学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

BBカード(みほん市のセミナー)での気づき

2014年12月12日 | 講演会・勉強会

*ブログの文字サイズを変更できるようにしました。(右カラムの一番上)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先日、神戸の勤務校で「こども英語みほん市」を開催しました。

6名の実行委員がかなりがんばって全国から8教室を招いて

セミナーを開くことができました。

 

今回のテーマは「文法」と「読み書き」でしたが、

民間の児童英語では、どのようにこの二つに取り組んでおられるのか興味津々でした。

参加してくださった教室のなかには、

私が以前生徒として受講させていただいたところもありましたし、

初めて見せていただく教室もあり、楽しみにしていました。

 

 

今回、興味深かったのは、SELM(セルム)の、

「BBカード」を使った指導です。

 

BBカードというカードは、創設者の難波悦子先生のオリジナルで

特許も取得されています。

そのカードを使って、ビンゴなどをして遊びながら

センテンスを呪文のように唱えているのです。

 

教材だけは以前購入していたのですが、

それだけを見ていても、

何をしているのか、また、それが何の力を伸ばしているのか、

「?」だったのです。

「BBカードって、なにやってるんだろう?」と思っていました。

 

 

BBカードは、

韻を含んでいる短文を使った絵カードと文字カードがあります。

その短文も、文法項目やよく使う表現などがとてもよく考えられて組み込まれています。

それを子どもたちが「教えられている」と思わないまま、

まずはフレーズをまるごと覚えてしまうくらい遊ぶのです。

授業ビデオを見てると、子どもたちがむにゃむにゃと上手にセンテンスを言いながら

カードをひっくり返したりしています。

よくまああんな沢山の文章を覚えちゃったもんだわ、と思います。

 

ですが、BBカードの目的は、

そういった、文の暗記にあるのではないということが、今回よくわかりました。

 

英語の音韻認識の一番基礎にあたる、

文から語の感覚を育て、

文字へと徐々につなげていきながら、

文の構造も同時に身につけていくことを目差している指導法であると思います。

 

 

 

 

 

今は、フォニックスに注目が集まっていますが、

フォニックスは、

それ以前の音韻認識が獲得されているという前提で導入するものです。

 

ですので安易に日本人がフォニックスからスタートするのは、

私は賛成していません。

フォニックスは必要ですが、

スタート地点じゃないだろう、と思っています。

 

 

下の図は見にくいですが、英語の音韻認識の構造です。

 

音韻認識(phonological awareness)は、年齢の発達と共に発達しますが、

英語の場合は、日本語にはないオンセットーライム(onset-rime)という単位があり、

その上に、音素(phoneme)があります。

 

よく混同されますが、

音素意識(phonemic awareness)と音韻認識(phonological awareness)は異なります。

音素意識は、音韻認識に含まれるものです。

音素意識ではその言語の最小単位ー英語では音素のみーを表しますが、

音韻認識では、

言語に含まれるすべての音とその操作が含まれます。

つまり、ピラミッドのすべての音とそれに関わる活動です。

音の操作は、単位の大きなものから徐々に細かなものへと育ちます。

 

その頂点の音素操作ができるようになると、

音素と書記素のつながりのルール、つまりフォニックスを習得する準備ができると言えます。

その発達の個人差は大きいですし、また、音素の操作活動をすることで、

下位の音韻認識が伸びるという結果もありますが、

基本は、ピラミッドの下から上へ、です。

 

 

音は、足したり引いたり置きかえたりすることができます。

 

意味のある最も大きな音の単位は、「文」です。

 

例えば、始めて聞く言語を耳にしたとき、

どこからどこまでが文章なのか、わかりませんよね。

 

でも、ジェスチャーや状況などから、

例えば

「●●●●●●●!」が

「水が飲みたい」かな?

