横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

位置情報、地理情報に関するサービス、その他日常生活から思ったことを気ままに記す不定期のんびり日記

りんごの出家信者から娑婆に戻ります

2019年11月20日 14時47分57秒 | 地理情報関連
りんご教の出家信者となって間もなく3年が経つが、この程娑婆に戻って在家信者となった。
これからもりんご教の信者であることには変わりないが、自分の時間を何に使うかが変わることになる。

地理情報の世界は、GoogleやAppleなどの巨大IT企業によるプラットフォームの1つとして存在するものから、専門領域を対象にしたものまで、カラフルなロングテールだ。

りんご地図での仕事は、プラットフォーマーの内実を肌で知ることができたという点で、とても興味深かった。優れた同僚達とのコミュニケーションも刺激になった。

一方、残念なことは、技術的な知見をあまり得られなかったこと。最初から期待していなかったけど。。。それも仕方がないと思う。地理情報の世界はオープンなコミュニティ(=FOSS4GとOSM)が圧倒的に進んでいて、例を挙げれば、私が出家していた3年程でMapbox Vector Tileがあれよあれよという間に席巻してしまったし。

地理情報の世界に生きるものとしては、確実に最新の動向を肌でキャッチアップしておきたい。
さらに、私には、ロングテールの領域に軸足を置くことの方が、やっぱり楽しいと感じる。
退屈な日々を送るのはごめんだ。結論は明らかだった。

さてこれからどうするか?
当面は2つやりたいと思っている。

まずは、地図のスタイリングをする「カートグラファー (Cartographer) 」。
地図のスタイリングが優れていないと、元データのクオリティがどれだけ優秀でも凡庸な製品となってしまう。

Mapbox Studioを使えば、誰でも好きなスタイリングの地図を作成できるようになった。ズームレベルの変化に応じたきめ細かなスタイル設定ができる(スタイリングにある程度の習熟が必要だけど)。
ここ2ヶ月ほど私もいじくったのだが、久々に寝食忘れる刺激的な体験であった。そして、子どもの頃に暇さえあれば空想の都市の地図を紙に描いていた思い出に重なった。

次は、FOSS4Gコミュニティをビジネス面から支えていくサポーター
オークニーでの起業と事業化の体験、OSGeo日本支部でのコミュニティ構築の体験、それらに関連する知見やノウハウを、将来のFOSS4Gコミュニティを担う事業体に提供したい。
具体的には、自分自身の時間(アドバイス)やお金(出資)の提供になると思うが、追々進めていきたい。

あ、もう1つあった。
ポケモンGoを心おきなく楽しむ。これ大事。

【必見】マピオンがベクトル地図をテスト配信

2016年10月28日 16時23分46秒 | 地理情報関連
株式会社マピオンの実験サービスを公開するサイトとして、マピオンテックラボ(Mapion Tech Labs)がリリースされた。
その中でも、待望のベクトル地図タイル配信によるサイトが試せるようになっている。

 公開されたサイトで3D地図を試す

controlキーを押しながらカーソルを動かすと3Dになる。ぐるぐる感がたまらないし、建物が半透過して奥行きを感じるし、色合いも上品だ。気に入った。

なお、操作方法や動きからするとは、基本的にMapBoxのベクトルタイルを採用し、3DにもMapBox GLを採用しているように思われるが、発表が待たれる。
(明後日から開催されるFOSS4G 2016 NARA.KANSAIにてマピオンの発表セッションがあるが、この話になるのかは不明)

ご存じない方も多いと思うが、マピオンはOSGeo財団日本支部の団体会員でもあり、もう何年にもわたって日本でのオープンソースによる地理情報サービスの普及に貢献してきている。

独自技術で全て作り込むよりも、オープンコミュニティのパワーを積極的に取り込んでいきながら、イノベーションを加速する(要するにオープンイノベーション)ことは、今必須とも言えるアプローチだと私は考えている.

