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東京オリンピック 1年延期 安倍首相 新型コロナウイルス感染拡大 東京五輪危機

2021年05月26日 15時08分34秒 | 新型コロナウイルス
検証 「1年延期」 東京五輪大会 新型コロナウイルス感染拡大


深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 「緊急事態宣言」下でも五輪開催明言 コーツIOC副会長

「五輪開催」すべき 盲目的に「中止」唱えるメディアのお粗末 根拠なし パンデミック・リスク 
開催実現で「Withコロナの時代のニューノルマル」をレガシーに


国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




「概ね1年程度延期」で合意 安倍首相・バッハ会長
 2020年3月24日、安部首相は、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長とテレビ電話会議を行い、7月24日に開幕予定だった東京五輪を、「概ね1年程度延期」して「遅くとも2021年夏までに開催」することでバッハ会長と合意した。大会名については「Tokyo 2020」のままになるとした。電話協議後に行われるIOC緊急理事会での承認を得て正式延期決定となる。
 また、NBC Univesalは、秋のNFL(アメリカンフットボール National Football League)と重なないこと条件に、「1年延期」を受け入れたとしているという。(ワシントンンポスト紙 3月25日)
 一方、小池都知事は、開催に伴う費用負担は今後、国、組織委員会と協議していくと述べた。
 安部首相は、明日、トランプ大統領と電話で会談し、明後日にG7の電話会議を開催し、「1年延期」の了承を求めるとしている。
 この合意を受けて、大会組織委員会は、26日に福島Jビレッジをスタートする聖火リレーは中止する発表した。
 理事会後に、バッハ会長は電話による記者会見に臨み、 「オリンピック開催を延期し、延期したオリンピックを運営するという前例のない事態に直面している。まだ対応策の構想はできていないが、この極めて困難な問題に懸命に取り組んでいく」とし、東京でオリンピックを開催する意義について「東京オリンピックがウイルスに打ち勝った祝典になることを願う」と述べた。また、日本に到着した成果は「希望の象徴」としてそのまま残しておくとした。


五輪マークと東京ベイブリッジ  出典 IOC

聖火リレー出発中止 東京五輪の延期合意を受け
 3月24日、安倍首相とバッハ会長が「1年程度の延期」で合意したことを受けて、26日に福島・Jビレーッジをスタートする予定の聖火リレーの出発は中止した。わずか2日前の決定である。
 聖火は20日にギリシャから日本に届き、「復興の火」として東日本大震災の被災3県を巡回展示中。26日に福島県のJヴィレッジで出発式を行い、東日本大震災が起きた2011年、サッカー女子ワールドカップ(W杯)で優勝した日本代表「なでしこジャパン」のメンバーが第1走者を務める予定だった。
 組織委は、新型コロナウイルスの感染を防ぐため、トーチを持った走者による通常のリレーを断念し、聖火をランタンに入れて車両で運ぶ形での実施を検討したが、土壇場でこの方式も断念した。
 森組織委会長は、記者会見で「聖火リレーはスタートせず、今後の対応を検討する。大会の延期日程にあわせた新たな聖火リレーの日程を定めて、盛大なグランドスタートができるように準備する」と述べた。


グランドスタートの式典のステージを取り壊す作業員 3月26日 福島・Jビレッジ 筆者撮影

「1年延期」を提案したのは安倍首相
 電話会談で、安倍首相は「1年程度延期」を軸に検討をいただきたい」と切り出したという。
 バッハ会長が「4週間をめど」に結論を出すと表明してから2日後、急転直下、「1年程度延期」が決まった。安倍首相は『聖火リレーが始まる26日より前の延期決着』にこだわった。
 3月11日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスについて、「パンデミック」と認定した。開催中止をなんとか避けたいとする選択肢として浮上したのが「聖火リレーの始まる前」の「1年程度延期」で決着することだった。
 安倍首相は来秋に総裁任期を迎える。総理大臣の任期中に五輪開催を果たしその成果を掲げて、4選を狙うのが安倍氏の思惑だったとされる。そのためには、延期は1年程度に収める必要があった。また小池都知事は、この7月に改選を迎えるが、中止は何が何でも避けて、延期で収拾させたいという思惑があった。
 一方、森組織委会長は1年程度では感染拡大が収まらないと見て、2年程度の延期を視野に入れていたという。
 バッハIOC会長も窮地に立たされていた。「4週間をめど」の方針が、世界のアスリートには決断力の欠如の印象を与え、直後にカナダ五輪委員会が今夏の開催なら派遣拒否を発表した。IOCへの批判が高まれば、再選が有力視されていた来年のIOC会長選にも影を落とすことになる。
 しかし、バッハ氏が延期を切り出せば、数千億円規模とも見込まれる追加負担をIOCが背負うことになる懸念が生じる。それだけに、安倍首相の「1年程度延期」は、格好の提案だった。
 安倍首相の「直談判」を、バッハ氏が「100%、同意する」と応じるというシナリオは当然バッハ会長の頭の中にあったはずである。追加負担は組織委員会や東京都、さらには提案をした安倍首相、つまり日本政府が責任を持つという流れになる。
 バッハ会長の老練な駆け引きが見え隠れする一幕だった。
 一方、安倍首相や小池都知事は、「1年程度延期」でまとまり、「開催中止」の危機を回避できたことで胸をなでおろした。

五輪、来年7月23日開幕決定 IOCと組織委合意 パラは8月24日
 3月30日、国や東京都、大会組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)は、五輪は来年7月23日、パラは8月24日にそれぞれ開幕することで合意した。IOCは臨時理事会を開き、この日程を正式決定した。
 東京五輪は来年7月23日から8月8日(17日間)、パラリンピックは8月24日から9月5日(13日間)に開かれる。東京五輪は「7月第4週の金曜日から17日間」という当初の競技日程がそのまま維持されることになった。
 大会組織委の森喜朗会長や小池百合子知事、橋本聖子五輪相らとバッハIOC会長が電話会談を行い合意した。
 森会長は30日夜の記者会見で、選手選考に一定の期間がかかることや、夏休みの方が輸送やボランティア、チケット保有者にとって望ましいこと、新型コロナウイルスの状況も考慮したと説明した。日程は森会長から提案したという。
 バッハ会長は、開催時期については「夏に限定していない。(21年ならば)全ての選択肢が交渉のテーブルの上にある。幅広い視点で検討できる」と春開幕も選択肢にあるとしていた。
 一方、組織委内には、準備期間が確保できることなどから夏開催を望む声が多くこれまで通り夏の開催で決着した。


 アテネで採火された東京オリンピックの聖火が到着し、歓迎セレモニーで青空にブルーインパルスが五輪の輪を描いたが、強風で吹き飛ばされて難航 危機に瀕した五輪大会を象徴する一幕も(3月20日) 出典 IOC NEWS ROOM

コロナ禍 史上命題は「開催中止」回避

安部首相、「延期容認」 「中止は選択肢にない」
 安倍晋三首相は3月23日午前の参院予算委員会で、「完全な形での実施が困難な場合、延期の判断も行わざるを得ない」と述べた。一方、首相は「中止は選択肢にはない。この点はIOCも同様だと考えている」と述べ、IOCが中止を判断することはないとの認識を示した。首相の考えは22日夜、大会組織委員会の森喜朗会長を通じてIOCのバッハ会長に伝わっているという。
 安倍首相は「IOCの判断も私が申し上げた完全な形での実施という方針に沿うものであり、仮にそれが困難な場合、アスリートのみなさんのことを第一に考え、延期の判断も行わざるを得ない」と述べた。
 「開催延期」はこれでほぼ確定的になった。焦点は、いつに延期するかになった。

