兵頭新児の女災対策的読書

「女災」とは「女性災害」の略、女性がそのジェンダーを濫用することで男性が被る厄災を指します。

夏休み千田有紀祭り(第三幕:スーパーゲンロンデンパ2 希望の学説と絶望の方向性)

2013-08-30 19:56:05 | アニメ・コミック・ゲーム

 上野千鶴子師匠が「やはり、風俗は完全になくすべきだという結論以外にない。」と絶叫しているのを全力でスルーして、「フェミニストはオタクの味方だ」と言い続けている意識の高い方々。
 藤本由香里師匠がドウォーキンの「全てのセックスはレイプ」論を肯定的に引用していることを教えられると、「私は藤本のファンなのでそんなことを指摘するお前は敵だ」とわけのわからないことをわめく意識の高い方々。
 児ポ法反対運動は順調でしょうか?
 さて、そんな時候の挨拶とは何の関係もなく、「千田有紀祭」第三弾です。
 一発ネタのつもりが、本家のあの腐女子の方があまりにも衝撃的な正体を露わにしたので、ついつい影響を受けてしまいました。よって今回の内容には本家のネタバレを想像させる要素が含まれますので、お嫌な方は読まれませんよう。
 以上のような感じで今回もまた、有紀師匠の『女性学/男性学 』、『ジェンダー論をつかむ』などにチェックを入れていきましょう。

 


*     *     *


スーパーゲンロンデンパ2 希望の学説と絶望の方向性

 

 

 ――ぼくの名は怒シンジ(声:緒方恵美)。
 超高校級の不運の持ち主。
 ある日突然、入学した者が将来を約束されるという、フェミヶ丘学園への入園案内を手にし、こうして喜び勇んでやってきたわけだが……しかしここはフェミニズムに逆らう者を殺しあいによって粛正させる、絶望的な学園だった――。
 この学園を取り仕切るのは、ぬいぐるみにしか見えない学園長・フェミクマ(声:大山のぶ代)。殺しあいを渋るぼくたちに、フェミクマは「動機を与える」と称し、ぼくたちそれぞれが他人に知られたくないと思っている個人的な弱味を暴露すると脅迫してきた。でも、いかに自分の秘密を守るためとは言え、簡単に人を殺すことなどできない。
 躊躇するぼくだが、しかし殺人は起こってしまった――。
腐女川「ひ……ひぃぃぃぃっっっ!?
 腐女川文学子(声:沢城みゆき)さんが、顔を青くして倒れてしまったのも無理はない。
 ぼくたちの仲間――超高校級のプログラマーである男釜田女装子(声:宮田幸季)さんが殺されていたのだから。
フェミクマ「ひゃっほう! それでは第二回フェミ裁判『男釜田女装子クンを殺したのは誰か』はっじまっるよ~~!!」
 フェミクマの声で、フェミ裁判は開始された――。


 

 フェミ裁判開廷!!
 テーマ『男釜田女装子クンを殺したのは誰か』

 議論開始!!



腐女川「ジェンダフリャーエフの仕業よ! ヤツはシリアルマーダー、人を平然と殺すわ!」
 ――ジェンダフリャーエフ。それは巷を騒がせている殺人鬼。ジェンダーフリー反対論者を次々と暗殺している快楽殺人者だ。
???「そんなバカな! フェミがそんなことをするはずがない!!」
 そう叫ぶのは男気溢れる超高校級の風紀委員・風紀院堅物郎(声:鳥海浩輔)。
風紀院「今まで俺たちは男釜田のことを女だと思っていた。だが、今回検死によって初めてわかったことだが、ヤツは実は男性性を捨て、女性として生きることを選択したMtoFだったんだ。言わばフェミニストの仲間だ!!」
シンジ「それは違うよ」
風紀院「どこが違うと言うんだ!?」
シンジ「確かにジェンダフリャーエフは、フェミニズムに逆らう者を惨殺していくフェミニスト。そしてフェミニズムは性同一性障害者を仲間と考える傾向がある……そう考えれば、男釜田君を殺す動機はない……」
風紀院「うむ、よくわかっているじゃないか」
シンジ「待って……でも、もし男釜田君が男の娘である自分を、好ましく思っていなかったら?」
腐女川「本人は……好きで女装をしていたわけじゃないって言うの?」
フェミクマ「これはシンジ君だけが知り得た事実だから、みんなに教えてあげないと不公平だよね? ここはぼくが説明しましょう。母親に女の子であることを望まれて生まれてきた男釜田女装子クン。赤ん坊の頃から女物の服を着せられ、女の子向けのおもちゃばかりを与えられ、ずっと女の子として育てられてきました。でも、心の奥ではずっと、自分は男の子だという気持ちを抑えることはできなかったのです」
風紀院「何!? ジェンダーというのは社会による刷り込みで、女の子として育てられれば、仮に生物学的な男も、女の子として育つモノではないのか?」
シンジ「それは違うよ……確かに一昔前にはそうしたジェンダー観が一般的だった。ジョン・マネー博士の学説、人のジェンダーアイデンティティ(性自認)は生後数年で決まるから、男の子でも女の子として育てれば、女の子としてのアイデンティティを獲得する――それが信じられてきた。
 でも、マネーがその論拠としてきた“双子の症例”が実は虚偽のモノであることが判明し、現代ではその学説は力を失っているんだ」
風紀院「そ……そんな……!?」
フェミクマ「男釜田君は、皮肉なことに男としてのアイデンティティを持つが故に自分が男であることを必死で押し隠していた。だってそうだよね、隠し通せば“普通の女の子”だけど、バレたとたん、“女装の変態男”になっちゃうんだから。うぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑」
シンジ「その秘密を、お前が暴こうとしたんだろう!?」
フェミクマ「ですがウザいことに、彼は秘密を暴かれるのをきっかけに、変わろうとしやがったのです! 女装子クンはその日から、男らしい自分に生まれ変わろうと決意しました」
シンジ「そして――殺される直前、ぼくのところに相談に来たんだ。実は自分は男だ、男らしくなるにはどうすればいいかって……」
風紀院「し……しかし、ということは、ジェンフリャーエフは男釜田が“男に戻ろう”としたのを快く思わず、それで殺したと……?」
腐女川「そ……それは違うわ……」
風紀院「ど……どうした腐女川、様子がおかしいが……」
フェミクマ「おやおや? 腐女川クン、こんなところでネタバレですか?」
風紀院「何!? それはどう言う意味だ、一体!?」
フェミクマ「うぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ 腐女川文学子クンの知られたくない秘密、それは彼女がジェンダフリャー――」
腐女川「――ぎゃあああああああああ~~~~~~~~はっはっはっはっは!!」
シンジ「やはり――君は解離性人格障害……」
腐女川「ひょっとしてバレちゃった系!? そう! あたしが超高校級の殺人鬼・ジェンダフリャーエフ!!」
 無駄決めポーズ
風紀院「何!? ジェンダフリャーエフの正体は、腐女川だったというのか!?」
エフ「しかしざぁ~~んねんでしたぁ。あたしは犯人じゃないのでぇ~す!」
シンジ「どうして? フェミニズムにとって男釜田君の存在は疎ましかったはずだよ」
エフ「ぜぇ~んぜん! 疎ましくなんかないんでぇ~~す!!」
シンジ「どうして!?」
エフ「いいコト? しんちゃ~~ん?」
シンジ「し……しんちゃん……?」
エフ「キミも、そこそこお勉強してるみたいだけど、そもそもマネーの学説なんて、フェミニズムにとっては古びたモノなのよ?
 千田有紀の著作『女性学/男性学』から、それを見てみましょうかぁ? ほら、千田はここでマネーについて言及しながら、その説を『メチャクチャですね』と一蹴してるわ。千田はマネーには『男女を決定するのはペニスだ』という信念があったのだと分析し、その偏見を否定しているのよ」
風紀院「な……なるほど、フェミニストたちは最初から、マネーのウソに気づいていたわけだな!(や……ヤベーヤベー、俺、マネーってフェミニストの味方だって記憶してたんだけど、何かの勘違いだったのかな?)」
シンジ「いや、それは違……」
エフ「つ・ま・り!! 最初っからマネーなんておわコンだったってこと!!」
風紀院「ん……しかし……そうなると結局、自分を男と認識するか女と認識するかの性自認は生まれつきということに……となるとフェミニズムの主張であるジェンダーフリーというのは間違っていたことになるのでは……?」
エフ「ずわぁぁぁ~~~んねんでしたぁ! 間違っていたことにはなりませ~~~ん!」
風紀院「な……何故だ?」
エフ「『ジェンダー論をつかむ』で、千田はジュディス・バトラーの学説を解説し、こう言っているわ」


