イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その44☆北温泉逗留物語☆

2011-01-18 13:43:47 | ☆湯けむりほわわん温泉紀行☆
                                                              

 栃木の那須高原の山中深くにある「北温泉」は、イーダちゃんのもっとも愛する温泉宿のひとつです。
 いままでいろんな温泉宿に泊まってきたけど、いちばん泊まった回数が多いのはここじゃないかと思います。
 そうですね、泊まり日数を総計したら、まる1月くらいいくかもしれない。
 イーダちゃんはこちらのお宿が大好きでして、ほんと、ことあるごとに利用させていただいたものです。
 そりゃあ、もういいお宿なんですって---江戸末期に建てられた木造3階屋と、明治期に建てられた木造3階屋、それから、昭和になってから建てられたでっかい新館とが、あちこち組みあわされ、帳場を中心にところどころで混じりあい、なんとも錯綜した、摩訶不思議な、それこそ「千と千尋の神隠し」みたいな歴史感いっぱいの、ほの暗い玄妙空間をかたちづくっているんです。
 こちらに逗留していると、僕は、1日に何度もトリップできちゃいますね。
 たとえば深夜にふっと目をさまして、トイレにいくとき---
 建てつけのわるい部屋の戸をガゴンとあけて---注:これはあくまで江戸期に建てられた旧館の自炊棟にかぎってのお話です。イーダちゃんは宿泊の際、ほとんどこちらに泊まるもので。ちなみに新館はちゃんとした近代的お宿であるので、宿泊予定のお客さんはそのへん了承ヨロシク---両隣の部屋に気を使いつつ、真夜中の木の廊下をぎしぎし歩いていくんですが、その廊下中に線香の香りがもういっぱいにたちこめてるんですよ。
 北温泉さんでは、建物内の錯綜した廊下のあちこちに小さな神社があり、神サマや仏さまが祀られているのです。
 で、宿のほうで、一晩中、線香の火を絶やさないわけ。
 廊下の側溝にはたえず温泉が流れ、室内、特に廊下のラインを一年中ぽかぽかと暖めてくれてます。
 はっきりいって、冷えきった部屋にいるより、廊下に出たほうがあったかいくらい。
 特に2階のトイレ前の廊下部分は下に流れる温泉効果のおかげでことのほか暖かく、こちらの飼い猫の「ミミ」---残念ながら彼女は去年、死去してしまいましたが(ToT)---は、夜になるとたいがいここのスペースでまあるくなって、気持ちよさげにまどろんでいたものでした。
 それは、常連客のあいだでは名物になっている光景だったんですよね。(嗚呼、懐かしいな、いまは亡きミミ!)
 寝ぼろけまなこの彼女に軽く目礼してから、トイレにIN。
 で、用をすませてから部屋に帰るとちゅう、唐突に温泉に入りたくなり、そのまま急遽コースを変更して2階突きあたりの「天狗の湯」にむかってみたり…。
 イーダちゃん的にいうなら、まさにパラダイスなんですよ、こちらのお宿って。
 いつでも入れる掛け流しのいい温泉があって、自炊ができて、のんびりこんと落ちつけて、宿自体は木の香りのするむかしながらの日本建築で、で、宿の外には手つかずの自然がどこまでもゴーンと広がってて…。
 知らないひとからみれば、なんて安上がりのパラダイスなの、と呆れられちゃうかもしれないけど、僕的なパラダイスっていうと、ええ、いつでもやっぱりこのような場所に逢着しちゃうんですよね。
 郷愁の香るこういう土地と家屋とが、イーダちゃんは、ほんとに好きなんです……。 
 
                         
            (左上:室内廊下のあちこちにある小型温泉神社。右上:江戸期に建てられた旧館の1室)

