逃げなっ! 」 女

真二が 加速する間もなくでした。
2サイクルのバイクが 車を抜き去りました。
川崎の キチガイ マッハでした。
焼けたオイルの匂い 窓から青い煙とぉ・・・やった。


キチガイ、少し離れた前方でドリフトして 横向きに停車しました。
自分 白バイと違う・・・・っと、安心しました。
510車体が急激に前のめりで沈んで 単車ギリギリで停車しました。

    
自分 またぁ厄介なんがぁ っと。



早く 終わらんかぁ! って




             

家族の仔の幸せ不幸せ人さん任せですよ

2006年08月28日 12時10分17秒 | メタルのお話し 
   


【今じゃぁ著名人となった直木賞作家の「某」さんが 子猫殺しを告白しました】・・・!

  此れぇ・・・どぉゆうことなんかなぁ・・・?っと


実はわたしとこ、新聞を定期購読致しておりません。
以前、とある事情で某全国紙の いい加減な販売店とぉ・・・・アホッ!ォ~

っで、オマケにわたしぃ
 モトモトぉ世の中の出来事には トンっと疎くってでして・・・。 アカンことです。



昨夜の深夜に 何時もの如く多少お酒を召しまして
アッチコッチト ブログ漁りをでした。

まぁ、ただねぇ
思いもかけず、自分のブログに沢山頂いているコメントにですよ
お返事を致すのをですなぁ、躊躇ってました っのでぇ

『ぁ!言っときますけどなぁ、邪魔クサイトカじゃぁないねん。
 チョット疲れてましたしぃ、其れで眠気覚ましにでっせ、チョコット冷を・・・』

それで、アッチコッチのブログハンを 勝手に覗き見してました。
そしたら ホレ 先ほどの記事が、アッチコッチで取り上げてました。

 眠気っ素っ飛びますなぁ!

ど゛ヤネン? ナニナン?・・・・ぇ!ゥソッっ!・・・・ぅぅぅ!阿保がぁあ~!
っで一気に酒量がぁ~! ドンドンお増えになりはった。



私常々、家族の仔の幸せ不幸せ、人さん任せでっせ
 っと・・・

此の世に産まれてくる仔は ワン仔に限らず、
ニャン仔も、おサルハンもぉ 鑑賞用の水槽の中の熱帯魚ハンや
庭池の錦鯉さんも、その他の昆虫や、鳥ハンなんか色々な生き物さん達
人と関わっている全部の 凡てのやなぁ・・・・でっせ

大概、自分では生きかたを自分で選択デキシマセンっ!
だから、そやからなぁ

 其処からが 人さんの責任違うんやろかぁ っと



わたしとこ、うちの息子の赤ん坊ぅん時から 家族の仔は居ました。

随分以前に他所に勤めていた頃、営業所から近所の駐車場まで歩いてたら
ドオユウ理由か道端のドブ溝で泳いでるのを見つけた、金魚のキンちゃん。

その頃の住居の近所で 飛べなくて弱っていた鳩の ポッポちゃん。
息子達が幼い頃に、お友達の家で分けて頂いたハムスタ~の
ハァ~チャン ムゥ~チャン スゥ~チャン タァチャン
(それぞれ、世代は別々ですよぉ~)
何時頃かは解らんけどモォ 泥亀の子供のカァ~チャン。
多分、巣立って直後か、何処かの巣から落ちてかで
飛べなくて地面を這いずり回ってた 黄色い嘴の雀のスゥ~チャン。
他にも、甲虫や熱帯魚やハツカネズミやぁ

 もぉ数え切れないほどの 仔たちがぁ

 みんな家族の仔でした。



シェルティ~の桜はね 捨て犬でした

わたしの家から遠くの 隣街の少し大きめの河に架かってる 
地域の生活橋の袂で 此の仔を見つけた時には 

 細い枯れ枝が 毛が抜けかけた犬の毛皮を着てるんかぁ!

 っやった。



二十一年生きてくれた桃子は雑種でした。
多分、柴犬となにかがぁ・・・・
 
桃子の最後は 人と一緒でね、背中が曲がってました。
高齢犬の世話、人の高齢者のお世話と同じですよ。
自分の親を世話してみて そぉ想いました。

人と同じで、犬も痴呆になりますし 白内障にもなりました。
耳も全く聴こえなくなった。
脚腰も弱り、階段の上がり降り、デキシマセン
イッツモ抱っこして 散歩してました。

急に触られると身体を ビク!っと痙攣させて小さく唸ります
だから、鼻に手を近づけてからいつも触りました。
最後まで匂いには 敏感に反応してましたから。
抱っこしたら、わたしの息を桃子の顔に吹きます。
そぉしたら、安心して私の顔や腕を ペロペロ・・・・何時までも 

 舐め続けてくれました。



今の家族の仔の 金ハン

もぉぅ!カワユゥッテなぁ!! 此の仔が居らん生活ナンッテ !。
想いたくも 考えたくも無いんです。
多分、自分の息子達よりも可愛いかもぉ~!
夏は、車でお出かけしたら暑さで死んでまぅ~!
だから、連れてはイケシマセン。

此の仔 何の芸も仕込んでおりません。
けどね、無駄に吼えないし、何かを下さいって鳴きしません。
オシッコも便も 家の中ではケッシテ しないし
何よりも一番は、人の心を癒してくれますっ!
心がメゲソウニなったとき、どれだけ金には救われたか
動物の癒しの力はね、もぉ人の慰めの言葉なんかよりもね

