徒然なるままに…建築家のボヤキ。。。

I・N設計スタジオ ブログ

OLAHO物語-4

2024-07-03 08:03:46 | 店舗新築・リニューアル・リノベーション
 年末にクライアント夫婦は当事務所を訪れてくれた。いよいよプレゼンである。

 イメージスケッチと平面レイアウト図でプレゼンをするが、夫婦のレスポンスが私の思っていたものではなかった…。

 

 気に入って貰えてないのか…という一抹の不安な気持ちが私の心の中に浮かんでくる。

 息子さんが重い口を開いた。その言葉は厨房レイアウトに向けられた。こんな厨房器具を入れたい、この機器は不要である等々。

 自分なりに頭の中で厨房での作業内容、動線等々を試行錯誤している模様だ。朴訥に話す息子さんだったが否定的ではない…。

 厨房レイアウトと厨房機器の選定は今一度夫婦で整理することとなった。

 

 そうすると奥さんが店舗デザインのことについて堰を切ったように話し始めた。

 1階はカジュアルに、2階は落ち着いた雰囲気のソファ席ででカップル、ファミリー向けにしたい等々。

 今まで1回しか会ってない若夫婦と私。特に奥さんとはあまり言葉を交わしていなかった…。

 しかし店舗デザインの件でかなり奥さんとコミュニケーションをとることができ、なんとなく私と若夫婦の距離感がぐっと近くなったと感じたのである。

 打合せ中に時折見せる奥さんのはにかんだ笑顔、朴訥だが確信を射るように話す息子さんの姿に、修正点はあるがファーストプレゼンの結果は悪くなかったと感じ始めた。

 厨房機器の選定と厨房レイアウトの整理をすること、デザインの方向性をもう少し整理することをお互いの宿題にしてこの日は打合せを終了し、2日後に厨房の件を中心に再度打合せをすることにした。

 店舗デザインの方向性を話していたときに、奥さんの言った言葉が私の中に強く印象に残った…。「2階はエロい感じで…。」

 ~つづく~
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OLAHO物語-3

2024-06-26 08:30:39 | 店舗新築・リニューアル・リノベーション
 かくして設計を依頼されたN.Dining計画。

 既存建物は以前店舗を営んでた3階建ての建物でおおよそ築60年。酒田の中心街にあるうなぎの寝床の敷地にある。

 隣のビルとはわずか30cmほどの隙間しかなく、もはやどこが敷地境界なのか判別しづらい…。

 

 息子さん夫婦は東京のレストランで働いている為打合せ時間と方法は限られる。

 まずは設計するにあたって、私から聞きたいことをヒアリングシートとして送った。

 ヒアリングシートの回答から、肉料理やパスタを中心にしたダイニングバーといった感じの店を念頭においてること、パスタやパンケーキなどが得意なこと、1階と2階をお店として使用したいこと等々読み取れた。

 早速ヒアリングシート片手に手を動かし、店舗レイアウト、イメージスケッチ等々を作成し始める。

 彼ら夫婦が年末年始に帰省する際にファーストプレゼンをすることにしたが時間的な余裕はない。

 巷ではすでにクリスマスの飾り付けがされ、暦は12月も初旬から中旬に入っている。

 頭の中にダイニングバーのイメージやパスタ、パンケーキが錯綜する中ファーストプレゼンに向け作業を続けた…。

 ~つづく~

 ~本文と写真は関係ありません~
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OLAHO物語-2

2024-06-20 07:48:11 | 店舗新築・リニューアル・リノベーション
 既存図面を作成して知人に提出したのが2016年9月上旬。すぐには何のレスポンスもなかった。

 11月の休日。自宅でのんびりしていると携帯が鳴った。その知り合いからだった。

 

 息子夫婦が酒田に帰省して来ている。店舗予定地で一緒に荷物の片付けしているから、息子夫婦を紹介するから今から来れないだろうか。

 そんな電話の内容に身支度をして現地に駆けつけた。そこには知り合いと一緒に片づけをしている息子さん夫婦がいた。

 第一印象…知り合いのイメージからは想像できないお母さん似の息子さんと可愛げな奥さん。

 初対面ということで、夫婦は少し私に対して警戒心を持っているように感じた。そりゃそうだ…。

 私がこれまで設計させて頂いた店舗の実例写真を提示し説明をする。それに真剣に聞き入る夫婦。そんな時間が10~15分流れたか…。

 息子さんはバリアが少しずつ解けた様子で、私の店舗実例を見ながら質問が帰って来た。

 息子さんと受け答えをし、しっかりしてる息子さんだなと感じた。横で奥さんはまだバリアが解けてない様子で黙っている…。

 息子さんや知り合いの義理父に促されて、奥さんが声を発したのは紹介されてから30分ほど経っていたであろうか。

 

