【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

嘘ナ逢引逢瀬。

2008年09月23日 03時42分24秒 | イケナイアルバイト (仮題) 

T3年生 イケナイアルバイト。(6)最初の一話目


sakasakurage


随分前の古いことですからね、チョット申しますことが廻りクドイかも。


男と女が真夜中に、逢引 (現代じゃぁアイビキッテ言い方も死語なんやろなぁ) なんかに、
みなさんお気軽にご利用いたしてます 「ラブホォ」 ナンってなぁ、
わたしが若かった頃には、何処にもありゃしませんでした。

今の 「ラブホテル」 (今じゃぁ此の・ラブホテル・もね、ファッションナニヤラにぃ。) に相当するものが在るとしましたら、
昔懐かしいぃ逆さ水母 (サカサクラゲ)印(マーク) の看板ぉ、ヒッソリト掲げていた 【連れ込み旅館】 くらいでしたなぁ。

ッデ、その連れ込み旅館。 所在はタイガイ繁華な表通りから一筋奥まったような路地裏に。
其処は真っ昼間でもね、何処か陽が当たらないような陰な場所やった。
建物の雰囲気は、ちょっとコマシな民家に少々手を入れ、パット観数寄屋作りの小洒落た和風料理旅館風。

マッ、コンナンはね、滅多とおまへん。 数少ないえぇ部類の物件ですねん。

その他大勢の 「連れ込み宿」 はですね、何処となく陰気な雰囲気満載で、
其のお宿に女が連れ込まれた日にゃぁ、アンサン。もぉぅムチャクチャ。

連れ込むまでトッテモお優しかったオットコ前の兄(アニ)さんが、部屋の中に入れば突然のぅ、お豹変。
サッギでのお優しい仮面の下のやね、狼の本性をトッテモお丸出しにいたします。 ハイ

ホンマニおっ恐ろしい、スンゴク度し難い悪辣な助コマシのお兄様へとお為りになりましたんがぁ、
連れ込んだ素人の女 (生娘、人妻、看護婦、巫女サン、事務員、バスガイド他ジャンルを問わず) にやね。
世間一般の普通の素人衆のオットコにゃぁ、トッテモ×トテモ真似がデキマヘンようなぁ
スンゴクえぇお仕事なんかにお励みに為りはって、コマシハッテタ。

ッデ、助コマシの兄サン。 
コマした女が、先ほどの激しく燃え上がった営みで、トッテモ巧い男女の接触技巧が愛故のぉぅと。
ハナハダなお勘違いをし余韻に浸ってるのを眺めながら、徐(オモムロ)に一服点けて満足げに吸いますねん。
スケコマシの、ァホたれなアンチャンが。

タブン当時のことやから、煙草の銘柄は ≪朝日≫か≪バット≫か≪シンセイ≫ でっしゃろかぁ。
キットごご満悦なんやろなぁ、コノにぃやん。 自分の仕事ぶりにぃ。

(ァホッぉ~!ロクデナシぃ~!!)

ッま、ユクユクはコマした女を今ならフアッションナンたらチュウ、風俗の湯船にドップリっと、お漬け込みしますんやろなぁ。
ケド、昔はコンナ場合は定番のぅ、コマサレ女を小汚い女郎屋か、
トアル某国の国名を冠した特殊欲情の、淫売窟に売っとばしぃ。 ッテ 

ぁッ!ゴメン スミマセン股又誤字が。

≪特殊欲情≫ やのうて ≪特殊浴場≫ ですねん、カンニンしてね。
ウットコのパソコンチャン、ケッコウ新品なんやけどぉ、コノゴロぉ変換ミスが多いなぁ・・・・・マッ、エッカァ。

ぁッ!、チョットお話がぁ、横道に逸れチャッタ。 ゴメンネ

今までのお話はね、作者の妄想から生まれた創造やからね。
クレグレモ其の筋の関係者のお方々。  どぉか誤解などが御座いませんように。


ッで、表通りから一つ奥まった路地裏にと行く、入口角辺りに建つ電信柱なんかにね、タイガイ吊るしてはった。
案内看板と言うにはチョット小さすぎる、長年雨風に晒され木肌の色が灰色に変色した板にはね。
ケッシテ此の先、あなたの【連れ込み旅館】が御座います。 ッテなぁ絶対にぃ記していません。
マッタク宣伝ナンかいたさなくっても、人知れず好き者なエロゴト愛好家にぁや、アッ其処だよと分かっていたのが、

昔の男女の逢引場所、【連れ込み旅館】 やった。


互いに想いを寄せあい、好い仲の恋人ハンラ、人の目の届かない二人だけの隠微な世界を、ぁッチャウッ!

トッテモ静かで、人として落ち付いて素直に愛を語れる場所です。 ハイ

そんな居場所を求めては、ウロウロと町中をキッチリ腕組んで彷徨い漫(ソゾ)ろ歩きいたします。
ですけどね、他の歩行者さんらの目が差しますからね、ナカナカッ連れ込み旅館玄関前の暖簾も潜れません。
ですからね、旅館の前をナンとなく何回も行き来しては過ぎますねん。 腹立たしくってもね。
ッデ、タマタマね、歩く人の影がぁ 【連れ込み旅館】 っの前で途切れるのを見透かしまして。

女が、 ぁッ!も、 ぅッ!もっ、 ましてや 「ぁれ~!」 

ッテなぁ言う間もなく、女の手首を掴んでか、組んでた腕のそままで。
素早く暖簾片手で掻き分け潜り、玄関の引き戸ぉ素早く開け 【連れ込み旅館】 内へご突入。

ヤットの想いで入れば、玄関框前では案内のババァとしか見えない仲居に即され、
靴をスッ飛ばすように慌ただしく脱ぎますねん。
ッデ、ウット暗い廊下を、女を引きづるように力強くエスコートで、お宿の奥にと突進いたしハッタ。
突き当りの二階への登り階段。 一回ぐらいは脛を階段角に、激しく音発て打ちツケ登ります。 キット

コン時の老いた仲居サン。
タブンやけども朝陽が昇る前に起きはってやろなぁ。
一生懸命に頑張って、手慣れの左官職人みたいに白粉塗りタクッテ可也な厚化粧しはっても
絶対に他人さん泣かしもっての、気苦労な人生を重ねた歳をね、隠しようがない。
そんな皺苦茶(シワクチャ)ぁ塗れ顔の、見るからにヤリ手婆ぁ風な仲居が言います。

「宿帳に、お名前をお書きくださいな 」 ット。

ッデ、アンタハンラドナイ観ても夫婦もんやないやろも。 世間じゃぁ隠し事な為さぬ仲の好きモンども目ぇ~!
ッテなぁ想いを込めた、ニンマリした微笑み向けてきますねん。 キット

隣との境の襖を開けた次の間には、キッチリ派手目柄な市松模様のお布団が二つ並べて敷かれてる。
枕元には、明かりを灯せば卑猥で隠微な感じんになる、桃色の布製の傘を被せた電球スタンドが置いてありますわ。
昔の日本髪の遊女が、口に銜えて此方を下から上目づかいに観てきたら、
先ほどまで、息咳き切って頑張りお励みになりハッテ果てゝしまい、
グッタリ萎えはった御分身の下のおブツもね、即効回復するかもぉぅ。
ッナ、千代紙がキッチリ畳まれて、漆塗り盆上の模造クリスタル硝子の水飲みセットの横に。

ナニも知らずに無理やり宿に連れ込まれた女が、訳も分からない内にぃ。
スケコマシのアンチャン、アラン限りの特殊技巧と、女泣か性の道具を用い。
ウット暗い隠微な風情がイッパイの、寝間の中にゃぁ・・・・・・ キャッ!


