いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

東日本大震災・・・被災した石巻日日新聞が手書きの新聞を発行し、アメリカで展示されることになりました。

2011年04月17日 02時21分07秒 | 日記

 今回の地震と津波で被災した石巻市に、「石巻
日日新聞」という新聞があります。
 いしのまきにちにちしんぶん
 ではなく、
 いしのまきひびしんぶん
 と読みます。

 新聞には、
① 読売や朝日のように、全国で配られている全
国紙
② 北海道新聞や中日新聞のように、全国とはい
かないけれど、広い地域で配られているブロ
ック紙
③ 河北新報や信濃毎日のように、ひとつの県で
配られている県紙
 ーーがあります。
そして、それに加え、
④ エリア紙
 というものがあります。
 エリア紙は、県の中でも、特定の市や町だけで
配られる新聞です。
 エリア紙の発行部数は、数千部から数万部とい
うところです。1万部程度というところが多いよ
うです。全国紙は1000万部、800万部、県
紙は50万部、60万部という発行部数があるわ
けですから、エリア紙は、小さな新聞です。

 しかし、その分、地域に密着して、地域で親し
まれています。
 東京や大阪にいると、こういうエリア紙を見る
機会は、まずありません。

 石巻日日新聞は、そうしたエリア紙のひとつで
す。石巻市で発行されているエリア紙です。
発行部数は1万部ちょっとという小さな新聞で
す。

 この新聞が、地震と津波で社屋が被災し、新聞
を発行できなくなりました。

 ところが、記者たちは、手書きで新聞を作り、
壁に貼りだしたのです。
 だれもが小学校で作ったことのある壁新聞で
す。




数日間、手書きの壁新聞を作ったそうです。
 新聞記者、ジャーナリストとして、なんとして
も新聞を出したいという思いと気概を感じます。

 そして、この石巻日日新聞の壁新聞が、アメリ
カのワシントンにある新聞の博物館「ニュージア
ム」に展示されることになったのです。

 石巻に取材に言ったニューヨークタイムズの記
者がこの壁新聞に気づき、記事にしました。それ
がニューヨークタイムズに掲載され、ニュージア
ムのスタッフの目にとまったのです。
 自分たちも被災したにもかかわらず、ニュース
を届けようとするジャーナリストの活動の記録と
して、展示されるのです。

 16日にこのニュースを知ったとき、
 「やられた」
 と思いました。

 なぜ、そう思ったか?
 それは、なぜ、日本でこの新聞を展示しようと
しなかったのだろうかということです。
 なぜ、アメリカなのか。
 日本で、この記念すべき壁新聞を展示すればよ
かったのに。
 なぜ、アメリカに先を越されたのだろう。
 いや、先を越すではない。ニュージアムが展示
しなければ、日本では、どこかにうっちゃられて
しまっていたのではないでしょうか。
 
 日本にも、新聞協会があり、横浜に新聞博物館
があるのです。
 アメリカに先駆けて、新聞協会なり、新聞博物
館が、気がつけばよかった。
 気がつけばよかった、というより、
 「これはすばらしい」
 と感じるセンスがあるかどうかですね。

 この原稿、私は、自戒を込めて書いています。
 私も、この壁新聞のことは知っていましたし、
写真でも見ました。
 しかし、そのとき、私は、
 「この新聞は展示して保存するべきだ」
 とは思わなかったのです。
 私は、自省しないといけません。

 アメリカ人は、ヒーローが大好きで、いつも、
ヒーローを作ろうとします。
 石巻日日新聞は、そういう意味で、ヒーローと
して取り上げられたのだと思います。
 そこは、日本と風土がまるで違います。

 しかし、それは、エクスキューズです。
 やはり、石巻日日新聞の壁新聞の価値を、私も
含め、日本の報道関係者、新聞関係者は、気づく
べきでした。
 今回は、アメリカにやられました。
 深く反省しましょう。
でも、石巻日日新聞のみなさん、よかったです
ね。こんなときに変な言葉ですが、「おめでとう
ございます」。
本当によかったと思います。