地図サービスに関連する技術は、最近のトレンドとしてはユーザー体験を豊かにするための分野が注目を集めている。二次元に記号化された「地図」と、現地の空間認識にはどうしても距離がある。このギャップを少なくするものとして、実際に近い3D表現は、これからますます求められるはずだ。

海外勢が日本の地図サービスで影響力が大きくなってから久しいが、国内勢のマピオンのこうしたアプローチが加わることで、利用者の選択肢は広がっていくので、私は歓迎したい。


Appleのマップアプリの乗換案内機能を体験する

2016年10月27日 14時38分53秒 | 地理情報関連
10月25日未明に、待ちに待ったAppleのマップアプリのアップデートが行われた。目玉は乗換案内である。この2日間、横浜と都内を移動しながら、新しいマップアプリを使ってみた。そのファーストインプレッションをまとめたい。

ひとことで言うと、2012年9月のAppleのマップアプリ登場以来、史上最大のアップデートである。そして、Appleの「本気度」がひしひしと伝わってくる出来映えだ。

乗換案内機能は、「現在地から目的地までへの移動を、公共交通機関を使って効率的に実現する」ための一連の仕組みである。そのためには、鉄道駅、バス停、路線ネットワーク、出入り口、タイムテーブル、歩行者ルート、運行情報、料金情報等々を用いて、様々な例外的なルールも加味してアプリケーションとして作り上げる必要がある。従って、単に優秀なエンジニアがいるだけでも実現せず、ノウハウを持った人による現地でのテストとフィックスが不可欠である。また、特に首都圏のような世界でも最高レベルの複雑さを持った公共交通ネットワークを、利用者にわかりやすく指南するためのユーザーインターフェイスの考案もハードルが高い。

そういう「大変さ」を見聞きしている1人として、今回の乗換案内機能は、とても良くできていると率直に評価したい。
もちろん「初物」故の問題もあって、既に各所で指摘もされているが、それらは順次解消されていくはずだ。

さて、実際の動きを順に説明していこう。

まず、マップ自体のアップデートについてだが、地図の表示モードの中で、鉄道網をハイライトする「交通機関」がようやく機能するようになり、鉄道路線は、それぞれのシンボルカラーで表示されている。

 「交通機関」表示モード シンボルカラーを用いてハイライトされている

鉄道(地下鉄や一部バスを含む)駅周辺の出入り口や歩行者通路が詳細に表示されるようになり、バス停も路線番号付きで表示される。バス停に関しては、駅ターミナルだけでなく、路線の各停留所も地図表示されており、利用者は近くのバス停をタップすることで、経路案内に進むことができる。

 駅出入り口やバス停が表示されている(有楽町駅)

惜しむらくは、これだけの情報が地図に表示されたのだから、他社のマップアプリでは全て採用されている、大縮尺による詳細な図面の提供が待たれる。それが無いと、現地のリアルな街路形状とフィットしなくなる。

さて、横浜市の自宅から駒場東大前までの移動を行った場合の動作を説明しよう。

「自宅から駒場東大前駅までの経路」とsiriに話しかけると、マップアプリが立ち上がり、経路全体を地図と移動ステップをまとめた画面が出てくる。行き方には複数ルートがあり、それぞれをタップすると、それ毎の経路が地図に表示される。そして、移動ステップも路線のシンボルカラーや鉄道会社のロゴ付きで表示される。不慣れな人にも、あるいは日本語に疎い人でもそれなりに使えそうだ。

 「自宅から駒場東大前駅までの経路」とsiriに話しかけるとこの画面になる

 移動ステップは路線のシンボルカラーや鉄道会社のロゴ付きで表示される

 根岸線で大船に向かう

駅に到着する直前になると、地図が駅中心の拡大図面に切り替わって、次に乗る電車が示される。

 大船駅で乗り換える

 湘南新宿ラインで渋谷へ向かう

 渋谷で京王に乗り換える

優れていると思ったのは、乗り継ぐ先の京王井の頭線の出発時刻が2本後(合計3候補)示されていることだ。乗換に時間がかかったり、電車が遅延したりした場合にどうなるかがわかる。

 京王井の頭線 2本後まで出発時刻が表示される

 駒場東大前駅に向かう

 駅の出口表示もある

 目的地までの徒歩ルートも表示してくれる(これは3次元表示にしてみた場合) 注:画像の場所は田町駅

ちなみに、移動中はApple Watchに案内が出てくるので、iPhoneは他のアプリを立ち上げてても困らない。

 Apple Watchでも経路案内が表示される

このように、今回の「乗換案内」対応は、従来型の乗換アプリと違い、移動全体を指南してくれるものだ。ユーザーインターフェイスは、マップアプリの自動車経路ナビと基本は一緒だが、細かいところに配慮がなされていて、首都圏の鉄道事情にある程度通じている人達が開発に関わっていることがうかがわれる。

