一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

新旧七冠の対決

2023-06-30 01:13:55 | 男性棋戦
28日に行われた、第71期王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝・藤井聡太竜王・名人VS羽生善治九段戦を振り返ろう。
まず、藤井竜王・名人と王座戦といえば、前局の村田顕弘六段戦が記憶に新しい。村田六段が必勝の局面を作りながら勝ち切れず、藤井竜王・名人が辛勝した将棋だ。
藤井七冠が思わぬ伏兵に敗れ、八冠の夢が破れる、というのもエピソードとしては面白い。しかし「八冠阻止」ならばその相手は、七冠経験者の羽生九段こそがふさわしい、ともいえる。将棋の神様は、その舞台をきっちり用意したのだ。
というわけで本局、七冠経験者同士の対決は「史上初」という、歴史的一戦でもあった。
将棋は藤井竜王・名人の先手で、角換わりとなった。AIの世界では角換わりは先手有利とされている。両者がそれを知らないはずがなく、とりわけ羽生九段には用意の作戦があるはずだったが、その答えは「早繰り銀」だった。15日のB級1組順位戦で、大橋貴洸七段に勝った縁起のいい戦法である。
藤井竜王・名人の対策は腰掛け銀だった.角換わりにはじゃんけんの法則があり、早繰り銀には腰掛け銀が有力とされている。しかしだからといってそれがすぐに形勢に影響されることはなく、以下は難しい戦いが続いた。
中盤、羽生九段が角を切り、取った銀で飛金両取りに打つ。ふつう、この両取りがかかれば後手よしが相場だが、羽生九段はその直前にも銀桂交換の駒損をしているので、トータルではいい勝負なのだろう。
実際、羽生九段が微差でよし、くらいの開きだったのだが、その後羽生九段が馬取りに歩を打ったところで、ABEMAの形勢バーが10%近く動いてしまった。すなわち、藤井竜王・名人有利になった。
どうも将棋というのは、とくに終盤において、覇気のない手はダメらしい。ここでも、単に馬を追うだけの手ではダメで、強く金を打つのがよかったらしい。
ここから形勢バーがどんどん開いていった。局面は羽生九段が指し切り模様になり、突然、といった感じで羽生九段が投了を告げた。私が直前に見たときは羽生九段に20%以上あったが、指し手が伸びても逆転はなし、と読んだのだろう。
いずれにしても、藤井竜王・名人には珍しい受け切り勝ち。また藤井竜王・名人の勝ちパターンが増えたわけだ。
さて、挑戦者決定戦の相手は、渡辺明九段or豊島将之九段となった。どちらも藤井竜王・名人と幾度もタイトル戦を戦っており、挑戦阻止の最終兵器として、このふたりほどふさわしい棋士はいない。なんだか、できすぎたシナリオを見ているようである。
渡辺-豊島戦が7月3日。その日は棋聖戦の第3局あり、白玲戦・女流順位戦A級、B級の最終局あり、羽生九段も対局ありと、盛だくさんだ。
コメント (4)
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