 バトラーは,「ジェンダーが構築されるだけではなく,セックスも構築されるのだから,セックスもジェンダーも,実はジェンダーなのだ」と主張します。


風紀院「え……? あ……い……いや、だから……どういうことだ?」
エフ「だから、“自然"な“身体"である“セックス"という概念自体、“文化的"“社会的"に作られたジェンダーに対比されたときに意味をもつものであって、“男"“女"の“身体"の二分法自体が、わたしたちの言語によって認識され、達成されているという意味において、セックスもまたジェンダーにすぎないということなの」
シンジ「何だか過失で人を殺した人が『故意にやったんだ』と言い訳してるみたいな感じだけど……(ボソ」
風紀院「えぇ~~と、ちょっとよくわからないんだが……」
エフ「わからないのはアンタがバカだからよ!!」
シンジ「そうかな……結局そのロジックって、『イヌはイヌと名づけられた瞬間、誕生した』って言ってるのといっしょだよね」
風紀院「そ……そうだよな、でも、イヌと名づけられた瞬間に、イヌという動物が物理的にそこに出現するわけじゃないよな?」
シンジ「イヌという概念は(人間にとっては)動物であるイヌに先行する――それは“全ては気の持ちよう”という程度の意味でなら、理があると思う。
 千田の『ジェンダー論をつかむ』を読むと、ジェンダーの不確かさの比喩として、ある国の原住民が飛行機も昆虫も飛行士もみな『飛ぶもの』という一つの単語で表すといった例が挙げられている」
エフ「ビンゴ入りましたぁ! つまりいかなる性役割を選び取るかは、その個人次第ってワケよ!!」
シンジ「それはそうだけど……でも、千田が例に挙げたような、様々な言語における定義づけのブレが、
男女という概念にはほとんどない。そのこと自体が、この性の二分法の普遍性、有効性をまさに証明してるんじゃないかな。だって飛行機も昆虫も区別しない言語はあっても、男と女を区別しない言語は多分、地球上には、ない。
 ジェンダーという言葉は、元々は文法上の男性、女性名詞の区別を指す言葉だったんだ。第二外国語でやるあれだよね、帽子が男性だったり船が女性だったり……むろん中性名詞というのもあるけど、いずれにせよ男女の二分法が前提でなければ中性もあり得ない。そうした用法が世界中にあること自体が、男女の二分法が人間にとって根源的なものであることの証左であるように、ぼくには思えるよ」
エフ「だから、セックスもまたジェンダーにすぎないの!! わからないのはアンタがバカだからよ!!」
シンジ「いや……その、セックスに先行するはずのジェンダーが、実はセックスの規定から逃れ得ない、少なくとも現状では逃れ得ていない、ということを言ってるんだけど……そもそもそうした精神論を持ち出して人間の精神的メカニズムとしての性自認を否定するのは論理のすり替えじゃ……」
エフ「わからないのはアンタがバカだからよ!!」
シンジ「ひ……人の話は聞かないのか、この人……」
エフ「んっふっふっふ~~(はぁと 言い返せないみたいねぇ、しんちゃん(はぁと
 マネーなんてしょせん、“新しい教科書を作る会”がジェンダーフリーを批判するために持ち出してきただけで、フェミニズムには何ら関係ない人物なのよ!」


 

 論破!!


 

シンジ「さっきは言えなかったけど……それは違うよ! コラピントによるドキュメンタリー『ブレンダと呼ばれた少年』がマネーのウソを暴くまでは、フェミニストはマネーの業績をことあるごとに持ち出していたんだ!」
エフ「(∩゜д゜)ァー ァー キコエナイ!!」
シンジ「一例を挙げれば藤本由香里。彼女は『私の居場所はどこにあるの?』においてマネーの著書『性の署名』を持ち出して、『基本的な考え方はすべてこの本によっている。』と書いているし、また朝日ワンテーママガジン『ジェンダーコレクション』ではやはり同書を紹介して、『絶対必読の基礎文献である。』とまで言っている」
風紀院「か……
完全に聖書のような扱いでは……」
シンジ「意味がわからないのは、千田の『女性学/男性学』でも、あれだけこき下ろしておいて、巻末では特に批判するでもなく推薦図書として紹介されていることだよ――もっとも書名は『性の書名』と誤植されてるけど……」
風紀院「そ……それは誤植ではなく、同姓同名の作家が書いた、別な本だったのでは……?」
エフ「(∩゜д゜)ァー ァー キコエナイ!!」
シンジ「ぼくもコラピントの本が出るまではマネーの学説を信じていた。だから、信じていたこと自体を責める気は毛頭ない。ぼくが不誠実だと感じるのは、ウソがバレたとたんに過去の自分たちの言動をなかったことにして、『メチャクチャですね』と一蹴できるその変わり身の早さなんだ。
 それと、『ブレンダ――』の、政治的利用」
風紀院「政治的利用……?」
シンジ「保守派がこの『ブレンダ――』をジェンダーフリーを批判する意図で復刻した時、千田含めフェミニストたちは盛んにそのやり口を罵った。
『復刻したのは「新しい教科書を作る会」のメンバーだ』
『フェミニズムに対するバックラッシュだ』と――」
風紀院「し……しかし誰が復刻したかはこの際、関係ないのでは……?」
シンジ「千田は繰り返し、この『ブレンダ――』の中の、当事者であるブレンダ(成長後はディビッドと改名)へのインタビュー部分を引用している。ディビッドが男女同権を求めて戦う女性を肯定している部分を抜き出しては、ディビッドは我々の味方だと強調しているんだ――男女同権とジェンダーフリーを混同して自分たちに正義があるかのように見せかけるのは、フェミニストたちの常套手段だけどね」
エフ「(∩゜д゜)ァー ァー キコエナイ!!」
シンジ「『女性学/男性学』にはこうある」


 ディビッドを苦しめたのは、ペニスのない男は男じゃないという考え方であり、あらゆる場面で人間を男女にきっちりと二つにわけていく、性の考え方そのものだったのですから。


風紀院「い……いや、ディビッドを苦しめたのは、性別はペニスに還元されないという考え方であり、あらゆる場面で人間を男女を曖昧にしようとする、性の考え方そのものだったんじゃないのか……?」
シンジ「そして『大航海』に掲載された論文「ブレンダの悲劇が教えるもの」でも、やはりディビッドのインタビューを抜き出した後で、こんなことを書く」


 ブレンダの悲劇は、「男」という「生物学的自然」を否定されたことにあるのではない。「生物学的な自然」の存在は、真の問題ではないのである。むしろ、性別によって社会を編制するジェンダー秩序を無理やりに押しつけられた点にこそ、悲劇が存在しているのではないか。


風紀院「い……いや、ブレンダの悲劇は、生物学的自然を否定されたことにあるんじゃないのか?」
シンジ「ここにおける千田の発言は、もしこの社会がジェンダーフリー社会であったなら、ブレンダの悲劇はなかった、と言っているとしか思えない」
風紀院「し……しかし仮にそんな社会だったとしても、自分が男か女かわからない、男であるにもかかわらずペニスがない苦悩は消えないのでは……?」
シンジ「いや……逆に言えば、こうなる。彼女らの夢想するような理想的ジェンダーフリー社会とは、ペニスが失われようが、自分の性自認が曖昧であろうが全く苦悩の必要がないほどの、性別の差違が全く消失した社会である――彼女らはそんなものを目指してはいないと否定を続けているけどね」
エフ「(∩゜д゜)ァー ァー キコエナイ!!」
シンジ「ふざけたことに千田はこんなことを言っている」


 何よりもディビッドの苦悩を、このように利用すること自体が、自殺したディビッドへの裏切りかもしれません。


シンジ「これは保守派がこの事例を元にジェンダーフリーを批判していることを指しているんだ。でも、こうしてみると実際に死者を執拗に政治利用しているのは――」
フェミクマ「うぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ 腐女川クン、こうなると男釜田クンを殺す動機があるのはキミと言うことになりそうですね……」
エフ「ふん! 違うっつってんだろ!! 健全な粛正は健全な精神と肉体に宿るの! あたしが殺すのはあくまで相手の思想を正すため! 存在が自説にそぐわないから殺す、なんてせこいことはしないんだよ!!」
シンジ「確かに……考えればあの殺され方は、今までのジェンダフリャーエフのやり方とは違う……」
風紀院「……………」
エフ「あたしの殺しには一流ならではのこだわりがあんのよ、人気のラーメン店がスープや麺や具材にこだわるのといっしょなの!」
風紀院「……………ッ」
シンジ「となると……」
風紀院「ふ……ふふふふふ……」
シンジ「ひょっとして……今までとぼけていたのは芝居で、風紀院君がフェミニズムの理論をかばおうとして……?」
風紀院「フェミクマ……始めてくれたまえ、投票タイムを……」
フェミクマ「ラジャー! オマエラ、お手元のスイッチで投票してください!」