最後に地図好きな私は、実際の地理的な距離や方角と合わせて自分の行動経路を理解できることの喜びを、今回のマップアプリで体験している。久々に使っていて楽しいと思う。

横浜市のオープンデータをCartoDBでビジュアライズしてみた

2016年05月02日 00時52分43秒 | 地理情報関連
 先日のCartoDBイベントでCEOのJavierは、「ロケーションインテリジェンスの民主化」という表現を使って、GIS専門家でも、データサイエンティストでなくても、誰でもロケーションインテリジェンスの恩恵にあずかれるサービスとしてCartoDBの意義を強調していた。

 では、CartoDBがどれだけ「すごい」革新的なサービスであるかは、実際にデータビジュアライゼーションを行うことで誰でも体験できる。

 自治体が公開しているオープンデータを使ってみる。私の地元である横浜市は、GISデータを公開している。その中から、「統計GIS メッシュ集計データ」を選択肢、Shapeファイルをダウンロードする。このデータは、横浜市統計GISという市が公開しているWebサイト(余談だが、このサイトはオークニーが受託して開発した)にも用いられているものである。

 統計GISのファイルには様々なデータカラムが入っている。CartoDBの自分のアカウント(無料で即作成できる)にドラッグアンドドロップすることで、自動的にデータのカラムを解析してくれて、それぞれのカラムの数値の傾向を自動判断して、そのカラムの数分だけマップを作ってくれる。

 高齢化率(65歳以上の人口率)に相当するデータカラムのマップを選択肢、見栄えをCartoDBエディタで整える。そして、画面左上で背景地図を選択する。タイトルや説明書きを替えても良い。この使いやすさはGISソフトを使った人にはもちろん、そうで無い人にも説明書なしでなんとかなるレベルである。

 こうしてある程度満足するものができたら、「Publish」をする。そのURLをFacebookでシェアしたり、メールなどで送れば、相手側でも同じものが見られる。

 ちなみに、私が作ったマップはこちらである。所要時間は横浜市のサイトからダウンロードするところから始めて5分ほど。

こんな高齢化率マップが数分で作れる。

 高齢化率は洋光台駅周辺の方が港南台駅周辺よりも高く、1970年代に洋光台駅周辺に大量に建てられたURの住民の高齢化が影響していると思われる。また、港南台駅からバス便のエリアは、一戸建てが建ち並ぶのだが、そこの高齢化率は軒並み40%を超している。中には、50%を超えるのもあり、限界集落化している。

 こういう地域の状況を市の政策担当者だけで無く、たくさんの市民が知り、考えることが、これからの市民社会には求められている(シビックテックという潮流もこれにあてはまる)から、CartoDBのようなサービスは、まさに時代の要請にマッチしている。だから、私が推しているのだ。

CartoDB 2016 Japanに参加して

2016年05月01日 21時36分52秒 | 地理情報関連
CartoDB 2016 Japanと銘打ったイベント(主催者はCartoDBの日本代理店であるPacific Spatial Solutions, LLC(略称PSS))が4月25日に開催された。会場の立正大学を貸して下さったのは後藤先生、そして我々OSGeo財団日本支部が後援した。

CartoDBは、オープンソースコミュニティから生まれた地理情報の可視化サービスで、今大変な勢いで利用者を獲得している。日本でも関心が高まりつつあったので、このイベントがどのくらいの盛り上がりを見せるのか、私自身大変興味があった。

 会場の立正大学大崎キャンパスは、平日月曜日の午後6時からという制約にもかかわらず、100名収容の講義室がほぼ埋まるほどの盛況ぶり。
 ほぼ満席の会場

 正直ここまでの参加者になるとは、私は想像していなかった。そして、日本のジオの歴史の一コマになるかも知れない、と思った。振り返れば、ほぼ10年前の2006年11月1日、オークニーは自社主催の「オープンソースGISセミナー」を横浜市内で開催した。この時、200名ほど入る会場に150名ほどの参加者があった。当時のオークニーは、社員数が数名の小さな存在だったが、そのイベントを契機に本格的な事業展開を進めることができた。その状況と今回とが似ていると思うのだ。

