横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

位置情報、地理情報に関するサービス、その他日常生活から思ったことを気ままに記す不定期のんびり日記

「最近のGoogleマップは劣化が激しい」事例orz

2013年09月26日 16時58分56秒 | 地理情報関連
 つい先日、このブログで「最近のGoogleマップは劣化が激しい」と書いた。ただ、そこは日本に登場して8年が経つだけあって、”腐っても鯛”なのであろう、と漠然と私は思っていた。

 今日、たまたまiOSのGoogleマップアプリを開いていて、刮目した。首都高のジャンクションが表示されている中に、「スギ薬局江戸橋店」とある(正しくは「江戸橋JCT」)。どうして、店舗が表示されているのかな、と思って拡大縮小をしてみて、どうやら首都高ジャンクション名称として誤って”登録”されていると判断できた。

 「スギ薬局江戸橋店」というJCT?!

 ベクトルのマップアプリは地図を一様の画像として表示しないので、ラスターベースのマップアプリのような目視チェックが難しい。結局、表示プログラムとデータ設定のの正確さに頼り切ることになる。iOS6マップアプリの問題点がリリース前にアップル社内で認識されなかったのも、それも一因だと思われる。これは結構やっかいな問題だ。

 とはいえ、いくら何でも日本での存在感抜群のGoogleマップだ。今回の問題は、「パチンコガンダム駅」や「大王製紙空港」並みかもしれない。

 う~ん、Google君までがこれではアカン。ほぼ1年前に、iOS6マップアプリに対して私が書いた「ずさんなエンジニアリングが原因」そのものでは無いか。残念だ。緊張感を持って頑張ってくれよ。

iOS7のマップアプリの第一印象

2013年09月22日 10時01分59秒 | 地理情報関連
 昨年の今頃、iOS6がリリースされ、その際はサンフランシスコに出張で来ていた。そして今年もiOS7のリリースでは、イギリスのノッティンガムに来ている。狙ってそうしたわけではないのだが・・・

 昨年のiOS6のマップアプリの品質に度肝を抜かされて、このブログに投稿した記事が、結果として広く様々の人に読んでいただけたのは、正直驚いたのだが、それだけマップアプリがスマホユーザーにとって欠かせないことを物語っていた。

 あれから1年、iOS7がリリースされ、私はノッティンガムでアップグレードをした。果たしてマップアプリはどうか?

 ここノッティンガムで、空港からカンファレンス会場であるノッティンガム大学まで路線バスで移動した。その時はiOS6のマップアプリを使った。道路は描かれているが、ラベルはとても少なくて「スカスカ」だ。ただ日本と違って、イギリスの地図はもともとそんなに詳しくない。だから、まぁ何とか使えた。そして、iOS7に更新して新しいマップアプリにしたら、道路の員数こそ変わらないものの、ラベルが縮尺に応じて適切に表示され、かなり使えるレベルになっていると思った。ただ、Googleマップにはバス停が掲載されているなど、そちらに軍配が上がる。

 日本の地図も見てみた。2500分の1ベースの都市詳細図のデータが依然として採用されていないのは、都心部での利用に大きなマイナスであるが、それ以外の地域での利用には、まぁ使えるレベル(以前は使えない、あるいはかなり使いづらいレベル)になってきたと思う。まだ元データの誤用(駅舎とホームの錯誤など、日本人ならまずしないミス)も残っているが、初期バージョンに比べると劇的な改善である。及第点だ。それにしても、このレベルで昨年リリースしてくれていたら、あんな大騒ぎにはならなかったのに、と思う。

 アップルもこの一年、マップアプリの改善のために相当な努力をしているはずだ。乗換検索アプリの会社を買収するなど、単なる地図表現の改善ではなく、利用者の行動支援という視点からの機能強化も着々と進めている。おそらく、アップルはGoogleと並んで、世界最大級の地図サービス提供会社の一角を占めることになろう。

 ところで、最近悲しい傾向がある。Googleマップが新しくなってから特に思うが、日本で高度に発展してきたカートグラフィッククオリティが、どんどん失われてきている。最近のGoogleマップは劣化が激しい。マップアプリの「グローバル化」によって、日本のカートグラフィックは排除されつつある。地図に関してはあまり頓着しないアメリカ人達の目線には、この視点はなかなか伝わらないかもしれない。

 いや、こう書くと日本の文化への浸食のように思われるかもしれない。確かにその面もあるのだが、もう一つ指摘しておくべき点は、利用者のマップアプリそのものの使い方の変化だ。私のように、非スマホネイティブ世代だと、地図の表現から全てを読み取ろうと努力するが、そうで無い世代はマップアプリは検索窓からスタートして、結果を地図の上に表示させる。つまり、マップアプリは検索アプリの一つになっている。だから、カートグラフィックのクオリティが少々低くても、目的を達成できる。

 個人的には、和製の地図の伝統を引き継ぐYahoo Japanのマップにはもうちょっと頑張ってもらいたい。Mapionにもだ。ただ、もう一つ深刻な問題は、Yahoo Japanの地図がどれだけ頑張ったにしろ、圧倒的多数のユーザーはGoogleマップしか使わないし、iPhoneではアップルのマップアプリしか使わないことだ。それが意味することは、利用者は「地図」の優劣に大きな価値を見出しているのでは無くて、検索ベースの行動支援ツールが欲しいと言うこと。「マップアプリ」は「地図」とは別もので、検索とナビ(車と鉄道)が一体化して、どれだけスムーズな行動支援ができるかによって、その地位が決まる。

