【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

雨の中の 悪女

2006年11月30日 01時02分28秒 | 無くした世界 
  

むかしぃ、今日みたいなぁ 朝早くからの雨の日
まだ薄暗い時間に、悪女が声をかけて来ました。

「かきちゃぁ~ん、傘に入れてぇ 」 って。 背中にぃ

振り向いたら髪の毛濡れ濡れの女。

「なんやぁ、傘もささんとぉどないしたん ? 」
「うんぅ、おきたらぁ雨降ってるんやもぉんぅ 」
「降ってたって、傘ぐらい持って出てこんかいなぁ 」
「でもぉっ・・・・ 」 俯いて。
「ぇ・・・っ!」 

自分、目ぇ逸らして、
傘越にまだぁ暗い空、見上げましたぁ。


俯く女の背の向こう 隠微がお似合いのホテル街。
ケバくぅ派手に光るネオン看板 雨に煙って瞬いてた。
女が大事そうに小脇に抱えてるんわぁ 多分着替えの詰まった、
雨に濡れた紙のショピンクグバック。
暫らく、お互い身体ぁくっ付けて 歩きましたわぁ。

バスの始発駅まで。 黙ったままで。


夜明け前の、切れかけた蛍光灯が瞬く停車場で、発車の待ち時間。
隅この、コーナーに設けられたカウンターだけの 喫茶。
まばらな人の中に溶け込んで、肘ぃ着いて啜りますねん。
熱いコーヒーを。
女と男の肩が触れ合う。 尚更肩を寄せてくる。
女の肌から仄かな安石鹸の匂い。 っが、嗅げる距離。

「お前なぁあかんでぇ、こないなことぉ何時までも内緒にできひんでぇ 」
「うん、そやけどなぁかきちゃん、あの人なぁムゥイカモォ!(六日)帰ってきぃひんねん 」
「ふぅ~んぅ、 そやさかいぃ言うてもなぁ・・・ 」


この女はん、実わぁ知り合いの 奥さん。
知ってる言うても この奥さんわぁそんなに深くわぁ知りません。

ただぁ先輩の奥さん。

時々、用事で 先輩の住んでるマンションの部屋に行くと、顔を合わせる程度。
この先輩が あんがい身持ちが悪いねん。
浮気の常習犯ですねん。 バレテモええねんこれ見よがしの。
奥さんわぁまぁまぁの女。 美人の部類やろかぁ。
それやのに何でって・・・・。

一度、先輩が病気で寝込んで、お見舞いに寄させてもらった時
何かが匂う寝室部屋で、奥さん言いました。

「この人、バチが当たったんやわあ!っ 」 吐き出す様やった。
「罰て? 」
「浮気 」
「してるん? 」
「いっつもしてる! 」

汗を浮かべた先輩の寝顔。 湿らせたタオルで拭きながら。

奥さん眼ぇにぃ涙ぁ 浮かべてた。
涙の雫ぅ 男の頬に滴った。
濡れタオルで自分の顔拭いて、言った。

「かきちゃん、彼女泣かせたらあかんよぉ~! 」

自分、黙って頷いた。


その頃わぁ自分。 四畳半一間の賃貸アパートの部屋が生活世界でした。
異性の匂いも形もありませんねん。
だから、先輩の部屋にいくと、何か違う世界が垣間見れている様でした。
でも、其処から帰るとき、何となく心が穏やかではぁ無かったん、憶えていますねん。
何がって聴かれても解かりませんねん。

兎も角なんとなくぅ。



「なぁかきちゃん、 うちぃ悪い女やなぁ 」
「ぅん、たぶんなぁ 」
「そやわなぁ、でもぉ うちだけが悪いんかぁ ? 」

返事の代わりにぃコーヒー啜った。

「これ、かきちゃん。預かっててくれへんかぁ 」

左の脇の下から、右手でクシャクシャの数枚の万札。

「何のまねなん! 」

押し殺して言う。 けどぅ、右手が正直にコーヒーカップ、皿に落とし戻し!
一瞬っ! 周りが静か。 直ぐに元にぃ

「怒らんといてなぁ! 堪忍なぁ 」
「何の真似やって! 」
「うん、これっ 稼ぎなんよぉ、昨日の晩のぅ 」
「え!っ。・・・・ 」
「怒らんといてなぁ! 怒らんといてなぁ、堪忍なぁ! 」

化粧の浮いた顔、歪んでた。 涙もいっぱい!