「もぉえぇッ! 止めてんか○○サン 」
「なんや! こっからが核心やのに 」
「ボケか、此処には未成年も居(オ)るねんで 」

「マスタァ、ウチのことぉぅ 」

「お前以外に此の店の何処に居るんや ドァホッ!」

ッマ、何処かでコノ好きモン客の喋るのを止めないで此の侭ホッタラカシにしていると。
タブン明日の昼までくらいは淀みなく、延々とツレコミのお話しを何処までもと続けます。

此の客。 実はワテの昔からの知り合いです。
ワタシにとってはとても大切な恩人にあたる方ですけども。

注釈:【恩人:パトロン、後援者、タニマチ、金蔓:カネヅル、歩く金満金庫、篤家、稀有な存在。 っのドレかかな?】

話題が自分の得意分野 「大人のお話的会話」 なんかになりまと、俄然おハマリいたします。
トッテモそんな時の物言いぃが、素直すぎると言いますか、呆気羅漢(アッケラカン)過ぎまして、困ります。

「マスタァ、ナンで聴いたらアカンのぉ?」
「ぁッアカンってぉッお前ぇ、ぃッ今聴かんでも大人になれば解ることや 」

大人の話を訊きたがる、耳年増なコイツがウットコの茶店でアルバイトしだしてから、三か月目ぇになってた。
ふたりで (正確にはもう一人おった) 川でズブ濡れになったあの晩から、
ナンとなく互いに、大人と子供なんだと遠慮しあう垣根が、消えたみたいでした。

「ほぉやで、此の娘かてどおせ覚えることやがな、なぁ 」
「ぅん。 マスタァ、オッチャンかて、訊いてもえぇゆうてくれてはる 」
「ボケッ!お客様にぃオッチャンはないやろも、ダボォ~!」

「ホンデナ○○チャン 」
「ぅん 」
「オッチャンなんかなコナイ観えてもな、若かったコロにゃぁオナゴニきゃぁきゃぁ言われてたんやで 」

「ぇ~! ホンナン嘘やぁ~!」

「ナンが嘘やねん、モテモテで毎晩掛け持ちしてな、パンツ履く間もないくらいやった 」

「パパパパッぱ、パンツ履く間もないッテ ○○サン、もぉ堪忍してぇなぁ!」

ナンぼ恩人でも、子供にナニを吹き込むネン! ダボォ~!



ぁれぇ?

モット違う、シリアスなお話に為る筈ぅ、やったんですけどなぁ・・・・・マッ エッカぁ 

次は、元のお話しに戻そうかなぁ



  ホナ、バイバイ







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夢想崩れ。(イケナイアルバイト)

2008年08月29日 00時28分24秒 | イケナイアルバイト (仮題) 
T3年生イケナイアルバイト。 (5) (最初の1話目)




(夢は夢。)

「おとおさんッ!おとおさんッ!おとぉおさんぅ。」

「ぁ、どないしたんやぁ、何処に居(オ)ったんやぁ 」
「ぉとおぉさん、おとおぉおさんぅッ! 」
「ナンや、どないしたんや、お前ぇどこにおったんやぁ? 」

胸の奥の何処かで、何かが透明に為りかけていました。
意識もしないで求めた暗さは、自分を隠すまで待ってはくれませんでした。

図らずも陥ってしまった暗闇は、其の透きとおる黒色で自分を優しく包み込んで、
忘れることなどしたくもなく、ただ想い願うだけの透明なものを奪おうと。

だから忘れることも叶わなかった。



(墜ちたら)

最初。自分がどうなったのか分からなかった。
アイツがお百度参りの橋から身を投げそうだと。
ッデ、駆け寄って引き留めようとしたら、自分が墜ちてしまった。

墜ちるまでの僅かな時間、チョット心が時メイていた。

(ナンや、簡単なんや)

心で想っていました。



(水の中から)

重たい水の冷たさは、自分の躯全部で感じていました。
水の冷たさで知った、醒めていなかった酒の酔い、如何しようもなく心地好いものでした。
水の中で視えるはずのないものにナニかを呼び掛けると、
自分の動かす口からは泡(アブク)が連なって出ていました。
声にならない声でした。

息は苦しくはありませんでした。 だから此の侭、深間な処までと希望していました。



(悪いのはウチ)

ウチは、自分が落ちるとばっかし思うていました。

掴んでた欄干から手を放すと、ナンだか眼の前の時間が真っ黒でユックリしてた。
ウチは放した手で空中の何かを掴もうとしていたと思います。
モシあの時にその何かを掴んでいたら、キットこぉぅ思っていたと思います。

あぁ、ヤット終わるんだぁ。やっとぉ。

そしたら、スカートの腰の辺りを抱っこされるみたいにされ、引き戻されました。
頬ッペタを叩かれたのは後まで憶えていたけど、どんな風にマスタァが落ちて行ったのかは分かりません。
暗かったし、ウチはあの時、どう言えばいいのかぁ?

心が何処かに在るような感じヤッタんです。

ザブン!ッテ 水の音がしたから橋の下を覗いたら、暗くて何も見えませんでした。
なんがあったのかと辺りを見たら、マスタァが居りませんでした。
タブンですけどわたしは頬の痛みから、マスタァはウチを叩いてそのまま落ちたんやと思います。
近道したあそこの橋の上まで、マスタァの後からついていってたけど、
暗かったけどマスタァ、脚がふらついてたのは知ってた。

あの人ぉなんだかぁ、悪酔いしているみたいヤッタんです。

今でも時々ウチは、あのままウチが落ちていれば良かったんだと、想うことがあります。
そんなとき、マスタァが落ちて死ななくて良かったとも、想います。
人って、アンガイ簡単に死ねるんやわぁッテ思います。

簡単に死ねるんだと解ると、簡単すぎて怖いです。
だから死に方を恐ろしくて、あれ以来アンマシ考えへんようになりました。

ッテ。 アイツ随分後で、ワイに言いよった。



(酔夢から醒めた)

