針路に舵を取れ

　昨年の夏に大学の先生を介して知り合った若者。当時彼はある目標を持っていた。その目標を達成した年末に彼から連絡が入った。目標達成の報告とこれからの進路について相談したいとのことだった。

　実は彼、面識は無かったが高校、大学（同学科）の後輩に当たり、そして業界でも先輩となる私。そういうこともあって、大学の先生が私と彼を結びつけたのだろう。

　一つの目標を達成した彼は、これから環境を変えて再び建築を目指す道に歩を進める決心をした。そのために同じ境遇で育った私にアドバイスをもらいたいと言うのだ。

　私も東京からUターンしたときは、再就職に向けて相談できる人間がいなく孤独な思いをした。彼も今そんな境遇に違いない。地方の建築業界の事情なんて雲をつかむような話。少しでも彼の力になればと、自分なりの言葉でアドバイスをする。

　

　真剣な彼のまなざしは、13年前の自分を思い出させる。私は彼に自分の若いときをオーバーラップしていたのかもしれない。

　私の言葉を彼はどう捉えたのか。彼の羅針盤は今、確かな方向を指し始めたに違いない。安易に流されず、自分の信じる方向に進んで欲しい。そうすれば、コロンブスのように大陸は発見できるはずだ。針の指している方向は間違っていない、いや力強く大陸を指しているはずだ。針路は決まった。