 遥かな可也な力 ありますねん。


わたしら夫婦 偶々でしょうけど、二人ともワン仔が大好きです。
生き物は全般、何でも好きですけどもね ワン仔が大好きですよ。
桃子も、桜も、金も チョットでも病気になると もぉ!大慌てで 
イッツモお世話になってるペットクリニックに走りました。

此れね、責任とか勤めとかじゃぁ ナインヤデ
家族の仔やからですよ。

桃子は、わたしの家で引き取らんかったら タブン保健所で処分でしょう。
桜は、あのままやったら、いずれは栄養失調で行き倒れか、
あるいは保健所の野犬狩にぃ遭ってぇ・・・・!ワァ~
金わぁ、幸せだと想います。
金が幸せにならんかったら 自分ら夫婦は幸せじゃぁないねん。
だから、此れから先も生活の殆どを 金との家族三人でっと。ですよ
 

猫の赤ちゃんをね、どうゆう理由をつけ様ともですよ
殺める事が 人の正義ぃ・・・・ですねんかぁ?
屁理屈とぉ違いますんかぁ?


人は人間やから哀しくって泣くし、
何かに喜んでは また泣く時かてあります。
お腹が減れば 食べます。
夏の暑さで参ったら、疲れを取る為に何処かの日陰で休みます。
何かを失くせば、他の何かを手に入れ様と致します。
好きな人が出来て想いを伝えたかったら 携帯やパソコンで伝えます。
楽しかったら笑えて、悲しかっても笑って堪えます時かてありますよ。

 ナンボデモ幾らでもなぁ人さん、自分で出来ますねん
 そしてなぁ、してあげられますねん。 

 此れなぁ神さんが 人間にクレハッタんやと想います。
決して神さんの真似をしてもヨイからって、クレハッタん違う思います。
 何かを 何かの為にせなアカンよぉ~って、やっと思います。

なぁ、生き物を守れんかったら、自分の心
守れんのと 違いますやろかぁ?



【「生まれてすぐの子猫を殺しても(避妊と)同じことだ。
   子種を殺すか、できた子を殺すかの差だ」】 って言わはります。


      アホォ! ・・・!

       

  
  

夜は 悪友

2006年08月26日 11時47分03秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
   


真二が言いました
「つね!っ 何でお前が此処に・・・・!ぃ 」


赤い髪の女 っの髪型ぁ 自分らが日頃から 
お洒落なモジャモジャ頭 っと呼んでるアフロに近い髪でした。
倉庫の入り口付近で女の髪の毛 背にしている後ろの街灯の黄色い明かりを透かし 
 細い髪が 綺麗に光ぃ輝いてぇ・・・やった

顔は影になってたけど 何か秘密を分け合ってる時の様に
ニヤツキ雰囲気顔 やった。


女が真二の顔の前で 掌をヒラヒラさせて
「おかぁはんに 聴いた 」
っと、真二が言い終わらないうちにぃ

「おかぁはんが言いましたんかぁ? 」
ビンの口 服の袖で拭いながら自分 聞きました。  

「ぅん、これっ持って行ってくれるかって 」

赤い髪の女、自分が手に持っているボトルから 視線離さなかった。
持ってきた栗色の風呂敷包みを ボトルと引き換えにぃ受け取る
直ぐに一口含んだ。 顎が上向いて 喉が波打った

詰めた息ぃ ゆっくり吐き出しながら
満面の笑顔で満足げに 言いました 

「これなぁ 呑みたかったんよぉ・・・! 」

 直ぐに 二口目をぉ 浴びます 



「旨いな 」 真二
「塩が丁度やねぇ 」 つね
「なんやぁ海苔が多過ぎへんかぁ 」 

海苔で巻いた 丁度の大きさの 握り飯です。
最初の一口が 喉を通る時自分 啼きそうになってしまいました。
喉に飯が詰まりそうになった、慌てて一升酒瓶の首ぃ掴んでぇ
コルクの栓 前歯で抜いてやった。

ウイスキーで焼けて荒れた喉壁を 
酒が優しく撫でて 降りていくのが感じられた。

「おかぁはん、気ぃ遣ったんやなぁ 」 自分言いました。

三人 っ埃っぽい土間コンにしゃがみ 酒屋の倉庫の奥の暗闇見詰めもって
何も言わずに 唯ぁ黙って一人二個ずつ食べました。
オカズハ添えられていた 沢庵です。
日本酒がお茶代わりで 三人で回し飲みしもって 胃袋に流し込みました。




「つね お前帰れ 」
「ぇ! なんで なんで帰らなあかんのん なんでっ! 」
「ぁほっ!さっき真二さんがあんたぉ庇ぅたん 意味が無い様になるやろがぁ 」
「これ 持ってきたんうちなんよっ そやのに何で帰れって言えるんっ! 」

車の屋根を続けざまに叩き 運転席の窓から顔 覗き入れて
悔しそうに口から唾ぁ吐き飛ばしもって 言います。

「そやっ ちぃふの言うとぉりや 」
「そやけど うちら友達なんとちゃうんかっ? 友達ぃちがうんかぁ! 」
「ぁ!なにするねん手ぇ離せ!っ 」
「ぃっぃややっ! 真ちゃん、ぁっ、あんたこそぉ離しんかぁ~! 」
「が!っ! ぃいたたっ!ぁぁ・・・こぉじなんかせぇやぁ~! 」
「なんやねんなぁ もぉ! こらっ!つねっ なにするんやっ! 」