 

 投票開始

 


 GAMEOVER
 フウキインくんがクロにきまりました。
 おしおきをかいしします。


 

 

 と、床下から台がせり出し、その上には何故だかパンパンに膨らんだ風紀院の学生鞄が乗せられていた――。
風紀院「こ……これは……?」
 おそるおそる開けてみると、そこには女性モノの下着が山のように――。


 

 服装検査

 

フェミクマ「風紀委員なんだから、指定以外の下着を着けてくる子からは当然、没収だよね?」
女生徒A「何アイツ?」
女生徒B「没収だって没収」
女生徒C「うわ何、サイテー!!」
女生徒D「きっと校則を盾に女子の下着を集めて穿いたり嗅いだり食んだりしてんのよ!!」
女生徒E「女性の敵よ、あの変態!!」
風紀院「ち……違う!! ぼくは女性の敵なんかじゃないぃぃぃぃぃ~~~~~!!!!!」


 

 気づくと風紀院はショック死していた。

 


フェミクマ「主よ、優しく笑え。そしてあなたの魂に安らぎあれ……」


 

 ここでの真実はとてつもなく軽い。頭がどうにかなってしまいそうなほどに軽い。
 風紀院君の悲痛な叫び声を聞きながら、ぼくはそう痛感させられた――。

 

  

 

 

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夏休み千田有紀祭り(第二幕:ゲンロンデンパ さよなら絶望学問)

2013-08-16 19:34:52 | アニメ・コミック・ゲーム

 ワックワクのテッカテカ 捏造放題やってもいいっすか?
 KYに噛みついて 引っ掻き回してウププのプ
 悪びれずにブロ荒らす エクストリームなフェミクマ音頭♪
 というわけで前回に引き続き「千田有紀祭」です!!
 今回は第二弾。
 先に採り挙げた『女性学/男性学』に加え、『ジェンダー論をつかむ』、『喪男の社会学入門』などから、師匠の考えを探っていくことにしましょう。


*     *     *


ゲンロンデンパ さよなら絶望学問


 ――ぼくの名は怒シンジ(声:緒方恵美)。
 超高校級の不運の持ち主。
 ある日突然、入学した者が将来を約束されるという、フェミヶ丘学園への入園案内を手にし、こうして喜び勇んでやってきたわけだが……。
???「ようこそフェミヶ丘学園へ。ぼくは学園長のフェミクマ(声:大山のぶ代)です。ぐふ↑ふ↑ふ↑ふ↑ふ↑ふ↑ふ↑」
シンジ「何だ君は?」
???「そうよそうよ! バカにしてんの? あんたみたいなのが学園長!?」
 入学案内を受け取ってやってきた、ぼく以外の生徒たちもアゼンとしている。
フェミクマ「そうですよ。一見愛らしいクマのぬいぐるみをあしゅら男爵風の雄雌ハーフにしたような姿をしたぼくが学園長ですよ?」
シンジ「そのフェミクマとやらがぼくたちをこの学園の生徒に選んだ理由は?」
フェミクマ「はい、ここでオマエラには、討論形式でフェミニズムを学んでもらいます」
 その言葉に、不良がかった生徒がいきり立つ。
???「あぁ? 何だよそりゃあ?」
フェミクマ「何だよとは何だよ? オマエは超高校級のAV監督・爆尿英武威太(ばくしーしーえーぶいた・声:櫻井孝宏)ですね?」
爆尿「おぉ、そうよ! フェミはポルノを否定しているんだ! そんなヤツと組めるかよ!! ぐわっっ!!」
 突然英武威太の立つ床下から槍が突き立ち、その身体を貫いた。
フェミクマ「えくすとりーむ! フェミニズムへの誹謗中傷を並べた者に対しては、厳しいおしおきが待っています。そんな公正な条件下で、オマエラはフェミニズムの神髄が学べるのです。ドッキドキのテッカテカだよね」
 おびただしい血を流しながら息絶える英武威太を前に、一同が戦慄する。
???「フン! 知りもせずフェミニズムを否定するとは愚かな男でござるな。これじゃ死ぬのも自業自得でござろう」
 デブ――と言うよりは球形に近い体格の眼鏡の男が冷笑する。アキバ系のブロマガを運営する超高校級のアルファブロガー・御宅山同人男(おたくやまどうじんお・声:山口勝平)だ。
シンジ「そんな!」
 ぼくは思わず彼へと食ってかかった。
シンジ「殺されて自業自得ってことはないだろう!? そんなの非道いよ!!」
 と、そこへ。
フェミクマ「よろしい! それでは第一回フェミ裁判のテーマはこうしましょう! 『フェミニストはオタクの敵か、味方か』!!」
 フェミクマの声で、フェミ裁判は開始された――。


 フェミ裁判開廷!!
 テーマ『フェミニストはオタクの敵か、味方か』


 議論開始!!


御宅山「フン! 『フェミニストはポルノを否定している』など、あぁいったミソジニストの陥りがちな過ちでござる。拙者はオタクの中では珍しいフェミニズムに対して親和的な考え方の主である故、フェミニズムは決してオタクの敵ではないことを、もっと多くのオタクが知るべきと、かねてより考えていたのでござるよ」
シンジ「それはヘンだよ。フェミニズムにとってポルノは女性差別であるのは常識なんだから」
御宅山「貴君はもう少し常識を疑ってみた方がいいでござるな。見たまえ、このリンクを!」


「うぐいすリボン 堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る(http://www.jfsribbon.org/2012/10/bl.html)」


「フェミニズムは敵ではありません」と、ジェンダーの話題を怖がるオタクたちへのメッセージを、 印象的な言葉で語っていました。


上野は一貫して「表現の自由」擁護の立場。「想像力は取り締まれない」と壇上で発言したら拍手を受けた。


御宅山「――とあるでござろうが!! ちなみにこの上野というのは上野千鶴子教授。そう、日本のフェミニストの代表選手とも言える彼女がこう言っているのでござるよ!」
???「オタクたちがジェンダーの話題を怖がってるっていう前提も意味不明だけど……」
御宅山「君は超高校級の腐女子、腐女川文学子(声:沢城みゆき)!」
腐女川「ひっ!? そ……それがどうしたって言うのよっ!?」
御宅山「男性ジェンダーを風刺するBLを描く腐女子と異なり、男オタクどもはそうした女性たちを恐れ、それ故に二次元に走っているのでござるよ!! 貴君は腐女子なのにジェンダーに対する認識が遅れているでござる!!」
腐女川「ひっ!? そ……そういうの止めて……あたし、確かに腐女子だけど、フェミのケはないのよ!」
御宅山「ふん! 使えない腐女子でござるな……ついでだ、これも見るでござるよ」

「上野千鶴子さんインタビュー@韓国・IF(http://wan.or.jp/group/?p=366)」


「まずポルノはそれを不法化しても抑えることができません。そして私は『ポルノは理論であり、レイプは実践』だというマッキノンの主張に同意しません。インターネットであれ、DVDであれ、バーチャルな性的表現物をたくさん消費する男性が、実際の性生活で必ずしも積極的ではないという調査結果があります。」


御宅山「わかったでござるかな? マッキノンというのは過激なラディカルフェミニストで、ポルノの法規制を訴えた人物。確かにこうした行きすぎたフェミニストがいるのも事実でござる。が、上野教授がこのように言っている以上、フェミ全体がポルノを否定しているという妄言は、信じられないでござるな。とにかく以上、証明終了でござる!!」
 あれ……? あの人の発言っておかしいよな……ぼくの知っている事実と明らかに矛盾する……。


 論破!!


