いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

オリンパスの粉飾決算・・・欧米の新聞や投資家は、オリンパスを批判する資格はありません。

2011年11月09日 18時18分16秒 | 日記

オリンパスの粉飾決算には驚きました。欧米からは日本企業の不透明性と
いうことで、いろいろ批判が出ています。
 しかし、欧米には、オリンパスを批判する資格はありません。

 まず、オリンパスの事件を整理しておきましょう。
 オリンパスは1990年代の初め、バブルの崩壊によって、持っている有
価証券の時価が下がり、1000億円を超す損失が発生しました。有価証券
を売らない限りは、実際の損失ではなく、帳簿上の損失です。
 オリンパスは、この有価証券を子会社に高値で売ったことにして、損失の
発生を回避します。
 これを「飛ばし」といいます。

 実際には、オリンパス・グループとして、損失が隠されているわけです。
 ここで、持っている株の株価が上がれば、損失は消えるはずでした。
 しかし、株価が上がらないので、帳簿上の損失を抱え込んだままになって
いました。
 いつかは発覚するはずでしたが、なんと、20年間も表面化しないままで
した。
 そこで、他企業を買収した際、コンサルタント会社に多額の金を支払い、
その資金を還流させて、損失を消したというわけです。

 なぜ、それが発覚したかというと、コンサルタント会社にあまりに多額の
お金を支払ったため、イギリス人の社長に不思議に思われたというわけです。

 重要なポイントは、この事件が起きたのは、1990年代初め、つまりも
う20年も前のことだったということです。
 それが、長い間、まったく発覚せず、20年たって、表面化したのです。

いってみれば、昔の事件です。

実は、バブル崩壊後、同じように飛ばしをした会社は非常に多く、その結
果、また多くの企業が倒産しました。
ところが、オリンパスは、奇跡的に、飛ばしが発覚しなかったのです。

繰り返しますが、昔の事件です。
昔の事件が、いまごろ、出てきたのです。

欧米の新聞、フィナンシャル・タイムズはニューヨーク・タイムズは、日
本企業の不透明な体質はいまも変わっていないと批判していますが、これは
「昔の事件」です。
 「飛ばし」は、昔のことなのです。
昔のことが発覚したことを、「日本企業の体質は変わっていない」と批判
するのは、どう考えてもおかしい。
たぶん、フィナンシャル・タイムズはニューヨーク・タイムズは、いま
の事件だと思っているのです。
はっきりいって、フィナンシャル・タイムズもニューヨーク・タイムズ
も取材不足です。
取材の基本ができていません。
それがひとつです。

もうひとつあります。
  エンロンです。
  エンロンはアメリカのエネルギー会社で、2000年度の売上高は11
00億ドル、つまり、11兆円という巨大企業でした。オリンパスは比較に
もなりません。
 このエンロンで、2001年、粉飾決算が発覚しました。
 隠していた損失額は、なんと400億ドル、つまり、4兆円です。
 これもオリンパスとは比較になりません。

 損失を隠していた手法は、損失を子会社に付け替えるというもので、実の
ところ、これはオリンパスと全く同じです。
 そう。「飛ばし」です。

 むちゃくちゃでしょう。
 
 結局、エンロンは2001年12月に倒産します。
 
 さらに無茶苦茶なことがあります。
 それは、エンロンの会計監査をしていたのが、世界的な会計事務所、アー
サー・アンダーセンだったのです。
 アーサー・アンダーセンは、エンロンの粉飾決算に加担していたと認定さ
れ、結局、解散に追い込まれます。

 これだけの巨大企業が破たんしたのですから、影響は大きい。
 いま、企業で、
・ 内部統制
・ コンプライアンス
・ J-SOX
など、企業の会計をクリアにするための法律や手法が導入されています。
これはすべて、エンロンの破たんをきっかけにして、アメリカで導入され
たものです。
 そして、それが世界標準として、日本をはじめ各国の企業が受け入れて
いるわけです。
 
 ひとことでいえば、「大きなお世話」でした。
 エンロンのような粉飾決算を防ぐため、企業会計を一層厳しく管理・統
制することになりました。
 そして、何もない日本企業まで、それを導入せざるをえなくなったので
す。