そろそろぅ 時間が。
早めの通勤客が詰め掛けて着ました。
場内が賑やか!

停車場出て暫らく雨の中 歩いて
早朝開きの喫茶店。

「何でこないなことしたんやぁ? 」

この店のコーヒー苦いだけ、それでも間持ちで啜りました。

「ぅん、うちぃ別れようと想うねん 」

モーニングのトースト。 喰わずに千切るだけ。

「別れるってぇ! そないな事ぉ理由にならへんやろぉ 」
「解かってる・・・。 だけどなぁお金。 無いねん。 仕方ないねんよぉ! 」
「ないって、なんでやねん? 先輩ぃよぉ稼ぎはるやろもぉ 」
「うん。 稼いではる、そやけどなぁ全ぇん部ぅ持って行きはるねん 」
「ぜっ全部か ?ぁ 」
「うん。 全部! 」

身体で稼いで別れる資金。
汗ばむ手で掴んで握って、握り締めて。
手のひらで丸めてクシャクシャで、幾つも煙草の焦げ痕の残るテーブルにぃ

コロン って転がってますねん。

このお金、持ってるんが見つかったら取り上げられるさかいにぃ
預かってください、お願いします! っやて。 だから預かりました。
お昼ごろまで居ました。喫茶店に。 ただただぁ聴くだけの為に。
なんにも結果ぁ出さずに別れました。

半月ぐらいの間に 何回も預かって溜まった金額。
驚くぐらいの金額。



「かきちゃんうちぃ今度わなぁ、あんたみたいな男ぉ捉まえるなぁ 」

駅のホームで最後に言いました。

「アホ!っ、なに言うねん。 身体ぁ気ぃつけるんやでぇ 」
「うん! かきちゃんもぉ 」

列車の扉閉まって 硝子の向こうで涙顔。
お口が パクパクなにやらぁ ?


悪女になる女はん、色々な気持ちぃ持ってはるねん。





  

夜街去り草

2006年11月27日 03時38分45秒 | 幻想世界(お伽噺) 
  


夜は、ドナタニモ訪れました
ボクの中にも 密かに来ました
眠れない夜に 遣って来ました

街角お 曲がって遣って来ました
其の時 躓きました 夜に 転んでから夜だと


微か聴こえの漣押し寄せる 心の浜辺
騒ぎました経験が 体験していないものが迫って来たから
忍足で 姑息な隠れ物語 語りだします  脳の中にぃ

消え入りば 穏やか心が目覚めます
果てを  っと  隠せと
紡ぎ忘れが ないようにぃ


夜は 去り難くな微笑みでした
狂うわぁ 君 想う心
隠せぬわぁ 下心ぅ


世界は 死にました
段々畑のぅ 一番上の 高みの畑の土の中に
埋めました 悔やみを下地に埋めました

流れる雲ぅ 灰色雨雲ぅ

雷鳴 轟かず  隠れ音 心の其処にぃ埋まってました
イッパイ いっぱ イッパイ いっぱい


暗さの山道 歩いて 降りました
深間まで 歩いて降りました
闇の中でも 躓きませんでした

何故って ?

あなたは 自分の足跡ぅ 確かめなければ歩けぇませんか ?



