一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

私が勝手に選ぶ、「2012年度・女流将棋名局ベスト5」

2013-04-06 11:39:04 | ランキング
私が勝手に選ぶ、「2012年度の女流将棋名局ベスト5」を発表する。例年は3局だが、昨年度は名局が多く、3局から5局に増やした。

第1位
2012年9月3日
第2期女流王座戦・挑戦者決定戦
里見香奈女流四冠×本田小百合女流二段
挑戦者決定戦には、やはりこの女流棋士が勝ち上がってきた。里見女流四冠である。対するは、伏兵本田女流三段(対局当時は女流二段)。女流名人位戦リーグに何期も在籍するなど、その実力は評価されていたが、ここまで来るのは意外な気がした。
両者の対戦成績はここまで、里見女流四冠の6勝0敗。里見女流四冠自体も今期この対局の前まで6勝0敗で、本田女流三段の快進撃もここまでかと思われた。
将棋は後手番本田女流三段の一手損角換わりに進む。番勝負ならいざ知らず、優勝賞金500万円に繋がる挑戦者決定戦の大一番で、不慣れ?な相居飛車を選択する里見女流四冠の胸中がよく分からなかったが、里見女流四冠の視線ははるか先にあり、目先のコセコセしたことは考えていないのだろう。
ただ、居飛車党の本田女流三段としては望むところで、これで負けたら仕方ない、というところ。
本田女流三段がよく指し、有利から優勢に進める。そこから里見女流四冠の追い上げが物凄く、99手目▲7三銀と打たれたところでは、生きた心地がしなかったのではないか。私もネット観戦していて、逆転したと思った。
そこを本田女流三段は堪える。玉を安全地帯に逃し、最後は華麗な捨て駒で決めた。準決勝の対中村真梨花女流二段戦も名局で、勝勢の局面から盛り返されたものの、そこを踏ん張ったのと、同じ展開となった。私はここに、本田女流三段の充実を見た。
本田女流三段は、女流棋士生活21年目にして、初の大舞台登場。同世代の女流棋士にも夢を与えたのではないだろうか。私たちに感動をくれたという意味で、文句なく、2012年度の名局第1位である。

第2位
2013年2月27日
第39期女流名人位戦・五番勝負第5局
里見香奈女流名人×上田初美女王
前期女流名人位戦五番勝負は、文字どおりシーソーゲームとなり、最終の大一番となった。
私は里見女流名人を高く買っていて(まあ、当たり前だ)、戦前は里見女流名人のストレート勝ちと読んでいたから、この展開は正直、意外だった。私の想像以上に、上田女王は強くなっていたのだ。
将棋は、上田女王の四間飛車穴熊に、里見女流名人は銀冠で対抗する。中盤から終盤にかけて、実に見応えのある展開された。
たとえば推理小説を読んでいるとき、展開が面白ければ、もっと先を読みたいと思う。しかしメチャクチャに面白いときは、この展開がもっと続けばいいのにと思う。終わらなければいいのにと思う。
本局もまさにそんな感じで、このまま終局に向かうのが惜しいと思った。もっとふたりの戦いを見ていたいと思った。
終盤、上田女王に痛恨の手順前後があり、形勢は里見女流名人に傾く。ここから上田女王に勝ちはなく、以下は燃えさかる闘志が指させたに過ぎない。女流棋士の諦めの悪さには苦言を呈する私だが、最後の数手は容認できるものがあった。
本局、第40回将棋大賞で「名局賞特別賞」に選ばれたから言うわけではないが、まぎれもない名局である。

第3位
2012年5月19日
第2期女流王座戦・一次予選
高群佐知子女流三段×カロリーナ・ステチェンスカ アマ
女流王座戦には海外招待選手制度があり、今期はポーランド出身のカロリーナ・ステチェンスカさんが招待された。
いまやネットの時代だから地域による棋力差はあまりないが、昨年の張天天さんの将棋などを見ていると、まだまだ女流プロへの壁は厚いな、と思わされた。
ところが本局、フタを開けてみると、カロリーナさんが善戦する。石田流三間飛車から着実に優位を拡げ、気が付いたら勝勢になっていた。
この対局当時、ちょうど私は将棋合宿中だったのだが、111手目カロリーナさんが▲7八角と打つ前後では、「解説」の植山悦行七段や大野八一雄七段が、「カロリーナさん勝ち」で検討を打ち切っていた。
しかしそこから、高群女流三段が「受けの高群」の本領を発揮する。絶体絶命の玉を逃れ、敵玉に詰めよまで掛けた。ふつうだったら逆転しているところである。
だがカロリーナさんは頑張った。そこから冷静に指し回し、最後は華麗な捨て駒で高群玉を詰ましたのだ。総手数159手。カロリーナさんも強かったが、敗勢の局面から50手近くも粘った高群女流三段も、さすがの強さだった。
先日はコンピューターが男性現役棋士を破ったが、外国人女性が女流棋士を破った本局もまた、棋史に残る一戦になったのである。

第4位
2012年10月8日
第50回1dayトーナメント「ファンクラブMinervaカップ」決勝戦
中井広恵女流六段×船戸陽子女流二段
「中井-船戸」のカードは熱戦や名局が多く、2008年の1dayトーナメント「フランボワーズカップ」決勝戦や、一昨年の日レスインビテーションカップ決勝戦での熱闘は、いまでも私の脳裏に、鮮明に残っている。ふたりは読みの波長が合うらしく、それがハタから見ていて面白いのだ。
本局も期待にたがわぬ熱戦となった。相居飛車からの壮絶な攻め合いは、これぞ女流将棋と思わせる、50回記念大会にふさわしいものとなった。
最後は船戸女流二段が華麗に決めて、記念すべき「1day女王of女王」となった。

第5位
2013年1月20日
第6回女流最強戦
中井広恵女流六段×山口恵梨子女流初段
3人の子持ちの人妻と、現役女子大生の対戦。私の場合、体面上は中井女流六段を応援しなければならないのだが、「現役女子大生」の響きもうれしいものがある。本局、「大野教室」の食事会と重なり、大野七段や植山七段の生解説を拝聴しながらの観戦だったが、周りは中井女流六段の応援一色で、まさか「ボクはエリコちゃんを応援してます」とも言えず、苦しかった。
将棋は、中飛車に構えた恵梨子女流初段が会心の捌きを見せたが、中井女流六段も年季の入った粘りで容易に土俵を割らない。
そこから恵梨子女流初段が徐々にペースを崩し、秒読みに追われて疑問手を指し、逆転。最後は中井女流六段が際どく逃げ切り、勝ちどきを挙げた。
しかし恵梨子女流初段、敗れたとはいえ堂々の戦いぶりで、またもオンナを上げた。今年度も大いに暴れてほしい。

女流将棋のレベルは年々向上しているらしい。今年度はどんな将棋が見られるのか、女流棋士の皆さまの熱い戦いを、楽しみにしている。
コメント (2)
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