組織委 森会長 「開催延期」の検討合意
 3月23日午後、大会組織委員会の森会長は、会見を行い、「(通常開催に向けて)私どもは歩んで参りましたが、今日の状況を見ると、国際情勢は変化して、まだ予断を許さない。欧州や米国など異常な事態になっている地域もある。いろんな(延期や注意を求める)声があるのに『最初の通り、やるんだ』というほど我々は愚かではない」と延期の検討を認めた。
 そして昨晩に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長とテレビ電話会議を行なって、開催中止はあり得ないことを確認した上で、大会組織委員会とIOCとの双方でメンバーを出してこれから何をなすべきか議論をして今後4週間以内でシナリオをまとめていくことで合意したことを明らかにした。
 森会長は、会議の内容を小池東京都知事や安倍首相、橋本五輪相、山下JOC会長に電話で連絡したという。
 26日に福島Jビレッジで始まる聖火リレーについて、バッハ会長は大会組織委員会に一任するとし、森会長は26日のスタートまで時間があるので関係者と対応を協議したいとした。
 また安倍首相は、聖火リレーの出発式の参列について、「政府が集会やビックイベントの自粛を要請しているのに、自分が率先して出席するのは如何か」と述べ、欠席することも示唆したのに対し、森会長は「総理の判判断にお任せする」と応じたという。

安倍首相「完全な形で実現」 G7一致
 3月16日、先進7カ国(G7)首脳は、緊急のテレビ会議を行い、世界中に感染が拡大する新型コロナウイルスへの対応を協議した。
 流行を抑え込むため、G7が連携して治療薬の開発を加速させる方針で一致。世界経済への影響を最小限に抑えるため、必要かつ十分な経済財政政策を実行していくことも確認した。
 安倍晋三首相は会議後、夏の東京五輪大会について「人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして、完全な形で実現することについてG7の支持を得た」と述べ、「新型コロナウイルスは手ごわい相手だが、G7で一致結束し、戦っていけば必ず打ち勝つことができる。そういう認識で一致できた」と強調した。
 「完全な形で実現」とは、どのような意味なのか詳細は明らかにしていないが、「無観客試合」や「規模縮小」、「開催地の変更」などは行わないことだと思われる。
 しかし、「完全な形で実現」の時期はいつなのか言及していない。テレビ会議後に記者から開催時期を聞かれたの対して、「完全な形で実現」と繰り返すだけで、「いつ」については曖昧にした。 「開催延期」の可能性も視野に入れたコメントとして受け取ることも可能だ。

 これに先立って、3月14日、安倍晋三首相は首相官邸で開いた記者会見で、7月下旬に開幕する予定の東京五輪について、「我々としては、(新型コロナウイルスの)感染拡大を乗り越えてオリンピックを無事予定通り開催したい」と述べた。安倍首相は、3月26日に福島県で始まる国内の聖火リレーの出発式典に出席するとした。
 政府や大会関係者は、今年の夏に予定通り開催にこだわっているが、大会開催ができたにしても、新型コロナウイルスの感染を懸念して、有力アスリートの参加辞退が続出して、有名無実な空虚な大会になることは明らかである。それなら、「1年後」、「2年後」に延期するほうが理にかなうだろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会は、「予定通り開催」を唱えるだけでなく、そろそろ新型コロナウイルスの感染が収束しない場合を前提にして「プランB(次善策)」の検討開始する必要に迫られていると考える。
 筆者も東京五輪大会が予定通り開催できること期待したいが、新型コロナウイルス感染拡大でそれを許さない状況に追い決まれている。最悪のシナリオを想定して 「プランB(次善策)」を準備するのが危機管理の鉄則だろう。「開催中止」、「開催延期」、「規模縮小」、「無観客試合」、あらゆる選択肢のシナリオの検討を進めることである。白紙のままで時間を浪費するのは避けるべきだ。拙速は混乱を深刻化させるだけである。


「開催延期 」に動き始めたIOC

IOC 「開催延期 」を検討 4週間以内で結論
 3月22日、COVID-19の感染拡大が世界各国に劇的に広がっていることを受けて、各国五輪委員会や国際競技団体から「開催延期」の声が相次いでいる中で、国際オリンピック委員会(IOC)の理事会(EB)は声明を発表し、2020東京五輪大会について「開催延期」を含むシナリオ計画(SCENARIO-PLANNING)の検討を開始し、次のステップを踏み込むとした
 このシナリオは、2020年7月24日に開催される大会の既存の運用計画の変更、および大会の開始日の変更に関するものだとし、東京2020組織委員会、日本政府、東京都と開催延期も含めて詳細な議論を開始して、今後4週間以内にこれらの議論を完了するとした。
 一方で、開催中止は、問題の解決に何も役立たず、誰のためにもならないことを強調し、開催中止は議題ではないとした。
 IOCの声明によると、開催を延期すれば、「大会開催に必要な多くの会場はもはや利用できない可能性がある。 またすでにホテルの予約が何百万室も予約されている状況は、処理が非常に難しい。さらに少なくとも33の五輪競技の国際スポーツカレンダーを調整する必要がある。 これらは、山積する課題のほんの一部である」として、「開催延期」に伴って解決しなければならない問題が膨大にあることを示唆した。
 IOCはこれまで、一貫して「予定通り開催」を主張してきたが、「開催延期」について公式にコメントしたのは初めてである。

 また3月21日、トランプ米大統領は、記者会見で、東京五輪に言及し、「明らかに延期という選択肢があり、来年まで延期されるかもしれない」と語った。「すべては日本次第だ」とも述べ、開催をめぐる判断は日本側にゆだねられているとの考えを強調した。
 当面問題になるのは3月26日に福島のJビレッジでスタートする聖火リレーだが、大会組織委員会では、現時点では予定通りに開始するという。
 しかし、「開催延期」が現実化した時には、聖火リレーを継続するのかどうか、対応を迫られることになるだろう。


3月22日 IOC NEWS

バッハIOC会長「さまざまなシナリオを検討」 開催延期の可能性について初めて言及
 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、New York Times紙のインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大で、ますます困難な状況に直面していることを認めたが、ウイルスの感染率は大会開催までに十分に落ち着くかもしれないという楽観的な姿勢を示し、現時点での開催判断は「時期尚早」との考えを改めて示した。
 その一方で、「もちろん、さまざまなシナリオを検討している」として開催延期などなどの通常開催以外の可能性に初めて言及し、「Bプラン(代替策)」の検討を始めていることを明らかにした。また「開催中止」は議題にないとして明確に否定した。
 世界中のビックスポーツイベントが相次いで中止や延期に追い込まれている現状について、バッハ会長は「危機の影響は受けている」と認めたが、「五輪大会開催は4ヶ月半後なので、他の多くのスポーツ大会やプロリーグとは異なる。 これらのスポーツイベントは4月または5月末まで延期して開催する。彼らは私たちよりもさらに楽観的だ。 IOCは『7月末』の話をしている」とした。
 また「安倍首相は、開催延期はG7で言及されていなかったと述べている。IOCとしては、今の時点で、開催延期にコメントするのは無責任で、タスクフォースからの勧告がないのにを憶測をしたり判断を行うのは時期尚早である」と述べた。
 IOCはタスクフォースにいつまでに勧告を出して欲しいと要請したかという問いに対しては、「時期は要請していない。タスクフォースのメンバー専門家が、 新型コロナウイルスの現状を科学的知見に基づいて分析して適切な時期に勧告をするだろう」と答え、将来の展開についての推測に基づいて、判断の時期を設定したり、今すぐ判断するることはいかなる形でも無責任だとした。
 さらに延期となった場合の財政的なダメージについては、「IOCはリスク管理ポリシーと保険制度を堅持しているので、困難な状況の中でも業務を継続してミッションを継続するが可能で、財政上の支障は皆無である。IOCは経済的利害によって判断をすることはない」として延期となった場合でも、財政上の損失には対応できる自信を示した。
 バッハ会長は、これまで「予定通り開催」だけを表明していたが、初めて、「Bプラン」の検討を始めていることを明らかにし、これまでの姿勢を転換した。焦点はいつ「Bプラン」を公表するかに絞られたようである。
 