おやすみなさい




  

夜の時代 番外編 【確信犯】 

2006年11月14日 15時29分27秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
 
 


【昨夜のボン っと 赤い髪の女】
っの、お話しの心算がぁ 番外です。


ボン最初、夜更けに清美の身柄を貰い受けに 此処(H警察署)に来た時は
未だ、騒ぎの始まりで、署内の様子は騒然として苛立ち雰囲気が在った。 っと
次の一晩で二回目の強制御訪問時(警察署に連行された時)は、
初回時よりも、所内は殺気立っていました。 っと
だけど不思議と、取り調べ担当の刑事(縄澤)の態度は、妙に優しかった っと。
ボン、随分後になって事件が凡て片付き落ち着いてから、そぉ話してくれました。

話してくれた其の飲み会、あの時の騒動の関係者一同で集まり、
昔ぃのぅ其の当時の 想い出話を話し合っていました。


飲み交わす酒の酔い、想い出に耽って懐かしむ仲間たちの口を滑らかにします。
場所は知り合いが当時遣っていました、路地裏場末に在った 「某」スナック。
其の晩、路地裏入り口付近に置いてます、店は此処よと案内の行灯看板
今夜はハナから明かり消し、少し路地奥にと引き込んでいました。
店は普段、夜の水化粧を落とすと能面顔! っのママと、
ママの娘と同い年な感じの若い女二人、の、三人で遣っていました。

其の飲み会のあった夜 此の店、何時もなら、夜晩くまで、薄暗い路地奥の店の扉の上で
ネオン蛍光管が古くなって消えかかっている、かのように瞬いていた、
扇形に形取ったネオンのピンク色蛍光管 宵の口から消されてました。

ケバイネオンや看板が、派手に光った飲み屋が軒を連ねる
酔眼には 殊更明るかった魚町通りから狭い路地に踏み入ると、
其処、街灯照明など在る筈もない暗がり。
夕方に、縁起担ぎの水打った狭い歩き道、乾きかけてます。
此処ならもぉ自分、目を瞑ってもっと表通りの明かりを背に、
地面に浮かんだ長い自分の影 追いながら歩いて突き当たり。
手探りでっと、ドアの取っ手を掴み引き開けばぁ・・・・!

薄暗い普段よりも 随分と明るく照明を点した中は、
此の辺りの界隈で家業(水仕事)で巣食う、古狸ぃらの貸し切り状態。
有線チャンネル、音楽ジャンル設定ダイヤルは、ドッ演歌止め合わせ。
聞こえるかどうか程度に音量落とし、微かに流れ聞こえる曲
騒動当時の 流行り演歌。 啼きのでした。
  

全員で廻し呑みいたしまする、可也な量の酒が満たされた大きな硝子の器。
化けモンみたいにぃ怖ろしくデッカくて重い、物騒なブランデーグラス。
呑口口径、直径一尺余り、中には麦酒の中瓶ぅ、七ぃ八、九ぅ、十っ本んぅくらいは軽くぅ
難なく真にナンナク 注げ込めましたでしょうぉか っと。

此れぇ以前は、色々な種類の綺麗な乾き花束ぁ っが飾り盛られていました。
その次は、店のマッチが山盛りっで、マッチが減るにしたがって、
店に勤める女の娘らが、ポーチや財布等の私物入れにと、成り果てます。


「なぁ、イチイチ注ぐんも邪魔臭ぁないかぁ? 」 誰かが
「そぉぅやなぁ、べつにぃ気ぃ使う相手もおらんしぃなぁ 」 ヨッパライが
「ここられでなぁ、一服したってぇナンかせぇへんかぁ? 」 多少ましなヤツが 
「飲む以外にぃなにやぁ? 」 飲み足らんお人がぁ
「ぁ!そぉや、此の前なぁゲ~ムしたわぁ 」 店のママが
「なにぃ? 」 カウンターで腕を枕にぃお眠りしていた、もぉ可也なヨッパライがぁ
「アンタぁ寝とったらえぇねん、あんなぁチョッドってんかぁ 」

