市民団体「市民運動ネットワーク滋賀」(池田進代表)は県議会9月議会の初日である9月18日、出原逸三県議会議長と県議会各会派に対して、政務調査費に関するすべての領収書の提出を義務付けることや議会の傍聴に際して録音や撮影を許すよう傍聴規則を改めることなど、議会改革についての要望書を手渡しました(関連ニュース番号0704/04、4月2日)。
同団体によれば、これらの要望事項は今年4月の県議選に際して全立候補者を対象に実施したアンケート調査の結果に基づいたものとされています。要望書では政務調査費について、すべての領収書の提出を義務づけること、領収書と会計帳簿をインターネット上で公開すること、政務調査のために内外の視察旅行を行なった場合は正確な報告書の提出を義務づけることも求めています。
議会での傍聴に関しては、三重県議会の例を挙げて、現状では原則禁止とされている録音や撮影を自由に行えるよう傍聴規則を改めるよう訴えています。
また、現行の政治倫理条例は政治倫理審査会の開催要件が厳しすぎるために実効性が欠ける条例でありとして、一定数以上の市民から要請があれば審査会を開けるよう制度を改正することなどを求めています。
さらに議員などによる「口利き」を記録化する県の制度に関して、もっと実効性のある厳しいものにするよう求めています。
同団体による要望書の詳細は以下の通りです。
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県政の公正性と透明性を高めるための要望書
2007年9月18日 市民運動ネットワーク滋賀
■要望1:政務調査費のあり方に関す要望
(1) 金額に関係なく、すべての領収書(1円以上)の提出を義務付けること。
(アンケート調査における提言20:賛成議員26人、反対議員0人、賛成率55.3%)
《理由》 現行の制度では1万円以上の場合にのみ義務づけられています。しかし1万円以下の出費が少なくないこと、領収書を分割して1万円以下にすることにより提出を免れることが可能であることが考えられため、透明性を高め、不適正な使用を防ぐためにすべての領収書を提出義務の対象とすべきです。国会では、ご承知のように、政治資金収支報告書に関して1円以上の出費に関して領収書添付を義務付ける案が検討されつつあります。政務調査費は公費から支出されるものであることを考えた場合、早急にこの当然の義務づけが実現されることを、強く望みます。
(2) 領収書と会計帳簿をすべてインターネット上で公表することを義務付け、市民が議員の政務調査費の使途を常時知ることができるようにすること。
(アンケート調査における提言22:賛成議員23人、反対議員0人、賛成率48.9%)
《理由》 インターネットで広く市民に公表することで、政務調査費の実態を知らせ、そのことにより政務調査の使途の公正性と透明性が高まります。たとえば、東京都世田谷区は領収書、会計帳簿をインターネットで公開することを決めています。まだ数は多くありませんが、すでに自主的に自分のホームページで公表している地方議員も全国に存在しています。
(3) 条例において政務調査費での飲食を禁止すること。
(アンケート調査における提言23:賛成議員28人、反対議員0人、賛成率59.6%)
《理由》 飲食代に使用することは政務調査費の本来の目的から逸脱しています。公明党議員たちが政務調査費の不正使用で辞職した東京都目黒区の監査委員はこのような勧告を行っています。また県内でもすでに飲食への使用を禁止している自治体が存在しています。
(4)「政務調査」あるいは 「政務調査」のために国内外の視察を行った場合は、調査対象、調査目的、調査費用、調査の成果などを具体的に記載した「調査報告書」の提出し、公表することを義務づけること。
(アンケート調査における提言21:賛成議員28人、反対議員0人、賛成率59.6%)
《理由》 報告書が出されている例もありますが、その内容は不十分で大雑把なもの、あるいは単なる感想に過ぎないようなものが数多く見受けられます。このような大雑把な報告書では、果たしてその調査がほんとうに必要であったのか、「政務調査」の名に値するものであるか否か判断できず、政務調査費の無駄遣いの原因になりかねません。政務調査を行なったのであれば、とくにその目的と調査の成果などを明確に記した報告書を作成し広く公表すべきです。
上記の要望事項1の(1)、(2)、(3)について、前記のアンケート調査では半数以上あるいは半数近くの議員が賛成されており、いずれの事項においても反対議員は皆無でした。したがってこれらの私たち市民の要望を実現することは十分に可能であると考えられます。早急に議会において政務調査費制度を上記のように改善されることを要望いたします。
■要望2:議会傍聴制度のあり方に関す要望
議会の委員会も含めて、議会において、原則として傍聴者が自由に録音、撮影を行なうことができるよう、議会・委員会の傍聴規則を早急に改めてること。
(アンケート調査における提言36:賛成議員11人、反対議員4人、賛成率23.4%)