少し離れた黒い闇の中から 聴こえてきた。
「いっしょやないと今から警察に自首したるっ! 」


先程 車のドアを挿んで内と外 唾の掛け合いみたいな遣り取りの最中に
恕作さ紛れに女が窓から手を突っ込み 車のキーをっ!
真二が気づいて 鍵を摘んだ手を握り掴むと 
口紅色濃く塗りつけ大きく開けた口が 真二の手首に噛み付いた
自分が気づいて助手席のドア開いたら つねちゃん

 闇に駆け込んだ


「!ったくぅ ぁのぉぅあほ!っ がぁ 」 

右手首を室内灯に掲げ もぉ片方の手で撫でながら言いました。

「ほんまに あほがぁあっ! 」 自分、少し笑いを堪えてぇ・・・
「笑ってる場合とチャウでっ どないするんやこぉじ 」
「どないするってぇ   どぉもなぁ・・・ 」

自分この時 『ぇ!わいも行くんかぁ? 』 っと想いました。
まぁ其れなら其れでもえぇけどもなぁ、そやけどわい役不足と違いますんかぁ?

 って 考えました


「・・・ったくぅあいつ何考えてるんや 」
ティッシュで手首の口紅を拭きながら

ルームライトで綺麗に湾曲並びの 歯の喰い込んだ痕がぁ・・・やった。

「ほんまに自首するつもりなんかぁ?あの阿保ぉわぁ 」
「自首はせぇへん思うけどぉなぁ・・・なっ つねちゃんなぁ・・・ 」
「なんやっ? 」
「自首したらなぁ真二さんを守れん想うてるで 」
「わしぉ? 」
「そやっ あんたをぉや 」
「なんで? 」
「店でつねが遣ったやろぉ 」
「ぁぁ? 」
「あれなぁ たぶんあんたを守ったつもりなんやで 」

「  ・・・・! 」 小さく息ぃ呑んだ
「・・・・?・・ 」 

 吐き出しもって 「それで? 」
「あんたが捕まればなぁ あいつぅそれがなぁ・・・・ 」

「そぉかぁ・・・・ 」

暫くは 闇の遠くからパトの緊急警報音しかぁ・・・

 
運転席のドアが開いた 
車から降りた真二が 暗闇めがけて小さく叫ぶように言った。

「つねぇ 来いっ! 」

近づく赤い髪の女 声を堪えて啼いていたのか 夜目にも顔の化粧はもぉ・・・!
 
「つねちゃん 行こかぁ 」
自分 後ろのドア開けもって言いました。

「こぉじ 道具ぅ忘れてたなぁ取って来るわぁ 」 倉庫に戻りながらぁ

横目で真二を窺うと、目頭がぁ薄っすらぁ・・・・かもぉ・・・やった



車はハコのセダン。 黄色の510SSSでした。
若ボンの愛車でした。

「よぉ貸してくれよったなぁ 」
「ぅん、公衆(電話)からなぁお願いしましたぁ 」
「ほぉかぁ 」

 煙草の煙 濃密充満してました。

「あいつ 禁煙してるのと違うんかぁ?匂いキッツイぞ~!採れへんやろなぁ! 」

泣き女が 何処かにドライブに往く途中みたいな嬉声で 「してるよぉ 」 っと
 
「ぇ!そぉなん? 」
「ちぃふぅ 下のモンの事ぉわからへんのん? かぁ・・・・ 」

っで、息を大きく吸う気配が
吹きかけられました、耳の後ろから多量の紫煙がぁ

「・・・・チ! 」


無灯火の 裏道限りの暗闇ドライブ 
三人 不思議と酔いは来ませんでした 



自分 終わりにしたかったです


 早く




                            

親子です  息子と父です

2006年08月24日 00時28分45秒 | 無くした世界 
 

 頑固な不器用者
  


私の父は今年で 八十四歳になりました。
大正生まれの 次男坊です。

上には 少し歳が離れた姉さんが数人います。


わたしの二親とわたしら夫婦 
今年の春に その親父の姉さんたちに逢いに、九州まで往きました。
結果は、悉く皆さん亡くなってるか 痴呆老人となられていました。
お一人は全く此方が誰かを・・・
もう一人のおばさんも ・・・・

親父は、久しぶりに逢えて嬉しそうにしていましたけど、
何処か何だかなぁ・・・っと。


わたしは、子供の頃から親父が 大好きでした。
たぶん、お袋よりもでしょぅ

親父さん、本当に不器用な人です。
何を遣らせても一応 一生懸命にします。
唯ね、結果がぁ・・・ねぇ

若い頃に右脚の膝から下を事故で失くしても 私が見る限り
普通の人と変わりません。
さっさと歩くし、以前は私の仕事の手伝いも してくれました。
事故に遭うまでは 毎日 休まずに仕事場に行ってました。
何があろうと、です。 早朝から夜半過ぎまでです。