突然、顎を何か力強い物で摑まえられるように支えられると、グングン上へと持ち揚げられ、首が水面にと浮かび上がった。
すると、「おとぉさんッ!」 っと叫ぶアイツの声と、湧き立つ水飛沫の中、知らない男の怒鳴る声が。

「アホッ!サッサトアッチへいかんか、コイツぉもってゆくさかい 」

耳奥に詰まった水のせいで、何処か遠くの彼方から聴こえてきているようだった。
自分、無意識に顎に掛った男の掌を外そうとしていた。

「ァホッ!動くなっ、泳ぎ難くぅなるわ、ダボっ!」

怒鳴られたので、顎を引っ張られる力に任せジッとした。
冷たさを感じなくなった水が時々顔の上を覆いながら、何処かにと引っ張られていました。

「おとおさんッ!おとおさんッ! おとぉぅさんッ! 」
「アッチへ行けゆうとろおもん、いかんかッ!お前も死にたいんかボケッ! 」

水が顔の上を流れ過ぎ、その度に水の中で眼を開けると水越しに、銀色に星が瞬く夜空が観えていた。
星の輝きを眺めながら、何処かにと身を任せていたら気づいた。
未だに心に透明なものが残っていることに。

そしたらまた堕ちました。
今度は吐き気催すような、最悪な気分の暗闇の中にでした。



(知らない男かも)

「ァンタらなんやねん?ドナイするつもりヤッタんやッ!」

怒鳴り声な物言いぃを、激しく揺れる車の後部座席で横になって聞かされた。

「止めてくれ 」
「喋るなっ!ドアホッ!」
「ぉとおさん、気がついたん!」

「なんや、ドナイなっとんや 」

「心中崩れや、お前ら 」
「違います、ウチが落ちたさかい助けようとしてくれたんです 」
「・・・・・・・ホンナラそいでえぇがな、ッタクゥ!」
「止めてくれッ!」

突然、軋むような急ブレーキ音がし、躯が前に飛んで前席の背もたれに当たると、
狭い後部座席との間の隙間に、挟み込まれるような感じで嵌った。

「ダボがッ!ナニ偉そうにゆうとんや、死に損ないがッ!」
「ボケッ 此処で吐いてもえぇんかッ!」

此の時ワリと元気な声が出たので自分、驚きました。

「ナニぃ?」
「ゲロやッ 」


後部扉が勢いよく開き、両足首を掴まれ力強く引っ張られた。
ドライブシャフトの山で頭を打ち、ドアの敷居部分でも後頭部を打った。

背中から地面に落ちた。 直ぐに気合を込めた短い声が飛ぶと横っ腹を蹴られた。
アイツの、「ナニしますのっ!」 っと叫ぶような悲鳴言葉が聞こえた。
全身に鈍い激痛が奔り、息つきがし難くなった。

「おとおさんにナニするんよっ!」 抗議の声。
「煩いッ!黙らんかいッ!」
「ナンで蹴るんですかッ!」
「蹴ったほうがよぉけ戻すんや、ダボッ!」

男が忌々しげに言ったのは、ホンマやった。
飲んだ川の水と今夜飲んだ酒、此れでもかと喉首筋を引き攣るようにさせ、ギョウサンゲロった。
道に腹ばいで側溝に首を突っ込むようにし、呻き痙攣しながらゲロ吐いてたワイの背中。
アイツ優しさで撫でてました。自分もぉぅ泣きそうやった。

「お前ら、ホンマニ親子か?」

男の訊き方、如何にも仕方がないわいな、ッテな感じの声でした。

「おとぉさんですッ!」
「お前と、オトンっの歳が合わんやろも 」
「おとおさんなんやってッ!」

「ホンナラそいで、えぇがな 」

男がワイの傍にしゃがむと、言ってきた。

「アンタ見たことあるわ。」

返事の代わりに、男の靴先にゲロってやった。
男、慌てて後ろに飛び退ると、足を後ろに引き想いッくそ蹴ってこようとした。

「止めてっ!」 アイツが男の脚に抱きつくように縋った。

アイツの着ている服、ズブ濡れやった。
濡れて肌に密着しているのが、通りすがる車のヘッドライトに照らされていた。

「抱きつくな、ボケっ!濡れとって気色悪いわ 」
「蹴らんといてくれるん?」
「分かった、もぉぅ蹴らんがな離せや。 」


「済まんけどな、戻ってくれんか 」
「ナニゆうとんや、医者に行くんが先やろも」
「おとぉおさん、病院いこぉ 」
「えぇねん、悪いけど戻ってくれや 」
「気分はドナイやねん?」
「吐いたらダイブよおなったさかい、医者はもぅえぇねん 」

「ッチ!死に損ないが偉そぉに、えぇわ戻ったるがな 」


(疑惑)

「アンタ、ナンであないな所に居ったんや?」
「ナンヤ、助けてやったワイになにゆうんや。」

「痴漢か、アンタ?」

微妙にハンドルが振れ、車体が微かに揺れた。

「チカンなん?オッチャン。」
「ァホ!チャうわいっ!」
「ホナ、ナンであないな時間に独りで神社の森に居ったんや 」 

「ナンもないがな、お前ら助けてもろぉてナニゆうねん 」

「オッチャン、ナンであないなトコに居ったんぅ?」
「アンタ、覗き魔やろ。」

「お前らぁ 」




流れ任せな夜の為せる出来事は、時々です。

想わぬ悪さを仕出かします。




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In a dream 

2008年08月23日 03時30分05秒 | イケナイアルバイト (仮題) 
T3年生イケナイアルバイト (4)



(夢の中)

白木のカウンターにとまると、何時ものように白磁二合徳利の熱燗が、食い物を注文するより先に出てきた。
最初の一杯は、カウンターの向こうから割烹着七分袖の腕が伸びてきて、目の前に置かれた熱燗用耐熱硝子コップ
五分目少々だけ注いでくれる。

逸る呑みたさで口にコップをと運ぶと、鼻腔に酒の芳しさが。
チビリっと舐めると、舌に燗酒の熱さな旨味が沁みた。

隣の席ではアイツが身体を捻って後ろを見上げていた。
その横で大女将が、穏やかな優しい眼差しでアイツを見ながら、
壁に留められ並んだ御品書きが描かれた木札を指差し、食い物の説明をしてくれていた。

猪口を舐めもってアイツの幼い背中を観ると心の中が騒ぎ出し、
忸怩たる後悔する想いで溢れそうに為ってきた。
今夜、此の店にコイツと着たのは間違いだったのかもと。
夜更けた晩に、他に事情があろうとも、未成年の者を連れまわす罰が当たったなぁ、とも。