っで、店の奥の着替え室ケン厨房ケン仲間内でのヒソヒソ謀議室ケン・・・・
から、持ち出したのが デッカイブランデーグラス。

「ホナ、ワイからいくで~ 」
「ハイハイやったらんかぃ 」
「ホンマニ参ったゆうたヤツがやなぁ 罰金なんやからなぁ 」
「分かっとぉ! 早にぃせんかい 」

っで、栄誉ある一番目ぇジャンケンでぇボンやった。
(この時にはもぉ 「若ボン」 じゃぁなかった。 けど、全員がボンゆうてた。) 

「おぃ、ナンボも減らんで 」 
「ムゥフフムゥぅぅぅぅ・・・・ぅ! 」 ボン、飲みながらの返事ぃ
「ぁ! 離したれ、溺れよる !! 」
「ホンマかぁ! 」

まぁ、最初からの遭難者一号やった。

其れぇ 両腕で抱え込むようにして持ち上げ、両脇のお方ラにお手伝いして貰い、
口をつける時に、前歯の二三本も欠けるくらいの覚悟を決めまして、
そぉっと唇を近づけますと、顔がっ!グラスの中にぃ!
目前には真っ白き微粒子たる細かき泡がぁ~!
チョイ目線を上げれば、泡の上の硝子越し、夜の店内世界が、望めました。
泡立ち琥珀色液体、啜るコとなく喉へと・・・・自然とな、流れ込みかと!
息継ぎは、出来ませぬ。 すれば肺にと琥珀泡立ち液体自然とぉ・・・・!
溺れる覚悟で、時間の遅しな感覚世界。
口の端より、多少は零れる儘にぃ・・・・!死ぬ

逝きつく先は、トッテモなぁ酩酊村までかぁ!
酔いどれ村かのぅ村長はぁ、俺様かぁ!
何処じゃ此処どこじゃぁ~!

一口三口呑むだけじゃぁ
満々と注がれましたる琥珀色液体表面の泡の、上限赤色マジックペン印から、
殆どと言っていい程 マッタク下がりません。
一口三口ぃじゃぁ・・・・・途中で数を数えるのが無駄なコトぉ・・・・・っで、
何回目かは、もぉ数がイッパイやぁ~!・・・・ っとしかぁ

ゴクンッ、ゴクゴクゴックン!
喉の動きに合わせて、胃袋がどぉにかぁ!
腹が今まで考えた事無いほどにぃ、無茶苦茶張り出します。
徐々に酩酊気分真っ盛りにぃなるのが 自分でもハッきりっと、解かって来ます。
す~っと、ドッカに逝きますなぁ・・・・スゥット!


「今となってはあの時にぃ ナニが善くって、どうやったらモット巧く遣れたか。
     今更なぁ・・・・との感慨だけで、ものノ言いようがぁ・・・・ 」

自分、ついヨッパラッテ喋って、即、「しまったっ!」 っと遅い感づきやった。
くの字のカウンターに腰据えたみんなの 咎める眼差し視線 
全部、お引き受け致しておりました。

「場持ちの解からんヤッチャデ! 」

誰が言ったかは解かります。 けど、何も言い返せませんでした。
麦酒グラスから生還し、場を見かねたボン話し出しました。
あの夜の出来事をぉ 店の中に再びのぉ静かな演歌の流れがぁ!



ボン、取調室から嫌いな男と一緒に出て来がけに
その嫌いなサッギで部屋の中の机の向こうに座り続けてた、デカ(古強者)が
出口のドアを開け、妙に馴れ馴れしく肩を組んできた。

縄澤が厳つい顔に似合わぬ 猫撫で声、耳元近くでぇ!
「ボォゥン 話したらんかいぃ、なぁ? 」 嘗めつけるような口振りでぇ!!

