GRASS GISは、画像系の分析ツールとしては多機能高性能を誇るGISツールで、バージョン6以降はベクトル分析機能も加わって、「分析系GIS」のツールとしては、最もパワフルなものの1つになっている。
昨日、その最新バージョン6.3がリリースされた。このリリースは、6.4という「安定版」に向けての「技術的なプリビュー版」の位置づけで、色々な機能拡張がなされている。専門的な始点からの言及は大変なので、”朗報”を1つだけ。
GRASSは1983年の初期バージョンの開発がVAX 11/780プラットフォームで始まって以降、ずっとUnix系のプラットフォームで動作することを前提に開発が進んできた。1983年といえば、マイクロソフトのWindowsはおろか、MS-DOSがようやく普及し始めた時代なので、それを考えれば、GRASSがいかに長い歴史を持っているかがわかる。
で、今回の6.3では、プラットフォームがUnix系ではなくて、Windowsになったのだ(MinGWベース)。今やほとんどのデスクトップユーザーはWindowsOSを使用しており、GRASSの機能を使いたくても、OS面での障壁が最大のネックになっていたと思う。私自身も、GRASSを立ち上げるためには、いったんマシンをLinuxで再起動していたので、余程の必要がない限りGRASSを立ち上げなくなってしまった。そういう点で、GRASSが身近になるのは嬉しい限りである。
6.3では5ヶ月ほどの期間で、様々なバグつぶしを行い、その後6.4(=安定版)としてリリースされる予定だ。
ところで、GRASS6.xは、メニューの日本語化がされていない。5.0の段階で大阪市大と私どもとで国際化とメニューの日本語化を実施した。国際化はメインストリームにマージされて現在も生き続けているが、日本語メニューについては、6.0以降は提供されていない。その後の大阪市大の努力で、あるレベルまでは日本語メニューができているそうだが、財政面、人材面などの理由でリリースにまでは至っていない。GRASS自体の日本のユーザーコミュニティが、まだまだ限られていることが、そういう試みを支える裾野としては不十分なのだろう。私の会社としても、
GRASS5.0日本語版の製品としての販売を昨年末で停止し、その後の6.xについては、計画が立たない状況である。とても残念である。
その
GRASS5.0日本語版だが、販売停止のままお蔵入りさせてしまうのも忍びなく、昨日から、無償でダウンロードできるように会社のサイトにアップした。対応OSが2004年当時のディストリビューションになっているので、そのままRPMをインストール、というわけには行かないが、日本語ユーザーズガイドは初心者を対象に設定しており、とても充実していて、今でも十分に実用になるはず。ぜひ、関心のある方は試していただきたい。