中国電力が上関原発を計画する山口県上関町の町長選が9月25日投開票され、原発推進派の現職、柏原重海(かしわばらしげみ)氏(62)=無所属=が反対派で新人の前町議、山戸貞夫氏(61)=同=を破り、3選を果たした。福島第1原発の事故後、原発新設計画のある自治体としては初の首長選挙。野田佳彦首相は新規原発建設に否定的なため、柏原氏は原発なき後の町づくりも見据えた選挙戦を展開して圧勝した。当日有権者数は3206人。投票率は87・55%(前回88・08%)。
圧勝の背景には、原発建設への逆風に対して推進派が結束しただけでなく、原発なき町づくりには行政経験豊富で2期8年の実績を持つ柏原氏が必要と判断されたようだ。
82年の原発計画浮上後、推進派はこれで9回連続勝利。有効投票得票率はおおむね「推進6、反対4」で推移したが、今回の67・36%が最高となった。
福島原発事故後は各地に「脱原発」の機運が拡大。柏原氏は原発推進の姿勢は変えないものの、国策変更もにらみ「原発を想定しない町づくりを、選挙後に発足させる検討会で話し合う」と有権者にアピール。原発建設が実現しない場合、国に何らかの支援を求める意向も示していた。
柏原氏は当選後、支持者らに「国のエネルギー政策の扱いは不透明。我々が30年国を信じ、国に疑いを持たず、原発を推進してきたことをしっかり受け止めてほしい」と、原発なき後の支援を改めて国に求めた。
一方、反対派のリーダー的存在の山戸氏は8年前にも柏原氏と町長選を戦い落選。今回は「原発建設推進が国策の時代は終わった。原発交付金よりも安心安全な生活が一番」と主張したが及ばなかった。【小中真樹雄】
==============
■解説
◇頓挫を想定、実績に託す
上関原発の構想が表面化した82年以降の上関町長選で、原発推進派は連勝を「9」に伸ばした。現職の柏原重海氏が圧勝したが、民意が原発推進を100%支持したのではなく、建設が極めて厳しくなった今、原発なき町づくりを実績のある現職に託した面が強い。
柏原氏は福島第1原発事故を受け、6月町議会で原発財源に頼らない町づくりに言及。原発に不安を感じた人や建設の実現性に疑問を持ち始めた人にも支持されたとみられる。
原発計画浮上以来、同町には計約45億円の「原発マネー」が投入された。人口は30年前の半分の約3500人で、半数が65歳以上を占める。「町の税収は先細る一方」という柏原氏の危機感は、原発交付金が消滅すればさらに高まるだろう。
町は国策に翻弄(ほんろう)された面もあり、原発計画中止となった場合の国の支援を柏原氏は期待している。しかし国に依存するだけでは、新たな町づくりは見えてこない。「原発抜き」を想定した町政運営方法を早急に示す必要がある。
原発推進、反対を超えて町内をまとめ、原発がなくても安心して暮らせる町の将来像を描くため、選挙後には地域ビジョン検討会(仮称)が発足する。上関町はどんな未来を描くのか。国のエネルギー政策や、全国の原発立地自治体の今後にも一石を投じそうだ。【遠藤雅彦】
==============
●上関町長選確定得票数●
当 1,868 柏原重海=無現<3>
905 山戸貞夫=無新
(9月26日付け毎日新聞・電子版)
http://mainichi.jp/seibu/seikei/news/20110926ddp001010003000c.html
圧勝の背景には、原発建設への逆風に対して推進派が結束しただけでなく、原発なき町づくりには行政経験豊富で2期8年の実績を持つ柏原氏が必要と判断されたようだ。
82年の原発計画浮上後、推進派はこれで9回連続勝利。有効投票得票率はおおむね「推進6、反対4」で推移したが、今回の67・36%が最高となった。
福島原発事故後は各地に「脱原発」の機運が拡大。柏原氏は原発推進の姿勢は変えないものの、国策変更もにらみ「原発を想定しない町づくりを、選挙後に発足させる検討会で話し合う」と有権者にアピール。原発建設が実現しない場合、国に何らかの支援を求める意向も示していた。
柏原氏は当選後、支持者らに「国のエネルギー政策の扱いは不透明。我々が30年国を信じ、国に疑いを持たず、原発を推進してきたことをしっかり受け止めてほしい」と、原発なき後の支援を改めて国に求めた。
一方、反対派のリーダー的存在の山戸氏は8年前にも柏原氏と町長選を戦い落選。今回は「原発建設推進が国策の時代は終わった。原発交付金よりも安心安全な生活が一番」と主張したが及ばなかった。【小中真樹雄】
==============
■解説
◇頓挫を想定、実績に託す
上関原発の構想が表面化した82年以降の上関町長選で、原発推進派は連勝を「9」に伸ばした。現職の柏原重海氏が圧勝したが、民意が原発推進を100%支持したのではなく、建設が極めて厳しくなった今、原発なき町づくりを実績のある現職に託した面が強い。
柏原氏は福島第1原発事故を受け、6月町議会で原発財源に頼らない町づくりに言及。原発に不安を感じた人や建設の実現性に疑問を持ち始めた人にも支持されたとみられる。
原発計画浮上以来、同町には計約45億円の「原発マネー」が投入された。人口は30年前の半分の約3500人で、半数が65歳以上を占める。「町の税収は先細る一方」という柏原氏の危機感は、原発交付金が消滅すればさらに高まるだろう。
町は国策に翻弄(ほんろう)された面もあり、原発計画中止となった場合の国の支援を柏原氏は期待している。しかし国に依存するだけでは、新たな町づくりは見えてこない。「原発抜き」を想定した町政運営方法を早急に示す必要がある。
原発推進、反対を超えて町内をまとめ、原発がなくても安心して暮らせる町の将来像を描くため、選挙後には地域ビジョン検討会(仮称)が発足する。上関町はどんな未来を描くのか。国のエネルギー政策や、全国の原発立地自治体の今後にも一石を投じそうだ。【遠藤雅彦】
==============
●上関町長選確定得票数●
当 1,868 柏原重海=無現<3>
905 山戸貞夫=無新
(9月26日付け毎日新聞・電子版)
http://mainichi.jp/seibu/seikei/news/20110926ddp001010003000c.html