 New York Times 2020年3月19日

 一方、米ワシントン・ポスト紙(電子版)は社説(3月20日)で、東京五輪大会は「中止するか延期しなければならない」と主張した。
 社説では「新型コロナウイルスが歴史的なパンデミック(historic pandemic)となっている中で、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会が、あたかも大会は予定通り可能と振舞っているのは、まったく滑稽で無責任である」とし、「世界の約200か国からアスリートが集まり、数百万人の観客が参加する夏季五輪大会は、新型コロナウイルスのインキュベーターとなり、更なる致命的な感染拡大をもたらすだろう」と警告した。


 Washington Post 2020年3月20日

「開催延期」のカギを握るNBC
 NBC Universal(NBCの親会社)は、米国内の独占放送権を2021年から2032年までの夏季・冬季6大会(東京五輪を含む)一括で76億5000万ドル(約8360億円)で取得した。日本のジャパンコンソーシアム(NHKと民放5社で構成)は、2018年から2024までの4大会(東京五輪を含む)一括で1060億円を支払う。
 IOCの収入、57億ドル(約6270億円 2013-2016)の内、73%は放送権料で占めれている。五輪大会を支えているのは放送機関といっても過言ではない。
 放送機関の中でも、米国のNBC Universalは放映権料の約半分以上、突出した金額を負担している。この結果NBCは五輪大会の運営に大きな発言権を持つ。
 NBCは、五輪の放送で、高視聴率を達成して高額のスポンサー料を確保しなければ経営基盤を揺るがすことになり、死活問題だ。
 NBC Universalは、NFL(アメフ フト)やNHL(アイスホッケー)、英国プレミアリーグ(サッカー)、全仏オープンなどの人気スポーツの放映権を高額の放送権料を支払って取得している。五輪大会の開催時期はこうしたスポーツ・イベントと競合時期の夏以外に設定することは、NBCの経営戦略上ありえない。
 NBCはすでに12億5000万ドル(約1340億円)スポンサーを確保し、大口のスポンサー枠の90%は売れたとしている。夏季開催で「1年延期」、「2年延期」案もNBCの経営判断次第である。NBCは五輪開催ができない場合に備えて保険をかけているとしているが、どの程度、補償されるのか明らかでなく、かなりの損害は免れないと思われる。
 開催延期が実現するかどうか、そのカギは、IOCではなく米国のNBC Universalが握っている。

「開催中止」ができない理由 スポンサー料
 国際オリンピック委員会(IOC)の収入は、2018年 Annual Reportによれば、総額約57億ドル(約6270億円)で、その約73%は放送権料収入、次に多いのが約18%を占めるスポンサー収入で約10億ドル(約1100億円)に上る。IOCの収入基盤は、放送権収入とスポンサー収入なのである。
 IOCは財政基盤と安定化するために、スポンサー企業の中で最高位に位置付ける「Top」(top-tier sponsorship program) と呼ばれるスポンサーシップを設けている。1業種(カテゴリー)1社だけと契約し、世界各国で五輪マークを使用したプロモーション活動などを権利を与える。また「Top」となった企業は五輪開催に関連する機材や物品、サービスの提供について最優先の交渉権を持ち、独占的に納入できる特権が得られる。現在、14社が契約している。
 契約期間は4年(夏季大会2回、冬季大会2回)が原則で、契約金額は契約内容やカテゴリーなどで異なるが、ロンドン大会までは1企業当たり約100億円程度とされてきた。
 しかし、ここ数年、より長期の高額の契約が行われるようになり、トヨタ自動車は2015年から24年まで10年間で総額1000億円を大幅に上回る金額で契約したとされている。
 2017年にマクドナルドの撤退を受けて、米国の半導体企業、Intelが、2018年から2024年の6年間で約2億ドル(約200億円)で締結した。
 IOCは約50億ドルの収入の内、10%をIOCの運営費とし、残りの90%を各大会の組織委員会や各国オリンピック委員会(NOC)、国際競技連盟などに分配する。
 スポンサー収入に影響が出れば、IOCの収支が悪化し、五輪大会の開催や各国のスポーツ振興に絶大な影響が出ることになる。
 さらに各大会の組織委員会は、IOCの「Top」(top-tier program)とは別に、ローカルスポンサーを募り、スポンサー収入を確保する。
 ローカルスポンサーは、対象の大会に限り、開催国だけで、世界中で五輪マークを使ったプロモーション活動を展開できる。
 2020東京五輪大会の場合、2020東京五輪大会組織委員会はこうしたローカルスポンサー料収入が約3480億円にも上り、組織委員会の収入総額6300億円の55%を占める。これに対してチケット収入は900億円、約14%にすぎない。
 仮に東京大会開催が中止になれば、ローカルスポンサー料収入、約3480億円に大きな影響がでる可能性がある。大会組織委員会の収支は赤字転落が必至である。
 「開催中止」となると、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会の収入で大きなウエイトを占めるスポンサー収入を失うことになり、五輪存続の危機に直面することなる。


東京・お台場の青海アーバン・スポーツセンターで開催されたスポーツクライミングの五輪テストイベント(3月6日) 新型コロナウイルスの影響で選手も参加せず、大会関係者とメディアだけで開かれた。 筆者撮影


開催延期 世界各国から続出

世界陸連会長「秋への延期可能」
 3月19日、英紙「The Guardian」は、世界陸連の会長で2012年のロンドンオリンピックで組織委員会の会長を務めたSebastian Coe(セバスチャン・コー)氏は、東京五輪大会について、9月や10月への延期も含めて「現時点では何でも可能である」と述べた。また、状況は刻刻と変化する可能性があり 「現時点で決定する必要はない」とし、国際オリンピック委員会(IOC)に歩調を合わせた。
 一方、BBC Radio 4に出演して、「もし必要があるのならば日程を変えなければならない」とすると語り開催延期を示唆したが、2021年に1年延期させる可能性についは、「表面上は簡単な提案のように見えるが、来年は世界陸連がある。スポーツカレンダーは複雑なマトリックスであり、ある年から次の年に移動するのは簡単ではない」と難色を示したが、開催中止については「時期尚早だ」と断言した。
 国際陸連は、IOCの中でも、最も発言力のあるメンバーで、Sebastian Coe会長が、9月や10月への延期の可能性に言及したことで、東京五輪開催の「プランB」に、「2年延期」、「1年延期」と並んで「9月や10月延期」のシナリオも有力な案として検討されていることが明らかになったと言える。