 

と推測し、「●●●●●●」という音と意味が結びつきます。

 

そののち、「●●●●●●●●」という音の一群が、

実は「●●△△□□」という3つの「語」からできている、ということに気づきます。

 

一連の音の流れが、

いくつかの意味をもった音の単位の連結であるという認識ができるようになるのです。

 

この、語の意識が育つと、

 

語レベルの音の操作、

 

つまり文中で語の入れ替えが可能になります。



 

「●●」が「水」だったとしたら、

それを「ジュース」に置きかえて、

「ジュース飲みたい」とすることができるようになります。

  

 

このように、

それをまずは意味をもったセンテンスとして認識できるようになる段階があり、

その文の中の音を、一つ一つの語として認識できるようになり、

それができれば単語を置きかえて話すことができるようになります。

文法構造が感覚的に身についていくのもこの段階でしょう。

 



 


視覚的に表現してみます。うまくできるかな。

文は、音の大きな固まり。


                                                              

 

という風に聞こえていたことが、


実は、


                                            


↑こんな風な”意味の固まり”=語 が合わさっていたということに気づく。

 

         は、その後さらに細かく            といった”音”が合わさってできている、

ということに気づき、その単位の入れ替えなどができるようになります。

このようい徐々に細かい音の操作ができるようになるのが自然な発達ですが、

日本では、            からいきなり書かせてますし、

フォニックスは          いきなり細かいのです。


 

  

読み書きは、その言語の基本の音の単位の操作ができるようになって、

それを文字という記号に置きかえ、

ようやく文字での操作ができるようになるのです。

 

ですから、英語の場合は、音素レベルまでの音の操作ができることが、

音素レベルの文字(アルファベット)の操作に欠かせないのです。


でも、それも焦らず、

まずは、英語の文と語の音の感覚を育てることが基本です。

 

わたしは、BBカードは、

文の単位の音韻認識から、語の単位へと非常に自然に育てていける教材だろうと思います。

 

繰り返しを非常に多くし、意味も同時に理解し、

うまく使えたら最終的には、

例文にある文体なら、使いこなせるようになるのではないでしょうか。

 

文字通り、音、意味、そして文字までを有機的に結びつけることを目差しています。

64枚のカード、多い!と最初思いましたが、到達点を考えると、むしろ少ない。

 

セミナーの中で難波先生が、

「BBカードをやった子は、語感が育っているのでその後がすごく早いのです」

とおっしゃっていましたが、納得です。

 

ただ、あのカードだけでは、指導のバリエーション、

そして文構造の理解へと気づかせる重要なポイントについてはわかりません。

指導者の工夫と勉強が必要なのでしょう。

セミナーもあるようですし。

 

 

 

学習障害のある子の多くは、

音韻認識の弱さや、音と文字の結びつきの弱さが指摘されています。

 

小学校から英語を学ぶのであれば、

いきなり文字を教えたり、

いきなり音素レベルのフォニックスを教えたりするのではなく、

ゆっくり何年も時間をかけて、

文レベルからの音韻認識や語の感覚、文の構造の感覚を育てられれば、

どれだけ多くの子が、

読み書きだけじゃなくて、文法も自然に身につけられるだろうか~、と

思い描いてしまいました。

 

 

大変参考になったセミナーでした。

 

 

経験に裏打ちされた民間の英語教育には、

まだまだ発掘できる宝があるんだろうなと思っています。

 

 

 

そして、帰って早速BBカードを自分の子ども(6年)に試してみました。

(新しい教材はたいてい我が子が実験台に・・・)

 

うちの子は、耳は非常に良く、

また、中学1年生程度の教科書なら、たぶん普通の中学生並みには読めます。

 

なので、"Betty Botter bought some butter."

くらいの文、すぐリピートできるでしょ、

と思ったら!!!

驚くくらいできませんでした!!!びっくりー。

 

彼はもともと聴覚短期記憶が弱いのですが、

見事に音をホールドすることができません。

 

数字だったら8桁、9桁覚えられるんですが、びっくり。

(数字は意味があったから覚えられたんだ・・・・・)

 

リピートさせた文の意味は教えていないので、

音だけを手がかりとした記憶って、難しい子には難しいんだわ、と改めて認識。

 

自分は英語はできる、と思っていただけに、

すごく悔しそうでした!

 

おそらく文字を見せたらすぐ覚えるんでしょうが、あえて今回は見せません。

これがどう変わっていくのかしばらく見てみようと思いまーす。

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