秋場所14日目、阿炎を下して勝ち越しを決めた栃ノ心(右)=2018年9月22日、
◇「一番うれしい勝ち越し」
残り1日となった大相撲秋場所。横綱稀勢の里の他にも特別な気持ちで千秋楽を迎える力士がいる。14日目(22日、東京・両国国技館)、
大関栃ノ心が阿炎を下して勝ち越しを決めた。思いもよらなかった昇進2場所目のかど番。ようやくピンチを脱し、これまでにない勝ち越しの味をかみしめた。
栃ノ心「さらに上目指す」=大関昇進披露宴で抱負-大相撲
前日6敗目を喫し、「駄目だ」と弱気になっていた栃ノ心。この日の取組前、部屋付きの岩友親方(元幕内木村山)は気をもんでいた。
「心配ですよ。我々はモチベーションを上げる手伝いしかできないんで。いろんな人たちの力でここまで来たことを、誰よりも分かって
いる力士だから、やってくれると思いますけど」この日はやや立ち遅れ気味。阿炎のもろ手突きにあごが上がりかけたが、下からあてがって相手の力をそらし、
抱きかかえるように左を深く差した。縦みつの辺りをつかみ、右も入れて前へ。左からたたき付けるような下手投げで転がした。
息を弾ませて戻った西の支度部屋。出迎えて握手を交わした岩友親方によると、栃ノ心の目には涙が浮かんでいたという。風呂から出て報道陣の前に座り、
「やっと勝ち越した。今まで勝ち越した中で一番うれしい勝ち越し」と大きく息をついた。
◇「また自信をつけたい」
1月の初場所で初優勝。5月の夏場所後に大関へ昇進した。勇んで臨んだ名古屋場所。初日から5連勝と波に乗りかけて、6日目の玉鷲戦で右足親指の付け根を痛め、
休場を余儀なくされた。まさに好事魔多し。天国から地獄だった。秋場所に備えて夏巡業で体を動かしたが、本格的に関取衆と申し合いを始めたのは番付発表後。
場所直前になっても調子が上がらず、「足の運びが悪い。踏み込む時に不安がある」と曇った表情で初日を迎えた。
幸先よく2連勝のスタートを切ったものの、無意識のうちに右足親指の先が浮く。不十分な下半身を補おうと、上半身に力が入る。3日目、貴景勝に引き落とされた。
手応えを確かなものにできないまま、一進一退。12日目の白鵬戦はやむを得ないとしても、13日目の正代戦は左上手を取れないまま強引に寄り、すくわれて豪快にひっくり返された。
この日負ければ、千秋楽の高安戦にかど番脱出を懸けるところで、何とか勝ち越し決定。「場所前の稽古で勝てなくて自信をなくしていたしね。場所に入って緊張もしていた。
(こんな)経験はないですから」。苦しかった場所を正直に振り返る。
横綱の声も掛かろうかという勢いの中で、経験したピンチだった。名古屋場所前の状態に戻して、再び挑戦を始めなければならない。「稽古して、また自信をつけたい」と栃ノ心。
課題は「立ち合いからのまわしの取り方」という。鶴竜戦で横綱を外四つからつり上げ、「人間クレーン」などといわれたが、まわしの位置が深いと無理が出る。
右足親指のけがや膝の古傷をケアして、上半身と下半身のバランスも修正する必要がある。白鵬が健在ぶりを示し、稀勢の里はひとまず危機脱出の10勝目。豪栄道、
高安の先輩大関陣も2桁勝ち星を挙げた。栃ノ心が自信を取り戻せば、九州場所は上位陣が厚みを増しそうだ。
◇「一番うれしい勝ち越し」
残り1日となった大相撲秋場所。横綱稀勢の里の他にも特別な気持ちで千秋楽を迎える力士がいる。14日目(22日、東京・両国国技館)、
大関栃ノ心が阿炎を下して勝ち越しを決めた。思いもよらなかった昇進2場所目のかど番。ようやくピンチを脱し、これまでにない勝ち越しの味をかみしめた。
栃ノ心「さらに上目指す」=大関昇進披露宴で抱負-大相撲
前日6敗目を喫し、「駄目だ」と弱気になっていた栃ノ心。この日の取組前、部屋付きの岩友親方(元幕内木村山)は気をもんでいた。
「心配ですよ。我々はモチベーションを上げる手伝いしかできないんで。いろんな人たちの力でここまで来たことを、誰よりも分かって
いる力士だから、やってくれると思いますけど」この日はやや立ち遅れ気味。阿炎のもろ手突きにあごが上がりかけたが、下からあてがって相手の力をそらし、
抱きかかえるように左を深く差した。縦みつの辺りをつかみ、右も入れて前へ。左からたたき付けるような下手投げで転がした。
息を弾ませて戻った西の支度部屋。出迎えて握手を交わした岩友親方によると、栃ノ心の目には涙が浮かんでいたという。風呂から出て報道陣の前に座り、
「やっと勝ち越した。今まで勝ち越した中で一番うれしい勝ち越し」と大きく息をついた。
◇「また自信をつけたい」
1月の初場所で初優勝。5月の夏場所後に大関へ昇進した。勇んで臨んだ名古屋場所。初日から5連勝と波に乗りかけて、6日目の玉鷲戦で右足親指の付け根を痛め、
休場を余儀なくされた。まさに好事魔多し。天国から地獄だった。秋場所に備えて夏巡業で体を動かしたが、本格的に関取衆と申し合いを始めたのは番付発表後。
場所直前になっても調子が上がらず、「足の運びが悪い。踏み込む時に不安がある」と曇った表情で初日を迎えた。
幸先よく2連勝のスタートを切ったものの、無意識のうちに右足親指の先が浮く。不十分な下半身を補おうと、上半身に力が入る。3日目、貴景勝に引き落とされた。
手応えを確かなものにできないまま、一進一退。12日目の白鵬戦はやむを得ないとしても、13日目の正代戦は左上手を取れないまま強引に寄り、すくわれて豪快にひっくり返された。
この日負ければ、千秋楽の高安戦にかど番脱出を懸けるところで、何とか勝ち越し決定。「場所前の稽古で勝てなくて自信をなくしていたしね。場所に入って緊張もしていた。
(こんな)経験はないですから」。苦しかった場所を正直に振り返る。
横綱の声も掛かろうかという勢いの中で、経験したピンチだった。名古屋場所前の状態に戻して、再び挑戦を始めなければならない。「稽古して、また自信をつけたい」と栃ノ心。
課題は「立ち合いからのまわしの取り方」という。鶴竜戦で横綱を外四つからつり上げ、「人間クレーン」などといわれたが、まわしの位置が深いと無理が出る。
右足親指のけがや膝の古傷をケアして、上半身と下半身のバランスも修正する必要がある。白鵬が健在ぶりを示し、稀勢の里はひとまず危機脱出の10勝目。豪栄道、
高安の先輩大関陣も2桁勝ち星を挙げた。栃ノ心が自信を取り戻せば、九州場所は上位陣が厚みを増しそうだ。