シンジ「それは違うよ! ちょっと待って御宅山君、これを見てよ」


「上野千鶴子氏 売春は強姦商品化でキャバはセクハラ商品化(http://www.excite.co.jp/News/society_g/20130609/Postseven_191042.html)」


 対価を払って同意を得ているから買春してもいいという人がよくいるが、カネを払えば女性の身体を自由にしていいのか。資本主義だって何でも商品にしていいわけではない。


やはり、風俗は完全になくすべきだという結論以外にない


シンジ「こうしたことを言う人が、果たして表現の自由を認めているのかな? だって、漫画やラノベは置くとして、売買春を全面否定するのならAVや何かだって、『完全になくすべきだという結論以外にない』はずだよ。AVなんて、“売買春記録物”でしかないんだから」
御宅山「む……! 貴君はそれでもオタクでござるか!? 惨事女に見切りをつけ、二次元の世界に旅立った選ばれし者、それがオタクでござる!!」
シンジ「いや……ぼくはオタクじゃないし……て言うか、頼まれもしないのにござるござる言ってる君も、オタクにはあんまり見えないんだけど――」
腐女川「自分たちのルールを非オタにまで押しつけないで欲しいわね……」
シンジ「そうだよ。オタク以外はどうなってもいいって言うの?」
御宅山「ぐ……ぐぅぅぅっっ!」
腐女川「何? オタ山もうダウン?」
御宅山「お……御宅山でござる! 君、失敬でござろう!!」
フェミクマ「あぁもう! しょうがないなあ、御宅山クンは!」
 苛立ったように、今まで立会人に徹していたフェミクマが立ち上がった。
フェミクマ「いいかい? 上野千鶴子教授は時と場合で言うことがころころ変わることが、よく指摘されている人物なんですよ?」
シンジ「だからと言って、矛盾は厳正に追求されるべきだと思うけど……」
フェミクマ「上野教授はもうさすがに過去の人物だと言えるのです! 以降、上野教授についての言及はNGだよ」
シンジ「そんな! フェミニストは何かというと内輪揉めをして、『その人物はフェミ内でも嫌われてるからフェミニストの例に挙げるな』とか言うけどさ……」
フェミクマ「はい、これ以上上野教授について云々すると、おしおき対象になりますよ、オマエラ?」
腐女川「ひっ!?
シンジ「仕方ない……ここは上野教授の弟子である千田有紀教授に注目することにしよう」
腐女川「せんだゆき?」
シンジ「ぼくがこの人に注目するきっかけになったのは、今年の『東京新聞』6月16日付のコラムなんだ」


記事(引用者註・『東京新聞』の別な記事)ではむしろ「表現の自由」を守るためにこそ、ヘイトスピーチは取り締まられなければならないことを指摘している点で秀逸である。ヨーロッパの試みの根底には、「表現の自由」の名を借りたヘイトスピーチが、ナチスドイツのユダヤ人迫害などにつながったという猛省がある。


シンジ「つまり彼女は、弱者を守るためなら表現の自由を制限すべきとの考え方の主なんだ。そしてコラムはこう続いている」


米国の法学者の中には、ポルノ一般を、女性という「集団」に対する「ヘイトスピーチ」と考える人もいる。現実にさまざまな犯罪につながっている児童へのゆがんだ欲望のつくられ方を抜きにして、「表現の自由」の御旗を振ることはできないだろう。


シンジ「児ポ法に対して疑問を呈してはいるけれども、これを素直に読めば、彼女の本心は女性差別であるポルノを法規制せよ、というものであるとしか思えない」
腐女川「ちょっと待って……BLはどうなるの、BLは?」
シンジ「BLは少なくとも“女性差別”ではないよね。彼女のBLに対するスタンスは著作『ジェンダー論をつかむ』を見ればわかると思う。そこで書かれた『男同士の絆の裂け目とボーイズラブ』というタイトルのコラムなんだけど――」


 同性愛者の男性が「差別」されるのは,男性でありながら「女」のように男性に挿入されるからです。


 この差別を逆手にとっているのが,主に女性によって描かれ,女性によって読まれる男性同性愛の物語(ボーイズラブ)です。女性は男性のジェンダーに自分を仮託しながら(なので,ボーイズラブではどのような職業に就いているかも重要です)、性の場面においては既存の「男」と「女」の役割を男性2人によって担わすことで,そこに「対等」な性愛の可能性をみようとするのです。「男」と「女」の役割を担っているのは男性ですから両者の役割は基本的に互換可能であり、役割がお互いの了解のもと決められ,読者である女性はどちらの立場にも共感可能であるというわけです。
 ここは女性を排除してつくられる男同士の関係を,女性が自分たちの解放のために読み解くという転換があります。


腐女川「く……くくくくくくく……」
御宅山「な……何でござるかな、その腐女子にありがちな暗く厨二病っぽい笑いは……?」
腐女川「失礼。何だか『腐女子を知らない人』が書いた典型的な文章っぽくて……」
御宅山「せ……千田教授は腐女子には詳しいと思うでござるが……」
腐女川「世代的にも詳しそうよね。でも、腐女子がホモ差別に何か意見しているかのように言うのって、お偉い先生たちが腐女子を利用して言う詭弁の典型例だわ。あたしたちはただ美少年の絡みに萌えているだけで、何かに異議申し立てなんてしたいと思ってるわけじゃないもの」
シンジ「うん、腐女子はホモが差別されてるのされてないのについては、何とも思っていないと思う」
腐女川「いずれにせよここまで矛盾に満ちた文章は、なかなか書けるものじゃないわよ」
御宅山「矛盾?」
腐女川「ほらここをご覧なさい? コラムにはBLキャラについて「両者の役割は基本的には互換可能」と描かれているけど、ならば責め受け論争で腐女子がケンカなんかするわけはないでしょ? あたしたちにとって大事なのは『○○クンがヒロイン(=あたしが自己投影する理想の女性)』であること、なんだから」
御宅山「し……しかしほら、リバシとか言って……」
腐女川「へえ、結構詳しいのね。でもそうした言葉がわざわざ作られていること自体、一般的にはカップリングの受け責めは互換可能ではないということの証明よ」
御宅山「む……むぅ……」
腐女川「そもそもフェミニストが言うように男女の性役割が絶対的に不平等なものだとするのなら、『既存の「男」と「女」の役割を男性2人によって担わす』ことは単なる性役割の“再生産”であり、『そこに「対等」な性愛の可能性をみようと』するという解釈には初めっから論理的破綻があることは明らかでしょうに」
御宅山「し……しかしでござるな……」
シンジ「上野教授も『風と木の詩』が出てきた時、“対等な性”“ジェンダーレスワールドの実験”などといった評を与えていたんだ。でもBLの現在を見る限り、それとは決定的な乖離が生じている。ところが頭のいい人たちの業界ではどれだけ思想と現実が乖離しようとそれには目を塞ぎ、“政治的にこうでなければならないからこうなのだ”といった評を何十年にも渡り罷り通らせ続けるんだ」
腐女川「ホント、あたしたち現場の腐女子からしてみたらメーワクな話よね」
御宅山「う……うるさい、このクソブスが!! お前らオタ女のズリネタなんぞよりサブカル少女漫画における少年愛表現の方が遙かに歴史があんだよっっ!!」
シンジ「御宅山君……ホンネが出ちゃってるよ」
腐女川「ん? ちょっと見て、このコラムのオチって――」


しかしまた,女性によって男性同性愛者の表象がなされることを「差別だ」と感じる男性同性愛者もいて,事情は複雑です。


腐女川「BLはサベツだから取り締まれって言ってるわよ、このアマ!!」
シンジ「あはは……いや、そこまでは言ってないと思うよ……」
腐女川「どうして? 『ポルノはヘイトスピーチだから取り締まれ』と考えている女が『BLはホモ差別だ』と言ってるのよ!? なら『取り締まれ』という発想になるはずじゃない!!」
シンジ「確かに理論的にはそうした結論も考えられるけど、ぶっちゃけるとフェミニストにも腐女子は多いし、そうはならないと思うよ。事実、御宅山君が最初に出したリンク先では、『公共図書館でBLが女子小学生に貸し出されているが、それを禁ずることは表現の自由の侵害でありホモ差別だ』といった主張がなされてるんだから」
腐女川「そ……それもよくわからない理屈だけど……」
御宅山「つまり、フェミニストは表現の自由を弾圧する敵には、断固として戦いを挑むと言うことでござる!! ほら、君の持ち出した『ジェンダー論をつかむ』の『売買春,セックスワーク,ポルノグラフィ』の節を見るでござるよ!! ここで千田教授は『女がポルノを見ることは悪いことではない』と繰り返した上で『ポルノグラフィに出る人は,自発的に楽しんで出ている人も多いでしょう。』と言っているでござる!!」
シンジ「そりゃ確かにそう書いてはいるけど……」
御宅山「それに千田教授の別な著書、『女性学/男性学』ではバトラーというフェミニストの考え方を紹介しているでござるよ。バトラーはドウォーキンやマッキノンの主張する法によるポルノ規制を批判しているでござる。
 そして『喪男の社会学入門』。千田教授と漫画家のカラスヤサトシ氏との対談形式で一般の人向けに書かれた本でござる。ここでも2010年の都の「青少年健全育成条例」の改正について『今回の都条例改正に関しては、私は全面的に反対。』と断言しているでござる。千田教授がポルノの敵などという考えは間違っているでござるな」
 あれ……? あの人の発言っておかしいよな……ぼくの知っている事実と明らかに矛盾する……。


 論破!!