わたしは子供心に、顔中汚れて夜中に帰ってくる父を見ると
やっと、無事にお帰りしてます。 って思って お布団の中に入りました。

親父と遊んだ記憶は 殆どありますん。
親父は兄とよく キャッチボールをしていました。

唯、一度。 夏に遠くの磯に貝採りに往った事が
当時の事ですから 歩いてです
どぅして二人でかは 憶えていません。
嬉しかったのを昨日の様に です。
その時に会話は した憶えはないです。 無口な人ですからね。

途中わたしの脚疲れで

其れで、背中に負ってくれました。

汗の匂いが わぁ~! って。
髪の油のポマードの匂いが同じく わぁあ~! って。
わたしね、トッテモ 幸せでした。 此の時


荒磯に着いて 父は一生懸命に貝を採ります
私は 足手纏いでしょ。 何の手伝いもできません。
夕方近くなって 帰りました。 バケツ一杯の貝と共に
父が提げていました 重たいバケツを
其の後ろ姿をわたしは 追いました。
一度も声をかけてはくれません。 唯 無言で黙々と歩いてました。


突然っ! 父は立ち止まり、
バケツを置いて膝を地面に着きました。


「乗れ 乗らんとう 」 

前屈みで 父が

「疲れとらんけん 乗らん 」
「よかっ 乗らんか 」


ランニング姿の父の肩は 日焼けで真っ赤でした。
陽に焼けすぎて小さな水泡が いっぱい出来てました。


「赤かけん よかとぉ 」
「いとうなかけん おんぶされんかっ 」
「疲れとらんっ! 」

半泣きでした わたしは

「せからしかね 早くのらんかっ! 」 


わたしね 幸せでした 何とも表現できません
今 大人になって想い出しても 幸せです

家に着くまで ずぅっとぉ 泣きべそかいてました。



父は物凄く頑固です。 けど、物言いは煩くは言いません。
私が何かの不始末をしても、あんまり叱られた覚えがないです。
でも、だからです、一言が十分にです。


家族のあり様は 色々でしょう

私はわたしの家族が 
わたしの家族で好かったです。





   

想い数々・【恋歌:レンカ】

2006年08月21日 12時46分04秒 | 異次元世界 
    
  


 今宵 限りなく届かぬ想いが徒然に


聴こえない伝えない だから胸のあそこに閉じ込めて 
遠くの何処かに 投げ捨てましょぅ

失くしそうな観念で 狂いし煩悩で 恋夜の遠くの連なる山々
其処には想い深き 懊悩峡谷あることでしょう 
視えるなら其の山脈 闇の濃密黒さに朧気霞んでいます

 きっと



 深間の影で蹲る狂気の慕情 

凍える熱情 キリリっ!っと 尖がり燃えて刺さります
嫉妬篝火が 絶望暗闇ゆらゆら照らし

 其れ露に魅せました

震える心の蔵に 何回も何回も突き刺さるのを
闇の心に為れと 死衣を着れと 突き刺します

 心 痙攣しました

    

無くならぬ尽きぬ想いが限りに慕います あそこに戻ればと
時折崩れる山影映して 遙かな音無き稲妻雲 
灰色瞬き輝きの儘に
 


お前との仲が真空ならば 想いなど響かず伝わりません 
二人の世界が幻想なら 夢かとっ醒めればと

 繰り返します  知って幾度も 

  忘れて何度も 

 知らず無意識で くどく呟き 何度も



人ごみでお前が向こうを向いて 何気に緩くからませくる指 
其のお互いの熱き指先ならば 融けて交わり永久に離れないかと
いつまでも 現実世界が何処かの深間で溺れても いつまでも

もしかの時も 何時までも 
此の世の終わりの時も 何時までも 
お前の心が冷たく醒めてこないなら ならば何時までも

ご主人と離れられないなら 殺しましょう 
わたしが わたしの心を 殺めましょう

 お前の 朗らか意識無垢の弄び心

 ついでに 持って逝きましょう


何時の間にか 潮の辛さを無限かと呑み込み
 執着愛に溺れ 沈みました



友人が言いました

「貴様は死んでも治らんやろな 」 っと

だから 死んだふり

「あの女が そんなに好きか 」 

いいえ そうゆうことを遣ってる自分の心が 好きなだけ

「あの女も女だな 旦那がおるのに 」


 そう 共犯者でしょう 二人は




 多分 勘違いじゃなければ 

 でも   多分   でも




 繰り返しの 終わりない 繰り返しの 

  徒然語り 繰り返しの ・・・・    






 
              

 別離

2006年08月18日 10時28分51秒 | 無くした世界 
  



 昨日までの霙の中の風景が 今日は違って観えた。
 同じ景色が昨日よりも 綺麗で輝いていた。


「身体にぃ気をつけてるとよお 何かあるとぉ直ぐに手紙ば書かんとぉ 」
「うんわかとぉ じゃけんどぉネエチャンも気をつけんばぁ 」
「ぅんうちわぁよかぁ 向こうにぃ行ったらぁ何でも我慢してぇするとよぉ 」
「うんわかっとっとぉ 心配ぃせんでぇよかばい 」


雪降る小さな港に銅鑼が響いて、桟橋に一際の喚声。
お互いに 降る霙の中 声を嗄らしての呼び合い。
五色のテープが引かれて伸びて 直ぐに切れた。
船腹にテープの暖簾垂らして冬の風に靡かせながら

