滋賀市民運動ニュース&ダイジェスト

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【1004/211:殺人事件時効廃止】県内3件が時効廃止/遺族「事件見届ける」

2010-04-28 23:52:11 | Weblog
【写真:ベッドの上で妻の遺影を見つめる高岡卓爾さん=東近江市蒲生岡本町 / 殺害された高岡慶子さん]

 殺人事件などの公訴時効を廃止する改正刑事訴訟法が4月27日、施行された。対象となる県内3件の未解決事件の被害者の遺族からは歓迎の声が上がる一方、弁護士は時効撤廃の危険性を指摘する。(堀川勝元)

 2000年6月の殺人事件で妻慶子さん(当時65)を亡くした東近江市蒲生岡本町の高岡卓爾さん(77)は、時効があと5年余りと迫る中、改正法の成立を迎えた。「月日がたつのは早い。時効が来るなんて考えたくなかった」と、10年前を振り返った。

 慶子さんは自宅近くの畑に草刈りに出かけたまま家に戻らず、翌朝、畑近くの雑草地で遺体で見つかった。高岡さんは遺体を直視できず、ブルーシートからのぞく慶子さんの指に触れるのが精いっぱいだった。

 慶子さんは毎日のように畑に出かけ、料理で使う野菜を育てていた。ジャガイモの収穫期だった事件直前には「大きいのがとれた」と喜んでいた。事件後は高岡さんが畑の手入れを続けた。

 だが6年前、自身も脳梗塞(こう・そく)で倒れ、今も右半身にまひが残る。一時は寝たきりの生活だった。懸命のリハビリでつえをついて歩けるまでに回復したのは「事件を見届けるまではくたばれない」という思いがあったから、という。寝室には、いつでも慶子さんと会話できるよう遺影をテレビの横に置いている。

 昨年の春には県警の捜査責任者が訪ね「責任を持って犯人を捜す」と言ってくれた。今も2~3カ月に1回のペースで刑事が自宅を訪ねてくる。「私の目が黒いうちに何とか犯人を見つけてほしい。そうじゃないと妻が浮かばれない」

■「捜査進展に望み」県警/「冤罪の危険性も」弁護士

 県警は今も未解決事件について関係者の聞き込みなどの捜査を続けている。捜査幹部は「時効に追い込まれるのは遺族にとってたまらないこと。何が何でも犯人を捕まえたいという思いでやっている」と話す。別の幹部は「一般に事件は時間がたつと新事実が出てくることは少なくなるが、時間の経過とともに口を開く関係者も出てくる」と、望みをつなぐ。

 一方、滋賀弁護士会の刑事弁護委員長を務める永芳明弁護士は「犯罪被害者の意見を無視するべきではないが、時効には意味があり、幅広い視点から十分な議論を尽くすべきだった」と話す。危惧(き・ぐ)するのは、時効廃止により冤罪の危険性が高まることだ。時間の経過とともに記憶が薄れ、目撃者が間違った証言をする事態も起こりうる、という。

■時効廃止の対象となる県内の未解決事件

〈事件名〉蒲生町岡本における主婦殺人・死体遺棄事件
〈発生・覚知〉2000年6月27日
〈概要〉東近江市蒲生岡本町(旧蒲生町岡本)の雑草地で朝、近くの主婦高岡慶子さん(65)の遺体が見つかる。首を絞めて殺害され、鈍器のようなもので頭を殴られた跡があった。前日の朝に畑仕事に出かけ行方不明になっていた。

〈事件名〉JR野洲駅北口公衆トイレにおける強盗殺人事件
〈発生・覚知〉2006年6月30日
〈概要〉野洲市のJR野洲駅近くの公衆トイレで、同市冨波乙の無職石田勝さん(82)が暴行を受け死亡。現金が奪われる。県警は土木作業員の男性を強盗殺人容疑で逮捕したが、大津地検は嫌疑不十分で不起訴処分に。

〈事件名〉琵琶湖岸におけるバラバラ殺人死体遺棄事件
〈発生・覚知〉2008年5~6月
〈概要〉近江八幡市の琵琶湖岸など6カ所で切断された男性の頭部や手足が次々と見つかる。遺体の身元が分かっておらず、警察庁の「捜査特別報奨金」の対象事件に指定される。

※年齢はいずれも当時

(4月28日付け朝日新聞・電子版)

http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001004280003



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