 酒田で飲食店を出すに当たって誰に設計を頼めばいいのかも知らず、かと言って東京にそんな知り合いの人間がいる訳でもないと息子さん。

 知り合いである父親が一言言った。「碇谷君にやってもらうか。」息子さんは一言「お願いします。」とだけ言った。

 その横で奥さんは黙って頷いたのか、頷かなかったのか私の記憶は定かではない…。

 いずれにせよ、こうして知り合いの息子さん夫婦の飲食店を設計することが決まったのだ。2016年11月下旬のことだった。

 ~つづく~

 ~本文と写真は関係ありません~
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OLAHO物語-1

2024-06-12 08:18:13 | 店舗新築・リニューアル・リノベーション
 当事務所で設計監理させてもらい、2017年10月にオープンした「Shonai Bar OLAHO」の設計過程を再度連載で綴ります。


 2016年の6月、設計したカフェの工事現場で私がうろちょろしているとその前を知り合いが通った。

 知り合いの自宅はそのカフェのすぐそば。これからカフェを営むクライアントとも顔見知りだった。そんな偶然ばったり会った知り合いにこう言われた。

 そうか…お前がいるか…。その意味が理解できなかったが、2ヵ月後にその知り合いから電話がかかってきた。

 長男が東京のレストランで修行をしているが、夫婦で酒田に帰ってきてレストランをやる。場所は決まってる。相談に乗ってくれないか。

 まずは色んな計画をするにしても、既存建物の図面がないから平面図を作成して欲しい。

 設計を君に依頼するか否かは本人たちが決めることだから、父親の俺が決めるのもな…。

 俺からはまず既存の図面を起こすことを依頼したい…。という内容だった。

 

 この知り合いの方には、酒田に帰ってきてから大変お世話になっている。

 奥様も、娘さんも、娘さんの夫も良く知ってる。数年前の娘さんの結婚式には招待状をもらい出席させて頂いた。

 どうなるか分からないのを承知でとりあえず既存図面を起こすことに協力することにした。

 場所は酒田市の繁華街の一角の古いビル。現在は使っていない。話を聞いたらこのビル、奥様方の親の持ち物で数十年前までここでお店を経営していて上階に住んでいたと言う。

 私が高校生の頃(30年前)にはこの場所でお店はしていなかったと記憶している。

 実際現地を見てみるとRC造と木造の混構造。しかも木造のほうの外壁は朽ちていて損傷がひどい。

 この日各部の実測をしたが、レストランとして再生するには相当手を入れないといけない。

 数日後に平面図を描き上げ知り合いに提出した。これがこの計画のプロローグ、昨年の9月初旬の話であった…。

 ~つづく~
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引き寄せられた縁-6~焼肉さとるちゃん物語~

2024-05-01 07:57:05 | 店舗新築・リニューアル・リノベーション
 融資申請は当初の予定より2、3日遅れて許可が下り工事開始の号砲がなった。

 

 クライアントとの出会いから3ヶ月弱。突貫スケジュールでよくここまで来たものだ。

 しかし勝負はまだ先が長い。オープン日も4月末と内々で決定し、これから工事に係る訳だが工事自体も突貫。 

 バックミラーを見るように、後ろを振り返る余裕すら今のクライアントと私には無い。前を見据え只ひたすら一歩ずつ歩を進めるだけ。

 

 以前の焼き鳥店にあった玄関扉、トイレ扉、囲炉裏座敷、客席カウンターを残し、以前のイメージを踏襲する焼肉店。

 常連客が再び足を踏み入れた時に、「あぁ~以前の店の雰囲気だ、懐かしい。」と言って貰いたい。

 奥には古民家風の客席が広がる。手前から家族向けの広間、4人用の半個室、そして一番奥に6人用の個室。

 奥の部屋に行けば行く程、高級感、重厚感、神秘感が高まるデザインとしている。

 亡きマスターの面影とともに、元常連客が設計し元常連客が運営する古民家焼肉店。

 「古民家焼肉さとるちゃん」は2017年4月末オープンします。

 ~終わり~
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