【写真:マルホの彦根工場内に展示されているベルリンの壁の一部(彦根市で)】
「ベルリンの壁」が崩壊して20年になるのを機に、製薬会社「マルホ」(大阪市北区)が彦根工場(彦根市)に保管している実物の壁(高さ3・6メートル、幅1・2メートル、厚さ20センチ)が8日から、東京・赤坂で展示、公開される。今年夏、ベルリンで世界陸上選手権が開かれるのに合わせ、同じ国民が強制的に引き裂かれた歴史の〈証人〉に接してもらい、平和の尊さを伝えるのが狙い。
壁は、冷戦時代、亡命を恐れた東ドイツが旧西ベルリンを囲むように建設。総延長は155キロ。東西対立の象徴とされたが、東欧諸国の民主化で1989年に崩壊した。
マルホが所有する壁のブロックはコンクリート製で、西ベルリンに面した側には、黄、赤、黒のスプレーで「R」の文字などが描かれた落書きが当時のまま残されている。裏には、国境検問所「チャーリー」からの位置を示す「28」の数字が記され、最上部には人が乗り越えにくくするため、丸い管が施されている。
崩壊当時、テレビニュースを見た高木二郎名誉会長(89)(当時会長)が「手元に置いて、社員にも平和を実感させたい」と考えたのを、提携先のドイツの会社が知り、「古希のお祝いに」とプレゼントされた。90年7月から、同工場の敷地に設置し、2007年からは劣化を避けるため、玄関ホールに移して展示している。
これまでも工場見学に訪れた地元の人や関係者らに披露してきた。今年は「崩壊20年」に当たることから、より積極的に壁の存在を知ってもらおうと、ベルリン世界陸上選手権のPRを兼ねて、“東京出張”が決まった。
大阪・神戸ドイツ総領事館によると、本来の高さを保った壁のブロックは西日本に4か所あるという。
マルホ広報部の担当者は「壁の存在を知らない世代にも、現物を直接見てもらい、冷戦の過去と平和の今を実感してもらいたい」と話しており、壁が戻って来る9月以降は、再び工場で一般公開する。
(7月3日付け読売新聞・電子版:7日付け京都・電子版も報道)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20090702-OYT8T01063.htm
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20090707ddlk25020560000c.html