The Guardian 2020年3月19日

 一方、CNNは、3月21日、米国水泳連盟のティム・ヒンチー3世最高経営責任者(CEO)は、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)に書簡を送り、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ東京五輪を1年延期すべきだとの考えを示したと報じた。
 ヒンチー氏はUSOPCに対し、五輪の延期を提唱するよう要請。理由として「適正かつ責任ある行動とは、全員の健康と安全を最優先し、今回のパンデミック(世界的大流行)が競技の準備に及ぼす負荷を適切に認識することだ」と述べた。
 これに対し、USOPCのサラ・ハーシュランドCEOは声明で、大会を統括する国際オリンピック委員会(IOC)と連絡を取っていると説明。引き続きIOCに判断を委ねる方針を示した。国際水泳連盟やUSOPCはIOCで大きな発言力を持つ組織である。
 また、ノルウェー五輪委員会は、新型コロナウイルスの状況が世界規模で終息するまで東京オリンピックを延期するよう要請したと発表した。
 「開催延期」案が急速にIOCを包囲し始めた。

「東京五輪延期すべき」 スペイン五輪委会長
 3月17日、国際オリンピック委員会(IOC)の声明を受けて、スペイン・オリンピック委員会のブランコ会長は、感染拡大で自国選手が練習できず「不平等な状況が生じる」とし、東京五輪を延期すべきだとの見解を示した。(Reuters 3月17日)
 IOCは同日の臨時理事会と各国際競技連盟(IF)との合同会議で、予定通り開催する方針を再確認したが、ブランコ氏は「世界中で日々、心地よくないニュースが流れている。開幕まで残り四カ月で公平な条件の下、選手が五輪まで到達できない」と述べた。
 また、「(選手の)健康が最重要」と建前は崩さずに、7月末開催の既定路線を推進するバッハ会長にアスリートから反発の声が相次いでいる。
 アイスホッケー選手で6回も五輪に出場したカナダのヘイリー・ウィッケンハイザー選手は、新型コロナウイルスの大流行による脅威の増大に直面しながら、国際オリンピック委員会(IOC)が2020東京五輪大会を推進しているには、「鈍感で無責任」であると非難した
 また東京五輪で陸上女子棒高跳びの二連覇が懸かるギリシャのエカテリニ・ステファニディ選手は、「IOCは私たちの健康を脅かしたいのか」とツイッターに怒りをぶつけた。

トランプ米大統領「東京五輪は1年間延期」
 3月12日、トランプ大統領は、東京五輪について「無観客など想像できない。あくまで私の意見だが、1年間延期したほうがよいかもしれない。立派な施設を建設したので残念だが」と述べた。
 また延期したほうが良いと安倍総理大臣に伝えるのかという質問に対して、「それはしない。彼らは自分たちで判断するだろう。ただ、観客なしで開催するよりは延期するほうがよいと思う」と述べ、開催の延期もやむを得ないという認識を明らかにした。
 国際オリンピック委員会(IOC)の収入の73%を支える放送権料の内、半分以上を負担してるNBC Univerasalを抱える米国からの開催延期発言は重大な意味を持つ。
 翌13日、安倍首相はトランプ大統領と緊急に会談し、東京五輪開催へ一致して協力することで一致したとして、「1年間延期」発言の火消に乗り出した。会談は約50分間ににも及び、世界保健機構(WHO)の「パンデミック宣言」を受けて、新型コロナウイルスへの対応や世界経済の落ち込みも議題になり日米で足並みをそろえて対策を実施することを確認したという。
 一方、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、ドイツの公共放送ARDに出演して、WHOが開催中止を助言したらどうすかという質問に答えて、「IOCはWHOの助言に従う」と述べ、WHOから開催中止を求められた場合には、その判断に従い開催中止とするとした。
 東京五輪大会の開催の中止や延期を判断する基準がIOCのトップによって初めて示された。東京大会が予定通り実施できるかどうかは、WHOが新型コロナウイルスの流行を疫学的にどう判断するかにかかってきた。
 IOCは3月3日と4日に開催した理事会の際は、東京五輪を予定通り開催するとした根拠として、WHOが新型コロナウイルスについてパンデミックを表明していないことを上げていたが、3月11日にWHOはパンデミックを宣言したことで、IOCの根拠が崩れた。
 またトランプ大統領は、国家非常事態を宣言し、感染拡大の防止に向けて500億ドル(約5兆4000億円)の連邦資金を投入すると表明した。
 ホワイトハウス(White House)で発表を行ったトランプ氏は、「連邦政府の力をすべて解放するため、国家非常事態を正式に宣言する」と表明。国内の全州に対し、緊急対策本部を設置するよう要請するとともに、政府は検査の増加に取り組んでいると述べた。
 トランプ氏はまた、コロナウイルス流行の経済的影響を軽減する措置として、戦略石油備蓄(SPR)のための原油を大量購入する意向を表明。さらに、連邦政府機関が貸し付ける学生ローンの利息を免除する措置も発表した。
 トランプ氏は前日に、感染が拡大しているヨーロッパの26か国からの入国を30日間停止しする措置を明らかにしている。
 米国内で感染拡大が急速に進行していることに危機感を抱き、これまでの姿勢を転換して本格的に新型コロナウイルス対策に乗り出した。

「五輪開催1、2年延期」 大会組織委員会理事
 大会組織委員会理事の高橋治之氏は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今夏の五輪開催が難しくなれば、最も現実的な選択肢は開催を1、2年延期することだとの見解を示した。3月11日のWall Street Journal(日本語版)が伝えた。
 同紙によれば、高橋氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューに応じ、理事会ではまだ五輪に対するウイルスの影響は議論していないとしながらも、スケジュール変更が他のスポーツイベントにどのような影響があるかを3月下旬の次回理事会までに検討する見込みだとした。
 電通元専務の高橋氏は、五輪中止、あるいは観客無しでの開催による経済的損失はあまりに大きいと述べた。一方、1年未満の延期については、米国の野球やアメフト、欧州のサッカーなど、主要プロスポーツの日程と重なる可能性が高いとの見方を示した。
 高橋氏は「中止はできない。延期ということだと思う」と指摘。中止すれば「IOC自身が(経営的に)おかしくなる」とし、米放送権料だけでも「大変な金額」だと語った。来年のスポーツイベントの予定はおおむね固まっているため、延期の場合は2年後のほうが調整しやすいとの考えも示した。
(出典 Wall Street Journal日本語版)
 さらにJNNのインタビューに答えて、「アスリートのことを考えると“5月判断”では遅いのではないか。IOCよりも先手を打つ必要がある」と述べ、3月末に開かれる大会組織委員会の理事会では、夏に大会ができなかった場合の開催延期が議題に上がるという見通しを示した。
 一方、3月11日、世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は、「パンデミックの脅威が、いままさに現実となった」とついに「パンデミック宣言」を行った。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大は、世界各国に広がり、その勢いはとどまることを知らない。
 NYタイムズ(3月5日)の報道によれば、新型コロナウイルスの感染者は、世界92ヵ国、10万5700人に達し、死者は3300に及んだとしている。最大の感染者が発生したのは、中国で約8万人、続いて韓国が7000人、イランとイタリアが約5800人、日本が1100人となっている。
 米国内でも感染拡大が始まり、感染者数は約200人、死者は14人が発生したとしている。
 新型コロナウイルスは、春になって気温が上昇すれば収束するという楽観的な見通しが支配していたが、最近の発生状況を見ると、夏の南半球諸国や熱帯地域でも感染者が増えていることから、数カ月で収束するという見通しは根拠がないというのが常識になっている。
 WHOの危機管理統括官も、「インフルエンザのように夏になれば消えるというのは誤った見方だ」と述べている。また、政府の専門家会議メンバーの舘田一博日本感染症学会理事長も「インフルエンザのように暖かくなると消えるウイルスではないため、戦いは数カ月から半年、年を越えて続くかもしれない」と述べ、長期化する恐れがあるとの認識を示した。
 東京五輪大会は、感染拡大が収束しない中で、7月末に開催を迎えることが明らかになった。
 開催中止や延期、規模縮小、無観客試合などの開催方式の見直しなどのシナリオが現実化している。安全、安心な大会運営を確保して予定通り開催できるかどうか、五輪大会は最大の危機を迎えた。