 イベントの主役はCartoDBのCEOであるJavier de la Torre。Location Intelligenceというタイトルで、加速度的に増えつつあるデータの8割は位置情報に関係していて、そのリアルタイムの可視化が社会に与えるインパクトを、事例を挙げて説明した。もともと彼は、生物多様性の研究者で、大量の調査データを地理的に可視化する体験を通じて起業しているだけに、その情熱的な説明には説得力がある。
 CEOのJavier(左)、通訳を務めたのは日本代理店PSS代表の今木氏(右)

 今、日本のCartoDBは、熱心な先進的なユーザーで支えられている。立正大学のイベントを終え、大崎駅近くで交流会が開催され、こちらも多数の参加者で盛り上がった。FOSS4G系のお決まりのライトニングトークもあり、あっという間に時間が過ぎていく。
 交流会の集合写真

 CartoDBは投資家から30億円以上の出資を受けたスタートアップ企業。オープンソースコミュニティの中にありながら、急速な事業成長を求められている。Javierも大変なプレッシャーを受けているはずだ。日本でのビジネスは、まさに始まったばかり。今回のような盛り上がりを見せたということは、適切な展開戦略を実行することで、大きく成長するだろう。ちょうど私も自由に動ける。その成長の一翼を担いたいと思っている。

 Javierと私(^^;)

iPhoneのマップアプリでのカーナビゲーション

2016年04月17日 14時45分32秒 | 地理情報関連
 最近、不慣れな場所にクルマで訪問する際に、iPhoneのマップアプリ、そう2012年9月の初回リリース当時、パチンコガンダム駅で有名になった、あの純正のマップアプリを使っている。そして満足している。使えるのだ。

 そもそも、道路ネットワークデータはパイオニアの100%子会社のインクリメントPが提供している「カーナビ品質」なので、満足に利用できて当たり前なのだが、日本に地図チームを持たないAppleが、果たして上手にそのデータをアプリとマッチさせられるかは、私は結構疑問を持っていたし、当初はやっぱり使えるものではなかった。その後地道な改良が重ねられて、十分な実用性を持つようになっている。

 昨年、Appleウォッチを買い、道案内を「トントン」と叩いて教えてくれることに感動し、マップアプリのカーナビ機能を使い始めた。

 私の標準的な使い方であるが、
 1)クルマに乗って、siriに「○○へ行くルートを教えて」と話しかける
 2)siriがその目的地を認識すれば(結構な確率で正解だ)自動でマップアプリが立ち上がる
 3)「出発」を押すだけで案内が開始される
 4)ウォッチを身につけていれば、曲がり角の直前にトントンと叩いて教えてくれる

 音声案内は、他のカーナビアプリと違って、あらかじめ録音された単語を用いないため、日本語に慣れていない帰国子女みたいな感じだ。個人的には、その舌っ足らずなのも良いかなと思う。


標準で3Dナビをしてくれる。視認性はとても良い。
あれこれ余分な情報を表示しない、Appleらしいシンプルな画面も好みだ。
POIも進むにつれて次々と表示される(この選択が今ひとつ適切で無いけれども)。
多数の建物をポリゴンから都度描画していることもあり、結構バッテリーを食うのが悩みどころ。


目的地に近づくと、「目的地は左側」と念押しの案内が出る。これも嬉しい。

 国内ではGoogleマップの利用が「常識化」していて、Appleのマップアプリを使う機会は少ないが、私はカーナビ機能に関しては、Appleも十分に活用する価値があると思う。

Googleマップ、iOSアプリでも店の混雑時間帯やガソリン価格を表示(ただしアメリカでの話)

2015年12月15日 17時31分57秒 | 地理情報関連
Googleマップ、iOSアプリでも店の混雑時間帯やガソリン価格を表示」という記事が掲載された。

Googleで店を検索すると、Googleマップアプリのユーザーから収集した匿名データを使って、いつその場所が混雑しているかをグラフで示した。この機能が9月にAndroid版Googleマップにも追加されたが、今日までiOSには来ていなかった。

そうか、私はAndroidデバイスを使っていないので、この機能が9月からあることすら知らなかった。お店の混雑時間帯は、だいたいは誰でも予測できるものの、やっぱり統計的に示されると説得力がある。

さらに、

マップ利用者は経路の途中にガソリンスタンドやコーヒーショップを追加できるようになった ― アプリは最終目的地に着く前にそこへ案内する。
この機能が登場した際、追加経由点にガソリンスタンドを含めるとガソリン価格が表示されるようになった。


