兵頭新児の女災対策的読書

「女災」とは「女性災害」の略、女性がそのジェンダーを濫用することで男性が被る厄災を指します。

宝島 2010年 06月号

2010-04-28 00:24:09 | レビュー

「ガクガク(((( ;゜Д゜))))ブルブル」
 という顔文字があります。
 何か、見ていてムカつきません?
 いや、ぼくも使ったことがあるので、あんまり偉そうなことは言えないのですが、得意げにこの顔文字を使う人間というのは、何だかさもしい感じがしてしまうのです。
 例えばですが、ご贔屓にしている漫画家のアンチスレを何となく眺めていたら、この顔文字が、漫画家への罵倒と共に貼られていた……というところをちょっと想像してみてください。
 ほら、ムカついたでしょう?
 これはつまり「人を罵倒しておきながら被害者ヅラしてんじゃねーよ」というムカつきですね。ある意味、今の社会において、「被害者は最強の権力者だ」ということを誰もが理解し、受け容れているのだという一例です。
 さて、現在発売中の『宝島』6月号の大特集は「あなたの隣の怖い女」です。ぼくも巻頭言(って言うんでしょうか?)を一言、添えさせていただきました。
 キャッチコピーは「実録!パワハラ女、婚外恋愛妻、虐待ママ、婚活魔女etc.」となっていて、ぼくの主張とも親和性のある内容になっています。と言うより、しょせんはインドア派のぼくの本より、本書を読んだ方が遙かに女性の恐ろしさを実感することができるでしょう。
 ぼくも本書を読むことでいかに今の男性たちがおぞましい女災の被害に遭ってるかをまざまざと知らされました。
 その意味で、オタクをやってる俺ってやっぱ勝ち組なんだな、とも思います。『電波男』以降、普遍的になされるようになった「オタクは現実に勝った」「二次元へと旅立った俺らは勝ち組」という物言いには「戦略的」には賛同しつつも、実はいささかの違和を感じていたのですが、本特集を読む限りではやっぱりぼくたち、勝ちのようですw
 少なくとも「女>>>>越えられない壁>>>>男」などと弾言したり「社会は女尊男卑だが、それでいいのだ」と真顔で言ったりする人たちに比べれば。


 さて、負け組たちは見捨て、安全地帯からの女災観測を続けましょう。
「怖い女」が増えていることは特集を読めば明らかです。
 ただ、ちょっと思ったことなのですが、上に書いたネット上における必殺の攻撃呪文、「ガクガク(((( ;゜Д゜))))ブルブル」は女性たちには通用するのでしょうか?
 上の特集について、ネットにおいて批判が聞かれました。
「怖いと言うだけで女性の悪しき点に対して正面からの非難はしていないではないか」と言ったようなものだったかと思います。
 確かに、それはわかります。
 上に「被害者に回ることこそが勝ちである」と書きましたが、女性に対して「被害者に回る」ことは、残念ながら「勝ち」にはなりません。ぼくたちのこのセカイでは、第一階層に「女は絶対被害者」という設定がなされているので、男が女に対して被害者に回っても、残念なことに世間から同情してはもらえないわけなのですから。
 よって、「怖い女」の「怖い行為」は常に「本来弱者である女性の、強者である男性へのカウンターアタック」として解釈されます。それ以外の解釈を、世間は認めません
 その意味で「怖い女」という表現に歯痒いものを感じるのも、わからないではありません。
 しかし、とは言え、だからこそ「怖がる」ことで女性を「立てる」フリをしつつ、その「怖さ」の本質を突く、つまり「怖い女特集」のフリをして「悪い、否定すべき女特集」を組んでしまうというゲリラ作戦も有効なのではないかと思います。
 この特集は一応、そういった一定の戦果を収め得たのではないか……と思うのですが、いかがでしょうか?


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平成オトコ塾

2010-04-03 17:20:38 | レビュー


 女性の手になる「男性論」の書です。
 茶化してしまうなら、草食系男子とか非モテとかに対する「フェミニズム勧誘本」といったところでしょうか。
 本書を読むきっかけとなったのは、YOUTUBEに上がっていた本書の著者、澁谷知美教授と上野千鶴子教授の対談でした。Mixiの某コミュでそれが話題に上ったのですが、実はぼくはその対談を見る限り、比較的澁谷教授に好感を持てると感じたのです。





 対談において、澁谷教授は上野教授の「男の友情はダメだ」論にかなりしつこく食い下がり、反駁していらっしゃいました。繰り返す通り、フェミニストたちはとにもかくにも男の友情を貶め、女同士の連帯を尊ぶ傾向にあります。そこに疑問を表明した澁谷教授の実直さと勇気とを、ぼくは大きく評価したいと思います。実際、本書においてもブルセラ学者や萌え精神科医のセンセイ方がママのお言いつけ通り、お利口さんに男の友情を全否定なさっているのを一蹴する箇所があり、読んでいて痛快でした。
 まあ、残念ながら、教授の意見に賛成できた点はそこ以外あまりなかったのですが。
 読んでいくと結局、教授も男の友情について相当に懐疑的でいらっしゃることがわかります。ただ、彼女は「男の友情は素晴らしい」「女は嫉妬の塊」「女は男の話を聞かない」という「一般論」をまず提示し、次にそれを否定するという論の展開の仕方をなさっていて、これは彼女が「一般論的には男の友情は強いものだと見なされている」とご存じであり、象牙の塔にお住まいのちぇんちぇー方と違って、世事に通じていらっしゃることを示しています。また、この論理展開は「男の友情」のネガティビティをあげつらいさえすれば何となくそれを否定できたような気になり、「あれ? 女の友情だって同じネガティビティがないか?」といった疑問を読者に生じさせにくいという点でも、極めて優れた手法であります。奇しくも同書の別な箇所に