若ボン 無理矢理肩組んだまま俯いて歩き、無言で応じます、
心で 「クソがぁ!・・・・ケッ!! 」 っと。
それから、ボンの顔を下から覗き込むように近づいてる不細工な顔に
思いっクソ 唾棄したかった。 とも
けどっ歩きながらの目線、
リノリュームがアッチコッチと剥げている汚い床から外しませんでした。

「君ぃなぁ、何時までも黙っててえぇねんで、出るんが遅ぅなるだけや 」

言い終わると、ボンの耳元で ジュルジュルジュルっと何かを啜る音がっ!
音に釣られ見ました。 間近のクソ刑事(デカ)を。

サッキの取調室の備品、プラスチックの湯飲茶碗を
アポたいにクソ大きな掌で包み込んで、歩いてた。
中の白湯を喉を湿らす程度に啜り 唇ピチャっと鳴らして嘗めまた。

ボン、後から此の時のコトを散々喋った挙句
「縄澤の遣り口なぁちぃふぅ、厭らしくってイチイチ癇に障るんよぉ
  もぉ背筋に怖気が這い上がるねん、寒疣がなぁザザザって来るで~! 」


店の中の雰囲気ぃ あの夜になぁ、戻りますねん。
みんなの眼ぇ、酔い以外のなぁナニヤラナなぁ
目尻が吊るされたようなぁ酔眼にぃ なりましたぁ!



   
 

 【旧友】 

2006年11月05日 01時31分14秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  

 
 【想い籠もる新聞包み】


自分、目を覚ますともぅ夕暮れ近かった。

この地方独特の屋台、
造りは雅な華やかさで多人数で担ぎ上げる大きな祭り屋台。
っの、眠る収納蔵で 目覚めた。
蔵内板壁の屋根裏野地板剥きだしの天井近く 明り取り窓開いてました。
其処から夕焼け光が 水平に差し込んで 反対側の天井と板壁
紅く染まっていました。

自分、翌朝まで眠って起きたと、錯覚勘違いしました。


播州地方秋の名物祭り 灘の喧嘩祭りほど知名度はぁ じゃぁなくっても、
此の地域の人々にとっては 同じくらいの想い入れが籠もった祭です。
其の溜め息が漏れるような 見事な彫り物飾りが施された屋台が納められている
古さを趣にし隠せない 由緒が香る屋台蔵 っで、目覚めました。

天井に届くかとの 嵩高い屋台と内壁の間の土間に、
祭りの後に近くの広場で 華やか賑やかしの名残を惜しんで催されます
打ち揚げの宴を催す時 地面に敷きます畳茣蓙を数枚重ねて敷き
上掛け代わりに蔵の奥の物入れ櫃から 赤白の祭り幔幕を引っ張り出し
身体に掛け 眠っていました。

真二と自分、二人とも殺されたように眠り扱けてた。
眠りの中の 夢の中は、何もかも消えたように、何も無かった。
多分、真二も同じだったろぅ


昨夜、もぉぅ明け方近くに公衆(電話)から 此処の地元の人に連絡した。
「済まんけどな、ドッカ寝れるとこぉないやろかぁ? 」 っと

此の連絡を入れた奴、古い友人で同い歳、昔は自分と同じ職業(水仕事)でした。
今は普通の堅気のお嬢さんを娶って 普通に家の跡を継いでいます。
家業は土建屋さん致しておりましたから、当然一端の「親方社長」 です。

最初、女性の綺麗な声の方が電話を受けてくれました、眠そうでしたけど。
自分、名前を名乗り旦那さんをと願うと 「暫くお待ちくださいな 」 っと。
受話器耳に当て続けてますと受話器の向こう、廊下を慌しくな足音迫り来て

「なんやねんもぉ!今ぁ何時ぃ思うてるんや!なぁんもぉ電話の一本もせんといて!」

っと、可也な勢い言葉でした。
けれど自分、耳から心に懐かしさがぁ~!