「なぁにぃちゃん、その娘(コ)ぉはアンタのなんや?」

案の定、自分の左隣の男が訊いてきた。
最初、此の店に入ってきたときから、興味シンシンすぎるで。っとな目ツキ顔まるだしやった。
自分普段なら、この男とは此の店の客の中でもケッコウ仲のいぃ方だったので、
訊かれたことには素直に応えていただろう。
タダ今夜は自分でも、自分の意識が如何にか為り掛けているのに気づいていた。
今夜、幾度となく口に含んだ酒の酔いも手伝い、ナニもかもが厭になり、

ッチ! ダボが。 要らんこと訊いてドナイするんやッ! っと少し凶暴におなりかけ。
だからもぅ、訊かれたことに応じるのも億劫になってきていた。

「ワイの娘やがな、ナンか用なんか。」
「ぃや、よぉッテ、なんも無いわな 」
「○○ッ、お前に興味があるんやッテ、挨拶したれ 」

(注:ホンマの名前なんか言えません。マシテ仮名なんかで言いたくない。)

「ぇッ、ぁッあいさつですかぁ 」

「そや、したれ。 ホンナラこの人かて得心するさかいな 」
「なんでウチが挨拶したらえぇの?」
「ムスメがなんで挨拶せなアカンねん。ゆうとるんやけどなッ! 」

「ぇッ、なんもワシ挨拶してくれ言うてへんのやけど 」

「挨拶せんでもえぇねんて、ホレ、サッサと食いな 」
「ぅん。」

「なんやねん、エライからむやないか、どないしましたんや 」
「済まんな。娘と久しぶりなもんやさかいな、何方さんにも邪魔されとぉないねん 」

自分この晩、頭の中の意識は酒の酔いに負けていた。
酒精に痺れはじめた意識の何処かで、ユックリト透明になりかけている物、ありました。

カウンターの中で人の吐く薄紫の煙草の煙が、人の頭の高さで棚引きながら店の奥の厨房にと。
意思があるように漂うその紫煙を眺めながら、透明に為りかけてるものがマッタク消え去らないようにと、
有線の低い音量に絞った流行歌(ハヤリウタ)聞き入ってるフリし、此れ以上ヨッパラッタら駄目だと。
胸の中、足掻くような感じで必死で堪えていました。


「帰ろぉかぁ 」

そぉっとワイの肘をツッツきながらやった。

「ギョウサン食ったんかぁ 」
「ぅん。 」
「かぁちゃん、腹空かして帰ってくるんやからナンゾ購(コオ)て帰えろか。」
「要らんッテ言うよぉ 」
「なんでや 」
「寝る前に食べたら太るッテ 」
「あないに細いやないかぁ、なんでや? 」
「ぅん、前と比べたらよぉ痩せたさかい、もぉ前みたいに肥りとぉないゆうとったぁ 」

「ナンで痩せるんや?」
「ぇッ! ナンでぇッテぇ 」

言葉に詰まり、ワイを見上げてた視線が泳ぎながら逸らされ顔を伏せた。
自分、直ぐに気づいた。もぉぅ酔いが吹っ飛びそうやった。
ホトホト自分の料簡のなさにはぁッと、舌を噛み切りたいほど後悔し情けなかった。
人が痩せるゆぅたら、況してや肉体労働なんかしたこともないような女が痩せる。
原因は重い病か、ヨッポドな気苦労で精神的に参ってしまう、痩せるしかなかった。

「ホナ、帰ろか 」
「ぅん 」



(お百度参りの時に渡る暗い橋の上で)


ふたりで夜を見上げると、月はなく深い紺色の空に星が低く輝いていた。

「家まで送ったろ 」
「えぇわぁ、独りで帰れるぅ 」
「此処らは痴漢が出るねんで 」
「ぅん 」

コイツが母親とふたりで住ん居るのは、川向うの国鉄線路近くの借家だった。
近道で、車が行き交う本通りを歩かずに、田圃の中を突っ切ることにした。
あの頃は、今なら何処にでもあるような防犯燈なんか整備されておらず、
夜中に表通りから狭い路地裏に入ると、足元も覚束ないような暗さだった。

「ホレ、手ぇ引いたろ 」
「ぅん 」

後ろに伸ばしたワイの腕に追いつこうとする幽かな足音がした。
手先に何かが触れたので掴むと、白布(キレ)巻いた手首やった。
放して握り直すと、冷えた小さな手ぇやった。

古い民家の土塀に挟まれた路地は直ぐに終わり、黒い影の田圃が広がる処に出た。
其の黒影の中の農道、舗装されず土が剥きだしだったので、夜目にも仄白く浮き上がっていた。


川向う、田圃の中のコンモリとした鎮守の森。
其処の小さな社に祭られているお稲荷さん。

その神社に此方側から川を渡って行くのに戦前から架かっている、
人の往来がやっとなほどの幅しかない、昼間観ると元の朱色も剥げ落ちた古い橋を渡っている途中、
後ろから付いてきてるはずのアイツの足音が急に聴こえなくなった。立ち止まって振り返った。
アイツ、橋の袂の対の木燈籠の仄かな燈明の陰になり、黒い影で橋の外の闇に浮き上がっていた。
橋の真ん中あたりの欄干に手を添え、暗闇に身を乗り出し橋の下を覗いてた。

「なんか居るんか 」
「観えないよぉ 」
「そっか、暗いさかいな 」

「ぅん 」 っと、返事はするけど、身は乗り出したままだった。

暗さを見透かし暫く影を眺めてると、ナンだか不吉なものを感じた。

「ナンヤ、もっと此処に居りたいんか?」
「ねぇマスタァ、コッカら飛んだらドッカニいけるかなぁ 」

自分、咄嗟に息を呑み、アイツの問いに応えることができなかった。

「ドッドッカって?」

「マスタァ ずっるいわぁ!」
「なんがや?」
「ウチがナンか訊いたら、イッツモ逆訊きする 」
「ソッそぉかぁ 」
「ぅん、する。」

「そぉなら、ワルカッタな 」
「マスタァ、ウチぃ誰に認めてもろぉたらいぃんやろかぁ 」

「ぇッ! 」



夜は 暗闇は 暗さで包んで視え難いもんやけど 人の心は隠してはくれませんでした


今でもね、あの時にアイツの影がね、黒い中に堕ちて逝く夢を見ますねん。






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忘れ物な世渡り。(イケナイアルバイト)

2008年08月20日 17時37分59秒 | イケナイアルバイト (仮題) 
 
T3年生イケナイアルバイト。 (3)



(違う意味での邂逅。)



「ホレ、なっ判るかぁ 」

っと、問うても顔を此方に向けず、黙ったままで丼から食い物を箸で摘み上げていた。
だから、自分の左手の甲を目の前に突きつけてやった。

「なんですかぁ、此れぇ?」
「火傷の痕やがな 」

アイツの箸の動きが止まり、ワイが手を引っこめると、視ていた手の甲に釣られ顔をあげた。
古傷の火傷痕は、今ッデは時が経っていたので、表面はツルンっとした白ッポイ丸さで、左手の甲に残っていた。
パット見には、一円アルミ硬貨くらいの白い斑点みたいだった。
其れは、酒を飲んだり何かに興奮して躯温が上がると最初は薄らとした赤みが差しだし、暫くすると真っ赤になった。