シンジ「それは違うよ。『喪男の社会学入門』を見ても――」


すごく変態なマンガがいっぱいあって、みんながずっとそんな漫画を読んでいると、みんなが女の子にエロい眼差しを向けるようになる、というようなことって、あり得ないわけではないでしょう?


そうすると、悪い作品が社会を悪くするってこともあるんじゃない?


シンジ「と書かれているし、『ジェンダー論をつかむ』を見てご覧。これを読む限り彼女は売買春には徹底的に否定的なんだ。悪名高い矯風会の売買春禁止運動についても、道徳を押しつけすぎている、売春婦を“救おう”というスタンスは傲慢である、といった批判を採り挙げつつ――」


しかし当時,それ以外に売買春に反対するロジックがありえたのかといえば,同情的にならざるをえないところもあります。


シンジ「と、根本のところで肯定してしまっている。いいかい? 彼女は『これこれのロジックで売買春はNGだ』と言っているんじゃない。『売買春を否定するためならいかなるロジックも持ち出せ』と言い切っているんだ」
腐女川「て言うか、この人はそもそも売買春は何でダメって言ってるワケ? ま、仮に美少年AVが売られていようが、あたしは惨事男子にはキョーミないけど!」
シンジ「うん、ここで彼女の売買春批判をまとめてみよう――第一に売買春は経済的不平等があるからいけない、というんだ」
腐女川「ちょっと待って……それがダメなら経済的に全く平等な者同士以外、取り引きはならんということにならない?」
シンジ「もちろん、極度に力関係のある場合、弱い側が不利な取り引きをさせられる、ということはあるけど、それをあらゆる売買春に適用できるかというと――」
腐女川「そ……それもまた極論よね」
シンジ「そして問題点の第二は、ほとんどの場合男性が買い手、女性が売り手である点だというんだ」
腐女川「や……やっぱりそうなるとポルノなんか全部ダメってことになりそうね」
シンジ「これじゃ男は常に悪と言っているのといっしょで、『男はダメだからダメ』というトートロジーでしかないよね。
 そして彼女が第三に挙げているのが暴力の問題」
腐女川「え……? 何それ?」
シンジ「ここでは売買春時における殺人事件を例に挙げるなどしているんだけど、例外事例を挙げて文句をつけても仕方ないよね。彼女のホンネは『売買春行為が暴力そのものである』とでもいったものなんじゃないかな。
 そして第四に売春婦が“スティグマ”を負い、一般の女性と分け隔てられる問題。でも読む限りここでは売春婦がスティグマを負う、つまり差別される原因として“良家の子女は夫以外と性交渉を持たない”ことが前提されていて、しかもそれを悪しきことだと問題にしているのだから、ならば論理的帰結として、問題は“良家の子女”にこそあり、奔放な売春婦は正義ということになってしまうよね」
腐女川「あの……意味がわからないんだけど……」
シンジ「つまりフェミニズムは大前提として、女性が一人の男性の所有物となる制度である(と彼女らが妄想している)結婚そのものを否定しているんだ。だからその理屈では売春婦を肯定せざるを得ないのにね、っていうお話」
腐女川「ご……ごめんなさい、話を聞いても
やっぱりわからなかったわ……」
シンジ「第五に不本意な売買春の強制があり得る、ということ。でもこれも売買春独自の話じゃないよね。
 結局、売春を特化することなく経済問題として扱い、『フェアトレードせよ』と言うのであれば、リクツはわかる。彼女らがそうしないのは、善意に解釈すれば売買春というトピックスが橋下発言を見てもわかるように人々の情緒を強く揺さぶるものだから、という戦略的側面があるかも知れない。でもそれって彼女らが嫌っているはずの“オンナを利用する”行為そのものだよね。意地悪な見方をするならば、ポルノ批判を見ても感じるけれどもやっぱり彼女らは、自分たちの“オンナ”を使うことで、こうしたツンデレ的な形であれ男たちに関わり、“自分が女だ”という自己承認欲求を満たしたい、という欲望があるんじゃないだろうか。
 いずれにせよ、彼女は売買春に反対するロジックを全く構築できていない、と言わざるを得ないよね」
御宅山「異議あり! 貴君はさっきからずっと売買春のことばかりを言っているではないか! 問題はポルノであろう! それも惨事ポルノは我々二次元へと旅立ったオタクには無用の存在!!」
腐女川「くくくくく……こらオタ山」
御宅山「無礼な! 御宅山でござる!」
腐女川「あんたが大事に抱えてるフィギュア、中国製よね?」
御宅山「は? それが何か?」
腐女川「フェミニストの言い分は、売買春には経済的不平等があるからいけない、ってことよね?」
御宅山「それがどうしたでござる!?」
腐女川「未来のフェミニズムの教科書には、中国で美少女エロフィギュアを作ってたこと、売買春の一種だとか書かれてそうよね……」
御宅山「はう……っっ!?」
シンジ「まあ、さすがにそれは冗談だとしても、フェミニストが実写のポルノを禁止せよと言い出した時、御宅山君は自分は困らないからと言って、それに賛成するの?」
御宅山「ぐ……ぐう……しかし、アニメなど非実在少年を被写体にするものについては、無問題だと……」
シンジ「じゃあ、もう少し見ていこうか。アニメや漫画についても『ジェンダー論をつかむ』に書いてあるよ。千田教授は『これはとても難しい問題です。』と留保しつつも漫画が犯罪に繋がる影響力があることを示唆して、例の上野教授は否定していた『ポルノが理論で,レイプが実践』という言葉を引用し――」


しかし,なにを表現しようとしているのかも,考えられなくてはなりません。
(中略)
人種差別を表現することは,実際に人を傷つけることと変わらない行為だからです。


キャサリン・マッキノンは,これら「表象」の理論を使いながら,近年はポルノグラフィという表象,女性を痛めつけるポルノの表象が,実際にポルノをみる人を傷つけ,痛めつけているのだということを理論的に展開しています。表現の自由は,無制限に認められるものではないのです。


腐女川「すごい……結局この人たち、表現の自由は自分たちのお気に召す範囲内って言い切っちゃってるのね……」
シンジ「公正を期しておけば、彼女はここでもバトラーの理論を引いて国家に規制させるべきではないとも言っている。また表現の自由派の論理をもっともだと首肯してもいるんだ。だから法による規制をよしとしない、という点は一応、表現の自由派と一致していると思う」
腐女川「でも『東京新聞』の記事を見る限りは、法的に取り締まれと言ってたけどね」
シンジ「確かに流れからはそう取れるし、恐らくは『そうしたい』というのがホンネであるところを、リベラル的な理念を受け容れてこらえている、といったところが実情だと思う。でも、ひとまずは彼女の法規制はよくないとの理念を信じるとして、でも彼女がその上で結局ポルノを認めないと言うのであれば? 例えばだけど、かつてのPTAが不買運動を起こしたり、漫画の作者をつるし上げたりしたことを思えば、それが法による規制よりマシなのかというと――」
御宅山「ま……マシなのではござらんか?」
シンジ「そうかな? 『女性学/男性学』を見てご覧。さっき御宅山君が引用した箇所、その後にはこう書かれている」


法による規制ではなく、ポルノにみられる意味を揺らがし、提示された意味づけを横領し、読みかえることによって、新しい表現を生み出し、書き換えることに希望をみいだしているといえるでしょう。


シンジ「ポルノのあり方を認めることなく、それを書き換えたいと言っているんだ」
腐女川「書き換えるって……どうやって?」
シンジ「ジェンダーフリー教育が、莫大な予算を投じて子供に偏狭な価値観を押しつけるものだったことを思い起こせば、ぼくには彼女らが法規制よりも強引なやり方を考えている、としか思えない」
御宅山「し……しかしそれは……」
シンジ「児ポ法反対の先頭に立っているリベラリストも、こうしたフェミニストたちの論調を批判するどころかスルーし続けている――いや、それのみならず、彼らの書く漫画評論などを見ると、フェミニストのロジックをそのまま受け容れてポルノを差別表現だ何だと腐していたりする。彼らはあくまで国家権力を相手に政治的闘争をするという目的ばかりが先行していて、漫画だのオタク文化だのポルノだのを守りたいと考えているとは、ぼくには到底思えないんだ」
御宅山「バカな! オタク文化はともかく、サブカルは我々の、体制に対する闘争のための重要な武器だ!!」
腐女川「御宅山君……ござるが抜けてるわよ」
シンジ「もう少し先を読んでいこう」


いたるところにポルノが溢れ、ポルノというファンタジーを撮るために、ドキュメンタリーという名目で、現実の「女」の「身体」に暴力が加えられている日本の現状は、批判されるべきであると思います。


