徒然なるままに…建築家のボヤキ。。。

I・N設計スタジオ ブログ

心療内科なごみクリニックで何を考えたのか-5

2017-01-24 09:31:06 | 医院・クリニック新築
 工事が始まってからクライアントとの打合せで話題になったのは、クリニック名とロゴマークだった。

 そこで知り合いのデザイナーの協力を得てロゴマークの提案に取り掛かる。

 安心・安全を売るクリニックの医療コンセプト、先生のイメージからイメージキャラクターを熊にする案が第一候補に挙がった。

 熊をモチーフにしたロゴを図案化してみると、ホッとして落ち着く感じで安心・安全を売るという医療コンセプトには合致するのだが、何か今ひとつ決め手に欠けた。

 それは熊が持ってるイメージやキャラクターが小児科的だという意見が多数あったからだ。

 そこから2、3、キャラクターの候補を挙げた中から選ばれたのが「ふくろう」。

 ヨーロッパでは「知恵」「賢者」を表すと言われている。また「不苦労」「福を呼び込む」という意味も有り、ふくろうをモチーフにしてロゴマークのデザイン化を進めていくこととなる。

 さて、クリニック名は当初「やすらぎクリニック」という仮称だったが、「やすらぎ」にかわる安心、落ち着きを表す言葉を私から数案提案した。

 その中から先生が選んだのが「なごみ」というフレーズ。「和む」から取ったフレーズであった。

 なごみクリニックとロゴマークはこうやって決まり図案化したロゴがこれ。

 

 このロゴマークと院名での開院が決定。今も地域に愛される心療内科としてふくろうが笑っている。


 ~終わり~
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心療内科なごみクリニックで何を考えたのか-4

2017-01-20 08:52:08 | 医院・クリニック新築
 設計時になごみクリニックの先生に何を要望されたか。

 それは精神的に落ち着いた気持ちで患者さんに診察を受けて欲しいという観点から、木を使って落ち着きや温もりあるクリニックとしたいということだった。

 

 その要望とともに他のクリニックと一風変わった差別化を図ったデザインにしたいというファクターを私なりに加味しようと思った。

 なぜなら建設地周辺には他の科目のクリニックが点在するクリニック街。歩ける範囲に片手では納まらない数のクリニック。そのクリニック街で埋もれない様にしたいそんな思いだった。

 患者さんは土足のまま診療を受けるスタイルであるが、待合室の床はフローリングブロックを使用しし、天井にも木ルーバーや木の梁型を表しにした。

 また、心療内科に通っていることを第三者から周知されたくない患者さんが多いと聞く。クリニック内部の様子が外部に漏れないように表通り側の開口部にも木製ルーバーを設置し、クリニック、患者さんのプライバシーにも配慮した。

 

 それとは対象的に通りの逆側には壮大な田園風景と遠くには霊峰月山が存在する。この素晴らしい風景を眺め心を落ち着けてから診察に臨んで欲しい。そんな思いもあって、待合室のピクチャーウィンドウからは壮大な景色が広がる。

 実際に患者さんにもこのピクチャーウィンドウは好評のようである。

 心を診るクリニック。気持ちを安定、落ち着けることが一番の良薬なのかもしれない…と思ったのである。


 ~つづく~
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心療内科なごみクリニックで何を考えたのか-3

2017-01-18 08:50:23 | 医院・クリニック新築
 心療内科なごみクリニックで配慮した各室の設計上の注意点をあげてみる。

 

 診察室

 心療内科の場合、家族とともに診察を受けることも少なくない。一緒に診察に来た家族の為のイス等を置く広さが求められる。

 また、医師と患者さんは机を介して対面配置の場合が多いが、対面配置は敵対性を助長するとも言われ90度のコーナー配置とすることも多々ある。

 


 処置室

 処置室で行う作業は採血や血圧を測る、点滴を取る程度なのでそんなに広いスペースは不要である。

 
 相談室(面談室)

 初心の患者さんの問診や臨床心理士等によるカウンセリングを行う。特別な医療器材は必要ないのでなごみクリニックでは6帖の広さに設定した。


 院内薬局

 最近は院外薬局とするケースが多いが、心療内科で扱う精神薬は高価なものが多く、小さな調剤薬局では扱っていないこともあるためやむなく院内薬局とするところもある。

 また、精神薬を薬局で購入するするのを嫌がる患者さんもいるので患者さんのサービスという観点から院内薬局とするクリニックも少なくない。もちろん薬の保管庫の施錠と院内薬局自体の施錠は当然忘れてはならない。


 前回にも述べた通り、これらの部屋は出入口を複数設け医師・スタッフの避難経路を確保することが大事。

 なごみクリニックでは、院長室、スタッフ休憩室は中二階の設定とし、その下部をカルテ庫や収納庫、洗濯機置場として活用した。


 ~つづく~
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心療内科なごみクリニックで何を考えたのか-2

2017-01-13 09:02:31 | 医院・クリニック新築
 心療内科に診察に訪れる患者さんの中には精神的にかなり不安定な症状を持つ患者さんもいる。

 

 計画するに当たって快適な診察空間を提案することは勿論だが、医師やスタッフの安全を確保することも重要な要素。各室に2つ以上の出入口を設け、患者さんが急変したときに避難経路を複数確保するのがセオリーと言われる。

 監視カメラを設置し録画と診察室から待合室を監視できるようにすることもある。

 今回のなごみクリニックの計画では、各室複数の出入口設置は勿論のこと、診察室や処置室の周りにスタッフ回廊を設け行き止り空間(室)を創らない計画とした。

 それは医師、スタッフの安全面を確保だけではなく、スタッフの動線が機能的になることも考慮した結果である。

 

 また監視カメラについては設置しないこととした。カメラがあることによって、患者さんが監視されていると不安感が募ること、プライバシーの問題、和やかな落ち着いた雰囲気のクリニックにしたいと言う先生の要望であった。

 患者さんに安心を売ることを診療コンセプトとしたクリニックの設計は進んでいった。
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心療内科なごみクリニックで何を考えたのか-1

2017-01-10 08:56:54 | 医院・クリニック新築
 心療内科…この言葉は私にとって馴染みが無い言葉であった。

 そこでなごみクリニックの設計を受けたときに心療内科とはどういう科目なのかというところから入っていった。

 心療内科を設計するには心療内科を良く知ること。相手の懐に入るには相手を良く知ること。これは建築家としての鉄則である。

 

 心療内科は心の問題が引き起こす身体の不調を診る科目。診断を下す為に問診や検査に時間をかけ、クリニックの処置では投薬や点滴による治療が中心。

 各専門医が様々な検査をしても異常の見当たらない原因不明の病状などは精神的なもの、つまり心の問題引き起こしている思われることが多々あるのだそうだ。

 胃腸科は精神的ダメージが胃潰瘍等に現れ、小児科では自閉症をはじめ、発育障害などで循環器科ではパニック障害などがその代表例。

 であるから、心療内科では臨床心理士等によりカウンセリングが行われることも多い。

 以上のことを踏まえれば、心療内科のクリニック内には検査関係の諸室は余り必要とせず、クリニックの中でも小規模の面積で計画することとなる。

 
 ~続く~
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