 不思議なことに、「一般的にいわれているのとは違うこと」は、妙な信憑性を持つものです。


 と書かれているのですが、まさしくそれを証明した形です。
 YOUTUBEで見た時点では理解があるかと思ったのですが、本書を読んでみると教授もやはり、男の友情は「競争心」故に成立しにくいものだ、との「彼女たちの業界の中だけで流通する一般論」を落としどころにしていらっしゃいます。「女同士には競争心ってないの?」といった疑問に答えてくださることは、もちろんありません。
 他のトピックスにおいても、基本的に教授は同じような論理のすり替えという手法を多様なさっています。
 例えば教授は男が女を「守る」という時、「経済的サポート」のみを考える「単線型」サポートと、それに加え「情緒的サポート」をも考える「複線型」サポートのふたつの種類があるのだという、実に奇妙な定義を持ち出します。
 何かと思って読んでいけば、教授は「単線型」の場合、失業するとぽっきりと心が折れますよ、という理由で「複線型」のサポートを勧めてきます。では、その「情緒的サポート」とは具体的に何を指すのでしょうか?
 はい、「家事育児をすること」でした。
 これ以降、論調は「日本の男は働き過ぎ」という、主張としては頷けるものに移っていくのですが、読んでいる側はもうどうでもいいという気分に陥ります。


「非モテ」についても語られているのですが、これもどうにもピントがずれているように感じられます。
 従来の非モテ言説(格差社会に原因を求める説)は教授にとって「男が稼ぐ前提で立てられた理屈だから許せない(大意)」もののようです。そもそも女が稼いで男を養う(せめて共稼ぎする)気概があれば、非モテや非婚化自体が発生していないと思うのですが。
 ぼくも著作で展開した「女は金に寄ってくる」という理屈に対しても一応、反論が試みられているのですが、「モテない理由はいろいろある(大意)」とかハナシをすり替えているようにしか、ぼくには読めませんでした。


「そうはいっても、年収が上がれば婚姻(恋愛)率も上がるのは確かじゃないの」
「男性の年収を上げれば、今よりも数多くの人たちに恋愛が保証されるってことでしょ。だったら、すべての人間に恋愛を保証できないからといって、格差解消は不要ってのは暴論なんじゃないの?」


 という反論を仮想して、それに対して


 格差解消はむしろ必要です。ただし、すでに述べたように、格差是正は格差是正として粛々と追求していけばよいことであって、そこに恋愛や結婚を持ち込む必然性はまったくありません。


 と答える下りなど、メチャクチャとしか言いようがありません(相手に無理矢理二種の疑問を提出させて、二次的な一方の疑問だけに答えて誤魔化している!)。
 また、非モテ問題を若年労働者問題とパラレルで考えている箇所など、ただひたすら「社会」(という抽象的で捉えどころのないもの)に責任を押しつけ、「女」に不備があるかどうかなど、まず夢にも考えない態度はいっそ清々しいとすら感じてしまいます。


 まだまだあるのですが、トピックスが多義に渡っている本であるがため、レビューもまとまりのないものになってしまいました。この辺でやめておきましょう。
 ただ、最後に。
 例のMixiではYOUTUBEでのやり取りが「男の性的なコンプレックスを嘲笑ったもの」であると評されていました。包茎手術の問題などが語られていたのですが、正直、ぼくはそこまでの悪意は感じませんでした。ところが本書を開いてみると、なるほどYOUTUBEでも話題にするだけあって、男性間の性的いじめや包茎手術の失敗について、妙に子細にページを割いて書かれていたのです。
 むろん、渋谷教授は男性に対して親身になるが故に、そのような話題にも果敢に挑まれたのでしょう。少なくともご本人はそう信じているはずです。包茎手術に潜む恐怖について、過剰な熱意でもって書かれた点は多いに評価できるかと思います。 
 少し、引用してみましょう。


 そのペニスは二色アイスのように上と下で色がはっきり分かれているうえに、チョコ部分とバニラ部分の間を大ざっぱなジグザグの境界線が走っています。
(中略)
気を取りなおして「新撰組の羽織の模様みたいでカッコいいじゃん!」と励まそうかとも思いましたが、異国の人ゆえ新撰組の説明からしなくてはいけないので、黙らざるをえませんでした(図.1)。


 包茎手術、恐ろしいですね。
 この(図.1)に対応させ、「新撰組の羽織」の画像が掲載されています。親切ですね。
 ちなみに本書に載った表以外の図はこれと、「包皮再生グッズ」を取りつけた男性器の写真のみでした。教授の熱意が伝わってきますね
 これを男女逆転して考えるとすれば、女性がレイプで受けた傷を男性が面白おかしく書き立てるようなもので「氏賀Y太みたいでカッコいいじゃん!」と思ったのですが、氏賀Y太の説明からしなくてはいけないがとてもできないので、黙らざるをえませんでした*1





*1 氏賀Y太氏というのはものすごいグロ描写を得意とする漫画家さんです。当初、そのグロ画像を貼りつけていたのですが、公序良俗に反するということで、当記事、長らく閲覧禁止となっておりました。まあ、無理もありません。



 



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