 ちなみに、こちらの宿にきたことのないひとのために説明しておきますと、このページ冒頭にUPした写真は、「北温泉」の玄関前にある有名な野外温泉プール、通称「泳ぎ湯」です。
 広いっしょ? こちらの「泳ぎ湯」、いまや北温泉の対外向けの、もうひとつの顔みたいな名物的存在になってきちゃいましたね。
 こちらのプールの前にある平屋の建物は---冒頭UP画面の右下のほう、掛け流しのお湯が樋からプールにばーっと注がれているの、見えるでせう?---男女別の内湯の「相の湯」の湯小屋なんです。
 こちら「北温泉」は、ほんと、建物のあちこちに何種類も温泉があるんですよ。
 「相の湯」は鉄泉系---コンクリ製の四角いちっちゃい湯船に、掛け流しの熱いお湯がいつもなみなみと注がれてて。
 お湯の鮮度は「天狗の湯」ほど新鮮じゃないけど、ふつうの基準からいったらそうとういい感じかも。
 こりゃあ、温泉好きにはこたえられないっスよー 犬も歩けば温泉にあたるんですから。
 で、観光客の大部分は、こちらの湯小屋のなかで水着に着替えて、家族みんなでわいわいいいながら、UP画面の前方に広がっている、いまさっきから話題になっている、広大な、こちらの温泉プールへとむかうわけなんです。
 こちらのプールは、見れば誰でも分かると思うんですが、マジでかいの---。
 泉温はいくらかぬるめかな。底のコンクリート部分も苔で少々ぬるぬるしてて滑るんですけど、夜の明けかけの薄明のころにここのお湯につかると、そりゃあ気持ちいいんですって。
 あたりは険しい山しかないし、しかも、このあたりの土地ってむかしっから修験道の土地だったんですよね。
 山伏の土地であり、修行のための地であったということです。俗衆の安楽のための土地じゃないの。
 そのような土地柄のせいか、夜明けの「北温泉」には、なにか張りつめたような、ただならぬ一種の霊力のようなものがいつもびんびんに感じられます。
 こちら、雑誌とかで取りあげられることは少ないんですが、僕的には、完璧パワースポットだと思ってる。
 僕は、「北温泉」に宿泊した際には、翌朝には必ず早起きして、こちらのお湯につかりながら夜明けを迎えることを日課にしているんです。
 そうしているだけで、後ろ頭とうなじ付近が、山の気を吸ってじんじんくるの。
 体調のいいときには、背骨沿いになにかが「ずぞーっ」て流れていくのがじかに感知できるくらい。
 特にこの写真を撮影した、2010年の3月7日の早朝の湯浴みは、格別なものでした。この写真の木々の枝枝、ふしぎなかたちに結晶化してるように見えません? 実はこれ、霧氷といって、雪の早朝の青天のときじゃないと見られない、1年に数度きりの珍しい現象なんだそうです。
 湯気のゆらめく「温泉プール」に肩までつかって、そこから眺められる早朝の山々と霧氷の木々との景観は、もう言葉の領域をとっくに超えてましたねえ---綺麗すぎて、どんな形容をしたって足りっこない---ええ、ため息ついて見惚れてるほかなかったな…。

 しかし、まあ、この「温水プール」にしても、江戸・明治・昭和と三代にわたって建てつけられた、風情たんまりの建物自体にしても、それはそれで「北温泉」の重要な一部ではあるんでせうが、やはり、やはーり! こちらの2階の突きあたりにある「天狗の湯」について語らねば、このページは重大な片手落ちになってしまう、とイーダちゃんは考えます。
 ええ、こちらの「天狗の湯」は、それくらい素晴らしいお湯なんですよ。
 こちら、基本的に石のお風呂です。それが長方形のごつごつした湯舟でね、湯舟の彫られた時期は、完璧江戸末期だっていうんだから、これはもう気合いがちがってる。
 その石風呂を覆うように小規模な湯小屋がかろうじて建てられてまして、その木小屋沿いの崖のうえから、掛け流しの温泉が小滝になって、高いところから、ごうごうと雪崩れおちてきてるんです。「天狗の湯」は石段沿いに温泉神社が設置されてまして、そこまで上っていくと、その源泉落下のプロセスがよく見えるようになってます。もの凄い自然の恵みが、肉眼でしっかり観察できるわけ。
 ここ、最初はほんと、修験道の山伏しかつからないお湯だったんだそうですよ。
 その伝統からか、壁にでっかい天狗の面をかけているんですね---写真の正面のは、縦3メートルくらいある、木製の、超・巨大な天狗のお面です。
 で、画面の死角の左側にも、それからその反対の右側にも、これよりこぶりな天狗の面がさらにひとつづつかかってて。
 この左右の天狗の両脇の壁には、願いごとの記入された無数の絵馬が掛けられてまして、湯浴みの神秘的な気分をさらに際立たせてくれるんです。 
 湯質はというと、山ひとつしたの那須湯元の温泉は、だいたいにおいて硫黄系の白濁湯なんですが、こちら「北温泉」のお湯はちがう、透明な、やや熱めの弱食塩泉が主ですね。
 ただ、「天狗の湯」に関しては、じゃっかんラジウムも混入しているとか。あと、ここの「天狗の湯」、凄く生きのいいお湯でして、湯の華の量がハンパなく入ってるんですよね。外からの樋を伝って湯舟のなかに注ぎこんでいるのですが、なんか、お湯のなかに湯の華が多く入ってるときと少ないときがあるんです。
 少ないときは、もー ただの熱めのお湯じゃないって微妙な感じなんですが、多いときには、突如としてお湯中に湯華が多量に混入してきて、体育座りしてた膝の裏あたりから、いきなり茶色いおがくずみたいなのが、大量にぶわーっと舞いはじめるもんだから、お客によってはけっこう動揺しちゃったりね。