《理由》 現状では許可されるのはメモのみであり、滋賀県議会傍聴規則では傍聴者による録音および撮影を禁止することが明記されています(同規則第7条8項)。議長の許可を得た場合はその限りではないとされていますが、現実には報道関係者以外の一般市民は録音や撮影を許されていません。議会制民主主義の根幹である議会や委員会を直接傍聴し自由に記録することは有権者である市民の基本的権利であり、したがって議長は誰もが納得のいく特別な事情がない限りは、一般市民にも録音・撮影を行なうことを認めるべきであると考えられます。この意味から現行の議会傍聴規則における制約は明らかに厳し過ぎます。
県議会本会議はインターネットで中継されているのですから、本会議の録音・撮影を禁じなければならない理由はないはずであると言えます。三重県議会は2003年に傍聴規則をあらため、傍聴席での写真、ビデオ撮影、録音などを解禁しており、傍聴規則からこの禁止条項を削除しています。また県内でも、余呉町議会においては本会議の録音・撮影は届出制であり、実質的に一般傍聴者が自由に録音・撮影を行うことが許されています。また、議会傍聴規則において傍聴者による録音・撮影を原則禁止ではなく、議長の承認(許可)制にしている地方議会も存在しています(例:東京都千代田区議会傍聴規則)。
私たちのアンケート調査では議員の賛成率は非常に低かいものでした(4人に1人弱しか賛成していませんでした)。しかしながら、議会や委員会で議員が審議を行い質問や提案などを行なうことは議員としての最も重要な公務であることを考えた場合、最も重要な公務の遂行を、すなわち議員として議場での発言や行動を市民に記録されたくない議員が過半数をはるかに超えていることは、市民として理解に苦しみます。このような状態では県議の方々が県民に開かれた議会を志向しているとはとても考えられません。賛成率は低いものでしたが、県民に対する議員の基本的な責務と有権者である市民の基本的権利をしっかり自覚され、全会派が一致協力して、早急に議会傍聴規則を改め、傍聴者による録音・撮影を原則として許可するよう要望いたします。
また議会の諸種の委員会で実質的な審議が行なわれることが多いことを考えた場合、委員会に関しても、傍聴規則を改め、同様に自由な傍聴者による自由な録音・撮影を原則として許可するよう要望いたします。
■要望3:県政治倫理条例のあり方に関する要望
現行の政治倫理条例は大きな欠陥を有しており、そのため実効性に極めて乏しく、議員の政治倫理を律するための有効な方策として役に立ちません。条例を以下のように改め、実効性を有するものにすることを強く要望いたします。
(1) 現行の県政治倫理条例における政治倫理審査会の開催要件を大幅に緩和し、一定数以上の市民から要請があれば審査会が開催されるように制度を改めること。
(アンケート調査における提言26:賛成議員19人、反対議員0人、賛成率40.4%)
《理由》 滋賀県でも近年、議員や元議員による汚職や不祥事が少なからず発生しており、その意味において政治倫理審査会の存在は非常に重要です。しかし、現行の条例では、2会派以上にわたる1/3以上の議員の賛同がなければ、市民から要請があっても倫理審査会は開かれないことになっています。このような開催要件は明らかに厳し過ぎます。というのは、このような要件では県議会の大会派の多数の議員が賛同しなければ審査会は開かれないことになるからです。このため現行の政治倫理条例は実効性に著しくかけ、実際に政治倫理審査会が開かれる可能性は非常に小さいと言わざるを得ません。これでは政治倫理条例は有名無実の存在に過ぎず、政治倫理条例が設けられている意味がありません。
政治倫理審査会は市民の開催請求に基づき開かれることが必要です。また議員の賛同を必要とする場合でも、現行の条例のような厳しい条件を課さず、数名程度の議員の賛同を条件とすべきです。たとえば、土浦市の場合、「市民100人以上の連署と当該疑惑を証するに足りる資料を添え、その代表者から議長に審査を請求することができる」(同市条例第6条)とされています。また福岡市の場合は50人の市民による連署が開催請求の条件とされています。さらには、市民一人でも請求権がある自治体もあります(藤代町、大野城市、久留米市、宗像市等)。請求に際して人数に関する規定がある自治体は恵庭市(有権者の500分の1)、香芝市・龍ケ崎(100分の1)、土浦市(100人以上)などです。これらの例を参考に、一定数以上の市民(たとえば100人~1000人程度)からの要請があれば審査会が開かれるように現行の制度を改めるべきです。
(2) 政治倫理審査会のメンバーには議員を含めないものとし、審査会を公募による住民と有識者のみで構成するように制度を改めること。あるいは議員を委員に含める場合は、議員の委員と同数以上の、公募による一般市民の委員を含めるようにすること。
(アンケート調査における提言27:賛成議員20人、反対議員0人、賛成率42.5%)