「2年後」なら延期開催の可能性 「1年後」は不可能か
 2020東京五輪大会を延期するとすれば、半年程度では、新型コロナウイルスが収束していない可能性が高く、「1年後」は他のビックイベントとバッティングして調整は難しく、「2年後」が現実的に可能性が大きい。
 「1年後」の2021年には福岡市のマリメッセ福岡で世界水泳選手権(7月16日~8月1日)、米国オレゴン州ユージーンのヘイワールド・フィールドでは世界陸上選手権(8月6日~8月15日)が開催される。また今年開催予定のサッカー欧州選手権(6月11日~7月11日)も加わる。
 いずれも国際ビック・スポーツイベントで、チケット収入や放映権収入で主催する組織の大きな収入源にもなっている。すでに開催準備も進んでいて中止や変更は主催者が承諾しないだろう。夏に五輪大会を開催するのは不可能に近い。
 一方、夏は避けて、春や秋、冬の期間に開催したらという案もあるが、これも極めてハードルが高い。
 米国では「4大スポーツ」、MLB(プロ野球 National League Baseball)、NFL(アメリカンフットボール National Football League)、NBA(バスケットボール National Basket League)、NHL(アイスホッケー National Hockey League)が開催され、全米が熱狂してテレビに釘付けになる。また欧州で人気があるサッカーリーグでは、各国リーグのレギラーシーズンは8月から9月頃から翌年の6月までである。
 こうした人気スポーツと競合する時期に五輪大会を開催することは、視聴率低下を懸念するテレビ放送局の賛同が得られない。五輪だけでなく、「4大スポーツ」などのビックスポーツイベントにも高額の放映権料を支払っているテレビ放送局は、高視聴率を達成して、スポンサー料を確保するしなければならい。開催時期のバッティングはお互いに避けるというのが暗黙の鉄則なのである。
 こうした事情を踏まえると「1年後」の可能性は極めて少ない。
 「2年後」の2022年開催の問題点は、北京冬季五輪大会(2月4日~2月20日)とFIFAワールドカップ・カタール大会(11月21日~12月18日)が開催されることである。しかし、夏の7月、8月ならかろうじて開催は可能とする見方が多い。
 そもそも五輪大会は、1992年のアルベール冬季五輪大会(フランス)とバルセロナ夏季大会(スペイン)までは、同じ年に同時開催をしていた。
 ところが、東京五輪開催を延期するにはIOCとの契約上のハードルもある。
 国際オリンピック委員会(IOC)と東京都が結んでいる開催都市契約では、第11章に「契約の解除」の規定があり、「2020年中に開催されない場合、IOCは契約を解除して本大会を中止する権利を有する」と定められ、開催都市は補償や損害賠償の請求はできないとしている。延期に関する記述はないが、規定を読むと、2020年中なら延期は可能だと解釈できる。
 東京五輪を「1年後」、「2年後」に延期するには、この規定を改訂することが必要で、IOC理事会の判断が必要となる。
 また大会組織委員会にとっても、仕切り直しで「1年後」開催では準備期間が余りにも短い。会場の手配、機材のキャンセルと再発注、要員の確保、開催規模が大きいだけに調整しなければならない案件は山積している。

 しかし最大の問題は、2年延期に伴う開催経費の負担増である。既存の施設の賃貸料、仮設施設の維持費、大会組織委員会が抱えている要員、調達した機材・車両など経費増、それに調達した車両や機材、ホテルなどのキャンセル料が発生すると思われ、その総額は3000億円にも上ると伝えられている。大会組織委員会の270億円の予備費(V4予算)は使い果たし赤字転落の懸念が浮上する。
 東京五輪大会に整備した競技場の維持・管理費も膨らむ。迷走している国立競技場の後利用計画はさらに混迷を深め赤字が増えるだろう。東京都が整備した海の森水上競技場やオリンピックアクアティクスセンター、有明アリーナなどはすでに指定管理者を選定して「大会後」の運営管理は民営化して収支改善を行うとしていたが、この目論見も挫折して赤字が膨らむ可能性がある。各競技場は2年後の開催に備えなければならないので施設を後利用モードに切り替えることもできない。
 東京臨海部・晴海に建設した選手村は、大会後、大規模マンションに改装される。戸数約5600戸、販売価格は5000万円から1億円、2023年3月末に入居を開始する予定だが、五輪大会が延期さればこの計画は大幅に変更しなければならない。多額の損害額が発生する懸念が大きい。
 さらにチケットの払い戻しや再販売、ボランティアの再募集、膨大な作業が待ち構えている。
 アスリートの立場で考えると、「2年後」は、「開催延期」の大会でなく、完全に別の五輪大会になるだろう。
 「2年後」に開催を延期するにしても大きな重荷を背負うことになるのは明らかだ。


新型コロナウイルス感染拡大 五輪への影響深刻化

新型肺炎「パンデミックの可能性」、WHOが各国に警戒を要請
 2020年2月27日、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長(Dr. Tedros Adhanom Ghebreyesus)は、新型コロナウイルス(Novel Coronavirus:2019-nCoV)の世界的な感染拡大について「パンデミック(Pandemic:世界的流行)の可能性がある」とし、自国には感染しないという考えは「致命的な誤り」と各国に一段の警戒を促した。
 そして「いかなる国も、自国での感染はないとの思い込みは文字通り致命的な誤りだ」と警告し、主要7カ国(G7)のメンバーであるイタリアでの流行は実に驚きで、他の多くの先進国でもこうしたサプライズを想定すべきだと述べた。
 イタリアに加え、集団的な感染が発生しているイランや韓国については、なお局地的な流行で、持続的な地域感染にはなっていないとし、感染封じ込めに向けた「決定的な時期」にあるとし、「恐怖におびえる時ではない。感染を防ぎ、命を救うために行動する時だ」とも強調した。

 引き続き、2020年3月2日には、テドロス事務局長は感染拡大について、韓国、イタリア、イラン、日本の情勢を最も懸念していると述べた。
 テドロス事務局長は、過去24時間の感染件数の増加は中国国外が国内の約9倍だったと指摘。呼吸器官を侵す病原菌が市中感染するという「これまでに経験したことのない事態」に直面していると指摘。同時に「正しく対応すれば封じ込めは可能」とし、「全ての国の最優先事項とすべき」と強調した。