----わ。なんだ、いきなり枯れ葉がまじってるぞ、ほら…なんだ、これ? 

----おめえ、それはちがうよ…そりゃあ、湯華だって…ゆ・ば・な…わかる……?

 湯けむりもくもくの、真冬極寒の「天狗の湯」でもって、たまたまいっしょになった湯浴み客の、そんな朴訥会話をぼーっと遠くに聴いたりしてるのは、なんとも風情があっていいもんです。
 そんな会話のちょうど途切れ目に、たまたま誰かがカコーンと桶を鳴らして、それがいい感じで風呂場の空間にこだましたりして…。
 ベリー・グー---うー、なんて染みるふしぎ空間なんでせうか。(ToT)
 あ。そうそう、「天狗の湯」のフォトもUPしておきませうね。ほい。

                           

 あと、温泉好きの方々にもうひとことばかり---あのね、ここ、純然たる混浴なんですよ。
 1200年まえからつづく、完璧な混浴。しかも、あえて女性側の視点からいわせてもらうと、混浴難易度はかなり高いと思う。
 こちら、まず、着替処、というやつがありません。
 お風呂のまえのコンクリートの壁のところに、木枠の枠組みたいなのが何個かあって、いってみればそれがロッカーであり、着替え棚でもあるわけ。でもって、着替えの設備はそれだけ。
 つまり、湯浴みにきたお客は、「天狗の湯」にいい気持ちでつかってる湯浴み客多数の見知らぬ視線のまんまえで、服を脱ぎ、裸にならなきゃいけない、ということです。
 これは、たぶん、若い女性にはハードル高いでせうね。
 実際、イーダちゃんはここのお風呂にはもう50回近く入ってて、見知らぬ女性との混浴体験も数限りなくありますけれど、若い女性との混浴体験って片手で数えるほどしかないですもん。
 そうそう、いつかお湯でご一緒した福島の若奥さんは、「天狗の湯」での混浴について、こうおっしゃってました。

----わたしたち、ここに入るときはいつもここを素通りして、ここの石段のうえの、ほら、温泉神社すぐのところにある個別の、家族湯にまずいっちゃうんですよ。あそこなら、戸もあるし、カギもついてるし…。で、そこからお父ちゃんが「天狗の湯」の偵察にいってくれるわけ。いまはお客が多すぎてだめだとか、いまがチャンス、客いないからすぐこい、とかね。いまもお客さんが男ひとりしかいないからこいっていわれて、わたし、そうしてきたのよ…。やっぱり、そうでもしなきゃ、若い女は、ここ、入れないですよ。でも、こちら、ああ、ほんとにいいお湯ねえ……。

 この福島発の美人の若奥さんは、白いほほをほのかな桜色に染めて、微笑みながら「天狗の湯」を満喫してられました。
 秋の光がさらさらと降りそそぐお午すぎ、その艶姿は、とても色っぽくて素敵でありました…。

