一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

四十四たび大野教室に行く(前編)・M君との一局

2013-04-08 00:13:42 | 大野教室
6日(土)は、3週間ぶりに「大野教室」に行った。
午後1時半すぎに入ると、講師の大野八一雄七段が3面指しを行っていた。ほかに自由対局が1局。弟子のM君(奨励会3級)、Minamiちゃんもいた。
奥の部屋では、もうひとりの講師の植山悦行七段が、3面指しを行っていた。W氏とFuj氏の姿はない。
大野七段が
「M君、大沢さんと指して。厳しく指してあげて」
と笑いながらいう。
プロ棋士と奨励会員。指導対局としてならば一見、奨励会員のほうがラクな相手に思える。しかしこれが逆で、棋士のそれは下手の棋力を見ながら手加減して指してくれるのに対し、奨励会員はそのプライドを賭けて戦ってくるから、こちらのほうが厳しい。だがそれだけにこちらも、気合が入るのである。
M君が駒を置くのに呼応して、私も駒を置く。そこへFuj氏が顔を出した。
「(入室したら)大沢さんがやけに駒音を高くして駒を置いているから相手は誰だろうと思ったら、(奨励会の)M君でしたか」
と笑いながらいう。私も笑うしかない。
持ち時間30分、秒読み30秒で、M君に香を落としてもらって、対局開始。
持ち時間の指定のない指導対局と、チェスクロックを使っての1対1の対局。一見前者のほうがじっくり考えられそうだが、意外と指し手をせかされる場合がある。私はチェスクロックを使い、自由に考慮時間を使えるタイプのほう好きだ。
M君は四間飛車。私の▲1六歩に△1四歩だったので、私は急戦を見送り天守閣美濃に組む。M君は居飛車党だから、振り飛車にさせただけでこちらに利がある。それに固さ負けしなければ、形にはなると思った。
では、仕掛けの場面を載せる。

第1図以下の指し手。
△4三飛▲2四歩△4五歩▲9八玉△2四歩▲同角△4四角▲6八角△2六歩▲3六歩△5四歩▲3七桂△5五歩▲同歩△同角▲2六飛△3七角成▲2二飛成△4二飛▲2四歩△5五馬▲3一竜△3三馬▲2三歩成△同銀▲2一竜△2二飛▲4一竜△3二銀(第2図)

ここでは△4三銀を予想していた。そこで▲2四歩△同歩▲同角△2二飛▲3三角成△2八飛成▲4三馬△1九竜▲4一角△6二金上▲5一銀…と考えていたが、M君は△4三飛。
私はもちろん▲2四歩。対して△4五歩。よろこんで▲2三歩成△同銀▲同飛成は、△7七角成▲同桂△2三飛(参考A図)がある。なるほど、うまい手があるものだ。

私は▲9八玉と素抜きの筋を避けたが、局後の感想戦では、▲2三歩成△同銀▲2四歩とし、△3二銀▲1五歩△同歩▲同香△1三歩▲2三歩成△同銀▲1三香成(参考B図)で上手不利、とM君の意見だった。これは香落ちの欠陥を衝いている。私は全然気付いておらず、奨励会員の読みの深さに感心した。

数手進んで、△2二飛に▲4一竜と逃げたのが疑問手。△3二銀と引かれ、飛び上がった。

第2図以下の指し手。▲2三歩△同飛▲2四歩△4一銀▲2三歩成△同馬▲4三飛△2九飛▲4五飛成…(第3図)

私は仕方なく▲2三歩だが、以下歩切れになっておもしろくなかった。
洋間では、Akiちゃんがみんなから祝福を受けている。Akiちゃんは先週行われた第3期女流王座戦のアマチュア東日本予選大会で見事予選抜けを果たし、いまや時の人なのだ。
同じ決勝ブロックにはHanaちゃんも名を連ねていたが、決勝戦を前にして敗退した。Hanaちゃん、次をがんばるしかない。
私は▲4三飛。馬取りを受ける△2九飛に、▲4五飛成で1歩を補充して一安心。しかしここも、M君は△2五飛だった、と嘆いた。

なるほどこれなら▲4五飛成は利かず、こちらの飛車が不自由になる。先ほどの感想もそうだが、M君は実によく読んでいる。さすが奨励会員である。
このあと、M君に攻め急ぎの手があって、私が9筋を破り優勢になった。M君は早くも秒読みに入る。私相手に、なんでそんなに考えちゃったんだろう、と思う。もっともM君なら、30秒でも苦にしないだろう。私はまだ19分も残っていた。
局面は完全な泥仕合となった。M君が△5八竜と金を取ってくる。これを▲同金では詰まされると見て、私が逆に上手玉を詰ましに行ったが、わずかに詰まず、▲5八金と手を戻す。
ならばとM君が私の玉を詰ましに来たが、これも詰まず、当たりになっていた私の馬を取って手を戻した。
背後では3時休みで、バタバタしている。しかしこちらは休憩どころではない。
疑問手は後に指したほうが詰みが重い。私はM君の玉に王手ラッシュをかける。詰むや詰まざるや。
私が▲7四飛と指すと、背後にいた植山七段が「やったか!」と叫んだ。
ここでM君が投了。私も軽く頭を下げる。奨励会員に、うれしい勝利となった。
早速感想戦に入る。M君の読みの量がハンパなかったのは前述したとおり。私もあまり感想戦はやらないのだが、さすがにゴキゲンになったので、追随する。
将棋は二転三転しており、終盤は明らかにこちらの負けだった。条件が同じだから恥じることはないのだが、運に恵まれた感じだった。
感想戦は30分前後続いたが、スタッフのW氏に促され、これにて終了。
私がM君に勝ったのは、実は初めて。いままで惜しい将棋はいくつかあっただけに、よろこびもひとしおである。これだけでも、きょうは教室に来た甲斐があったと思った。M君に感謝したい。
コメント (6)
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