《理由》現行の制度では、委員は12人以内とされており、議員と学識経験者のみで構成、その内訳は各会派1人以上+2人以上の学識経験者となっており、市民を代表する委員は含まれていません(他の自治体の場合、委員数は7名の場合が多いようです)。議員の政治倫理を審査するための機関であるのに、議員が委員の大半を占めているのでは、審査の公正性・中立性を期待することは困難です。したがって審査会は、議員を含めず、市民と有識者により構成されるべきです。現に、議員を審査会の構成員に含めないことを明確に規定している自治体もあります(例:福岡市、福井市、竹田市など)。議員を含める場合は、少なくとも議員の委員の数は最小限に留めるべきであり、議員と同数以上の公募による市民の委員を入れるべきです。
アンケート調査における政治倫理条例に関する要望への賛成率は、いずれも半数には達していませんが、約40%以上の議員の方々が賛成しており、反対者はいません。政治倫理条例をほんとうに実効性を有する存在とするために、議会で早急に検討されるよう要望します。
■要望4:「口利き」記録制度の改善に関する要望
(1) 県の現行の制度では記録化に際して働きかけのあった相手に内容をあらためて確認する手続きが必要とされていますが、このような手続きを条件とすることは記録かの制度の実効性を大きく損ないます。したがって、この相手への確認手続きを不要とするよう制度を改めること。
(アンケート調査における提言17:賛成議員23人、反対議員4人、賛成率48.9%)
《理由》 「口利き」記録化の制度は主に議員からの不当な圧力を防ぐことを目的にしたものです。県の制度の正式名称は「県職員に関する働きかけについての対応要領」です。この「要領」は文書化されていますが公表されていません。現行の県の制度では「職務上のある行為をさせたり、あるいはさせないように強要する行為、適正な行政判断や事務処理を妨げる行為」が口利きとされています。記録化に際しては相手に内容を再確認することが必要とされています。
都道府県と県庁所在地など全国約120の自治体のうち約4分の1の自治体で記録化の制度が設けられていますが、記録化に際して確認を要しないとする自治体と確認を条件とする自治体が存在しています。記録化に際して、相手にあらためて確認を行なうことを義務づけた場合、職員が確認を行なうことをためらい、記録化を怠る可能性が大きくなるものと考えられます。このためこの制度の実効性が疑われ、実態が明らかになりません。滋賀県の場合、平成16年4月から実施されていますが、平成16、17年度、口利きは0件であったとされており、口利きはまったくなかったことになっていますが、他府県の実態と比べた場合、滋賀県のこの数字は信じがたいものです(アンケート調査添付資料4:朝日新聞07年2月25日)。このような弊害をなくし、この制度に実効性をもたらすために、記録化にあたって確認の行為を不要とするように、制度を改める必要があります。
(2) 口利き記録化の対象者を明確に規定すること。
(アンケート調査における提言18:賛成議員25人、反対議員2人、賛成率53.2%)
《理由》現行の制度では対象者は特には規定されていませんが、この制度は特に現職の議員らとその関係者を対象としたものであるはずです。その意味で議員を中心にその対象者を明記すべきであるといえます。議員を中心に対象者を規定するよう要望いたします。
たとえば三重県では、知事ら三役、国会議員、県議、市町の首長と議員、その各元職、秘書、親族の他、知事の秘書と親族、業界団体の役員、県職員OBらが対象とされています。
(3) 「強要あるいはその疑い、または適正な行政判断や事務処理を妨げる行為」(県の要領における規定)があったか否かにかかわらず、単なる照会を除き、すべての外部からの働きかけを、要望や提案、意見なども含めて、を記録化し、公表の対象とするよう制度を改めること。
(アンケート調査における提言19:賛成議員25人、反対議員1人、賛成率53.2%)
《理由》 現行の制度は「強要またはその疑いがあった場合、適正な行政判断や事務処理を妨げる行為」があった場合とされていますが、強要か否か、妨げたかどうかの判断が難しい場合があり、記録化に値するか否かの判断を職員に任せる制度では、記録化をためらったり、記録化すれば議員ににらまれるなどの懸念が生じます。制度に実効性を持たせために、また公職にある議員の行為を透明化する意味でも、記録対象を強要の限るのではなく、提案や要望も含めてすべての働きかけを記録化し、公表すべきです。
以上の「口利き」記録化制度の改善に関する3項目の要望に関して、議員の方々の半数近く、あるいは半数以上の方が賛成されています。したがって、これらの要望は十分に実現可能であると思われます。議員自らがその行為を律するために、県に働きかえ「口利き」に関する県の要領を上記のように改善すること、あるいはこの制度を県の「要領」に留めずに、上記の要望に沿って条例化することに議会のみなさんが尽力されるよう要望いたします。以上
(9月19日付け京都、9月27日付け毎日の報道+直接取材により加筆)
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/shiga/news/20070927ddlk25040507000c.html