友人が朝日俳壇を持って来た。今週は、久し振りにそれぞれの選句の中に私の好きな句があった。
さて、その中の一句、この句の具体的なものと言えば、「故郷」と「暑」のみである。「ふるさとをきっぱり捨てた」とは、どういうことであろう。父母や家屋、田畑が故郷にあっては、「きっぱり捨てて」とは決して言えないはずだ。つまり、作者は若者ではないだろう。
帰る家や土地を全て処分して、都会に住む人なのだ。「暑に耐ふる」と言っても、最近はエアコンなる物があって室内ならば快適に過ごすことはできるが、田舎の涼しさに勝るはずはなく、多少の後悔があっても不思議ではない。
「きっぱり捨てた」と言っているが、多少どころか、「暑に耐ふる」作者にとって、大きな代償と後悔を伴っているに違いない。
タツナミソウ(立浪草)