「ヤケドって、こんな風な白いんかなぁ?」
「イッパイあるやろ 」
「ぅん、小さいのがイッパイぃ、どないしはったんですかぁ?」
「若い頃にな、悪タレもんらに舐められへんようにやったんやで 」
「ナメラレへんよぉってぇ、意味が判らへんわぁ 」

「根性焼きやぁ 」
「ふぅ・・・・・・ン、熱そぉやねぇ 」
「ぅん、熱いがな。 そやけどな、熱いけどせなアカンかったんやで。」
「なんでぇ?」
「こんなショウモナイもん見せて、なんもアンタニ自慢してるんとチャゥさかいにな。」
「ぅん、わかっとぉ 」
「ただな、コンナンするんも自分の表現の仕方やった想うねん。」
「ヒョウゲンぅ?」
「やった時の若いころは、なんも考えんかったけどな。」

「今やから想うんやけど、誰かに自分を認めて欲しかったんやろな。」

「アンタの手首かて、そないに切りまくるんも此れとおんなじやろ。 違うか。」

「ァホっ、酌なんかせんでえぇがな 」

子供が徳利の首ぉ摘まんで、ワイの目の前のコップに注ごうとしていたのを、
白布(シロキレ)巻き付けた細い手首を掴んで止めた。
咄嗟なことだったので、想わずな強く握りをしてしまった。

「ハイッ 」 脅え声で   

「ぁっスマンスマン、おっきい声だしたな、ごめんやで 」
「ハイ 」
「あんな、店出たらな、ぅんでえぇねん 」
「ハイ 」
「・・・・・・なっ、ぅんでえぇ、ゆわんかったか、なッ 」
「そやかて、マスタァは大人やし、ハイでいぃんと違いますぅ 」

「・・・・・好きにしたらえぇわ 」


場所は、自分が店が終わってから、いつも帰りに寄っていた、飯屋 
(ット言うか田舎作りな衣酒屋風ヤッタ)。
ナニかコイツにえぇもん食わせたろぉ想っていたけど今みたいに、
深夜営業しているファミレスがあるような時代じゃぁなかった。

夜更けて開いてる店といえば、深夜営業の大人相手の呑み屋か如何わしい風俗店ぐらいでした。
幾ら今夜が土曜の晩でも、小娘連れて入れる店も限りがあるもんやから、
自分が普段から馴染みにしている、知り合いが遣ってる店に。

「えぇか中に入ったらな、ワシのことぉ、オトォさんって呼ぶんやで、判ったな 」
「ぇえ~!ッそんなん嫌やわぁ 」
「ぁほぉ、コナイナ夜中にお前を連れて中に入ったらな、ワシがなんぞ悪さを仕組んでる想われるがな 」
「ホナ帰る 」
「店のタイショウは知り合いやけど、客の中にはナンでも詮索したがるもんも居るがな。そやから便宜上や 」
「ウチ帰るわぁ 」

「判った。イネや。もぉうえぇ 」

「ぁッ、怒りはったんですかぁ?」

聴こえたのは少し慌て気味な声だったのを無視し、表の暖簾を掻き分け引き戸を開けた。
背中で引き戸を閉じてたら、チョットヤケクソ気味なんが聴こえた。

「なにするんよぉ、おとぉさんぅ締め出さんといてぇ!」


自分、心でほくそ笑みしましたがな。
幼気ない小娘を、上手に手玉に取って操縦するんも、ホンマニ疲れるわぁ!

 ヤッタ。





「ぉッ!あんたハンもとぉとぅ、幼女趣味に走ったんかぁ 」

っと、白木のカウンターに座る間もなく飯屋のタイショウが言ってきた。

「ハイハイ、走りますがなどこまでもなぁ 」

自分、隣の席にアイツがよじ登るようにしながら座るのに、椅子が安定するように押さえていた。

「幼女ッテ、ウチのことやろかぁ?」 娘ッコ。

「子供は他におるんかッ! 」 傍らの見知った客。 此の店ウチ(内)だけ限定の呑み仲間。

「ぇらい見んうちに大きゅうなったなぁ 」

っと、シミジミとアイツを眺め、ナニやらな感慨を込めて言いながら、奥から出てきたのは此の店の大女将。

手には店の屋号が手書きの墨文字で、殴り書きしたような大きな湯呑を載せた茶色い手盆。
大女将の小皺が刻まれた手、年を重ねても元は白魚みたいな、綺麗な肌だったのが分かる細い指だった。

盆の縁のニスが所々剥げ落ちていた。

「ェッ、ウチとおぉたこと(会ったこと)ありますのぉ?」
「ぁれ、覚えとらんの?バァバぉ 」
「ぉかぁはん違いますねん、コイツは〇〇と。」

「ホッ、そぉなんか?」

ッデ、タイショウが肴の小鉢をワイの目の前に置きながら、助け船を出した。

「観れば判らんかぁ おかぁさん、ちょっとオボコすぎるんチャウかぁ、まぁコレやろぉけどな 」 小指を立ててた。

「ぁほぉ、ゆわんとき、ァテはそないにボケておらんわ 」

おかぁハンを宥めようと喋りかけたら、肘を突かれた。

「○○って、誰なん?」
「ぇッ!ソッそんなん、知らんでもえぇ 」

「・・・・・・ぅん 」

「好きなんゆうてナンぼでも食うたらえぇさかいな、遠慮したらアカンで 」
「ぅん 」


自分、泣きそうやった。



忘れもんが多かった自分の人生、少し呪かけた。





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自傷癖(イケナイアルバイト)

2008年08月19日 17時48分24秒 | イケナイアルバイト (仮題) 

T3年生イケナイアルバイト(2)
 


(母親)


或る日の昼下がり、アイツの母親が訪ねてきた。


「ぁッ、おかぁさん済みませんッ!娘さんをお許しもなく勝手にバイトさせてしまって」 
「ぁッ好いんですいぃんです、コチラこそ娘がご迷惑をお掛けして申し訳御座いませんぅ。」

実は母親と会話したのは、此の時が初めてでした。
何回か店には娘が居ない時間、夕方近くお客で訪れていました。
タブン母親が出勤前に、ウチの店の様子を窺いに来ているのだろうとは想っていました。
だけど、自分も此の人も娘のバイトのことには触れもしませんでした。
自分はなんとなく、母親が店に来るたびに座りの悪い心地がしていました。

この日は、何時もの夕方頃じゃぁなく、珍しくも昼下がりでした。
お顔の感じは夕方の出勤前みたいな、お水系の化粧がしていない殆ど素ッピン顔状態やった。
夜勤め女の普段の想いを隠す、綺麗系の化粧じゃぁなかった。
観ていても上品な感じで、人前で恥をかかない程度の化粧でした。

