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ポジティブ思考と子育て」その4」短期集中連載

2013-10-23 | ポジティブ心理学

●子育てとポジティブ思考
 「児童心理」という雑誌の巻頭論文である。これについて書かないわけにはいかない。
子どもはその存在自体、ポジティブである。元気だし、明るいし、どんどん成長する。しかし、だからといって、そのままほっておいてよいというわけにはいかない。しつけも必要だし、成長をガイドしなければならないからである。
一般的に言うなら、どの領域でも(ポジでもネガでもない)普通のかかわりが子育ての基本だと思うが、領域を分けて、さらに、ポジ対ネガ比を塩梅して、最適な子育て戦略を立てることになる。
課題としては3つ。根っこではコラボレーションしているのだが、一応分けておく。
一つは、子育ての当事者、保護者や教師などがいかに自らの心をポジティブにしてそれを維持できるようにするにはどうしたらよいかである。
これについては、手前みそになるが、ポジティブ心理学の書をお読みいた
だいたり、育児教室やPTA活動などのなかで、ポジティブ心理学の素養があるインストラクターなどから知識と技法を学ぶことになる。育児ノイローゼなどネガティブな心への対応に加えて、あるいは、それとセットにしても学びや支援が有効かもしれない。
2つは、子育てにどのようにしてポジティブ思考を活用するかである。
せんじ詰めて言うなら、「7つほめて3つ叱る」に尽きる。ポジティブな子育てばかりでは、能天気で野放図な子どもになってしまう。「3つ叱る」ことで、それがネガティブな心を一時的に体験させることになっても、叱るところは断固叱らねば子どもはまっとうには育たない。
しかし、別の領域、たとえば、大好きな遊びや習い事では、「7つほめる」でのりのりで、進歩を加速させてやる。
言うまでもないが、「7つ」も「ほめる」もポジティブ戦略の象徴的な言い方であって、子ども、領域、状況に応じて、その割合は適宜調整される。また「ほめる」だけがポジティブ・アクションではない。激励、承認、勇気づけなどなど多彩なアクションを動員することになる。
3つは、子ども自身にポジティブに生きていくための知識と技法を身に着けさせる教育である。
これに教育現場ではすでになじみの校長講話や教室内スローガンなどを通して、折に触れて、子どもに語りかけポジティブ心理(学)の知識を提供しそれを実践させることになる。それによって子どものみならず、家庭や学校、さらには社会全体で、ポジティブ文化を醸成していくことになる。
さらに、たとえば、自分も周りも明るく元気にするためのポジティブ・コミュニケーション技法のように、HRなどの教科外活動のなかで実践的にポジティブ技法を習得する機会を作り、子どもにポジティブマインドを醸成することになる。ここでも、悪しき精神主義に陥らないためにも、また実効性のあるものにするためにも、技法、より広くは、行動レベルで介入が大事になる。
ただ、ここでも、注意が必要である。子どもをとりまく社会全体がポジティブ・シフトすることはとりたてて問題はない、というより、体罰問題に象徴されるように、ネガティブ・バイアスがかかっているように見える今の日本教育界では、それは望ましとは思うが、一人ひとりの子どものメンタル面の陶冶という点では、ポジティブマインド万々歳とはいかない。
なぜなら、子どもの将来を考えれば、厳しい現実をあるがままに認識し、受け入れられるマインドの強さも必要だし、幾度となくおとずれることになるであろうネガティブマインドとの格闘経験も必要だからである。



ポジティブ思考とは」短期連載」児童心理

2013-10-23 | ポジティブ心理学
●ポジティブ思考が中核
 ポジティブ心理の領域は、ポジティブ思考を中心に4つの領域になる
 ポジティブ思考を中核においたのは、「考え方(思考)さえ変えれば、ポジティブ人生が送れます」ということを言いたかったからである。もろ精神主義的言説である。
 ポジティブ人生とここで言うのは、世の中の見方(認知)気持ち(感情)、そして振る舞い(行動)が、生活のいたるところで、ポジティブな状態であることを意味している。
 それが、「考え方を変えれば実現できます」というのがポジティブ心理学なのである。
 思考心理学的には実はそう簡単な話ではないのだが、思考はある程度まで自分で自由にコントロールできるとの思いは誰しもがもっているので、この主張は受け入れやすい。
 話を具体的にしてみる。
「同じ現実でも、ポジティブにみようと思えばポジティブに見えてくる」
 家族療法で使われている手法の一つであるが、リフレーミングを例にとる。雨が降っているとき(現実)、「また雨か。濡れるのはいやだなー」(ネガティブ認知)を「樹木には滋養になるなー」と言い換えることでポジティブに現実を認知する(し直す)。
「考え方(信念)を変えれば、気持ちも元気になる」
 例として、認知行動療法のある段階で使われる手法である「反駁」を例にとると、ポジティブな考え方になるように自分で自分の考えに反駁してみることの勧めである。「失敗したのは自分が悪い」と考えずに「なぜ、失敗したのか」「どうすれば防げるのか」「これの教訓はなにか」と自分自身に問うことで、前向きな気持ちになれる。
「ポジティブ思考はポジティブな振る舞いを促す」
 周りをポジティブにすべしとの思いは、たとえば、前述した「ほンわかあ」40回運動につながる。

 このように、ポジティブ思考が中核になって、ポジティブな認知、感情、行動を導くのだが、これらの間の関係は、一方向的ではない。ポジティブな認知、感情、行動がポジティブな思考の質を高めたり、強化したりするところもあるし、さらに、認知と感情と行動の間にも相互の影響がある。それが矢印の強弱で示されている。
 たとえば、相手の長所に目を向けるようなポジティブ認知は、相手への親しみある振る舞いをもたらし、気持ちも穏やかになる。そして、「人にはどこか好いところがある」との思い(信念)を強化することにもなる。