ということだ。これならば、カーナビを超える。スマホやタブレットを車中に設置するアタッチメントが自動車のメーカー標準装備になる日がやってきそうだ。

以上は、全てアメリカでの話。今日現在、日本のGoogleマップアプリ(iOS版)にはまだサービスが提供されていない。

この記事の中で、私の認識と共通するコメントがある。

今やマップアプリは、地図とナビを提供するだけでは十分ではない。価格、写真、営業時間、混雑時間帯等の追加情報によって、モバイル消費者が他社製より自社アプリを選ぶよう仕向ける必要がある。

「マップアプリ」は、従来言われている「地図」でも「ナビ」でもない。生活、行動をサポートする、スマホ上でなくてはならないキラーツールになっている。だから、Appleがいろいろな困難を背負い込んでもGoogleと戦っているのだ。

「AppleのマップアプリはGoogleマップに比べて3倍以上使われている」という記事について

2015年12月10日 20時54分36秒 | 地理情報関連
「iOSデバイス上では、AppleのマップアプリはGoogleマップに比べて3倍以上使われている」という記事が掲載されている。

 日本語抄訳がこちらで、元の記事はこちら(英語)。さらに、その記事の情報源はこちら(英語)。この情報源は「ニューヨーク発」とされていて、状況をかなり詳しく書いている。

 記事はU.S.のメディアなので、対象はそこ限定だろう。今年9月にサンフランシスコに出張した際の使い勝手を考えると、確かにAppleの純正マップアプリは当初に比べて遙かに良くなったと思う。それでもなお、「純正アプリ」が「サードパーティ」であるGoogleのアプリに比べて3倍しか利用されていないのは、Appleがどれだけマップアプリの品質問題の解消に手間取ったのかを物語っている。

 日本でのAppleのマップアプリも、Apple Watchでカーナビをさせた時の「トントンと叩いて道を知らせてくれる」という新次元の体験を除けば、まだまだ改善の余地を残している。おそらく、まだ多くの人がGoogleのマップアプリを使い続けているだろう。

 Appleのマップアプリは、最近ではPOIと食べログやYelpとの連動などもできるようになり、ようやく使ってみようかな、と思う水準にまでなってきてはいる。しかし、日本市街地特有の密集性に対応できていない粗い基図のままでは、残念ながら実用面でGoogleの後塵を拝している。鉄道路線や駅の出入り口でも情報量が足りないという点でも、首都圏を中心とする利用者には不便である。こうした面での改良を気長に待っているが、いつまで待たされるのだろうか(苦笑)。

 もう私が数年前から講演などで話していることであるが、マップや位置情報はITのなかでのインフラ、コモディティになっている。そして検索やSNSと一体化して、人々の生活や行動を豊かにするコアな要素として欠かせない。日本で販売されるスマホの6割以上がiPhoneという報道に接するにつけ、Appleは日本での大きな事業機会を活用して欲しい。

「最近のGoogleマップは劣化が激しい」事例orz

2013年09月26日 16時58分56秒 | 地理情報関連
 つい先日、このブログで「最近のGoogleマップは劣化が激しい」と書いた。ただ、そこは日本に登場して8年が経つだけあって、”腐っても鯛”なのであろう、と漠然と私は思っていた。

 今日、たまたまiOSのGoogleマップアプリを開いていて、刮目した。首都高のジャンクションが表示されている中に、「スギ薬局江戸橋店」とある(正しくは「江戸橋JCT」)。どうして、店舗が表示されているのかな、と思って拡大縮小をしてみて、どうやら首都高ジャンクション名称として誤って”登録”されていると判断できた。

 「スギ薬局江戸橋店」というJCT?!

