福島原発の事故に対応する責任は、どこにあるのでしょう。
東京電力でしょうか?
政府でしょうか?
責任者は、だれでしょうか。
菅首相と政府は、責任は東京電力にあるという考えのようです。
しかし、結論をいえば、どう見ても、責任は政府にあります。
政府が責任を持って対応すべきものです。
事故が起きたあとの菅首相の言動を見ると、トラブルがあったと
きは、責任を東電に投げようとする姿勢がはっきり出ます。
水素爆発で発電所の建屋が壊れたときは、東電に乗り込み、「撤退
するな」「撤退すると東電はつぶれるぞ」と声を荒げました。
これは、事故処理は東電がやれということでしょう。
先週末には、会見で今後の見通しを聞かれ、
「東電に事故処理の工程表を作るよう指示した」
と答えました。
これは、事故処理は、東電が計画を立ててやりなさいということ
です。
どちらも、事故処理の主体は東電だよーーといっています。
首相としての当事者意識に欠けるのです。
考えてもみてください。
仮に、海外から「原発事故をどうやって収束させるのか、その
工程を教えてほしい」と要請されたとします。「仮に」と書きま
したが、間違いなく、要請されています。これだけの事故で、放射
線を出しているのですから、当然でしょう。
そのとき、、首相が
「いま東電に作らせています」とか
「東電がまだ作ってきませんので」
とか答えたら、こいつはアホかと思われますよ。
国内の農家への補償もそうです。出荷制限をかけたのは政府で
しょう。
20キロ圏の避難にしてもそうです。避難指示を出したのは、政府です。
原発に事故があり、実際に放射線が出てしまった段階で、もう、
東電だけではどうにもならなくなります。
責任は政府のものです。
菅首相と政府は、矛盾したことをたくさんします。
福島原発の事故で計画停電することが明らかになった3月14日
の週の半ばには、海江田経産相が突然会見し、「きょうは、電力需要
が多いので、突然、急に停電する可能性があります」と話しました。
これは、東電の停電を、政府が発表したわけです。
こういうときだけ、政府が発表するというのは変です。
原発の周辺に放射線に汚染された水がたまり、やむなく、汚染水
1万トンを海に放出しました。
当然、あちこちから猛烈な抗議がありました。
抗議を受け、政府は東電に「周辺自治体などに、もっとしっかり
連絡するように」と伝えます。
しかし、放射線で汚染された水を放出するなど、東電だけの判断
でできるはずもありません。当然、国が決定にかかわっているはず
です。東電の停電を経産相が発表するのであれば、周辺自治体など
への連絡も、政府がやるべきでしょう。
この汚染水の放出には、ロシアや韓国、中国からも抗議がありま
した。では、ロシアや韓国、中国にも、東電が連絡するべきだった
のでしょうか。そうだとすれば、外交も東電がやることになります。
そんなばかなことはないでしょう。
節電のこともそうです。
企業など大口需要者には家庭以上に節電する必要があります。
そこで経産省が、企業の担当者を集め、節電を要請しているので
す。
汚染水の放出は東電が関係者に連絡しろといい、節電は経産省が
要請する。
こんな筋の通らない話はないでしょう。
こうしたことをまとめてみると、はっきり、ひとつの傾向があり
ます。
トラブルを招くやっかいなことは東電にやらせて、節電要請など
手を汚さずにすむことは政府がやるーーという姿勢です。
政府が全面的に責任を取れば、政府の対応も腰がすわります。
責任を取ろうとしないから、ふらふらするのです。
逆に、すべては東電に責任だというのであれば、そもそも、保安
院の会見は不要です。保安院は口を出さず、東電にまかせておけば
いい。
保安院の会見は、いつも、「東電によりますと」で始まります。
保安院は、情報をすべて東電から得ているのです。
菅首相と政府は、どうしてこうも責任を回避しようとするのでし
ょう。
なさけないですね。
役人は責任を回避するのが特徴です。それは彼らの習い性となっ
ています。
それをしっかり押さえ込み、指示・命令するのが、政治の責任で
す。
政治は、いまこそ、しっかりしないといけないのです。
菅首相には
「私がすべての責任を取ります」
「すべての避難民を救済します」
と言ってほしいですね。
そうやって、希望を持てるようなことを言ってほしいですね。
菅さん。
うそでもいいから、
「避難された方、被災された方は、一人残らず救います」
「私がすべての責任を持ちます」
と、言いませんか。
首相たる者、希望の言葉を吐いてほしいと思います。