「本当のレイプではない。『演技』なのだから」という常套句がありますが,人に加えられる痛みや暴力に対して,「演技」や「フィクション」は成り立つのか,という問題がたてられると思います。


腐女川「すごい! すごいわ!! すごすぎる!!!」
御宅山「む……むぅぅ……」
腐女川「くくくくくくく……オタ山涙目ね! こうなると『仮面ライダー』とか速攻で放送中止よ! 歴代の昭和ライダーを演じた俳優なんか全員速攻で死刑ね!!」
シンジ「ちょ……ちょっと待って……平成ライダーはいいの?」
腐女川「いいに決まってんじゃない! イケメンだから!!」
シンジ「いや……そういう理屈は……」
腐女川「わかったわよ、ライダーはいいから戦隊は全員死刑」
シンジ「ははは……それはいいとして、一応言っておくと、上の文章はドキュメンタリーAVで強姦致傷が認められたケースについて論じる文脈で出てきたものではある。でも、そうした例外的事例を持ち出して論じること自体が、彼女のスタンスを明確に物語ってもいるよね」
御宅山「ぐ……ぐむむむむ……」
シンジ「『セックスは全てレイプ』といったようなフレーズは、少なくともぼくが見た限り、彼女の文章からは見出せなかった。でも、彼女がそれに極めて近しい考えを抱いていることは、もう疑い得ないと思う――ぼくはポルノが人に悪影響を与えることを否定しないし、嫌いな人、子供に見せないようにするという意味でのゾーニングなら大賛成だ。でも、フェミニズムの歪んだ考えが根底にある反対論は、許容することができない――!!」
御宅山「ぐむ?」
腐女川「反論はできないみたいね」
フェミクマ「うぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ この辺で投票タイムと行くよ? 果たして『フェミニストはオタクの敵か、味方か』? オマエラ、お手元のスイッチで投票してください!」


 投票開始


フェミクマ「はい、投票の結果、『フェミニストはオタクの敵』になっちゃいましたぁ。というわけでこれから、シンジ君に論破されてフェミニストを憎まれ役に仕立て上げてしまった御宅山クンのおしおきを行います」
御宅山「何? 待てよ!? 俺は今までずっとフェミニズムに尽くしてきたんだぜ!? ずっとオタクに『フェミは仲間だ』と言い続けてきたんだ!! 男性差別クラスタを嘲笑ったりして、フェミが正しいと言い続けてきたんだ!! それを……!!」
フェミクマ「今回は超高校級のアルファブロガーである御宅山同人男クンのために、スペシャルなおしおきを用意させていただきましたぁ!」
御宅山「イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!」
フェミクマ「では張り切って行きましょう! おしおきたーいむ!!」
御宅山「イヤだーーーーーー!!」


 GAMEOVER
 オタクヤマくんがクロにきまりました。
 おしおきをかいしします。


 御宅山のブログが壁面モニタに映し出される。
 アニメに対する当たり障りのない、薄っぺらな感想の書かれたそのブログのコメント欄には――。


 ブログ炎上


キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい


死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


御宅山「う……うわああああ~~~~~~~~~~~っっっ!!! やめてくれ~~~~~~~~~~っっっっ!!!!!」


 気づくと御宅山はショック死していた。


フェミクマ「えくすとりーむ! アドレナリンが染み渡る!」


 フェミクマは一人、はしゃいでいる。
 ぼくらが目の当たりにしたもの……それは絶望。
 これをそう呼ばずして、何と呼べばいいのだろう。
 果たして御宅山君は「オタク」だったのか。
 それとも誰かから何らかの命を受けて、「オタク」を演じ続けていたのか。
 或いは「オタク」でありながら、心底フェミニズムに心酔していたのか。
 それともまた、「オタク」である自分にコンプレックスを感じ、心の隙間を埋めるために権威ある学問としてのフェミニズムに依存しようとしていたのか。
 御宅山君が死んだ今、彼の本心を知る術はない。
 でもぼくは……彼の死を乗り越えようと――いや、彼の死を引きずったまま、前に進もうと思うのだった――。


 

 

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夏休み千田有紀祭り(第一幕:メンリブ博士のメンズリブ教室)

2013-08-02 20:32:04 | レビュー

 UUUのU(アソレ!) UUUのU(コレマタ!)
 有紀タン音頭でUUU!
 というわけで今年もやって参りました、「ドラえもん祭」に代わってすっかりおなじみとなりました「千田有紀祭」!!
 ここしばらく、千田有紀師匠の著作にチェックを入れ続けています。
 有紀師匠は上野千鶴子師匠の一番弟子で、まあ、フェミニズムにとっては期待の新人と言ったところです。
 そんなわけでこの夏、何回かに分けて盛大に有紀師匠を「」ってみましょう。
 今回はその第一弾。
 彼女の著作、『女性学/男性学』を採り挙げると同時に、90年代に少しだけ騒がれた「メンズリブ」、そしてゼロ年代に叫ばれるようになった「男性差別」という概念を簡単に総括し、「女災対策」の手引きとしてみましょう。


*     *     *


 メンリブ博士のメンズリブ教室

博士:やあ諸君、初めまして。ワシはメンズリブを研究しているメンリブ博士じゃ。
選ばれし者である諸君らはワシのことを「ドクターメンリブ」と呼んでくれたまえ。
これから諸君といっしょに、メンズリブの勉強をしていこう。

助手:博士博士!

博士:おぉ、君は助手のジェン太郎。どうした、慌てて。

助手:呑気にしてる場合じゃないですよ、博士! またしても信じられない「男性差別」です! 三鷹バス痴漢事件でトンデモない判決が出たんですよ!! 車内カメラで様子が撮影され、どう考えても痴漢行為などできそうにないにもかかわらず、「不可能に近いが不可能とまでは言えない」というイミフな理由で有罪判決が出てしまったんです! 許し難い「男性差別」ですよ!!

博士:ふむ、「男性差別」か……冤罪は許し難いことだが、君はどうしてそれを「差別」だと思うのかね?

助手:え? そ……そんなの、議論の余地もないじゃないですか! 司法においては「疑わしきは罰せず」が原則。にもかかわらず、こと性犯罪については女性の言い分が一方的に信用され、男性は始めから犯人扱いされる! これは「男は初めから加害者、女は初めから被害者」という思い込みが社会に広範にあるからなんです。女性専用車両もこれと同じ。ステロタイプな偏った男性像で全てを判断してしまい、加害者としてのジェンダーを男性に押しつける。これは「男性差別」なんですよ!!

博士:ふむふむ……君もなかなかいいことを言うじゃないか。確かに男性はある種の「ジェンダー規範」に縛られていると言える。それはフェミニズムの成果が教える通りじゃな。

助手:え? フェミニズムが!? でもフェミニストって言うと、男に文句ばっかり言ってるババアって印象があるんですが……。

博士:はっはっは、それは君がフェミニストを知らんからじゃよ。本日は千田有紀の著作、『女性学/男性学』で勉強してみようかな。

助手:せんだゆき?

博士:うむ、日本の代表的なフェミニスト・上野千鶴子の一番弟子とも言われる社会学者じゃよ。見たまえ、本書にも、


 女性学やフェミニズムというと、「男」を責めているという印象をもっているひとがいるかもしれません。しかし、個々具体的な場面で男が責められることは、もちろんあるかもしれませんが、理論的にはほとんどないと思います


博士:と書かれておる。

助手:え……? でも、ツイッターとかを見てるとフェミニストを名乗る女性が男性を、それも弱い立場にいる男性を容赦なく罵倒しているところをやたらと見ますけど……。

博士:ほぉほぉ、「ソースはネット」か(嘲笑)。

助手:そりゃネットですよ、ツイッターのつぶやきという一次情報ですもん!

博士:まあそれはよい。しかし見たまえ、本書では続いて、


 女性学の思想や分析の対象は、現在の社会システムであり、わたしたちが住んでいる社会、男も女もともに巻き込まれている社会のシステムのあり方、そのものを問い直していこうとします。


博士:と書かれておる。
つまりこの社会のシステムに男も女も巻き込まれている、と彼女は言いたいのじゃな。

助手:だとしたらいいんですが……。

博士:そうに決まっておる。本書では井上輝子の主張を紹介して、


もちろん、女性が解放されていないという状態は、男性にとってもある種の抑圧でありますから、女性解放をおこなうことは、そのまま男性解放にも繋がると井上はいいます。


博士:とも言っておる。

???:う~ん……それはどうかしら?

博士:な……何じゃ? 今の、誰が言ったんじゃ?