 ゆっくりと緩慢に船が離れる

 姉チャンが桟橋から 今にも飛び降りそうな感じで手を振ってる。


船が桟橋から離れる時、もぉ戻れん。 ちゅうて思いました。
戻る時はぁ、この海に沈んでから魂になってしか 戻れんっ とぉって。

 我慢ばするけんネエチャン見とっとぉ。

 っと、覚悟。 してるつもりやったばい。
  あの時ぃまではぁ



「おいっ 行くかぁ 」 今日まで迷惑を掛けどうしの 先輩が言いました。
「はいぃ 用意わぁよかけん 」
「うん お前にもぉ散々無茶ぁ言うたけどぉ 堪忍なぁ 」
「よかとです おいもよかぁ経験ばぁさせてぇもろうたとぉ 感謝しとるけん 」
「うん おおきになぁ ほんじゃぁええ仕事ぉしょぉかぁ 」


真っ黒な廃油が染み込み汚れた土間コンの 見慣れた自動車の整備工場
天井わぁ煤けたスレート剥きだし。 一間ほどの間で明り取りの白い波板。
奥に作業着に着替える為の 狭いロッカー室。
いでたちは真っ更の作業着。 白いツナギ服。 首までボタン留めてました。
ロッカー室出る時。 出ない生唾ぁ飲み込みました。

工場の向かいの事務所の引き戸。 力で引きました。
勢い余って戻り掛けるん、左手で抑え止めました。

 誰かが背中で喚いています

前を突き進み行く先輩、腰にタックル噛ませられてよろけました。
怒声と何かの壊れる音。
事務戸棚の硝子が弾け飛び散ります。
兎に角人の壁。 蹴りっ 殴りっ 飛ばしっ 攻めました。
こめかみが 鼓動してるん、解かりました。
気分が高揚して、闘争感覚が覚醒し続けました。

応接室のドア安全靴で蹴ると、嵌まった硝子にヒビが奔りながら!っ
飛び込むと目差すおっさん、蒼白顔面で唇ぅ引き攣らせてソファァに座ってました。
近くの棚の眼についた金色トロフィー掴んで投げつけると、おっさんの肩ぁ掠めて行きました。
慌てて立ち上がったので、胸倉掴んで引くと言いました。

「わっわぁかったぁ」


声が新たな高揚感生みますねん。
殴りますねん。
呻きますねん、更に怒突きますねん。


誰かが後ろから 羽交い絞めにしてきますねん。
振りほどいて振り返りざま 殴りました。 何回も。
その人。 倒れませんねん。

 踏ん張って


は!っと気がつくと。
自分、班長はんを殴っていました。
振り上げたこぶし、止まったままでした。

「もぉ~ぇえやろぉ! なぁ! 気が済んだやろぉ・・・なぁ 」 って。

振り上げた腕、両手で優しく下ろしてくれました。
突然。 気分が沈んできました。
班長はんの顔、優しかったけど恐かったです。

 サイレンと共に警察が来ました

 救急車も

パトカーに乗せられる時、背中に班長が言いました。

「おまえなぁ何処に行っても気張るんやでぇ! 」 って


乗って後ろぉ振り返ると 班長はん、泣き顔でした。
走り出すと 何かを叫びながら追いかけてくれました。



あれからぁ未だにぃ あの人にわぁ会えずにいます。
合わせる顔がないからですねん。



          
   

  nostalgie 

2006年08月10日 21時01分57秒 | 無くした世界 
 

  ・・・・nostalgie・・・・♠
  

棄てゝ来たはずで、嫌いになっていても想い出してしまいます。


おまえの国は何処か、っと訊かれて、何処もっと。

言いたくもないし想い出したくも。だから許してほしい。

幾年も忘れようとして諦めきれずに、再びぃ徒然に。

幾度も胸の奥の闇の其処で、幾度も。

だからあの日から、想いで煉獄。



「なんやねん!それがどないしたゆぅねん、アホかッ! 」

「ァッアホってッ!・・・・ぁ~!そぅもぉぅわかった、もぉぇぇッ! 」


後姿に怒りを載せ、遠ざかって逝った今朝までの二人の歴史の片割れが。 


今更でした、今更帰れるもんか故郷(クニ)ぅ!

口から出る言葉は、意地と知らずの何かがと。
 
たぶん思い上がりがのとゞのつまりの畢竟。
 
胸の中は存分な啼き声悲鳴が、満々とでした。


「なぁあんたぁ、踊ってた時ナァ、ウチぃどんなん? 」

「どんなんって ? 」

「ぇ? ぅん! 」


知りたかったけど、聞けず終い。



スポットライトに照らされた、舞台の上のお前はぁ、ホンマニ肌が綺麗やった。

華やかにぃ映されてなぁ、輝いてたわぁ !


