いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

福島原発・・・放射線量が健康に影響のないことを証明するのは難しい。

2011年04月04日 01時57分36秒 | 日記

 悪魔の証明という言い方があります。
 「やってない」ことを証明するのは、不可能だという
ものです。
 
 どこかで、なにか、ものが無くなったとします。
 あいつが怪しいということになって、みんなで問い詰
めます。本当は、その人は、なにもしていません。
 「お前だろう」 
 「知らないよ」
 「お前が取っただろう」
 「そんなことしないよ」
 「じゃあ、証明してみろ」
 ・・・と、こういう展開になります。
 こういう展開になると、最悪です。
 やってないことを証明するのは、ほとんど不可能です。

 では、どこに問題があるか。
 実際は、「やっただろう」と問い詰める側が、その人が
やったことを証明しないといけないのです。

 きょうは、あえて、誤解を恐れずに書きます。

 福島原発の事故、放射能漏れの話です。
 枝野官房長官や保安院が、
 「測定された放射線量は、いますぐ健康に影響の出る
ような量ではありません」
 と答えます。

 これに対し、つい、
 「政府は嘘をついている」
 「政府は本当のことを言ってない」
 と言いたくなります。
 「本当?」
 という感じです。

 しかし、では、健康に影響は出ないということを、ど
うやって証明できるでしょうか。
 無理でしょう。
 それは、悪魔の証明というものです。

 ここでいま、「危なくない」ということを言おうとしてい
るのではありません。

 そうではなく、「政府は本当のことを言ってない」と、
つい言いたくなるような政府の対応が問題だろうと思う
のです。

 原発事故で、放射線がどう広がるかをシミュレーショ
ンする「スピーディ」というシステムがあります。私自
身、今回、それを初めて知りました。
 担当は原子力安全委員会です。
 ところが、スピーディは、事故が起きてすぐにシミュ
レーションをし、どこまで放射線が拡散するかという図
まで作ったのに、原子力安全委員会は、何日も公表しな
かったのです。
 会見で追及された委員長は、
 「まだ確定した数字じゃないので」とか、
 「放射線の数値が低く、公表しなくてもいいと思った」
 とか、いろいろとエクスキューズをしていました。
 こういう態度が、
「政府は本当のことを言ってない」
 という不信を生むのです。

 そしてまた、「いますぐ健康に影響の出るような量では
ない」というのであれば、そこをもっと懇切丁寧に説明
するべきでしょう。
 枝野官房長官は、今回、よくやっていると思いますが、
しかし、彼とて、
「なぜ、そのぐらいなら影響がないのですか」
「ではどのぐらいになれば危ないのですか」
 と聞かれて、答えられるはずもないのです。

 だから、枝野長官が「影響はありません」というので
あれば、専門家がついて一緒に会見するとか、あとか
ら改めて説明するとか、そういうことが必要なのです。

 ただ「影響はありません」というだけだと、結局は、
「悪魔の証明」を要求され、逆効果になりかねないの
です。
 どうしてそこが分からないのでしょう。

 これ以上「悪魔の証明」を求められないうちに、
菅政権は、ちゃんと対応する必要があるでしょう。
 そして、それが、「風評被害」を防ぐことにも
なるのだと思います。