「あの子ぉ此処でお世話になった頃から、チョット変わってきたんですよぉ。」

以前は学校には滅多と行かず家に籠りっきりで、母親の私とも口をアンマシ利いてはくれなかった。
此の土地には、私が離婚してから引っ越してきたので、周りに友達もいなくて寂しい想いをさせていた。
今の学校ではナカナカ馴染めなくって、タブン苛められているのかも。
っと、気持の中に何かを溜めこんでいて、今ならその何かを話した方がぁ っとな物言いでした。
話の途中、奥の席に他の客が座っているのに初めて気がついた様な感じで、口を噤んだ。

サイフォン用の攪拌竹ヘラで其の客を指し、言ってやりました。

「アイツぅ気にせんでよろしいです、客とチャイますわ友達ですねん。口は滅多とおらん堅い方ですさかい、なぁ 」
「ぉッおぅ 」
「スミマセン、変なお話を聞かせてしまって、ごめんなさい 」
「ぁッボボッ僕ぅ、なぁんも聴いてませんから、キィ気ぃにせんといてください 」

自分もそうですけど、普通の人さんと会話する時には、コンナ場合タイガイ無理して丁寧語で喋ろうとします。
だけど普段、滅多と話さない言葉が急に頭に浮かぶはずもなく、突発性吃音状態まるだしですわ。
友人も丁寧語など言い難い事この上なく、直に読みかけの新聞に目を落とした。

「ぁのぉぅ 」

母親は何かを言いかけるが、思い直したのか喋るのを止めた。
暫くの間は店の中には静かさがおった。
珈琲を淹れていたので、沸騰するサイフォンがポコポコ鳴っていました。
其れと、アルコール燃料が燃える匂いもしていました。
日頃は、そんなものは気にもかけなかったけど、この日はぁ・・・・・

チョットなぁ、此の母娘にぃナンがあったか知らへんけど、如何にもなぁっと。
自分、サイフォンから漂ってくる珈琲の匂いを嗅ぎながらでした。

アルコールランプの火加減を見る振りをして奥の席の友人を視た。
友人、スポーツ新聞を広げていたけど、母親を横目で盗み見していた。
アルコールランプの炎越しに、目が合うと顎を母親の方に小さく振った。
ッデ、サイフォンを攪拌しながら話しだそうとすると、切迫する感じの声が先に聴こえた。

「それとぉ危めるんです 」
「アヤメルぅ?」

「自障癖があると、精神科のお医者様がぁ・・・・」

真夏の蒸せるような暑い中でも、長袖しか着なかった娘の左手首には、いつも白い布(キレ)が巻き付いていた。
時には白布の上から、タブン自分で編んだのか、安物ビーズ作りのカワイイ腕輪がしてあることも。
ドンナ客商売でも、不穏な何かを感じさせるものは御法度です。
誰が見ても、年がら年中左の手首にサポーターじゃぁあるまいし、包帯を巻き付けてるとぉぅ。
世間の人間は、アンガイ見ないようで観ています。人の何かをと詮索する目で。
だけど自分、そないなんマッタク気にもしませんでしたから、娘に外せとは言いませんでした。


母親に聞くまでもなく、左手首のことは自分知っていました。
暫く前、店がハネる頃(閉店間際)に、コンナ事がありました。

「それナ、切ったんか?」
「ぇッ! 」

急な問いの返事に詰まり、顔がチョット虚(ウロ)ってました。


最後の客が引け、椅子を後ろの壁際に退かし掃除を始めようとしていたアイツをカウンターの中に呼んだ。
中に入ってきたアイツから箒を取り上げ、食器を洗えと言ったら少し困惑顔をした。
ッデ、自分、ワザと言いました。手首の布(キレ)が濡れるから外せ、っと。
アイツ、本当に困ったような表情のコッチを上目視線でした。
自分、知らんフリしてカウンターの外に出て、掃除を始めました。

「ナンで煙草の灰ぉ、絨毯の上に落とすんかなぁ、ダボめぇ!」
「マスタァ、汚いのにねぇホンマニもぉぅ!」
「自分チノ畳の上にぁ、よぉ落とさんクセして余所でするんがイッチャン悪質やッ!」

ッデ同時に 「ダァボォゥ 」 っとハモりましたわ。

塵取りを取りにカウンターの中に戻り、アイツの後ろを通ろうとすると、アイツ背中で隠そうとした。
其の背中を向けるやり方が気になり、流しの中を覗くと、両の手を洗剤の泡のなかに埋めるように浸けていた。
だけど、手首までは隠せてはいませんでした。
泡を手首に無理にとくっ付けるようにしていたけど、隠しようがなかった。

「それナ、切ったんか?」
「ぇッ! 」

「返事はぁ? ナンか言わんかっ切ったんやろも 」
「ハイ 」

聴こえんほどの微かな返事やった。

「コナイナときにはな、ぅんでえぇねん 」
「ぅん 」
「いとぉ(痛くは)なかったんか 」
「ぃいやぁ、いとぉなかった 」
「ホンマか?」
「ぅん 」
 
「いとぉないってなぁ、心はなぁんも痛まんかったんか 」
「エッ!」

「なんも感じんと我を切るん、難しいぃんやけどなぁ 」
「ぅん 」

アイツ真っ青な顔を俯かせ、チョット躯がフラツイテた。

左肘掴んで、ユックリ泡から引き出してやったら、細っこい手首から肘にかけ、
何箇所も赤細い傷痕が走ってた。 古いものは赤褐色に変色していた。
流石に血管が浮き出ている内側辺りには傷痕は少なく、親指の付け根、手首周りが一番多かった。
良く視ると、シャツの袖を捲りあげた右腕にも、数は少なかったけど同じような傷痕があった。

「ヨッシャ今日は土曜や、ナンかえぇもん食いに行こか、なッ 」
「ぇッ、ゥチぃお腹ぁ空いてませんぅ 」
「ァホぅ、コナイナ状況で帰す訳ないやろもぅ、付き合え 」
「行かなアキマセンのぉ 」
「ナンヤ、夜中にドコゾのしょぉもないモン(者)と逢引でもする気なんか 」
「おッぉ、おりませんぅ! 」

「ホナ、つきあえ 」


店仕舞いが終わり、表通りに行くまで互いにナニも喋りませんでした。
そやけど、無口やけど、なんかぁ通うもんがあるなぁ ッテ。
まぁワイの勝手な想い込みやろうけどなぁ。

流石に土曜の深夜は走る車も多く、普段なら店が引ける時刻なら街燈が少ない此処ら辺りは、
痴漢騒動が多いくらい随分と暗いのが、切れ目なく走ってくる車のヘッドライトに照らされ明るかった。

