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【1109/143:原発老朽化問題】原発に潜むリスク:フクシマから半年/4 (毎日新聞)

2011-09-16 00:02:58 | Weblog
 ◇老朽化示す脆性遷移温度の上昇 原子炉容器「廃炉の基準に」

 「原発の高経年化(老朽化)が事故の発生、拡大の起因になったということはありません」

 東京電力福島第1原発事故から3カ月後の6月21日。福井県庁3階会議室では、経済産業省原子力安全・保安院の黒木慎一審議官が、向かい合う満田誉副知事に国の見解を説明していた。副知事は「長年使ったことによる傷みがなかったとまで断じきれるのか」と険しい表情で批判し、会議は物別れに終わった。

 同事故後、県は「事故の知見を反映した安全基準が示されない限り、定期検査中の原発の再稼働は認めない」と明言してきた。要求には高経年化の知見の反映も含んでいたが、国は事故への影響を否定し続けている。

 長年、原子力の“トップランナー”を自負してきた福井県。商業炉13基のうち、国が老朽化の状態を評価させる節目となる「運転開始から30年を超えた原発」は8基に上る。炉心溶融事故を起こした福島第1原発の3基は、71~76年に運転開始の古い炉だった。事故は他人事ではない。

 「古い原発には色々な問題が起きているはずだ。危険度の高いものは閉鎖しないといけない」。原発の劣化問題などを研究する井野博満・東京大名誉教授=金属材料学=は訴える。理由の一つが、原子炉容器の老朽化の程度を示す指標「脆(ぜい)性遷移温度」の数値の上昇だ。

 原子炉容器の鋼材は、核分裂で炉心から生じる中性子に長期間さらされると、粘り強さが低下し、脆(もろ)くなる。脆さの程度を示すのが脆性遷移温度で、素材の粘り強さが失われるにつれ数値は上昇する。脆くなった容器は、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動して冷却水を注入した場合、急激な温度変化に耐えられず破損する危険性があるとされる。

 各電力事業者は、原子炉容器と同じ材質でできた試験片を容器内に固定し、数年~十数年ごとに取り出し、同温度を算出してきた。データは試験片の材質や置き場所などによってばらつきがあるが、県内の原発は美浜原発1号機の81度を筆頭に全国ワーストクラスだ。しかし各事業者は分析の結果、「健全性に問題はない」と評価してきた。

 これに疑問を投げかけたのが、今年になって判明した九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町、75年運転開始)の同温度の急上昇だ。93年は56度だったが、09年には国内最高の98度になった。井野名誉教授は「同じ鋼材でこれほど急速に上昇することは考えにくく、鋼材の場所により材質にばらつきがあることを示している。60~70年代の鋼材は技術的にも未熟だったのでは」と語り、同時代に多く作られた福井県内の高齢原発にも警鐘を鳴らす。

 井野名誉教授は、今後について「安全側に立つなら、脆性遷移温度の高い原発は廃炉の候補になり得る。一定の数値を定め、超えたものは止めてもいいのでは」と主張。原発全般についても「老朽化は配管の減肉、ケーブルの劣化、応力腐食割れなど、他にもさまざまなものが考えられる。原発は非常に複雑な機器で全てをチェックすることは不可能で、老朽化したものは止めるべきだ」と提言している。【安藤大介】

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 ◆県内原発の運転年数(15日現在)

敦賀1号 41

美浜1号 40

美浜2号 39

高浜1号 36

高浜2号 35

美浜3号 34

大飯1号 32

大飯2号 31

高浜3号 26

高浜4号 26

敦賀2号 24

大飯3号 19

大飯4号 17

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 ◇図の見方
 「母材」は原子炉容器(鋼鉄製)と同じ素材の試験片。「溶接金属」は溶接部分と同じ素材の試験片。年月は試験片の取り出し時期。

(9月1日付け毎日新聞福井版・電子版)

http://mainichi.jp/area/fukui/news/20110915ddlk18040593000c.html