おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
『人生を<半分>降りる―哲学的生き方のすすめ』(中島 義道著、ナカニシヤ出版、新潮OH!文庫・ちくま文庫にもあり)を読み終えました。
この哲学者、中島義道氏の本は、以前から書棚にあったのですが、そのまま読まずに数年。ところが、『人間の覚悟』 (五木 寛之著、新潮新書)を読み終えてから急に読みたくなりました。
50歳を超えてから、この人生で「何をすべきか」がわからないでも、だんだん「何をなすべきでないか」がわかりかけてきた著者は、「人生を半分降りる」、つまり「<半分>隠遁する」ことをひとつの積極的な生き方だとし、序章「あなたは間もなく死んでしまう」を次のように結びます。
人生においてせいぜい2番目に重要なことにすべての時間を捧げて、いちばん重要なことをおろそかにする。にもかかわらず、自分は充実した豊かな人生を送っていると思いこみがちになるだけに、ますます危険であるといえましょう。
序章以降の構成は、以下のとおりです。
1章 「繊細な精神」のすすめ
2章 「批判精神」のすすめ
3章 「懐疑精神」のすすめ
4章 「自己中心主義」のすすめ
5章 「世間と妥協しないこと」のすすめ
6章 「不幸を自覚すること」のすすめ
終章 そして、あなたはまもなく死んでしまう
4章、5章、6章では、次のような明快な書き方をしています。
○人生を<半分>降りること、すなわち<半隠遁>とは自己中心的でなれば実現しないことなのです。自分の生き方を最優先する。妻や子や親たりとも、二の次にする。そのように「冷酷な」人間でなければ実現できません。(4章)
○人生を<半分>降りること、すなわち<半隠遁>のすすめとは、「みなさん、もっと子供になりましょう!」「もっともっと、徹底的に子供になりましょう!」ということなのです。 (4章)
○<半隠遁>の要は<半分>だけ人を避けるということです。 (5章)
○「繊細な精神」 「批判精神」「懐疑精神」をもって「自己中心主義的」に「世間と妥協せずに」生き抜くと、会社でも学校でも、つまり残しておいた<半分>の人生風景も変わってくる。・・・・(中略)・・・・ですから、―当然の帰結ですが―「哲学的生き方」をまかりまちがって選ぶと、あなたはかならず<世間的には>「不幸」になります。そして、それでいいのです。まさにこうした不幸を選び取ること、不幸を覚悟し、不幸に徹して生きつづけること、これこそ<半隠遁>の醍醐味なのですから。 (6章)
以下は私なりの感想です。
この本は、人生後半の生き方のようであり、その実、「陰の時」を含めた下山期の生き方の提案書です。
そのエッセンスは、人生の「トリビアルなこと」(些細なこと、どうでもいいこと)を減らし、「エッセンシャルなこと」(本質的なこと)を模索しなさい、と説いているように思われてなりません。
この本をキッカケに、本を読むなら古典や哲学・心理学・宗教書をもっと読み、ハウツー物をしばらく遠ざけよう、という気持ちになりました。
<お目休めコーナー> 我が家の花瓶から③