肩越しに振り返ると、後ろから付いてくるアイツの幼顔の頬ツペタ。
サッキは真っ青やったんが赤みが差していました。

自分、此の時不意に想いました。

あぁ、ボクって優しいぃなぁ。ット 



ダケドモ直ぐに、用心せなアカンなぁ・・・・・トモ






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T3年生イケナイアルバイト。

2008年08月18日 15時59分20秒 | イケナイアルバイト (仮題) 
  

(乙女の涙)


昔ぃ、カウンターだけの小さな喫茶店ぉやっていた頃、近所のトアル女学生が蒸し暑い夏場になると、
一杯のアイスコーヒーで、客が居ようが居まいが関係なく、ネバッテいました。ホトンド毎日。
朝から晩まで日中(ヒナカ)通してカウンターの一番奥の席に居座ってた。

(ホンマは季節に関係なく、店に入り浸っていた。)



「マスタァ お家でナンかぁ聴くのぉ?」

ット、カウンターの向こう側から、無教養な自分にはマッタク何が何やら訳のわからん参考書を、
広げた帳面(ノート)の上に放るように投げ出し訊いてきた。
言い方はいつもの上目づかいで、大人を嘗め切ったような為口調でした。

「ナッなんかッテなんがや 」
「歌ぁ 」
「聴かへんわ 」
「聞かへんわッテ、モット言い方があるのと違うぅ、お客さんやでぇウチぃ 」

ッデ当時、客に出す珈琲はサイフォンで淹れてましたので、点てるときに茹だったコーヒー豆を攪拌するのに使用する
手製の孟宗竹で作った竹ヘラで、カウンター上の真っ赤なプラスチィック筆箱を軽く叩きながら言ってやりました。

「どこぞの客がコナイなトコ(カウンター)で勉強するんやッ。 ァホか、ッチ!」 っと。
「なぁんもぉぅ邪魔してないさかいにぃえぇやん 」

「ッチ 」

「ココぉ涼しいぃやろぉ、はかどるんよぉ 」
「ナニがや?」
「お勉強ぉ 」
「ナン遍もゆうけどな、家でせんかい家で 」 (勉強をデッセ。)
「ヤッパシぃ家出した方がえぇんかなぁ、ウチィ。 」
「ェッ お前はドァホカっ!」
「アホッって今さらなんと違うんよ、判っとらんわぁオッチャンわぁ!」 

「ォッおオッおっちゃんッテかッ! ぉッ前ぇなぁ・・・・還さんかいッ!」

夕方近くで腹が空いてるやろと、サンドイッチ用の食パンにアイスクリームを挟んだヤツ出してやってた。
頭にキテその皿を引きあげてやろぅと、カウンターの上に手を伸ばすと逃げよった。
ナンも飲まへんかったら食べにくいだろぅから、お冷のコップに牛乳を注いでやったのを手に持ち、
スペシャル思い遣りアイスサンドイッチパン、口に銜え持って、座っていた椅子を後ろに倒し逃げた。

「アホッ!道具(勉強)もって帰らんか 」
「ソナイなもんいらんわッ 」 ット聴こえました。タブン。

小さな躯で入口の扉を押しながら、タブンネ。
口に銜えてましたからねもの言いはハッキリとは。

此の娘ッコ。 今で言う登校拒否症状だろうかぁ。
コイツが中学三年の時、通っている学校には内緒で時々ウットコの店でアルバイトしていました。
パット見ドッカ暗そうな感じだったが、知ってみるとアンガイ素直で明るかった。
バイト仕事の飲み込みも早く、忙しいときの手際がスコブル宜しかった。


コイツとの関わりは或る日の晩、客が引け店じまいする時刻に
空き巣や泥棒なんかよりもよっぽど巧く、コッソリと静かに店に入ってきました。

「スミマセンぅ、よろしいですかぁ 」
「エッ、もぅ看板消えてますやろ、終いですがな 」

人が店に入ってくる足音も、入口の扉が開くときの、錆びた蝶番が軋む歯の浮くような音もしなかった。
自分この時、下見て最後の洗い物していたので、突然暗いカウンターの向こう側から声がし驚いた。

此の時の娘の表情、緊張感丸出しだったのが、店内の照明を全部落とし、
洗い場真上のダウンライト光だけの薄暗さの中でも窺えた。

「ぁのぉぅマスターさんぅ、お願いがあるんですぅ 」
「・・・・・・サンは要らへんがな、なんやねん?」
「働かせてほしいんですけどぅ 」
「働かせろって、何処で?」
「此処ですぅ 」
「誰がや? 」
「ウチですぅ 」

「ウッウチって、ァッアンタかいな?」

夜更けに娘っコ独りでやで、此処ら辺りじゃぁアンマシ宜しからぬ噂しかせぇへんような、
ウラビレタ小さな茶店に入って着て、見知らぬ大人を捉まえてなぁ、働かせろッテかぁ?
コイツの温いドタマぁ(頭)、どないな料簡してるんやッ! ダボがッ!ぁ。

ット、第一印象はスコブル最悪の部類やったなぁ。ホンマニ。

「アンタ歳ぃナンぼやねん?ッテか学年は何年や?」
「中三ですぅ 」
「中ボウやったらバイト禁止やろが、ウットコは子供は雇わんし家のモンが心配してるがな イナンか(帰れ) 」
「誰も心配なんかせぇへんわッ!」

突然な感じの強い口調やったので、オッチャン、チョット驚きましたがな。

「ナニ言うてるんや帰れ、ダボがッ!」

自分、休めていた手を再び動かし、今度はワザと食器が割れそうな音たて洗い始めました。

「サッサト出てけッ!」

なぁんも言わんと、ジッと俯いたまま突っ立てましたわ。

まぁ、興味は湧いてきてました。
夜中に未成年の者が、然も子供みたいな娘ッコですからね。
自分の悪い癖で、何にでも頭を突っ込まないと気がすまない性格。
ホンマニわいもアホやった、要らんことする性分は騒ぎ事招きな禍の元ですなぁ。

「帰らんのやったら、ソナイなとこにボォ~っとしとらんと、ナンゾ注文せんかッ、ボケ!」
「ぇッ?」
「オッチャン忙しいさかいにな、チョット待っとれや、話だけ訊いたげるさかいな 」
「ぅ、ぅん 」
「ナンヤ返事の仕方も判らんのか 」
「ハッはい 」
「其処の公衆(電話)ツコウてえぇから家に連絡しぃ、此処に居るゆうて 」
「誰もおりしません 」
「ナンヤ誰も居らんってか?」

「おかぁさん、〇〇に働きにいってます 」

川向うの繁華街にある、水商売の店の屋号でした。

落としていた店内の灯りを再び点けた。 未成年者を暗い中で置きながら会話しているのを、
近所の口差がない者らに観られ、此れ以上宜しくない噂を立てられるのも厭だった。
表歩道据え置きの、店の屋号が記してる珈琲会社提供の電飾看板を店内に引き入れ、
他の客がまだ営業してると勘違いして来店しても、閉店だと断りを言い易いように扉の前に置いた。