 なんていうとイーダちゃんという人間、さぞ混浴に理解のある、ほぼ模範的で理想的な、混浴紳士客として見えるかもしれません。
 いや、実際にある程度まではその通りなんだと思います---が、イーダちゃんにしても所詮はニンゲン、たまには煩悩にまみれたスケベチックな気持ちに駆られることもあるのです。以下はその話---。
 あれは、いつだったか連休のときでした。連休どきの「北温泉」は人気があって非常に混むので、本来だったらいかないのが僕的な筋なんですが、そのときはたまたまなにかの事情で「北温泉」に連泊していたんですね。
 で、福島かどっかの温泉に寄って、宿に帰ってきた午後の3時ごろ、さっきまでがやがやと湯浴み客の喧騒で賑やかだった「天狗の湯」がふっと静かになったんですよ。だもんで2階の自分の部屋からちょいといってみた。
 すると、珍しく、休みの日のこんな時間なのに、お風呂に人影がひとつもないんです。
 おお、と思いました。人気のある「北温泉」でこんなの珍しいですから。誰もいない今のうちにと携帯で写真もいっぱい撮って、上半身も裸になって、さあ、きりのいいところまで撮ったら、いよいよひと風呂も頂いちゃおうかなあ、なんてのんきに思ってた。で、靴下まで脱いだとこで、「天狗の湯」に女の子のふたり連れがやってきたんです。
 たぶん、女子大生ぐらいだったんじゃないかなあ。ふたりとも、えらい綺麗で美人な子なんですよ。
 彼女たち、からっぽの「天狗の湯」を見て、しめた、という喜び顔になりました。
 でも、次の瞬間、風呂陰にいた半裸のイーダちゃんを見つけて、ああ、しまった、という落胆顔になったのです。

----やあ、こんにちは…。

 と、僕は何気に挨拶しましてね、

----ええ、こんにちは。

 と、彼女らもすぐに返してくれて---しっかりした気のいい娘さんという印象でした。
 ちょっと彼女たちと話してみました。ふたりとも小田原からやってきたっていってましたね。温泉が非常に好きで、休日になるとふたりで各地の温泉巡りをするのが、このごろのいちばんの楽しみなんだとか。この「北温泉」もとても楽しみにしてやってきたんだけど、混浴の「天狗の湯」だけは、さすがにいってみないことには、実際に入れる状況かどうか分からない。せっかくきたのだから、とダメ元できてみたら、なんと男性客がほとんどいない。これは、またとないチャンスだと思う。ここ、思っていた以上に風情があるし、ぜひいまから入ってみたいんだけど、お湯、ご一緒してもいいでせうか、と彼女たちのほうからふいにもちかけてきたのでありました。
 これはマジびっくりしました。
 なんてスイートな!---若い、美人女子大生からの、混浴の提案だなんて。(^o^)/
 いまだったら、もう諸手をあげて超・大喜びのところです。
 なのに、このときはイーダちゃん、なんといいカッコしちゃったんですよ。

----いや、それなら、僕、あっちいくから、いまのうちにふたりだけでここ入っちゃいなさいよ…。

----ええ、でも、それじゃあ…(遠慮視線で)あなただって遠くからこられたんでせうし……

----いいのいいいの!(トやたら快活に)僕、ここの常連泊まり客だから。いつでも入ろうと思えば、すぐ入れるのよ。だから、気にしないで。さあ、いまのうちに入っちゃいな…こんなチャンスもう二度とないよ…。

----あ、ありがとうございますっ!(ふたり、感激して深々と礼)

 いや、やったこと自体はまあ立派だったと思いますよ、彼女らも喜んでくれたし…。
 それはいい、でも、いま思いかえしてもあれは歯噛みモン---なんだってあのとき、あそこまでいいカッコしちゃったのかなあ…。(ToT;>
 ちょっとぐらいいっしょに混浴してもバチはあたらなかったのに……あーん!
 
 帰りのクルマのなかでも、ああ、惜しいことした、惜しいことした、とイーダちゃんはずっと後悔しきりなのでありました。
 いまだに思いかえすとちょっと悔しいもの。そのへんの自分内回路の仕組みがいまいち分かりません。
 ふしぎですよね、混浴自体は腐るほど体験してるのに、いまだにあれはむーっと残念なんですよ…。

 暇話休題---ここに、那須の「北温泉」のホームページのアドレスをあげておきます。ご参考まで。

   http://www.kitaonsen.com

 今年は特に寒いから、きっといまごろ、「北温泉」は何層もの深い雪に覆われていることでせう。
 どこまでもまっ白の世界のなか、ごんごん降る大粒の雪を眺めながら入る「天狗の湯」は、ほんと、絶品なんですよね。
 今夜はそろそろこのへんで終りたく存じます---こんな長いのを読んでくれて有難う---温泉レポーターのイーダちゃんでした。<(_ _)>