 ベクトルのマップアプリは地図を一様の画像として表示しないので、ラスターベースのマップアプリのような目視チェックが難しい。結局、表示プログラムとデータ設定のの正確さに頼り切ることになる。iOS6マップアプリの問題点がリリース前にアップル社内で認識されなかったのも、それも一因だと思われる。これは結構やっかいな問題だ。

 とはいえ、いくら何でも日本での存在感抜群のGoogleマップだ。今回の問題は、「パチンコガンダム駅」や「大王製紙空港」並みかもしれない。

 う~ん、Google君までがこれではアカン。ほぼ1年前に、iOS6マップアプリに対して私が書いた「ずさんなエンジニアリングが原因」そのものでは無いか。残念だ。緊張感を持って頑張ってくれよ。

iOS7のマップアプリの第一印象

2013年09月22日 10時01分59秒 | 地理情報関連
 昨年の今頃、iOS6がリリースされ、その際はサンフランシスコに出張で来ていた。そして今年もiOS7のリリースでは、イギリスのノッティンガムに来ている。狙ってそうしたわけではないのだが・・・

 昨年のiOS6のマップアプリの品質に度肝を抜かされて、このブログに投稿した記事が、結果として広く様々の人に読んでいただけたのは、正直驚いたのだが、それだけマップアプリがスマホユーザーにとって欠かせないことを物語っていた。

 あれから1年、iOS7がリリースされ、私はノッティンガムでアップグレードをした。果たしてマップアプリはどうか?

 ここノッティンガムで、空港からカンファレンス会場であるノッティンガム大学まで路線バスで移動した。その時はiOS6のマップアプリを使った。道路は描かれているが、ラベルはとても少なくて「スカスカ」だ。ただ日本と違って、イギリスの地図はもともとそんなに詳しくない。だから、まぁ何とか使えた。そして、iOS7に更新して新しいマップアプリにしたら、道路の員数こそ変わらないものの、ラベルが縮尺に応じて適切に表示され、かなり使えるレベルになっていると思った。ただ、Googleマップにはバス停が掲載されているなど、そちらに軍配が上がる。

 日本の地図も見てみた。2500分の1ベースの都市詳細図のデータが依然として採用されていないのは、都心部での利用に大きなマイナスであるが、それ以外の地域での利用には、まぁ使えるレベル(以前は使えない、あるいはかなり使いづらいレベル)になってきたと思う。まだ元データの誤用(駅舎とホームの錯誤など、日本人ならまずしないミス)も残っているが、初期バージョンに比べると劇的な改善である。及第点だ。それにしても、このレベルで昨年リリースしてくれていたら、あんな大騒ぎにはならなかったのに、と思う。

 アップルもこの一年、マップアプリの改善のために相当な努力をしているはずだ。乗換検索アプリの会社を買収するなど、単なる地図表現の改善ではなく、利用者の行動支援という視点からの機能強化も着々と進めている。おそらく、アップルはGoogleと並んで、世界最大級の地図サービス提供会社の一角を占めることになろう。

 ところで、最近悲しい傾向がある。Googleマップが新しくなってから特に思うが、日本で高度に発展してきたカートグラフィッククオリティが、どんどん失われてきている。最近のGoogleマップは劣化が激しい。マップアプリの「グローバル化」によって、日本のカートグラフィックは排除されつつある。地図に関してはあまり頓着しないアメリカ人達の目線には、この視点はなかなか伝わらないかもしれない。

 いや、こう書くと日本の文化への浸食のように思われるかもしれない。確かにその面もあるのだが、もう一つ指摘しておくべき点は、利用者のマップアプリそのものの使い方の変化だ。私のように、非スマホネイティブ世代だと、地図の表現から全てを読み取ろうと努力するが、そうで無い世代はマップアプリは検索窓からスタートして、結果を地図の上に表示させる。つまり、マップアプリは検索アプリの一つになっている。だから、カートグラフィックのクオリティが少々低くても、目的を達成できる。

 個人的には、和製の地図の伝統を引き継ぐYahoo Japanのマップにはもうちょっと頑張ってもらいたい。Mapionにもだ。ただ、もう一つ深刻な問題は、Yahoo Japanの地図がどれだけ頑張ったにしろ、圧倒的多数のユーザーはGoogleマップしか使わないし、iPhoneではアップルのマップアプリしか使わないことだ。それが意味することは、利用者は「地図」の優劣に大きな価値を見出しているのでは無くて、検索ベースの行動支援ツールが欲しいと言うこと。「マップアプリ」は「地図」とは別もので、検索とナビ(車と鉄道)が一体化して、どれだけスムーズな行動支援ができるかによって、その地位が決まる。

 GoogleとAppleは競い合って、どんどん良いサービスを提供して欲しい。できればそこに、日本の高品質なカートグラフィックも採り入れて欲しい。そして、和製ベンダーは彼らを脅かすくらいの存在感を維持して欲しいと思う。