「あんたぁ観ててくれたんかぁ 」

「ぁぁ綺麗でなぁ、巧かった(踊りがぁ)でぇ! 」

「ぅん、おぉきにぃ、ぁんたの為になぁ踊ったんやぁ 」

「ぅんっ! 」

「あんたぁ捨てたらあかんよぉ、うちのこと大事にしてなぁ 」

「なんやッアホか、ほかすぅ想うてたんかぁ、ァホッかぁ! 」


「泣くなッ!大丈夫や、捨てへんッずぅっと一緒や、ずっとなっ 」 


この時はたぶん、先の事をです、感じ取っていたのかも。


「ウチの生まれたとこ大きな波止場があってね、近くに魚河岸があるねん。

店ぇしたらなぁ、仕入れが今みたいに早ぁにぃ出んでもえぇさかいにな

ぁんたも楽になるわぁ 」

「そっそぉかぁ、ぅん 」

「どないしたん?あかんのん? 」

「ぇッあかんことないよぉ、わいのこと想ってくれるんやなぁ 」

「そぉやぁ、いっつもあんたのこと想ってる、いっつもなぁ 」

「ぉおきになぁ 」

「なにぃミズクサイやんかぁ 」



此の時ぃ自分の故郷(クニ)を、想い描いていました。

心の中が、其の想い描く懐かしいぃ風景で、イッパイにぃ為っていました。

自分でも、想いもよらないことでした。

だから返事が、巧いことぅ出来ずに、でした。


上の空やったんですよ。


たぶん此の時期からでしょぉ。

自分とあいつとのです、何かが入りかけてたんやろなぁ、っと。

二人の間には溝とかぁ、隔たりとかぁ、意見の相違とかぁ、

性格の不一致っとかぁ、ッがあるとかぁじゃぁない。

他の何かゞです。視えないなにかゞやった。



「今日なぁ、言われたぁ 」

「なんおやっ?」

「スキぃやって 」

「ハァ?・・・・誰がや?」

「マネ~ジャァにぃ 」

「ぇッ!木元にかぁ?」

「ぅん、そぉ 」

「ッ!  」

「なに?なんもぉ言うてくれへんのん? 」

「なっなにぃ言うねん 」

「ワテのことぉ、好きとちがうんかぁ、愛しるんとちゃうんねぇ? 」

「ァホッかぁ、なにお今更ぁ言うねん、ッタクゥ! 」

「ぇッ!・・・・ソォ 」


この時も突然ッ!胸の心の中が郷愁でイッパイにぃ!

小さな子供の自分が、胸の暗さの其処で暴れていました。

心臓を止めそうでした。



「あんたの心な、おかしいねんッ! 絶対ぃおかしいわッ!」

「ぁあ~ケッコウや、おかしぃってケッコウやッ!・・・・ッヶ! 」

「ぁんたぁ可哀そぉやなぁ!」

「ぇッ! 」


泣いてたあいつ、こっちを見つめて泣いてた。

涙がポロポロ堕ちてた、古畳の上めがけて。


「なにぃ泣くねんっ!ァホかッ 」

「ぅん、ウチぃアホやったなぁ、ウチぃ・・・・ 」




「ぁんたぁ、近くまできたらなぁ、寄ってくれるんかぁ 」

って、出て行くときゆうてた。そして子供が出来たら、

オシメ入れにしようって造っていた、キルティングの布袋、

ワイに差し出しもって、ゆうた。


「此れぇ、とっといてんかぁ 」


たぶんアイツ、顔ぉ伏せてたと想う。


「なんや? 」


ワイ、顔ぉそむけもって聞いた。  


「ぁんたが一番気に入ってゝくれたもんやぁ 」

「ぁ~そぅか、はよぉいかんかいッ!」


横向いて受け取りぃ、背中で言いましたわぁ


「ぅん  」 


背中で、いっつも閉まり難かったドア、静かに閉まりよった。

外の鉄の階段をぉ、降りる足音がぁ、遠のいて逝ったぁ。

自分、あの時もぉこんなんやたなぁ っと。


暫くぅ ぼぉ~ っとしてたと想う。

狭い台所の窓から、晩い西陽が照らしてた。

だからね、奥の部屋が茜色してた。

クリーニング屋の針金のハンガーがイッパイ、部屋の中に渡した物干し竿に並んでた。

あいつぅ、ギョウサン服っもってたんやなぁ ッテ。
  


キルティングの袋の口ぃ開けて覗いた。

逆さにして中身を落とすと、畳の上に落ちた。

其れに、夕日が反射して眩しかった。 

綺羅綺羅ッ!ッテ、スパンコールの、金色ラメが輝いてた。

小さな下着の様な、賑やか華やか舞台衣装ぅ。

扇情的な程の、小さな踊り衣装。


夕陽が沈むまで照らしていました。

畳の上が、自分が観た最後の舞台でした。


もぉねッ、わぁ~!やった。

膝を揃えて座り、太腿ぉ何回も叩いた。

両手でぇ何回もッ! 拳骨でぇ何回もッ!


ごめんなぁ 堪忍なぁ ごめんなぁ あほやぁ~!

アホやぁ!! アカンネンっ! 堪忍やでぇ !

もぉ堪えてぇなぁ ! ごめんやでぇ! 

甲斐性がぁのぉてぇ かんにんやでぇ !


