北米で工場等の機械設備の保守業務に携わる人を対象に支援するクラウドサービスを展開している、サービスマックスの日本法人が、国内の製造業206社を対象とした「
フィールドサービスマネジメント(FSM)に関する調査2015」を実施し、結果を発表した。なかなか興味深いので中身を見ていこう。
ちなみに、サービスマックスは2007年に設立され、米国カリフォルニア州に本社がある。当初からセールスフォース・ドットコムのプラットフォーム上で事業を展開し、フィールドサービスで急成長している。これまでにベンチャーキャピタルから調達した金額は合計204ミリオンドル(250億円程度)と巨額、売上もセールスフォースのアプリケーション事業者(ISV)の中では頭一つ抜け出ている。私も、2010年に参加したDreamforceで知って以降、ずっとその成長に関心を持って見ている。この会社が、今年秋に日本に本格進出した。
■フィールドサービスにおいて、最も重視している要素
「初期対応スピード」65.1%
「高い専門性」50.0%
「顧客とのコミュニケーション」44.5%
機械設備を「一刻も早く」「確実に直して欲しい」ということに尽きるだろう。その際に、顧客とスムーズに話ができなければ、トラブルの発生の状況を理解できないし、修理終了の見込みを説明することもできない。後ろ2者は保守サービス従事者のスキルに原則的に依存するのだが、最初の「初期対応スピード」は、サービス提供側の「オペレーションの仕組み」にかかっている。
■現在、フィールドエンジニアが業務用に持参しているもの
「ノートパソコン」58.9%
「紙の作業伝票・マニュアル」43.2%
「デジタル化された作業伝達・マニュアル」41.1%
6割近くがノートパソコンを使っている。しばしば、保守サービス従事者はITリテラシーが低いといわれることがあるが、これは誤解だ。パソコンが最適なデバイスであるかは別として、彼らの業務、とりわけ設備設計情報や伝票関連の業務は、結構複雑で、それに対応するデバイス(withおそらく専用に作り込まれたソフトウェア)が既に普及している。
一方、4割少々がまだ紙でやっているとあるが、PCを使うが伝票やマニュアルは紙という使い方だろう。iPhoneやタブレットの利用率はまだまだ低い。
■フィールドサービスにおいて、今後強化していきたいこと
「予防保全の施策」56.8%
「顧客・契約情報・サービス履歴の管理性向上」52.1%
「要員(フィールドエンジニア)配置の最適化」34.9%
ここで彼らの課題が見えてくる。
1)設備が故障する前に知らせる仕組みが欲しい
2)顧客情報の管理、確認、メンテの生産性を高めたい
3)駆けつけ(移動)にかかるロスを減らして無駄な動きをしたくない
この1)はIoTやM2Mと呼ばれるテクノロジーで近い将来解決できそうだ。2)は現場からいつでも情報を引き出せるようなクラウドサービスの仕組みを使えば今でも解決しそうだ。3)は、まさにOrkney Upwardが提供しているような
リアルタイムの訪問計画最適化機能を使えば、今でも解決できる。
■次の5年間で、フィールドサービスの現場に大きな影響を与えると思うもの(こと)
「ビッグデータ」56.8%
「IoT(Internet of Things)」54.8%
もうこれは、時代の流れなので否応なしに取り込んでいくトレンドだと思う。
それに対して、
「コネクテッド・カー(インターネットとつながったクルマ)」13%
であり、意識の上ではまだ遠い先なのだろうか。
■フィールドサービスにおいて、IoT/M2M導入の進捗状況
「すでにIoT/M2Mを導入している」11.6%
「現在導入しようとしている」19.9%
「現在導入に向けて、検討中」13.7%
【導入済み~導入検討中を含めると、45.2%】
設問がIoTとM2Mに限定ししてしまっていて、顧客側の課題解決とそれらがどう結びつくかが読めないが、それでも3割強の回答者が既に導入したか、しようとしているというのは、リアルなマーケットとして立ち上がってきていることを物語っている。
■フィールドサービスにおいて、IoT/M2Mが当たり前のサービスになるのはいつ頃か
「すでに当たり前になっている/なり始めている」15.1%
「3年以内(3年後)」を含めると、49.5%
【約半数が3年以内と回答】
一つ上の設問の回答から類推すると、この結果も納得である。3年以内に当たり前、ということは、既に導入検討が各所でなされていることを意味する。
さて、最後の設問である。
■IoT/M2Mをフィールドサービスに早期導入することで獲得できる競争優位性はどういったメリットをもたらすか
「顧客満足・ロイヤリティの向上」67.0%
「業務効率の強化」56.3%
「収益増加」48.5%
この回答項目は、オークニーが提供している
Orkney Upwardの顧客の導入目的においてもほぼ同じだ(だからといってサービスマックスが競合しているわけではないが)。
何らかの現場オペレーションを持っている事業者は、それがセールス系であっても保守サービス系であっても、常に顧客と接して、それによって初めて売上を獲得できている。従って、顧客に満足を与え、継続して使おうと思ってもらうことが大事だし、1日に何件も訪問するため、その業務効率化は必須だ。その結果、収益が増加する。当たり前のことなのだが、この課題を解決するサービス提供者から見ると、例えばサービスマックスのこの報告では、
市場調査会社大手ITRの調べでは、フィールドサービスマネジメント市場は2015年度、38億円の市場規模があり、2019年度には59億円へと成長が予測されている。
一方、サービスマックス自社の市場調査では、潜在的なものを含めると、世界規模で2兆円の市場規模があり、日本市場でも約2,500億円の市場が存在していると予測している。
と説明している。
切実な課題があるところには、それを解決するアプローチが生み出され、結果としてそれがマーケットを形成していく。