ッデ、後片付けが終わってから飲もうと淹れてた珈琲が、冷めてしまっていたので、
店の燐寸でアルコールランプに火を点し、サイフォンの下のフラスコを温め直しだす。
其れから流し台下の扉を開き、サントリー白の徳用大瓶の首を掴み持ち上げた。
カウンターの外に出て、コイツの隣の席に止まり、目の前に荒い音を発て置いてやった。

「ナニ飲むんや?」
「要りません 」
「ナンも遠慮せんでえぇがな、なんや?」
「ホンマニ要りません 」
「ホンマか?ホンマニ要らんのやなッ!珈琲屋に働きたいゆうて嫌はないやろぉ 」
「キライッ!やないんです、お腹がぁ 」
「腹がどないしたんや? 躯が弱かったら働かれへんぞ 」
「スミマセンぅ、ナンか考えると痛くなるときがなるんですぅ 」
「ホォぅ、神経かぁ?」

「ハイッ!」
「ぉッ! えぇ返事やがな、オッチャン笑うで 」

ッデ、笑ってやったらこの仔ぉ釣られて、えぇ笑顔で笑ってました。

「胃の神経には牛乳がイッチャんや(タブンネ、知りませんけどタブン)、飲むか 」
「頂きますぅ 」
「できるやんかぁ 」(返事がね)
「はいッ 」

「ハイはもぉぅえぇ、イチイチ煩いネン。 ぅんでえぇで 」
「ハッぃ、ぁッ! ぅん 」

ニタリってなぁ、大人びた感じで笑ってた。

「其処のお冷のコップに、中(カウンター)の冷蔵庫の真ん中の扉や、自分で淹れてきんか 」
「ぅん 」

ホウロウびきのチョット大きめのマグカップに、温めた珈琲をマグ゜の半分位まで注ぎ、
サントリー白を縁から少し盛り上がるまで、溢れて零れないように用心し、ナミナミと注ぎたした。
盛り上がりに唇を近づけ勢いよく啜ると、ジュルっと音が奔った。



煙草の煙を顔に吹きつけてやったら、煙たがる素振りもしなかった。
吸いかけの煙草の箱を、目の前のカウンターに放り投げ言いました。

「一服しぃ、遠慮したらアカンで 」

店の燐寸を手渡そうとしたら、首を振った。

「ウチぃ吸ったことないですぅ 」
「ほぉか、そらぁえぇコッチャ 」
「ぅん 」
「返事はッ!」
「はいッ!」

もぉぅ訳わからんわッ!ってな顔してました。

「ナンで中ボウが学校に嘘ぉ吐いて、アルバイトせなならんのや?」
「ウチとこ貧しいんです 」

「マッママッ貧しいぃッテか? 今どき聞かん言い草やなぁ 」
「ハイ 」

 幾分か顔を伏せ、上目づかいやった。

「アンタの親御さんボク、よぉ知ってるんやけどなぁ 」
(ボクってね、一応ワイかて正しい大人の振りすることもあったんデッセ。ハイ)

「ぇっ!そぉなんですか、ナンで知ってますのぉ?」
「お父ぉさん、振り込んでくれへんのかぁ?」
「フリコンデぇ・・・・・?」
「生活費ぃやがな 」
「そんなことぉないけどぉ・・・・・」

今やったら個人情報の露洩で訴えられかねませんやろなぁ。
けど、訊いたのはマッタクの出鱈目の当てズッポウで、カマ掛けでした。
それまでに客として数回、母親と一緒にモーニング食べに店に顔を覗かせてましたからね、
その時の会話の内容で、近くの借家で母親と二人暮らしなのは把握してました。

「ホナなんでやねん?」
「ウチぃ、お金が欲しいんです 」
「金ぇッテかぁ?」
「ハイ 」
「ナンで中学生が銭いるんや?」
「ソナイなこと、絶対言はんとアキマセンのぅ・・・・・ 」
「絶対チャウけどな、銭ぃ要るんやぁったらぁ・・・・」

娘ッコ、チョット顎上向けて堪えてました。 涙目やった。
安造りのカウンターシャンデリア裸豆電球に照らされ、眼球が濡れ輝きしてました。

コン時、オッチャンは心が未だ優しかった頃やったからなぁ。
キッチリ騙されましたわぁ、乙女の涙に。 キッチリなぁ。

当時、全国的に珈琲専門店が大流行りしていました。
だけど、街中でケッコウ視かけていた珈琲専門店人気も、廃れかけてた。
メニューが珈琲だけでの勝負では、近々店の屋台が傾き閉店廃業に追い込まれる。

ホンナラ普通の喫茶メニューでも増やすかぁ、ッテ。

ッデ、出す商品(メニュー)が増えれば、それだけで今まで以上に手間が掛かる。
手間が掛かるのならば、今まで見たいに独りじゃぁマッタク賄えない。
じゃぁ従業員の一人も仕方がないけど増やさな、ァカンかぁ・・・

ット、マルデ悪循環の極み見たいな、お見本状況ヤッタ。


乙女の涙に負けたので、仕方がないから雇いましたがな。 ッチ、ッタクゥ!
学校に見つかれば、親戚の店の手伝いをやってると言い逃れる。
誰かに此処で働いてるとバレタ時点で、即バイトも中止してやめる。

「一つ約束してくれな 」
「ナンですかぁ?」
「学校はサボるな 」
「・・・・・・ぅん 」
「サボるんやったら無い話ぃやで 」
「ホナ、いつバイトできますのん?」
「晩飯ぃ食ってこい、それからやな 」
「中学生ぉ夜、労働させるんですかぁ!」

「ロぉッろぉどうッテなぁお前なぁ、ドアホッ!」

「ァホッってウチぃ 」
「今日みたいに夜中にウロウロしさらして補導されるよか、ヨッポドえぇがな、ボケッ!」
「ボケッッテぇ 」
「厭ならもぅえぇ、サッサトいねや(帰れ)」
「判りました、よろしくお願いしますぅ 」

「判ったんやったらえぇがな、明日から頼むさかいにな、エェカ?」
「ハイ 」
「未だ従業員チャウさかいにな、ぅん、でえぇがな 」

「ぅん 」

まぁ、明日になって夕方になってもコイツは来ないもんやと、踏んでました。
だけど予想は外れ、誰に教えてもらったのか、上手に薄化粧までしてやって着ましたがな。


「えぇか、ワシらの挨拶はな、おはようございますっや。 晩でも顔見たらおはようございますっや、判ったな 」

「ぅん、判った。マスターさん、おはようございますぅ 」
「サンは付けんでもえぇがな 」
「ぅん 」
「客にな、ぅんッテゆうな 」
「ぅん 」
「ワイにもや 」
「ハイ 」

「よろしぃ 」



  

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