そういえば、家でお茶漬けを食べる事が、ほとんどなくなった。
僕にとって、お茶漬けと言えば永谷園である。ご飯に顆粒状のお茶漬けの素をふりかけ、お湯を注いで食べる。この場合、ご飯は残りご飯を用いるのが常であり、当然冷たくなっていた。要するに、お茶漬けというものは、残りご飯で手早く簡単に食事を済ませようというものであり、料理と呼べるようなものではなく、なんというか、卵かけご飯と似たようなポジションの食べ物であった。
お茶漬け、というくらいだから、本来はお茶(煎茶)をご飯にかけて食べるものらしい。もちろん、その場合でも、ご飯は残り物だ。お茶漬けを食べる為に、わざわざご飯を炊くようなことはしない。昔、永谷園のお茶漬けをよく食べていた頃、試しにお茶をかけて食べてみた事があるが、それほど美味いとは思わなかった。やっぱり、お茶漬け=永谷園なのだ。
その後大学生になり、居酒屋にも出入りするようになって、メニューにお茶漬けがあるのを発見して、不思議な気分になった。僕の感覚では、お茶漬けは料理ではなく、従って飲食店で金払って食べる物ではなかったからだ。しかも、居酒屋で食べてみたお茶漬けは、僕の記憶にある物とは、似ていたけど違っていた。
店にもよるだろうが、外で食べるお茶漬けというのは、大抵だし汁をかけて、海苔やら鮭やら梅干やらの具を載せて食べるものである。そういう意味では、永谷園のお茶漬けと似ている。但し、永谷園の方が具はしょぼかった。そりゃそうだ。インスタントだし、海苔も鮭も梅も小さく少なかった。けど、そういうのが僕にとってのお茶漬けであり、居酒屋で出てくる物は、もっと高級な感じがした。今では慣れたけど(笑)
しかし、未だに、高級食材を使い、豪勢なお茶漬けを見ると、違和感を覚える。お茶漬けって、もっと庶民的というか、ちょっと腹が減った時の非常食みたいなものだ。確かに、こだわりのお茶漬けは美味いだろう。でも、違うのだ。つーか、お茶漬けが高級な食べ物であってはならない。
今でこそ、“アラフォー”なんて呼び方をするが、いわゆる30代から40代の独身女性は、昔はオールドミスなんて失礼な呼び方されて、テレビドラマなどでも、6畳一間のアパートで一人暮らししてたりなんかして、そういう女性が残業等で遅く帰ってきて、疲れた顔でお湯を沸かして、お茶漬けをかき込む、というシーンをよく見た。現代のオールドミス(つまりアラフォー)たちは、都心のキレイなマンションに住んで、いい生活してるけど、昔はそうでもなかったのだ。遅くに帰宅してお茶漬け、なんてシーンは、今ではほとんど見る事はない。ただ、お茶漬けをかき込んでいるときに電話が鳴る、なんて展開は、あまり変わってないけど(笑)
或いは、2DKのアパートに住むサラリーマンが、やはり遅く帰ってきて、家族は既に寝ていて、台所の明かりをつけて、ネクタイをほどきながらお茶漬けをかき込む、なんてシーンも、昔はよく見た。これは今でも見れそう(笑) で、一人でお茶漬けをかき込んでいると、襖が開いて寝たと思った妻が出てくる、という展開も、今でもありそうだ(笑)
と、何が言いたいのか、というと、お茶漬けとはそういう食べ物なのである、という事だったりする(意味不明)。分かって頂けるでしょうか?(爆)