ず~ぅとぉ、こない言うてぇ叩いてた。



部屋がだんだん暗くなってきてた。

上着の両袖も、ズボンも、濡れてました。

涙ぁゆうたらなぁ、あんがい出るもんねんなぁ!って。


随分後になってアイツかて、ワイと一緒になるよりわぁ。

もっとあいつぅ幸せになるで~

っと、無理やり納得させました。



 心をぅ 自分の心を





  
 

去年も、其の前の年も、今年も

2006年08月07日 02時14分33秒 | 無くした世界 
  

今年も 同じ日が巡ってきます
どぅしようもなくです 想いが頭の中で狂ったように回ります
あの日も、其の前の日々に戻ればと



 去年の記事です

子供の時に 小学校の高学年だったと思います
長崎の原爆記念館 (その当時は多分、資料館だったかも、知れません) に行きました。
随分と昔の事で 建物がどんなだったかっとか、平和公園がどんな雰囲気だったか、とか
 
 忘れてしまっています

原爆で殆んど無くなるほどの破壊を被って
その後に再建された浦上天主堂もです 行った筈なのに

全く想い出せません

長崎の眼鏡橋もです。 ボンヤリとしか記憶に残っていません。
グラバー邸も同じ様なものです。 他の何かと一緒に忘れてしまいました。
此れは私が歳を重ねて 記憶が曖昧になったからじゃぁ ありません。

 記憶のあやふやさが 救いになってしまうことがあるからです



生まれて始めての修学旅行。 
今から思えばね、一泊二日だったと記憶が。
日帰りみたいな旅行だからね、遠足に毛が生えた程度の事でしょう。
でもね わたしが生まれた島からの、子供同士の初めての仲良しこよし。
 
 楽しかったはずです

だけど、記憶が
朧気に擦れてしまっています。

 一箇所だけ鮮明な所が 原爆資料館です


お昼前に館内に入って 展示されている品々を拝見しました。
最初から最後まで でした。
哀しいほどの悲惨さが 子供の私の胸で啼いて、呻き続けました。
入った最初から外に出るまで、誰も口を利かなかったです。
展示されている物からの 何かがです
怖さで互いに手を繋いだ子供達に迫り続けました。

破壊された物や人達が 静か過ぎるほどの時間の中で蹲り 
並んで展示されていました。

その物の一つ一つが 可也な物です。
その一つの物が、十分に子供を悲しませて恐怖に落とします。
一人の子供が 二つの瞳で観ます。 濡れています。 頬が。

  悲しみの時間が 
 館内を歩く子供達の時間に成っていました



私はね、恐怖が記憶をね、消そうとしても出来なくってね
代わりにね、楽しい事を忘れさせてしまったのかと。



 観光客で賑わう 平和公園

確かですよ天を右の指で差し 
左で横に伸ばして水平を指します平和記念像だとか
絵葉書みたいな浦上天主堂。

きっと
想い出せたら懐かしいような 楽しい事の景色をね
恐怖の記憶が 記憶から消して浚って行きました。


広島の日の テレビ中継。
私の中の子供の記憶が静かに迫る日。


八月は記憶が無くなればいいなと。
でもね、忘れるもんか!

 っと。何かが!

 心で言いました。


   

今年も色々と、想いだけが空回りしました。
それで、去年の記事を っと


 おやすみなさい




     

 最初の本。

2006年08月04日 13時51分24秒 | 無くした世界 
              

 昔ぃ、子供の時にぃ児童世界文学全集 って言うのが有りました。

全集購入すると、多分。 当時の価値で、数千円。
勿論っ うちの家はぁ、可也な貧乏。
全巻揃えて買ってもらえる筈も無く、本屋さんでいっつも立ち読み状態。

 小学校の帰り道に、寄り道してのね。


学校の図書館にも 随分とお世話になりましたが、兎も角 古い本ばかり。
借り出してページを捲ると、数頁にわたって 無くなっていますねん。

物が無いのが、当たり前の時代。
綺麗な服も 新しい靴も、無いのが当たり前の時代。
お腹も 満足しない時代。
寒くって暖かさを求めても、我慢の時代。

 世の中がまだまだ、戦争を 引きずってますねん。
  当時は。



「ボクぅ。本見るとが 好きかぁ 」 少し白髪まじりのおじさん。
「うん。好きとぉ 」
「何が 良かとね? 」
「読んどったら忘れるけん 良かとよ 」
「何ばね? 」
「色々たいぃ 」
「ほぉ! 」


当時。 マーケットといってわぁ、名ばかりの青空市場。
その市場の中の、少しましな店舗を構えた 本屋さん。
雑誌 カストリ誌 米軍払い下げの英字新聞。
戦時中の 訳の解からない、宣伝チラシ類。
戦前の ガリ版刷りの同人誌。

 何もかもが、ゴッチャマゼの展示販売。


「ボクわぁ 本見ても買わんとね 」
「 ・・・・ 」
「あ!ぁ、よかよ。 見ても ・・・・ 此処に座れ! 」

 傍らの、古本数十冊を、縄で縛ったん指で示した。

「おっちゃん、おまえをぉ毎日みてたら 想い出すけんぅ ・・・・ 明日も来んね 」
「 ・・・・何ばね? 」
「息子たい ・・・・ 八つやったとぉ 」

「 !・・・・ふぅ~んぅ 」
「 ・・・・ 」

当時の子供なら、こんな会話で 直ぐにピンときますねん。
おっちゃん。子供ぉ 戦時中に空襲で、って。


「これ、食べんね 」 差し出す。拳骨みたいな 吹かし芋。
「よかとぉ! 」
「よかよぉ 食べんか、冷めんうちに 」
「うん!っ 」


天国!。 物を食べれて、好きな本 読める!
店の前を 同級生が通る。不思議そうに こっちを見ながら。

 芋ぉ、隠すようにして食べました。



 ある日。

学校帰りの本屋さんに。
何人もの、厳しそうな顔した、警察官。
それに囲まれてるようにして、薄汚れた作業着姿の、労務者。
その両手の手首に、手錠を嵌められていた。

 腰縄も、打たれていました。


本屋のおじさん。 俯いてました。
眼つきの悪い 刑事みたいな人が、何やら質問。
時々、俯いたままで 周りを観ていました。 おじさん。
暫らくして、眼が合いました。