東京大会開催の可否を判断するにはWHO 新型コロナウイルスの大流行の可能性を考えないのは無責任
 国際オリンピック委員会(IOC)委員のディック・パウンド氏は、2月27日、TBSのインタビューに答えて、東京大会の可能性について、「まだ分からない。理にかなった判断をするには十分な情報がない」とし、判断をするにあたって重要なのは、「公衆衛生の専門家の判断を最も重要視すべきで、日本の大会関係者やIOCが判断するものではない」とした。
 また「東京大会は数カ月から1年後に延期する選択肢は残されているが、その時期でも危険するぎると見なされた場合は、延期の選択しもなくなり、中止以外の選択肢しかない」と中止の可能性を強く示唆した。
 さらに、「私のことをたった一人のメンバーにすぎないと軽視するのは正しいとは思わない。新型コロナウイルスが大流行になる可能性を考えないことは無責任だろう」と警告した。
 AP通信のインタビューでは「これは新しい戦争であり、我々はそれに直面しなければならない。大会が開催される7月末の時点で、世界各国の人々が東京に行くことは安全と確信できる状況まで新型肺炎の流行をコントロールできるのだろうか」とパウンド氏は懸念を示した。
 一方、バッハIOC会長は、東京大会を予定通り開催できるように全力を尽くすという意向を表明した。「仮説や憶測の火に油を注ぐことはしない」として大会成功に向けて全力を上げて準備を進めることを強調した。
 「予定通り開催できるように全力を尽くす」ということは、7月末の開催に向けて、新型コロナウイルス対策に「全力を上げて取り組む」という意味だと受け止めなければならない。大会組織委員会や都、国は、パウンド氏発言を否定して大会開催の懸念を払拭することだけに力を入れて、対策を何も進めないのは無責任と批判されても止む得ない。

新型肺炎の感染拡大で五輪予選の変更相次ぐ
 新型コロナウイルスの感染拡大は、半年後に迫った2020東京五輪大会にも大きな影響が出始めている。
 中国で開催を予定した五輪予選や五輪出場資格獲得につながる国際大会の中止や開催地の変更などが相次いでいる。
 2月3日から14日まで、中国・武漢で開催を予定していたボクシングの東京五輪アジア・オセアニア予選は、3月にヨルダンで行うことに急遽、変更された。2月3日から2月9日まで武漢で開催を予定していたサッカー女子の東京五輪最終予選B組は、南京に開催地を変更したが、その後、感染拡大が止まらず、中国サッカー協会は開催権を返上、オーストラリア・シドニーで開催することになった
。また2月6日から9日に中国・仏山で予定していたバスケットボール女子の東京五輪最終予選はセルビアに会場変更され、2月12日と13日、杭州で開催予定のアジア室内選手権(陸上競技)は中止、3月6日から8日、北京で開催予定の世界室内選手権(飛び込み)も中止となった。
 さらに2月中にカザフスタンで開催予定の水球アジア選手権(五輪アジア予選を兼ねる)も中止が決まった。新型コロナウイルスの感染拡大を懸念するカザフスタン政府の方針で、代替地はまだ未定である。
 大会開催まで、残り半年に迫った中で、日本国内を始め、世界各地で五輪予選やテストイベントの開催が目白押しの中で、大混乱が始まっている。
 感染拡大を受けて、アスリートや競技団体の不安感も増している。

 また東京大会に向けて行われる予定の各国五輪代表チームの事前強化合宿キャンプが相次いで、中止や延期となった。
 愛知・岡崎市のアーチェリー・モンゴル代表、福岡・北九州での卓球・体操・コロンビア代表、埼玉・加須市での柔道・コロンビア代表、神奈川・平塚氏の陸上・リトアニア代表、岡山・美作市の7人制ラグビー・アメリカ代表は合宿を中止、静岡・伊豆の国での柔道・モンゴル代表は延期となった。
 一方、静岡でキャンプを行っていたテコンドー・中国代表は、2月5日に帰国予定だったが、約1カ月以上も足止めにされて、今も帰国の目途が立っていない。
 現在47都道府県の自治体が378件、計100以上の国・地域を受け入れることが決まっているが、「ホストタウン」に名乗りをあげた自治体は、新型肺炎の感染拡大で深刻な悩みを背負った。


新型コロナウイルス(2019-nCoV)の電子顕微鏡写真  提供 国立感染症研究所

 一方、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、3月5日、記者会見に応じ、「今日のIOC理事会で改めて2020東京五輪大会の成功への決意を強いものした」として、東京大会の開催に強い自信を示し、開催中止や延期説の払拭に努めた。しかし、各国のIOC委員から新型コロナウイルスの懸念の声が続出し、2日間の理事会の主要な議題になったことも明らかにした。世界中の新型コロナウイルスの専門家が今後どこまで感染が拡大するか予測が難しいと懸念を表明している中で、バッハ会長は強気に姿勢に納得した人は少ない。
 記者団から「新型コロナウイルスがどこまで感染拡大するのか不透明な中でIOCはどのような対応をとっているのか」という質問が飛んだ。
 これに対して、バッハ会長は「今日の理事会で中止又は延期という言葉は出てこなかった。勿論、IOCは大会開催に責任を負わなければならない立場にあるので、問題点があれば五輪する。しかし、将来的な展開の憶測はしないようしている。IOCは2020東京五輪大会開催に全力を尽くす。将来のことはわからないと私は何度も言っている」と応じた。
 さらに、大会組織委員会の森会長も、記者から「もし新型コロナウイルスの感染が拡大した場合、いつまでに大会開催を判断するのか」と聞かれ、「神様はないんでそんな事は分かりません」と答えた。
 国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会は大会開催にあたって、あらゆるリスク管理を行わなければならいのは当然の責務だろう。台風や豪雨、地震、猛暑、サイバー攻撃、テロなど、さまざまなリスクを想定して事前準備や対策を行わなければならない。感染症対策も同様である。新型コロナウイルスのリスクは「憶測はしない」とか「神さまでないので分からない」とするのは、余りにも無責任で、唖然として開いた口がふさがらない。
 「2020東京五輪大会開催に全力を尽くす」というなら、一刻も早く、大会運営者として、新型コロナウイルス対策で何ができるのか一刻も早く検討を進めるべきだ。最悪のシナリオとして、開催規模の縮小や無観客試合の可能性も視野に入れる必要がある。それがリスク管理である。
 とにかく、7月末の時点で、新型コロナウイルスの感染拡大が世界中でどうなっているかが、開催の是非のポイントである。まさに世界各国で、「対ウイルス戦争」始まっているのである。感染拡大阻止に成功するのかどうかまだ予断を許さない。新型コロナウイルスは未知のウイルスだのである。
 国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会の「決意」と「自信」だけでは、何も意味がない。


アスリート向けの専用サイト、“Athelete 365”で、アスリートに向けて署名りのレターを公開 新型コロナウイルス関連の情報をアスリートに直接提供することを表明

「予定通りの開催」にこだわる国際オリンピック委員会(IOC)

東京大会 予定通り開催 IOC理事会
 3月17日、国際オリンピック委員会(IOC)は、電話会議形式による臨時理事会を開き、東京五輪を予定通り開催する方針を再確認した。引き続き行われた各国際競技団体(IF)との協議でも7月24日の開幕に向けて準備を進める方向性で一致した。
 IOCは「東京五輪に向けて変わらず全力を尽くす。大会開催まで4カ月もあり、現時点で劇的(dramatic)な意思決定を下す必要はない」との声明を出した。
 また、現時点で、2020東京五輪大会の出場選手約1万1000人の内、43%が決まっていないことを明らかして、今後、代表選手選考会の開催ができない場合は、世界ランキングや過去の実績をもとに代表を選出する方針を各国際競技連盟に明らかにした。
 2月24日、政府の専門回会議は「この1~2週間が(感染の)急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」との見方を示し、これを受けて政府は大勢の人が集まるイベント開催自粛や規模縮小などを要請していたが、3月19日に自粛要請の効果などを判断して公表するとした。自粛要請を継続するかどうかが焦点となった。

