【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

 夢想邂逅 ・ 夜の新人君

2006年09月14日 00時46分12秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  


 【 まっまさかっ!】


通称 「若ボン 」君 本当の名は
「久保 喜重 : クボ キエ 」 っといいます。

名前の読みは多分ぅ・・・「キエ」 じゃぁないでしょうかと。



何処の世界でも、通称や渾名で呼ばれる奴はいることでしょう。
其れと同様な事で、わたしら夜のお仕事世界では 
初日の見た目印象で付けられた愛称・・・?っで、大概呼ばれてしまいます。

 例えば・・・


「あんたぁ名前わぁ ? 」 古株の調理人 仮に兄ぃと呼びましょう

この方、厨房名主と言いますか、
此の道 (コック、板前、賄い・・・色々) ぅん十年の実績ある
偉大なるお方です。 其の兄ぃっが訊いています。

「ハッ?・・・ナニナニ言います 」 戸惑いながらも新人君っが 

此の新人君、キット此の世に生まれたばかりの子羊チャンよりも、
モット頼りない存在の 「赤仔」 みたいなもんですねん。
っで此の新人さん 兄ぃの質問に、お心毒づき致します
『殺気ぃマスターが紹介したろぉもん、アホカッ! 』 って

「・・・・っで、 」
「ぇ、! 」
「今までドナイに言われてたんやっ? 」 っと

兄ぃ悪魔でも、物静かに問い質す様に訊いて来ます。
此方に背を向け、仕上げ砥石で一尺余りの牛刀ぅ研ぎながらです。
其の砥石の上で包丁の、硬質鋼刃が磨れる規則正しいリズム音、
まるで兄ぃの背中から、漏れ聴こえて来る様でした。
 
「・・・?別にぃ 」
「ほぉぅか、やったらボンやナ 」
「ぼん?  どぉしてですかぁ 」

暫く二人しかいない厨房 兄ぃが包丁を研ぐ音と
水道の蛇口から流れ落ちる水音以外にはぁ・・・!


自分厨房の、開け放たれていたドアの外から
中の様子を盗み見していました。
何時もの名主様の眼力検査ですからね、誰も口出し無用です。
だから、物音を立てない様にして、覗いていました。


希薄な空気に為ってしまい、息詰まる感じだった厨房に漸く変化がっ!

規則正しかった兄ぃの、前屈みの肩の動きが止まった。
小声で 「ヨッシャ !」 っと兄ぃが。

っで、背の向こうの側で水が賑やかハシャグ音して 
金属ボールに溜め置いていた研ぎ洗い水 一気に排水溝に吸い込み落ちる音


主様ぁ此方にゆっくり振り向き、右手に牛刀掴み持ち左手の親指の爪を 
剃刀みたいに仕上げた刃で チョンチョン って叩きます。 
其れから包丁の刃を上に向け鼻先に。 片目つぶって覗きます、刃を。
次に指腹で鋼刃を微かに撫でました。

っで此処で初めて新人君と眼が遭いますねん。 

 視線がぁ !


「若ボンでえぇやろ! 」
「スッ、すぅいませんけどなぁなんで 若ボンですねん? 」
「鏡っあるか? 」
「カッ鏡ですか? 」
「・・・そぉや 」
「何処にぃ? 」 っと、厨房内に視線を巡らします。

助かったぁ! っと、
視線を外したいけど必死で堪えていたから、
此れで視線を外して、逃がせられるから!

「違うがなお前の家にやっ 」
「ハッはい おます 」
「ホナ毎朝覗いてるやろ 」
「のぞいてるぅ? 」
「顔ぉをや、お前なぁ朝は顔ぉ洗いよらへんのんかっ! 」
「洗ってますっ 欠かさずアロウテますがな 」

兄ぃ、無言で随分長い間を持たせ 新人君見続けました。

「コラ、ちぃふ コイツに教育したってくれ 」 

っで、くるっと回って 再び別の包丁研ぎだします。
っで、お鉢が回ってくる頃やなぁっな感じで 次にぃ



先程の厨房名主様の御宣託で、スッカリ落ち目気分の新人君

「なぁボンお前な さっきはお試しされたんや 」

っと、近くの喫茶店で。 わたしに言われます。

「○○っ、なんやねん試すって 」 

ボン、気忙しげに小さな珈琲カップに小さな匙で砂糖を入れ
金の匙ぃカチャカチャ鳴らして握り手把握し持ち上げかけて

 っでした。

「先ずゆうとくでっ 今日から○○っじゃないねん 」 っと
「ぁ! ハッはい。 ちぃふさんお試しってぇ 」 カップをお皿に戻します。 

「さんはいらん、言うな。ちぃふでぇぇ 」
「・・・はい、ちぃふ 」 膝を揃えて背をキリリッと伸ばします。
「えぇか、さっきなあの人が言いたかったのはやな 早く一人前になりぃっや! 」
「ハァ?・・・・カッ○ぃぁ!・・・チッちぃふ 解らんけどなぁ 」



要はこうですねん

此の新人君。 わたしの古くからの知り合いです。
歳は私よりも上 ですが顔は関西で俗に言い呼びます

「おぼこ顔 おぼこいヤッチャ! 」 ちゅうやつです

意味は、「可愛いお顔してはりますなぁ」 っとか
「世間知らずなお坊チャマぁ 」 っとか
「うぃ奴やのぉ 」 っも、アンガイ近いかもぉ です。

歳よりも若く観える。 見た目でしょぅ。


此れが若ボンが、わたしと同じ世界で遣って往く嵌めに為った
元々のお話の 始まりです。

いつか話さななぁ・・・やったから
丁度えぇ機会やしぃ 言いましょうかと
っで、お話しは続きますねん。 
「夜の逃亡ドライブ」 からは随分逸脱致しますけどなぁ
少しぃ 寄り道したかてなぁ・・・っと。

 ですねん




         


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