助手:す……すみません、今のはぼくの「毒舌な妹bot」というやつで、百四十文字以内でいろいろとツッコミを入れてくるんですよ……。

妹:見てごらんなさい、今博士が挙げた文章の後に続き、千田はこう書いているわ。


「闇の中にいる者には、光の世界の醜さがよく見える」とリブがいったように。


妹:つまり、女性のいる世界を「闇」と表現しているの。彼女が「女の方が大変だ」と考えているのは明らかよ。

博士:な……何? そんなこと、ツッコミと言うよりは荒探しじゃろう!
彼女の他の著作、『日本型近代家族』にはこうもあるぞ。


 そのような主婦の状況がある一方で、多くの男性は妻に全ての家事をまかなってもらうことを前提として、過重な労働をしいられてきた。働きすぎによる過労死は、このような主婦のありかたの裏返しの現象だった。またおもに男性だけが家計を支えている場合は、リストラなどによる解雇や不慮の事態にとても弱い。


博士:つまり、この社会において、男性もまた深く抑圧されていると、彼女は言っておるのじゃ!

助手:だとしたら素晴らしいですけど……。

妹:でもこれ以降、主張は「だから女も働くべき」っていうものになっていくわね。

博士:彼女は最初からそう主張しておるじゃろうが。

妹:読む限り、彼女が男性の大変さをマトモに考えている様子はないし、「女性は働くべき」という彼女の主張を通す方便として、「その方が男も得だよ」って言ってるだけに見えるわ。

博士:い……いいではないか!
とにかく女性が社会進出すれば、男性も救われるのじゃ!

妹:でも彼女のリクツが正しいとするならば、二人暮らしより一人暮らしの方が圧倒的にリスクが大きいことにならない? そうなると「結婚すべき」というのが論理的な考え方だけど、この人、あちこちで「結婚はおわコン、結婚はおわコン」って書いてるわよ?

助手:ほ……ホントだ。こうなると「夫婦で働く方がリスクが少ない」という言い方自体、女性を働かせるための方便としか思えない……。

博士:……ふぅ~む、今日はいい天気じゃのお……。

妹:『女性学/男性学』のまえがきを見てちょうだい。彼女は思想家の廣松渉とフェミニストの江原由美子の対談を引用して、「上級カーストの女性と下級カーストの男性とを比べれば女性が上だ」との考えを「誤謬だ」と一蹴してるわ。
つまり男女はそのジェンダー構造上、いついかなる場合も女性の方が損だ、とのフェミニズムのロジックを、千田も踏襲しているとしか考えられないわけよ。

助手:なるほど……そういう考えの人間が言う「男性の解放」は、一体どんなものなのか……。

妹:それとここ。どうも田中美津という人の書いた昔の本からの引用みたいだけど、


女にとって「不感症」であることは、その存在の全面否定を意味しても、男にとって、「インポ」であることは、その存在の部分否定でしかないということに、性差別の本質が隠されている。
(中略)
つまり、男が社会と、女に向けての、そのふた股かけた存在証明の道を持ちえているということは、男の自己肯定が二重の安全弁をもっているということに他ならない。


助手:正直、この人が何をもってインポが不感症よりマシと思っているのかさっぱりわかりませんけど、どっちにしても「男が得」だって言ってるじゃないですか!

博士:う……うむ、その「インポ」と「不感症」は恐らく比喩表現で、「男は性的価値と社会的価値の二つの価値を持ち得るが、女性には性的価値しかない」という意味じゃろうな。

助手:それなら「インポ」と「不感症」じゃなく「ブサメン」と「ブス」とでも書けばいいと思いますが……だって「あらゆるセックスは全てレイプ」というほどに男は身勝手だ、というのがフェミニストの言い分だったはずなのに、不感症かどうかを気にするなんて、これじゃ男がいい人みたいじゃないですか。そもそも、一般的に考えて感度のいいブスと不感症の美人とどっちが価値と高いとされるかというと……。

博士:う……うるさい! そこはことの本質ではないわい!!

妹:えぇ。重要なのは果たして男が二つの価値を持っているだろうか、ということよね。

助手:でも、それってヘンだよなあ。そもそも社会的に成功していない男が、女にモテるはずがないですよ?

博士:……………。

助手:普通に考えて、二つのルートを持っているのは現代においては女でしょ
今の女性は働いて自分で稼ぐこともできれば、男性に養ってもらうこともできるもん。
一方、女性が男性を主夫として養うことがレアである以上、百歩譲って彼女の主張通り、男性が「社会的価値」と「性的価値」の二重の安全弁を持っているとしたところで、無意味ですよ。「性的価値」を持っているからと言って、女性に養ってもらえるわけじゃないんですから。

博士:……………。

助手:一方、女性は「性的価値」すらもモデルやタレントという形で「社会的価値」へと変換可能です。もちろん男性もモデルやタレントになることはできますけど、イケメンだからといって主夫になれるとは限りませんよね。

妹:一つ補足しておくと、引用した本は均等法以前のものみたいだから、今の時代とは齟齬があって当然ね。でも、昔から働く女なんていくらでもいたことを思えば、発表当時は通用したハナシなのかとなると、それは……。

博士:えぇ~~い、うるさいッッ!
見たまえ、本書のまえがきを読んでみると真っ先に、出版社から『女性学』の本を書いてほしいと依頼を受けたにもかかわらず、『女性学/男性学』とのタイトルにして欲しいと希望した旨が書かれておる。彼女がいかに男性学に関心を持っているかが、わかろうというものじゃ。

助手:へえ、それは頼もしい話ですね……んん? でも見る限り、男性学の話題なんていつまで経っても出てきませんが……?

博士:慌てるな、130ページを見てみたまえ。


 女性学/男性学という題名の本なのに、男性学は、いつになったら出てくるんだ、とじれったく思っているひともいるかもしれませんね。お待たせしました。男性学について考えてみましょう。


助手:あ、ホントだ……って、141ページでその話題、もう終わりじゃないですか!!
170ページを超える本の中、男性については10ページですか!?

博士:う~~む、そう言えば『俺妹』のニコ配信はそろそろかの、楽しみじゃなあ~~。

妹:でも……そのたった10ページの記述ですら、残念なことに極めて偏った内容であると、言わざるを得ないわね。

助手:えぇ!?

妹:ほら、ここを読んで。


日本において男性学というジャンルを打ち立てるのに大きな役割を果たした伊藤公雄は、「一九七〇年代から八〇年代にかけて「女性問題の時代」の開始があり、それが今後ともますます深化しようとしているとすれば、一九九〇年代は「男性問題の時代を告げる時にならざるをえない」といいます。


助手:え? これのどこがヘンなの?

妹:伊藤公雄の処女作、『〈男らしさ〉のゆくえ』の出版は1993年。
でも渡辺恒夫が編んだ『男性学の挑戦』は1989年よ。

博士:え……?
し、しかし、ウィキでも「社会学者の伊藤公雄がパイオニア的研究者である。」と書いてあるぞ?

妹:ところが、本当のパイオニアは渡辺と言うべきなのよ。

博士:い……いや……ウィキはともかく、本書では「パイオニア」とまでは断言してないから……。

妹:確かに。「伊藤が発案者、第一号」と書いてない以上、嘘だとは言えないわ。でも気になるのは、「一九九〇年代は男性問題の時代」という指摘。伊藤は自著で本当にこんなことを言っているのかしら?

博士:い……いや、実はこの本、引用がやたらに多いわりに、引用元の本の題名がきちんと書かれておらんのでな、確認ができんかった……。

妹:そう……ただ、渡辺は今言った著作に先んじて、1986年に『脱男性の時代』という本を出していたの。そこで彼は「二十一世紀は男性問題の世紀になる」と「予言」してるのよ。

助手:ひでえ!! この伊藤って人、渡辺をパクったな!!
兵頭新児の後で「私が女災という言葉を作った」と言い張る人が出てきたみたいな事態ですよ!!

博士:ば……バカ! 伊藤を兵頭のようなミソジニストといっしょにするな!!
妹:まあ、パクったとまでは言わないけど、本書を読む限りは伊藤が初めて言ったことのように読めるわね。
博士:単に千田が渡辺を知らなかっただけじゃないかの?

妹:そんなことはないわ。ほら、ここを見て。先の文章の後に、ちゃんと「渡辺が男性学という言葉の提唱者」と書いてあるわ。

助手:あ、ホントだ……じゃあいいじゃん。

博士:そうじゃそうじゃ! いささか毒舌も度を超したようじゃな、ひゃっひゃっひゃ……。

妹:そんなことはないわよ。だってこうなると逆に不自然じゃない?

博士:ん? 何がじゃ?

妹:つまり、千田は渡辺をちゃんと知っていながら、敢えて伊藤をこそ第一人者であるかのようにフィーチャーした。そこに作為がないとは言えないわね。

博士:何が言いたいのじゃ?