 GoogleとAppleは競い合って、どんどん良いサービスを提供して欲しい。できればそこに、日本の高品質なカートグラフィックも採り入れて欲しい。そして、和製ベンダーは彼らを脅かすくらいの存在感を維持して欲しいと思う。


FOSS4G 2013ノッティンガムで見る二つのトレンド

2013年09月22日 08時47分15秒 | OSGeo/FOSS4G
 ずいぶん久しぶりのブログの更新になる。Facebookに活動の軸足を移したことで、ブログに対する関心が下がってしまった。だが、少しまとまった文章を投稿しようとなると、やはりブログに軍配が上がる。

 さて、私は今イギリスのノッティンガムにいる。もう明日日本に戻るのだが、2年ぶりに開催されたFOSS4Gカンファレンスに参加している。FOSS4Gカンファレンスは、OSGeo財団が主催し、2006年のローザンヌを皮切りに、ビクトリア(カナダ)、シドニー、ケープタウン、バルセロナ、デンバーと連続して開催されたが、2012年に開催地になっていた北京がキャンセルされたことで、1年空いてしまった。

 FOSS4Gカンファレンスの、私にとっての魅力は2つあり、世界中のOSGeoコミュニティのキーパーソン達と親交を深めることができることと、ジオ系ITに関する技術のトレンドを世界で一番早く体感できることだ。

 それだけに、変化の激しいITの世界で、1年空いてしまったことの損失は大きいと思う。この間、私の会社は事業の軸足をオンプレミスのシステム開発からクラウドサービス提供へと大きく移し、創業以来の最大の変化を自ら経験した。では、FOSS4Gの世界はどうだろうか。

 開催地はイギリスの内陸部にあるノッティンガムという都市。イギリスはOpenStreetMapの発祥地であるし、欧州はFOSS4Gが盛んな地域でもある。登録参加者は欧州を中心に120カ国から800名を超え、文字通りのインターナショナルなカンファレンスとなった。

 満席のカンファレンス会場

 以下、私の報告は、その概要をお知らせするのではなくて、2年で何が変わったのか、という点。

 私が今年7月に札幌で開催されたFOSS4G北海道で行った講演(スライドはこちら)では、二つのトレンドを指摘した。一つは「データを徹底的にいじくる」、二つ目は「結果をすぐに配信する」だ。このトレンドは誰かが言っていたものでは無く、私が勝手に指摘したものなのだが、ノッティンガムに来て、まさにそうだし、それ以上になるかもしれないと体感した。

 2011年と2013年の2年間を振り返ると、何が違うか?
ジオの世界でオープンソースが浸透するトレンドは2011年も2013年も安定して変わっていない
変わったことといえば、
1)オープンデータの流れが決定的になったこと
2)業務におけるクラウド利用が普及したこと
3)スマホやタブレットが当たり前のデバイスとなったこと

だろう。

 2)や3)はIT利用の根本的な変化であるが、特に1)に関しては、ジオの世界に決定的なインパクトを与える。GIS利用者にとって、地理空間データを入手することは、価格や種類などあらゆる面で困難そのものだった。故に「GISはお金がかかるもの」として利用者数が限定され、市場競争の埒外に留まっていた。ソフトがオープンソースで、実質的に無償で入手できるようになっても、肝心のデータが高額であれば、あるいは入手困難であれば、結果的に普及しない。それが、オープンデータの登場で一気に障壁が解消されつつある。

 ここ1~2年の「QGISビッグバン」は、このトレンドによって引き起こされている面がある。そして、ノッティンガムのカンファレンスで、最も注目を集めたのは、2年前までのGeoServerやOpenLayersではなくて(これらは依然根強い人気がある)、QGISだった。QGISのコアディベロッパーのTim Suttonの基調講演の際に、彼をカンファレンス責任者のStreven Feldmanがヒーロー呼ばわりするほどだ。

Tim Suttonの講演(右側はSteven)

 QGISの機能の充実ぶりは既にいくつかの商用製品のレベルを超えてしまったし、そのダウンロード数はバージョンアップの毎に飛躍的に増加し、誰もがデータを手元で徹底的にいじくれる時代となっている。

 そして、次はいじくったデータを「すぐに配信する」というニーズが高まっている。従来は、ネットで配信しようと思ったら、MapServer、GeoServer、PostGIS、OpenLayersなどのツールを組み合わせて、配信アプリケーションを構築する必要があった。これらはオープンソースなので、ライセンス料を誰かに払うわけでは無いものの、「GIS利用者」が「Webプログラマー」である確率は低く、結局誰かにお金を払って配信システムを構築してもらう必要がある。それ故に、せっかくデータを分析したり処理したものを、ネットで配信することは、結構なハードルだった。

 この2年でその障壁を解消しようとするアプローチが急速に普及している。以下は、その主なものだ。
MapBox
MangoMap
QGIS Cloud
InGeoClouds
GIS Cloud
CartoDB
 これらはFOSS4GやOSMコミュニティの成果をタイムリーに活用している。だから、新しくて気の利いた機能がどんどん提供される。

 商用ではESRIの「ArcGIS Onlne」があるが、高額であるし、これだけ他のサービスがあると、もうデスクトップ時代に獲得できた独占的なブランドとしては認知されないだろう。

 配信系サービスでは、デスクトップにおけるQGISのような決定版がまだないが、そのうちに方向性によって2~3のサービスに集約されていくと思う。そうなるまでに2年はかからないはずだ。確実に時代は変化している。

 来年のFOSS4Gカンファレンスは、米国のポートランド(オレゴン州)で開催される。そこで私は何を見ることができるだろうか、この先大変楽しみである。