いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

早すぎるクリスマスツリー・・・USJなど各地でツリーが点灯され始めました。いくらなんでも早すぎます。

2011年11月08日 11時15分32秒 | 日記

 大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)で、昨7日、大きな
クリスマス・ツリーが点灯されました。なんでも、LEDを世界で一番多く
使ったツリーで、ギネスにも認定されるそうです。
 その2、3日前には札幌でも大きなクリスマス・ツリーが点灯されたとい
う報道がありました。

 楽しい話題ではありますが、しかし、ちょっと待ってといいたいと思いま
す。
 いくらなんでも、早すぎませんか?

 きょうはまだ11月8日ですよ。
 クリスマスは12月25日です。まだ1か月半も先の話です。

 これがもしクリスマスではなくお正月で、いま11月8日に、大きな羽子
板とか鏡もちや、しめなわを、テーマパークやデパートで飾ったら、みんな
変な顔をするでしょう。
 だれもそんなことはしません。

 お正月なら変だけど、クリスマスなら11月の初めに大きなツリーを飾っ
てもいいーーというのでしょうか。
 クリスマス・ツリーで世界で一番有名なのは、ニューヨーク・ロックフェ
ラーセンターの巨大なツリーです。
 この点灯式には、大勢の人が集まり、テレビや新聞で大きく報道されます。
 
 しかし、このロックフェラーセンターのクリスマスツリーの点灯式でさえ、
12月に入ってから、12月の第一週の話です。

 アメリカ人は、クリスマスなど記念の日を盛大に祝うのが大好きです。
 欧州の人とは比較になりません。
 日本は戦後、なにかにつけてアメリカの影響を受けてきたので、クリスマ
スなど、季節のイベントも、アメリカのやり方を積極的に取り入れたのだと
思います。

 しかし、季節のイベントは、それぞれの土地の風土や習慣に根差したもの
です。風土や習慣を無視して、むやみに取り入れても、話がおかしくなるば
かりです。
イベントの本場であるアメリカの事情を整理しておきましょう。

アメリカの秋から年末にかけてのイベントは、次のようになります。
10月31日    ハロウイーン
11月第四木曜日   サンクス・ギビング・デー
12月25日     クリスマス

まず、ハロウイーンですが、これは、首を切り落とされた騎士が、自分の
首を求めて、毎年10月31日に家々を訪ね歩くという、アメリカの伝説、
言い伝えに基づくイベントです。
 首を探す騎士に、かぼちゃで作った首をあげるのです。そうしないと、騎
士は、尋ねた家の人々の首を剣で切り落としてしまいます。

サンクス・ギビングデーは、1620年、メイフラワー号に乗ってイギリ
スからボストンに到着した最初の移民団の話です。せっかく新天地に着いた
ものの、ボストンの冬は厳しく、移民団は、初めての冬に凍え死にそうにな
ります。それを見た現地のインディアンが、食料を提供してくれました。こ
の食料で移民団は、冬を乗り切ります。
これを記念し、インディアンに感謝する日として、サンクスギビングデー
が設けられたのです。だから、この日を「感謝祭」と訳します。

アメリカ人にとって、11月第四木曜のサンクスギビングデーは、ちょう
ど日本人にとってのお盆みたいなもので、全米に散らばった家族が、この日
ばかりは実家に集まってくるのです。
 そして、感謝をささげながら、ターキー(七面鳥)を食べます。

 実感としては、サンクスギビングデーは、アメリカ人にとって、もしか
するとクリスマス以上に大事な日かもしれません。この日は、とにかく、あ
ちこちに散らばっている家族が、両親、祖父、祖母のもとに集まってくるの
です。アメリカの映画を見ていると、大勢の家族が三々五々、集まってくる
場面がよくありますが、それはだいたい、サンクスギビングデーの日である
ことが多いようです。

そして、このサンクスギビングデーがすんで、アメリカでは、そこ
からクリスマスの支度が始まるのです。
11月の第四木曜というと、今年は11月24日です。
アメリカでは、この日までは、サンクスギビングデーの準備です。この日
までは、クリスマスではなく、サンクスギビングデーなのです。
クリスマスは、サンクスギビングデーが終わってからです。
ロックフェラーセンターのツリー点灯が12月初めなのも、同じ理由です。

だから、いま、アメリカ人が日本に来て、USJのクリスマスツリーを見
たら、間違いなく、ずっこけます。

ハロウイーンは、かぼちゃという道具があるので、日本でもだんだん普及
してきました。

しかし、サンクスギビングデーだけは、そういう背景があるので、日本に
持ってきようがありません。イギリスからアメリカにわたってきた移民がイ
ンディアンに感謝を捧げたのをきっかけに制定された日で、この日に、全米
から家族が集まってくるーーなどという風習を、日本に持ってこられるわけ
もありません。
だから、サンクスギビングデーだけは、日本では、これからも、普及しな
いと思います。

そうなると、日本では、10月31日のハロウイーンが終わったあと、サ
ンクスギビングデーがないので、いきなり12月25日のクリスマスに飛ん
でしまうわけです。
それが、日本でクリスマスツリーが異様に早い時期に点灯される理由です。

だから、逆にいえば、アメリカから見れば、奇怪な現象に見えるのです。

でも、しかし。
そんな背景をいろいろ考えなくても、11月の初めにクリスマスツリーに
点灯するなんで、いくらなんでも早すぎると思いませんか?
これはちょっとなあ、というのが素朴な実感です。