世に生まれ世を生き抜きて星流る 海人
秋簾ほぐれし糸の二つ三つ
秋暁の枕の深きくぼみかな 薪
一房の葡萄の骨や皿の上
二百十日折りたたみたる犬の耳 洋子
独り身の余生は愉し虫しぐれ
名月や隣も窓の開く音 貴美
とんぼ追う子らの姿は今はなし
山見えて鳥居が浮いて黄金波 さくら
新涼や自転車止めて研屋さん
突然にパァーと忘れず彼岸花 鞠
テレビの中精進料理秋の中
ガラス戸をゆらり登るやいぼむしり 豊春
静寂を更に深めるちちろ虫
智の果てに宇宙戦争星月夜 炎火
曇天の崩れ落ちゆく秋の雨
一家族揃うてつばめ帰りけり 歩智
秋の空臥龍三頭並びおり
誰も来ぬ敬老の日に庭木伐る 余白
ジィ一と鳴き今年の終わりを告げる蝉
唸るごと風が風呼ぶすすき原 稱子
竹林を抜けて修善寺彼岸花
茸採り夕餉の椀は爺の味 裕
雲や雲その頂にいわし雲
日射しふる変わる季節に蝉時雨 沙会
盆の入り赤い鬼灯届きけり
脱力の生き方を得し秋の雲 雲水
鈴虫を鳴かせる胡瓜鰹節
とても珍しい 10月、山桜の帰り花(狂い咲き)