横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

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アコギなビジネス?

2007年03月28日 16時58分42秒 | 地理情報関連

 YaskeyさんのDiaryに、アコギなビジネスについて興味深い記事が掲載されている。

 でも素人目には、地図データの会社は、地図本を出版しているぐらいだから、もともと地図データを所持しているのであって、新たな費用と言えば、地図をデジタル化するぐらいで、それほどのコスト負担は生じない筈。なのに単純に、地図を公開するからというだけで、そこから高利な利潤を得ようという考えに、地図会社のアコギさが垣間見える。

 当時、まさにその「地図会社」に在籍して、まさにマピオンへの地図提供契約についての担当者であった私には、コメントせずにはいられないポイントだ。(10年ほど前なので時効として..)

 Yaskeyさんの投稿のコメントという形に便乗して古い話を少し...

 紙地図を持っている会社が、それをデジタル化、それも単なる画像化ではなくて、地理的にシームレスに、システム内で扱える形にするのは、当時でも今でも容易ではない。お金はもちろんのこと、かなり高い技術力(人材への投資)を必要とする。そのお金を回収しなければならず、そもそもデジタルコンテンツやインターネット市場が限られている当時の価格設定が高止まりする傾向にあったのはやむを得ない。もちろん高利な利潤は得られない。

 当時紙地図分野で実績があり、その後この階段を無事に上れた会社と、そうでなかった会社では、10年後の今日は会社が存続しているかそうで無いかくらいの違いになっている。紙地図を持っていて電子化に取り組んだ会社の中で、今会社として順調に存続できたのは、ゼンリン、昭文社くらいで、一時電子地図ソフトウェアで順調だったアルプス社も経営破綻してYahoo!に吸収されたし、MapFanサービスを手がけているインクリメントPはデジタルデータ専門の会社である。10年前にはあれほど沢山地図出版会社があったのに、デジタル分野で成功した会社を探すこと自体が難しい。生き残った1つである昭文社も、デジタル化に試行錯誤を繰り返し、結果としてかなりの資金を費やしたことはよく知られている。

 一方、10周年となるマピオン(サイバーマップジャパン)であるが、当時どんな事業モデルが可能なのかを模索する段階の、いわば実験ビジネスであり、当初は地図も親会社の凸版印刷が提供する”白地図”に近いものを利用していた。それにしても、インターネットならば地図が無料で見られる、という概念を広めたのはすごい。

 私は97年から99年にかけて、マピオン事業の経営に携わる方々と緊密な関係にあったが、設立後数年は採算が取れず、彼らが悩み深かったのを思い出す。そして試行錯誤の後、今の事業モデルを確立していった。それは、地図上に単にアイコンを乗せることではなく、顧客企業サイトに地図+カスタマイズされた地理検索機能を提供することによるB2Bモデルである。

 Googleは、そうしたビジネスモデルの試行錯誤がほぼ出尽くした段階で地図サービスを提供した。絶妙な技術的アプローチと、洗練されたユーザーインターフェイス、その投資金額の太っ腹ぶりで瞬く間に認知されたのだが、ローカルサーチはすでに10年前に日本でも実験されていたし、地図を無償で提供するやり方に関しては、本質的な新味はない。

  Googleの思想は、ユーザーへの利便性のラインが高く、その当時のマピオンはラインが低かった。 Google が Google Maps API をスタートした理由は、これからの相互利益を生むベースとして地図を利用したかったからだと思う。もしくは単純に機能性の高いWebマップで、みんなが便利になることだけしか考えなかった?ビジネスはその後?

 今から10年前、インターネット自体が未熟なメディアであり、その当時のマピオンのモデルと今のGoogleマップのモデルとを比較するのは、その差を配慮した方が良いと思う。インターネットがコモディティになる時代においては、実は技術革新はあまり強力なテコにはならず、市場へのアプローチ方法やタイミングがビジネスの成否を決めるようになる。大資本にとっては、最初に始めるリスクよりは、後から満を持して投入する方がはるかに勝ちパターンを引き出しやすい。私はGoogleマップの成功の本質はそこにあると思う。先駆的な技術ではないのだ。


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