 ですから、ニューヨーク・タイムズが、オリンパスの事件を
 「日本企業の不透明な体質は変わっていない」
 と批判するのは、的外れもいいところなのです。
 自分のところのエンロン事件を忘れたのかーーといいたいですね。

 もちろん、オリンパスの事件が正当化されるわけではありません。
 しかし、海外からの批判を、鵜呑みするのはやめましょうーということ
です。

 (きょうは、このすぐあとに、もう一本あります。
  TPPのことです。
  ぜひ、あわせて、お読みください)。




TPPとコメ・・・TPPで稲作は影響を受けません。農業を衰退させたのは日本の農業政策です。

2011年11月09日 12時11分16秒 | 日記

 TPP(環太平洋経済協定)への反対運動が取り上げられています。
 今朝のテレビでは、愛知県の神社で、祝いのモチを神主さんが壇上からま
いている場面が映されていました。この神主さん、テレビのインタビューに
答えて、
 「これは神事だからねえ。このモチは、外国のコメで作りたくないよね」
 と話していました。

 こういう場面を見ると、がっかりします。
 TPPに参加しても、外国のコメが入ってくるわけがありません。
 以前にも書いたように、外国のコメは、長粒米と呼ばれる粒の長い大きな
種類です。このコメは炊飯すると、ぱさぱさしてしまい、とても食べられま
せん。長粒米は、チャーハンや付け合せなど、炒めて食べるコメです。

 日本人が食べるコメは短粒米といいます。海外でこれを作っているのは、
アメリカのカリフォルニアです。いわゆるカリフォルニア米です。
 このカリフォルニア米は、炊飯して、なかなかおいしくいただけます。し
かしながら、日本のコメと比べると、どうしても味が落ちます。とくに冷え
たあとは、おいしくなくなってしまいます。
 
 コメが完全に自由化されても、日本人は、海外のコメを食べないでしょう。
 それは、ほかの製品を考えても、すぐにわかります。
 たとえば自動車です。
 いま、韓国の現代自動車が、かなりいい車を作り、アメリカや欧州ではそ
れなりの販売実績を作っています。しかし、日本では、ほとんど売れません。
周辺で、現代の車を見ることって、まずないでしょう。現代の車は、かなり
安いのに。
 それは、私たちが、日本車を買うからです。
 
 同じように、コメも、たとえ完全に自由化されても、私たち日本人は、日
本のコメを買うでしょう。
 それで、どこに問題がありますか?
 
 コメが完全に自由化されたら、日本の農業が崩壊するなどというのは、理
屈になっていません。
 反対のための反対です。

 日本の農業、とくに、コメ作りがここまで疲弊し、農業が苦しくなってき
たのは、ほとんどが日本国内の原因です。
 農水省は長い間、「減反政策」というのを続けてきました。コメが余ってき
たというので、田んぼを減らし、つまり減反し、減反に応じた農家には補助
金を出したのです。

 泣く泣く減反に応じた農家が、水田をブルドーザーでつぶし、農政に対し
て「俺たちにコメを作るなというのか」と、猛烈な不満をぶちまける場面が
減反が進んでいたころ、よくテレビニュースでも報じられていました。
 そういう場面をご覧になった方も多いと思います。
 そうやって、農水省は、みずから、水田をつぶしてきたのです。
 そして、農協も、それに待ったをかけませんでした。

 なんのことはない。
 水田を壊してきたのは、日本の農業政策です。
 外圧なんかではありません。
 
 それになにより、私たち日本人が、コメを食べなくなってしまいました。
 東京でTPP反対のデモに参加している方は、今朝、何を食べましたか?
多くの方が、もしかすると、パンでしょう。
コメを食べなくなった人たちが、TPPで日本のコメは壊滅すると叫んで
も、しようがないでしょう。

TPPに参加したからといって、日本の農業が壊滅するというようなこと
はありえません。
 逆に、TPPに参加しなくても、すでに、日本の農業は衰退に向かってい
ます。そして、その衰退は、ほとんどすべてが、日本国内の要因です。

 野田首相は、TPPに参加するのであれば、そうしたことをちゃんと説明
すればいいのです。
 神主さんに、「いや、神社でまくモチは、今後もちゃんと日本のコメですよ
といえばいいのです。
 なんで、そんな簡単なことが出来ないのかなあ。