 来るなっの、目配せ。


走りました。
慌てて。
後ろを振り向くのが、恐くて、怖くて。
背中で、教科書や筆箱が、騒がしい音。

暫らくして どうなったのか、様子が気に成り見に行くと。
本屋が跡形も無く、そこだけが、黒い地面剥き出しの、空き地状態。

 周りの大人が集まって、密かな会話。


「これ、ボクにやってくれって 」
「ぇ! 」
「本屋がたい 」

本屋の隣の、肉屋のおじさん。 両手で持ってはった。
文学全集の中の、一番 気に入っていた本。

   受けとると、限りなく、重たかった。
 生まれて、最初に手に入れた、真っ更な本でした。


その日の夜中に、暗い 裸電灯の下で。 
布団の中で。
声を堪えて、泣きながら、本。


 読みました。

 


           

 空蝉花火

2006年08月01日 03時17分53秒 | 異次元世界 


  

夜目にも河口の上の鉄橋 随分と古びて視えます

ときおり暗闇を 打ち上げ花火が瞬き照らす光の中
花火見物の人ごみに紛れて 海の潮風匂う鉄橋から 暗い川原を見下ろすと

貴方が肩を抱いているのを見つけました
わたくしよりも 若い方の肩を 

逞しく優しそうに 周りの人々から守ってやっている様に

 まさか・・・・! って



冷たい無骨な鉄の欄干 わたくしは両手で握り締めていました
手にしていた団扇 ひらひら揺れて花火映す川面にっと 落ちていきました
思わず窄めた肩 首が減り込むかと 
汗ばむうなじ 浴衣の奥襟生地が引っ掻きます

降って来た弾ける音に釣られ 黒色な夜の空を見上げると 光花が綺麗でした 
暫く見上げていました 湧いてきた涙で 水の底から見上げている様でした

 目尻から 堪えきれずに 零れ涙



 耳たぶから涙の雫 

喉元堪え切れぬ嗚咽と共に 落ちました 肩に 
目蓋をきつく瞑ると 脳裏に光の残像 淡く記します
昨日あの人と 二人で逢っていた時の自分
っと 今夜の自分との違いも 淡くでした

 わたくしの逢瀬は 
夜の陰で咲く花なんでしょうか



暑く蒸せる夏の夜の空気 生きてる液体の様に爆発衝撃で震え 
わたくしの躯に音を伝へ 想いの底に幻覚じゃぁ無いと 染み込ませます 

 光花咲く音 嫉妬の焔燃やす心に注がれました



海辺の鉄橋の上 花火見物の人で溢れています
夜空に 花火見物の歓声も 満ちていました
わたくしの 藍染浴衣の帯下肌 冷たく汗ばみます    
暑さじゃぁなく 醒めた冷たい感覚汗で っでした

欄干握っていた手を 胸元衿から胸奥に 膨らみ包む自分の掌
小さな硬くなった冷たさ 感じられ 哀しかった
強く掌に力を入れ 痛いほど握り締めました

 なにかが萎む様な
  なにかが 



赤い京絞り柄の巾着袋 京組紐で手首に結わえ 吊るし提げていました
手首からはずし 紐を緩めて中からハンカチをと
中を探ろうとして 突っ込んだ指の先に  ぁ! っと   
おもわず引きかけた手 其の儘にして中を
覗き観えました 花火の瞬き光で

貴方がわたくしにと 仏蘭西土産のクリスタル硝子の香水小瓶
透明小瓶の中で 琥珀色の香り液揺れ 光反射で綺麗でした

掌で包んで取り出し 川原を覗き見ます 
貴方の顔 此方を向いてました
顔 想わぬ驚きで 醜く歪んでいました 


此の世の 今夜の此処は 空蝉幻想世界になりました
鉄橋を見上げる貴方と 見下ろすわたくしだけの世界になりました

花火の音も 光花の輝きも 
人込みの音も 漂う火薬の燃える刺激臭も

 消えました 悉く

其れは 夜の闇の向こうまで視える 
 黒色透明空気の世界

静かさが、静かさがでした
無音の世界 が でした



橋の上から身を 投げました
耳元で 風切る音 微かな蝉の声
刹那で 直ぐに冷たき水の中
 
   


薄目を開けると 白い天井の蛍光灯が 眩しかった
あの人の顔が現れて 消えました
何処かでブザーの音が しています
暫くして白い帽子の女の人が わたくしの顔を覗きます
また暫くして 男の人が覗きます

何かを言ってる様に 口が動いてました

目蓋を閉じました 幾つもの光花の残像
瞬き輝いていました 幾つも
眠りは わたくしに安らぎを でした

  
次に目覚めた時 開いた窓が観えました 
窓の外の何処かっから 蝉の鳴き声が聴こえて来ていました
大勢の子供たちの声 もでした


 蝉の声 今を盛りにと 
  益々の様 でした



花火 綺麗だったかなぁ   っと