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プログラム学習(2)

2013-11-24 | 認知心理学
●プログラム学習とは
 プログラム学習の形態をあらためて紹介する必要はないほどよく知られているとは思うが、図1にプログラムのサンプルを一つ挙げておく。
 各問の提示と、その答の提示をするためのティーチング・マシーンとがセットになっている
 プログラム学習は、今では教育現場ではそのままの形では実践されていない。教育心理学の教科書には、条件づけを応用した指導法の一つとしても紹介されている程度である。ただし、「プログラム学習によるーーー」と冠した実用的な自学自習テキストは今でもかなり多数、出版されている。

●プログラム学習に込められた授業設計の思想
 このみかけは単純な学習を支えている考えは、しかし、その後、授業設計の思想にかなりのインパクトを与えた。以下、プログラム学習の基本的な考えと、その意義を摘記してみる。
1)教材の目標分析をする(教材)
 教材に関しては、目標分析という考えを具体化してみせた。つまり、ある教材で何をどこまで、どのような道筋で教えるかを徹底的に分析したのである。
 今、絶対評価が導入され、評価規準の設定が焦眉の急を要する課題となっているが、その基盤は、プルグラム学習の教材の目標分析とプログラム作りにあるといってよい。
2)スモールステップで目標に導く(教材)
  教材の目標分析を踏まえてプログラムのステップ(1つの問)が構成され、目標へと学習者を導くことになる。その際に、ステップから次のステップまでは、ごく自然に移れるように細分化することで、行動の逐次形成をはかるのである。
 この考えと技術は、技能訓練や生活習慣の形成などの行動変容に生かされている。
3)手がかり管理を工夫する(教材)
 学習の進捗状況に合わせて、問の中に作り込む解答の手がかりを調整する。
 学習初期では、正答が引き出しやすいように手がかりを増やし(promting)、後期になったら、正答の手がかりを減らしていく(fading)。
 これは、学習速度の効率化をする上で有効な方策の一つである。
4)ただちに正誤をフィードバックする(反応)
 一つ一つのステップでの反応の正誤をただちに学習者に知らせることによって、どこがわかっていて、どこがわかっていないかを自己認識させることで、学習の自己調整をさせる。
 この即時フィードバック(強化)の原理は、スポーツ訓練などにおいて、要素技能の習得のためのコーチングの基本技術になっている。
5)自己ペースでの学習を保証する(反応)
 一斉授業は教師ペースでおこなわれる。そのペースにぴったりと合う学習者以外は、退屈かわけのわからないものになってしまう。プログラム学習では、ティーチングマシーンを使うことで、それぞれの学習者が自分にとって最適なペースで学習を進めることができる。
 自己ペースでの学習を保証するための方策の一つを示した功績は大きい。
6)反応の自発性が学習の出発点になる
 オペラントとは「自発的」の意である。学習は、学習者からの自発的な反応があって始まる。反応が自発しなければ学習は進行しない。
 これについては、やや矛盾したところがある。学習者の「反応」の自発性を強調はしているが、「学習者は、強化によって変わる応答的な存在」とみなしている。プログラム学習への批判の原点にもなっているところである。

リスク補償

2013-11-24 | 認知心理学

●リスク補償( risk compensation)
高いリスクが存在するときには、それを避けるという消極的な方策と、そのリスクの発現を押さえるか除去する積極的方策とがある。後者の方策がとられたことがわかると、人は、安全裕度として事態をとらえ、危険を無視するようになる。これが長期間にわたると、また元のリスキーな事態に逆戻りしてしまう。これが「リスク補償」、あるいは「リスク恒常性」と呼ばれるものである。