IOC、新型肺炎対応で緊急声明 不安払拭 大会開催は6月に最終決定
 新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪の開催を危ぶむ声が広がる中、2020年3月3日、国際オリンピック委員会(IOC)は緊急声明を発表して、「全ての選手に東京五輪に向けた準備を続けるよう促す。IOC理事会は五輪の成功のために全面的に協力する」として、予定通り大会を実施する方針を改めて強調した。
 声明では、2月中旬にIOCと大会組織委員会や東京都、日本政府、世界保健機関(WHO)とで合同作業部会(タスクフォース)を立ち上げて連携して対応にあたっているとし、アスリートに対しては「すべてのアスリートが自信を持って全力で競技会への準備をすることをお願いしたい」とした。
 また、バッハIOC会長は、「6月には多くの最終決定をするために準備をしなければならない」と述べ、6月に東京で開催されるIOC総会で、大会の成功に向けて議論を尽くす考えを示した。
 この結果、パウンド氏発言の「5月下旬に判断」が裏付けられ、新型肺炎への対応を巡って、2020東京五輪大会は5月下旬から6月にかけて最大の山場を迎えることになった。
 一方、3月3日の参院予算委員会で、橋本聖子五輪相が東京五輪の開催都市契約に20年中に開催されない場合、IOCが大会を中止できると明記されていることに触れ「2020年中であれば延期できると解釈できる」と述べた。
 これについて、海外主要メディアは、「五輪の年内延期の可能性」と一斉に報じた。
 英BBCやロイター通信は「日本の五輪大臣 東京2020大会は年内に延期される可能性があると述べた」と報じ、AP通信は「日本の五輪大臣 2020年内ならいつでも大会を開催できる」と伝えた。
 2020東京五輪大会が予定通り、7月末に開催されるかどうか懸念が国際的に広まっていることがこの報道で明らかになった。


出典 Reuters 2020年3月3日

東京五輪大会 開催中止の可能性 判断は「5月下旬」
 2020年2月25日、国際的に新型コロナウイルス感染拡大で開催を危ぶむ声が出始めている東京五輪大会について、国際オリンピック委員会(IOC)委員のディック・パウンド氏は、AP通信とのインタビューに応じ、開催是非の判断の期限は引き延ばせて5月下旬との見方を示した。
 カナダの弁護士でもあるパウンド氏は、今年77歳、1978年から国際オリンピック委員会(IOC)で委員を務め、トーマス・バッハ会長より13年も長く、最古参でIOC委員の「重鎮」とされている。
 世界反ドーピング機関(WADA)の元委員長で、ロシア陸上界の組織的なドーピング問題を調査したWADA第三者委員会の責任者を務めたこともあるIOC委員の「重鎮」である。
 パウンド氏は、「開催の是非の判断の期限は引き延ばせても3か月間」とし、判断の期限は「5月下旬」と警告した。そして、「5月までに事態が収束しなければ中止を検討することになるだろう」と述べた。
 また準備期間の短さや開催規模の大きさ、関係する国の多さから、他都市での代替開催や分散開催は難しいと指摘した。
 東京開催を数カ月延期する「10月開催」案については、米プロフットボールNFLや米プロバスケットボールNBAのシーズンと重なるため、巨額の放送権料を支払う北米のテレビ局の了解が得られないとして否定的な見解を述べ、事態が収束しなければ「中止を検討することになるだろう」とした。
 1940年の開催都市に夏季大会は東京、冬季大会は札幌が選ばれていたが、日中戦争が拡大した影響で返上に追い込まれ、代替地を検討したIOCも最終的に開催を断念した。
 これに対して、橋本五輪相は「『IOCとしての公式の見解ではない』とIOCから組織委員会側に報告があったことを明らかにした。また「ディック・パウンド氏は『予定通り東京大会の開催に向けて、IOCが準備を進めていることを説明しているものである』という回答があったとした。
 一方、小池百合子都知事は、「委員の1人が個人的な見解を述べたと聞いている。東京大会の担当者からは『しっかりやれ』とのメールが来た」と述べた。
 またパウンド氏はIOCの中でどれだけ影響力のあるメンバーなのか疑問視する批判も出され、IOCは「5月下旬」判断の衝撃を打ち消すことに躍起である。
 
 しかし、パウンド氏発言で、東京五輪開催に疑念が出され、その判断について「5月末」という期限が浮上したことで、五輪大会は混迷を深めることは必至である。
 日本国内を始め各国での感染拡大は、まだ始まったばかり、今後、どれだけ感染が拡大するかはまったく未知数である。パウンド氏発言があろうがなかろうが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が深刻化する中で、五輪大会がどうなるか懸念を持つのは当然の成り行きだろう。
 大会組織委員会や東京都、国は、大会開催に向けて新型コロナウイルス感染防止対策に全力を挙げて取り組まなければならない。 『しっかりやれ』ということは、新型コロナウイルス感染防止対策を『しっかりやれ』としてしっかり受け止める必要がある。「5月下旬」判断の衝撃を打ち消すだけではなく、対策が後手後手に回らないように、先手を打って取り組むことが肝要である。
 感染症の専門家の間では、新型コロナウイルスの流行が「5月末」までに完全に収束するのは不可能とする見方が主流である。 感染が続いている中での五輪大会開催は必至である。
 五輪大会を予定通り開催するのか、大会組織委員会や東京都は最終的になんらかの結論を出す必要に迫られている。「5月末」が判断を明らかにする期限とするのは極めて合理的だ。
 よほどの事態が発生していない限り、開催中止の判断の現実味はないと見られるが、開催方式の再検討や感染防止対策は必須となるだろう。パブリックビューイングや関連イベントの中止、アスリートの外出禁止、「無観客試合」の可能性も生まれる。
 訪日するアスリートや大会関係者、観光客の検疫体制の強化や、各競技場や選手村での新たな感染防止対策なども必須となる。 各競技場などにはサーモグラフィーの設置やPCR検査機の導入、医療スタッフの配置、感染防止グッズの配布などを早急に進める必要が生まれた。
 また、新型コロナウイルスの感染を懸念するアスリートの出場辞退や、状況によっては選手団の派遣を中止する国や地域が出てくる懸念は消えない。たとえ日本国内で、新型コロナウイルス感染拡大が収まっても、海外各国で感染拡大が猛威をふるっていたら、大会開催そのものが危ぶまれる可能性がある。
 「安全、安心な大会」の確保について、日本の国民を始め、世界各国に対して説得力を持った対応策を説明できるかどうか、大会組織委員会と東京都、国は重い課題を背負った。


出典 AP NEWS IOC senior member: 3 months to decide fate of Tokyo Olympics  2020年2月25日

