いきなりで何だが(笑)、こんなランキングを見つけた。
1.『のだめカンタービレ』二ノ宮知子
2.『あさきゆめみし』大和和紀
3.『ガラスの仮面』美内すずえ
4.『愛すべき娘たち』よしながふみ
5.『君に届け』椎名軽穂
6.『ハチミツとクローバー』羽海野チカ
7.『BANANA FISH』吉田秋生
8.『舞姫 テレプシコーラ』山岸涼子
9.『NANA』矢沢あい
10.『ぼくの地球を守って』日渡早紀
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分かる人はすぐ分かると思うが、少女マンガである。「CREA読者が選んだ私たちの最愛マンガ」ランキングのトップ10だ。CREAは女性誌と思うので、読者もほとんどは女性だろう。女性が読むマンガ=少女マンガ、という発想は差別的なんだろうか。少女マンガという呼び方に、抵抗を感じる人も多いかもしれないが、便宜上今回は、上記のようなマンガを少女マンガとさせて頂く。僕は、少女マンガというのは、ひとつのジャンルだと思ってるし。決して差別的な意味合いで使っているのではありませんので、ご理解下さい。
と言いつつ、実は僕は少女マンガに限らず、マンガ全般に関して、大した知識を持っていない。どういうジャンルであれ、有名な漫画家の有名な作品しか知らない。なので、このランキングを見ても、作者も作品も知らないのばかりだ。『のだめカンタービレ』はテレビ化されたのを見た。『NANA』は映画化されたから、タイトルは知ってる。どちらも、原作は読んでない。この上位10作で読んだ事あるのは、『ガラスの仮面』だけである。途中までだけど^^;
ただ、10作の中で唯一読んだ事ある『ガラスの仮面』だが、これには熱中した。いやほんと、『火の鳥』と並び称される、日本漫画界が誇る不朽の名作と言っていいだろう。何度読んでもも飽きさせない。ストーリーは説明しなくても皆さんご存知だろうが、簡単に言えば、北島マヤという演劇好きの少女が、その才能と情熱を武器に、女優として成長していく姿を描いた作品だ。けど、単なる立身出世物語ではないし、根性物でもない。芝居といっても映画やテレビではなく、舞台がメインであって、マンガの中に舞台劇が挿入されているのが斬新というか、単なる劇中劇ではなく、ストーリー展開の上でも重要な意味を持っているケースが多くて、それにより独特の世界が構築されている。『ガラスの仮面』の面白さは、この見事な構成にもある。
いわゆる、演劇界或いは芸能界の裏を暴く、という内容でもない。けど、主人公の北島マヤが演劇に深く関わっていく過程において、いじめやら中傷やらも受けたりする。ただ、凄いのは、北島マヤはその才能でもって、自分に敵対する人たちを黙らせていく、という所だ。北島マヤは、芝居が上手くなりたい、という以外には何の野心もなく、ただひたすら芝居が好きな芝居バカである。そういう彼女の才能を周囲は認め、次第にひれ伏していく。そこが痛快でたまらない。
また、このマンガには、“天才は天才を知る”てなテーマが貫かれている。北島マヤのライバルとして登場する姫川亜弓は、まだ芝居すらした事のないマヤが、行きがかり上初体験のパントマイムをしてみせるのを見て、彼女は天才だと見抜く。そして、誰もマヤに注目していない時から、彼女こそ自分の好敵手として意識し続ける。マヤを発見した月影千草にしてもそう。公園で子供を相手に、昨夜見たテレビドラマを一人で再現してみせるマヤを見て、自分の後継者はこの娘だ、と確信するのである。ちょっとしたことで、マヤの天賦の才に気づくこの2人、本当に凄いキャラクターである。
そんな、あくまでも演劇というエンタテインメントの世界に於いては、人を感動させるのは才能が全てなのだ、というメッセージが、『ガラスの仮面』を名作たらしめているのだ、と思う。当たり前のようだが、ここまでストレートに本質に迫った作品は少ないのではないか。『ガラスの仮面』は、人間ドラマとは違うのだ。北島マヤという天才が、いかにして天才であるのか、という部分を徹底的に描いている。そこに僕は熱くなるのである。
と、『ガラスの仮面』について、ここまで書くつもりはなかった(笑) 『ガラスの仮面』となると、つい語りたくなってしまうのだ(爆)
話は変わるが、少女マンガとは一種独特のジャンルであると思っている。ギャグマンガとも少年誌によくある劇画とも違う。確かに、昔は僕も女の子向けだから少女マンガなのであって、作者の大半が女性なのもそのせい、と思っていた。それは間違いでもないが、でも違うような気もする、と気づいたのは、いつ頃だったのだろう。
確か、中学2年くらいの頃と思う。父親の実家で法要か何かがあって、僕もついて行ったのだが、何もする事がなくて、ヒマつぶしに2~3年上の従姉の部屋の本棚を埋め尽くしていた少女マンガを読んでみる事にした。そしたら、どれも面白くて、数時間部屋に篭って読みふけり、呆れられたことがある。『ガラスの仮面』を初めて読んだのも、その時だった。他にも読んだけど、タイトルや作者は覚えていない。ただ、色々なテーマの作品がある事に圧倒された。ごくフツーの恋愛物もあったが(こういうのも面白くなくて、すぐ止めたけど^^;)、オカルトもの、歴史もの、SFもの、中には近親相姦などをテーマにしたシリアスなのもあり、あまりの多彩さに、少女マンガに対する認識を改めたものだ。少女マンガって、深いぞ、と。
思えば、この深さこそが、少女マンガなのだ、と言えなくもない。冒頭のランキングだが、読んだ事はないが、どれもタイプの違う作品らしい、というのは分かる。11位以下(100位まで掲載)を見ても、実に多彩である。『綿の国星』『ベルサイユのばら』は読んだことあるが、『日出処の天子』『パタリロ』『エースをねらえ』『キャンディ・キャンディ』といった所は、名前くらいは知ってる。『サザエさん』や『毎日かあさん』あたりがランクインしてたりもする(笑) 少女マンガって、実はバラエティ豊かなのだ。
ま、よくよく見ると、このランキングは「女性が選んだマンガ」というだけで、少女マンガのランキングという訳ではない。ならば、手塚治虫や藤子不二雄や石ノ森章太郎がランクインしてもいいはずだが、一冊も入ってない。やはり、女子が読むマンガと男子が読むマンガというのは、違うものなのだろう。
実際、これだけ並ぶと、あれこれ読んでみたい、という気になる(笑) 自分にとって『ガラスの仮面』を超える少女マンガは、果たしてあるのか? 山岸涼子という人は、なんとなく気になるが。
もう一度言う。少女マンガは深い。