妹:渡辺は性同一性障害者や異性装者を研究し、男性解放を唱えた人物なの。
お兄ちゃんみたいな、「女性が得をしているぞ、分け前をよこせ」と主張するだけの「男性差別」クラスタとは一線を画しているわ。

博士:なるほど。我が不肖の弟子と違い、渡辺はまともだったということじゃな。

妹:ただ、とは言え、彼は男性が社会からおびただしいデメリットを強いられている存在であることを、明確に指摘した人物でもあるの。

博士:そ……それはフェミニズムの成果じゃ! 千田も言っておったろう!?

妹:どうかしら? 先に言ったように、千田は「女も社会に出るべき」との主張のマクラとして、それを語ったようにしか見えないわ。
しかし渡辺は、例えばハイジャック事件が起きた時、「女子供の人質を解放せよ」といった要求がなされることが象徴するように、まず男性は生命すらもが女性に比べて軽んぜられていることを指摘したの。
「男性差別クラスタ」もこうした男性の負わされたラディカルなデメリットについては、全く認識が甘い。その意味であたしの目には彼らもまた、フェミニストたちと同工異曲に見えるわね。
そして当時、男性学の確立に奔走した渡辺はフェミニストから批判され、やがて失意と共にこうした活動からフェードアウトしてしまっているわ。

博士:し……しかしじゃな、渡辺がやる気をなくした90年代の半ば辺り、むしろメンズリブは勃興期を迎えていたのじゃ。先の伊藤をを始めとする学者や研究家による著作がいくつも出版されたのじゃよ。

妹:確かに。でも本書では伊藤のスタンスが端的に書かれているわ。フェミニズムが女性性のネガティビティすらをも引き受けて「女で何が悪い」と居直る運動であったことを踏まえた上で、


この戦略をひっくりかえして、「男で何が悪い」ということはできるでしょうか。伊藤は(あくまでも一九九九年の時点での伊藤の意見ですが)、「できない」といいます。


妹:としている。
つまり、
メンズリブはただひたすら「男性を否定」する思想でしかないの。
「フェミニズムによって男性も権力欲、攻撃性といったマチズモを捨て去れば解放されるのだ」と唱えるだけの、フェミニズムのリプレイに他ならないのよ。

助手:ひでえ……しかもそんなことを大学教授みたいな勝ち組が言って、しかも叩く対象は立場の弱い男……そんなの単なる弱い者いじめじゃないか!!

博士:うるさいっっ!!
お前がそんなことを言うのも、男がどれだけ下駄を履かせてもらっているかを理解していないからじゃ!!
ぐだぐだぬかすと単位をやらんぞ!!

妹:そうね――「男は下駄を履かせてもらっている」。

助手:え……?

博士:ふむふむ……君も本当はわかっておったようじゃの。

妹:あたしがいつも、「お兄ちゃんたち男性差別クラスタは勝てない」と言い続けていたのは、そのせいよ。

助手:え? どういうこと?

妹:はてなキーワードで「メンズリブ」をみると、補足説明的に


一方、女性解放運動などによる「男性差別」が横行しているという認識から、これに反対するという意見や行動も以前から存在しており、近年ではこうした言説の方が目立つ傾向にある。


妹:との記述があるわ。言ってみれば今までの(国内における)「メンズリブ」はフェミニズムの変種でしかなかった。それに対するカウンターとして「男性にも分け前を」型の「男性差別クラスタ」が出てきたということね。

助手:そうだよ。だってヘンだもん、メンズリブなんて!

妹:そう。「男性差別クラスタ」は「男が損だ」と気づいた。
そしてまた、近代社会において「平等」や「人権」が正義であることも常識として知っている。
だから「平等」を叫ぶことで、「男性は差別されているぞ」と叫ぶことで問題が解決できる。ならば街頭で演説でもすれば速攻で快哉を浴びるはず、週刊誌が取材に来るはずと早合点した。
でもお兄ちゃんが参加している「男性差別をなくす市民の会」、果たして街頭演説をして共感してもらっているのかしら?

助手:そ……それは……。

妹:つまり、それではフェミニズムには「勝て」ないの。
お兄ちゃんが知ったかぶり知識で「ジェンダーフリー」を唱えたのもそれといっしょね。それでは「勝て」ない。

助手:え?
でも、ジェンダーというのはこの社会が作り上げた虚構であり……。

妹:そのロジックのウソ、そこでもフェミニストたちが欺瞞に満ちた振る舞いをし続けたことついては、また次回以降にゆっくりと教えてあげるわ。
でも今は、千田の「男性解放」が欺瞞に満ちたものであったことを思い出して欲しいの。

助手:そ……そうだ。確かに「女性の社会進出」のマクラのために持ち出しただけで、要するに自分の都合のいい時にだけ「男性解放」と言ってみせるダブルスタンダードでしかなかった。

妹:そう、ならばそんな人たちが自分たちに益さない「平等=ジェンダーフリー」をマジメに考えるかしら?

助手:……………。

博士:何が言いたいのじゃ?

妹:「男性差別クラスタ」は漫然と自分が立っているその場をスタートラインと考え、「平等」を叫んでいる。
でも「フェミニズム」は歴史的に女性が差別され続けて来たのだと考え、その研究の蓄積はおびただしいわ。

博士:そうじゃ! 「男性差別クラスタ」の言い分など、笑止千万じゃっっ!!

助手:……………。

妹:「男性差別クラスタ」は今ここにおまんじゅうが十あるのを見て、「男女で五つずつ分けよう」と主張しているの。
でも、フェミニストたちは過去を研究して、「かつて、男はおまんじゅうを百個も二百個も独占していた」と主張して、今あるおまんじゅうを独占することを正当化している。
つまりは、
「借金を返せ、利子つけて」と要求しているのよ。
そのロジックが笑止千万な、欺瞞に満ちた古拙で幼稚なものであることについては、「男性差別クラスタ」以上だけどね。

助手:で……でも、かつてがどうあろうと、今の問題に結びつけるのは間違ってるよ!!

妹:「アファーマティブアクション」などについては、お兄ちゃんの言い分が正しいと思うわ。でも、彼女らのロジックを受け容れるなら、それこそ本書で男性についての箇所が著しく少ないことも、今のお兄ちゃんの言い分では「差別だ」と否定できないわ。
これを広げれば例えば、男女共同参画局が女性のためにおびただしい予算を勝ち取っていることも、いちがいに否定できなくなるわね。
つまり「男性差別クラスタ」の言葉ではフェミニズムには「勝て」ないの。

博士:しかり、「男性差別クラスタ」は間違っているというわけじゃな。

妹:間違ってはいない。でも、残念ながら圧倒的に考えが足りてないの。
先に「メンズリブ」について見た通り、90年代のフェミニストたちは、「男性たちも大いに抑圧されている、男性たちも解放されるべきだ、それにはフェミニズムを推し進めればよい」と言い続けた。
でも、今世紀になってそんな声は全く聞かれなくなった。
もう、彼女らの本音は明らかよ。

博士:……………。

妹:現状では、残念ながら「メンズリブ」も「男性差別クラスタ」も「フェミニズム」というお釈迦様の手のひらの上から一歩も出ていない。

助手:だから、ぼくが聞きたいのは「フェミニズム云々」の話じゃないんだよ! どうすればぼくたちが「男性差別」から「解放」されるか……!!

妹:そういう焦りが、功を奏さないパフォーマンスを生んできたんだと思わない?
まずは自分たちの立っている足下を基準にしての「平等」も「解放」もニセモノだった、と知ることからよ。

助手:に……ニセモノだったの?

妹:そりゃそうよ。だってフェミニズムによって、お兄ちゃんたちは「所持金ゼロ」じゃなく「借金持ち」ってことに「されちゃった」のよ。

助手:じゃあ、どうすれば……?

妹:「遅れ」を取り戻すしかないでしょう?
今まで男たちは家族を養うことにかまけ続けて、自分たちのことを考えてこなかった。
でもフェミニズムの「成果」で男たちは結婚を選ばなくなった。
それは望ましいことではないけれども、自分たちのことを考える時間はできた。
その空いた時間でフェミニストたちの歩みを見ていくことで、彼女らがどこで間違ったのかがわかる。
そうすることで、実はお兄ちゃんたちも彼女らと同じ穴に落っこちてしまったことも見えてくるはずだわ。

助手:つまりフェミニズムについて知ることは必須だと?

妹:実戦を考えるなら、余計にね。
ということで、次回もまた千田有紀について突っ込んでいくわ。
こうしたコント形式はもうやらないかも知れないけど。

博士:あ……あの、それじゃワシの立場は……?

妹:ないわよ、そんなの。今回限りのやられ役で終わり。

博士:あ、やっぱり……。

 

 

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