「東京五輪は安全な形で行われる」 コーツIOC調整委員長


コーツ調整委員長と森大会組織委会長 IOCプロジェクトレビュー記者会見 2020年2月14日 筆者撮影

 2020年2月13日と14日の2日間、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会が大会開催の準備の進捗状況を確認する会議、IOCプロジェクトレビューが開催された。
 会議を終えて、コーツ調整委員長と森大会組織委会長は、14日夕方、記者会見に臨んだ。
 記者会見は新型コロナウイルスに関連した内容一色に終始した。
 コーツ調整委員長は「(新型コロナウイルスの対応は)日本の政府が責任を持って対応しており、日本の公衆衛生当局を信頼している。IOCは、世界保健機関(WHO)と話し合いを続けているが、WHOからも東京五輪の延期や中止の必要はないと言われている。大会は選手や観客にとって安全な形で行われるだろう」と述べ、東京オリンピックは予定どおり開催する考えを強調した。
 コーツ調整委員長は、4年前のリオデジャネイロオリンピックの前にジカ熱が問題になったことに触れ、「WHOは夏にジカ熱が広まる可能性は非常に低いと指摘したが、ゴルフの選手などが大会への参加を取りやめたこともあった。当時、情報を十分に伝えきれなかったようだ」とも述べ、こうした事態において組織委員会や政府による情報発信の必要性を指摘した。
 また中国選手や競技関係者の大半は、現在、国外を拠点にトレーニングをしたり、予選や大会に出場したりしているので、「中国外から直接(日本に)テストイベントや大会本番に参加するなら問題ない」と語った。
 さらにこうした中で来月からは聖火リレーや各競技のテストイベントが行われることについて、大会組織委員会の武藤事務総長は「IOCや国際競技団体と情報共有を密にしていくことを確認した。具体的にどう対応するかは協議を続けていく」と述べた。

 しかし、2月18日、世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は、新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、東京五輪が中止の危機にあるかどうかを判断するのは時期尚早との考えを示した。AP通信が報じた。大会に影響するような助言を検討するには「まだ遠すぎる」と述べた。 国際オリンピック委員会(IOC)とは連絡を取っているとした上でライアン氏は「われわれが(開催可否の)決断を下すのではない。リスク評価を手伝う」と述べた。(共同通信 2月19日)
 WHOのお墨付きで2020東京五輪大会は安全な形で予定通り行うというコーツ発言は、早くもWHOから東京五輪可否判断は尚早として否定されてしまった。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、大会開催が予定通りできるかどうかまだ予断を許さないのである。

「WHOとIOC協議 東京五輪の新型肺炎対策
 2019年1月29日、国際オリンピック委員会(IOC)は、東京五輪での新型コロナウイルスによる肺炎対策をめぐり、世界保健機関(WHO)と連絡を取って協議している。DPA通信が29日、報じた。
 IOCはDPA通信の問い合わせに対し「安全に大会を開催するための感染症対策だ。東京五輪の計画の重要な要素となる」と回答した。 (時事通信 1月29日) この報道が混乱を巻き起こすことになる。


「五輪中止」 フェイク情報拡散


深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2020年3月12日
Copyright (C) 2020 IMSSR


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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
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東京オリンピック 渡航中止勧告 開催に影響なし 過剰反応 メディア批判

2021年05月26日 12時39分29秒 | 東京オリンピック


東京オリンピック 渡航中止勧告 開催に影響なし 過剰反応 メディア批判

深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 「緊急事態宣言」下でも五輪開催 コーツIOC副会長

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)

「五輪開催」すべき 盲目的に「中止」唱えるメディアのお粗末 
根拠なし パンデミック・リスク 
開催実現で「Withコロナの時代のニューノルマル」をレガシーに


朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 五輪は開催すべき


米国務省、日本への渡航中止を勧告 変異株の拡大を指摘
 5月24日、米国務省は、日本国内での新型コロナウイルス流行の悪化を理由に、日本への渡航警戒水準を最高レベルの「レベル4」に引き上げ、米国民に対し日本への渡航中止を勧告する渡航情報を出した。
 米疾病対策センター(CDC)も同日、渡航情報を更新し、日本の新型コロナ感染状況を4段階のうち、最高レベルの「極めて高い」という「レベル4」に引き上げた。
 米国務省は渡航中止勧告について「日本の現在の状況では、ワクチン接種を終えた人でも変異株に感染し、感染を広める可能性がある」と指摘し、「2次的な要素」として民間航空便の運航状況や、米国民に対する入国制限、3日以内に結果が出る検査の不足を挙げた。
 渡航中止勧告は、開幕まで2カ月を切った東京五輪開催への新たな懸念材料となった。しかし、東京五輪・パラリンピックについては、米国務省は言及しなかった。

米政府報道官、東京五輪への支持を改めて表明 
 5月25日、米ホワイトハウスのサキ報道官は25日、東京五輪・パラリンピック開催への支持を改めて表明した。
 サキ報道官は記者団に対し「われわれの見解に変更はない」とし、「政府は開催を計画するにあたり、公衆衛生を中心的な優先事項に据えていると強調している」と述べた。
 国務省報道官もこの日、バイデン政権は「五輪・パラリンピックに向けトレーニングを重ねてきた米国の選手が、『オリンピック精神』の下で参加すること」を支持すると表明。「五輪・パラリンピックのために日本に渡航するのはかなり限られた人達になる」とし、選手やその他の関係者の安全を守るために詳細な規則が策定されていると述べた。

 一方、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は24日、米国の選手団は東京五輪・パラリンピックに参加しても過度の危険にはさらされないとの見解を示した。
  同委は声明で、「われわれはUSOPCと東京五輪・パラリンピック組織委員会が定めた選手とスタッフのための現行の感染リスク削減慣行と、渡航前や入国時、大会開催中の検査により米国チームの選手がこの夏に安全に参加できると確信している」と説明した。

米「渡航中止宣言」のリスクを強調するメディアの過剰反応はお粗末 冷静に受け止める姿勢が重要
 国務省が発表したレベル4への引き上げは、対象とされる国・地域への渡航には命に危険が及ぶリスクが大きくなるほか米政府としても十分な支援ができない恐れがあると国民に警告するもので、フランスやドイツ、ロシア、マレーシア、メキシコを含む100を上回る国・地域についても同じ渡航中止勧告が出ている。
 日本だけが極めて危険な国というわけではないのである。
 メディアはこうした事実を伝えず、「渡航中止勧告」だけを強調して、五輪開催のリスクを煽り立てる。
 そもそも米国の新型コロナウイルスの感染状況を冷静に見て欲しい。昨日の全国の感染者は3314万3747人、一日で2万5977人、死者は59万0533人、1日で640人もある。米国のワクチン接種率は50%を超え、感染者数は、ピークには1日20万人を超えたが、現在はその10分の1に減少し、「安全宣言」が出されて、ホテル、レストラン劇場の営業再開を宣言、ワクチンを受けた人はマスクなしの外出も許可されるようになった。
 しかし、新規感染者数は1日で2万5977人、日本は4000人(5月25日)、5倍の感染者を出している。
 人口100万人当たりの新規感染者数(1週間平均)は、米国が524.9人に対し、日本は267.2人で約半分、ドイツが616.7人、イタリアは530.8人に比べても日本は圧倒的に少ない。
 「変異株に感染し、感染を広める可能性がある」という米国務省に指摘は、「変異株に感染」リスクは、米国内でも日本と同様に急激に高まっているにもかかわらず、ワクチン接種率が進み新規感染者が減少したとして「安全宣言」を出している。しかし日本に対しては、「変異株」の感染リスク増を理由にワクチン接種者でも「渡航中止勧告」をするのは、矛盾であろう。
 「ワクチン接種率の遅れ」や、「2次的な要素」として民間航空便の運航状況や3日以内に結果が出る検査の不足についての指摘は同感である。
 しかし、日本が米国に対して入国制限を行っていることを、米国が「渡航中止宣言」を行った理由にするのは、納得できないだろう。
 米国は、感染が収まってきたが、未だに世界有数の「感染大国」であることには変わりはない。
 今回の「渡航中止勧告」は冷静に受け止めるべきである。



深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 「緊急事態宣言」下でも五輪開催 コーツIOC副会長

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2021年5月26日
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廣谷 徹
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