「スマン済まんチョット訳ありやねん、倉庫でも何処でもえぇさかいにぃ無いか? 」
「・・・・なんや?なんぞあったんか! 」
「聞かんほぉが えぇおもうけどな 」
「なら、聞かん 」
「ドッカぁ ないかぁ 」
「一人か? 」
「・・・・・えっとなぁ 」
「解かった言うな、倉庫はアカン!今 建て替え中や 」
「何処やったらえぇんや 」
「チョット待ってくれるか、小便しながら考えるさかいにぃ掛け直(電話)してくれるか? 」
  

っで、東の空に紅い霞みたいな朝焼けが懸かりだした頃
屋台蔵前で 久しぶりの再開をぅ・ ・ ・ ・!

真二は単車と共に 蔵から少しぃ離れた森
八幡様が祀られてる社が在る 鎮守の森入り口の鳥居の所にぃ。
懐かしいぃ友人親方、ニッカポッカ姿で足元は 職人足袋履いてた。
以前は可也太っていましたけど、今見ますと随分と引き締まった肉体です。
キツク使う筋肉だけ 身に纏ってるなぁ~! っと、自分感心しました。
八幡様の森の傍の 田圃の向こうから、堂々とした感じで屋台蔵の近くまで歩いて来ました。 

親方、真二と単車に気づくと軽く会釈してた。
真二も、同じ仕草やった。

「カっきゃん どないしたんかわぁ聞きとぉないけどなぁ、テレビぃ騒いどるなぁ!」
「そぉかぁ? なんて? 」
「相手な重症や、言うてるで 」
「ほぉ~! 」

「ホレ、此れっ 」

帆布のズックで作った 職人の道具袋から 
新聞紙で包んだものを自分にぃ、取れといってきた。

「嫁が、昔ぃ世話になったゆうたら急いで拵えよったわ 」
「わるかったな、よばれるなぁ 」

掌に載せた新聞紙の包みからは 暖かさがぁ~!
胸にナニヤラがなぁ 込み上げ掛けたさかいにぃ
懸命にぃ我慢しましたぁ。

「それとぉ此れもや 」 古い魔法瓶も取り出して、寄越してきた。
「ぅん、済まんな! 」
「それは、反さんでえぇさかいにな どぉせホカソウ思うてたさかいにな」

「ホンデ、此れもや 」

ニッカポッカのポケットから 小瓶を取り出した。
「嫁がな、要らんゆうても持って行けちゅうねん 」

新しい封も切ってない、総合ビタミン剤の小瓶やった。 

「チョットぉ細かいけど、わいにわなぁえぇ嫁やったで~! 」
「そぉかあ! 」
「カっきゃんに 相談してぇ良かったんやで、おおきにやったなぁ! 」
「違うがな、勢いがよかったんやでぇ 」
「・・・・ぅん、かもなぁ 」

「なんでなぁ?こんかったんや 」
「ぇ!・・・なにがや? 」
「式にぃや! 」
「あ!、ぅん、悪かったな、カンニンやぁ ・ ・ ・ 」

言葉に遣られて、言葉に詰まってました。 暫くぅ
遠くから、時報を告げるサイレンが流れ聞こえてきた。

「時間やさかいにぃ行くわ 」
「ぅん、済まんかった 」
「カっきゃん、あの人にも宜しゅう言うたってなぁ 」
 
細かく目と顎が動き示した 真二をぉ

「なぁ、よぉ電話ぁくれたなぁ、嬉しかったで~! 」
「あぁ、此れ以上はぁ迷惑 懸からんようにするさかいにな 」
「懸かってもえぇがな、大した事ない 」
「奥さんにな、ホンマニありがとうってな! 頼むなぁ 」
「わかった 」
「ホナなぁ 」

「巧い事ぉしいやぁ 」

鎮守の森影の向こうに消えるまで 一度も振り返らんかった。
けどなぁ、遠のく広い肩幅がぁ物凄くなぁ
語ってましたよぉ~!

キッと、ナンでや?ナンでこんな形なんや~!

 って!っ