飛水峡

思い出

岐阜新聞

1998年06月22日 18時21分05秒 | 岐阜の水と緑
海と山
〝昔の色〟取り戻そう

 「海は青、緑、深緑、透明なエメラルドグリーンなど複雑な色。ベースには黄もある」と、にいみたかとしさん(47)は言う。
 伊勢湾口に浮かぶ篠島の小学校時代から絵が好きだった少年は、海を離れて瑞浪に育ち、今は多治見で陶房を構える。洋画、陶板、ガラス工芸など多彩な創作活動の背景に、昔見た美しい海の色の記憶がある。

 「後鳥羽上皇ゆかりの『帝の井』が日照りで枯れかけた夏は、天水が頼りだった」とにいみさん。小学五年の時、愛知用水が島に届き、御岳の水が来た。

 それから三十年近くたった九〇年、愛知用水を取り入れる兼山取水口がある加茂郡八百津町と篠島のある南知多町が友好提携。九六年から八百津町錦津小と南篠島小の訪問交流も始まった。この間、時代は大きく変わり、漁業の島も観光・娯楽に軸足が移り、海の色も昔とは変わっていった。


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 南知多町は八二年から大野郡丹生川村と姉妹提携。九〇年からは教育交流もスタート。昨年度は丹生川村の児童が日間賀島の日間賀小を訪問、生活発表やゲームで交流した後、島めぐりや地引網漁などを体験、潮風のにおいを満喫した。

 このほか、恵那郡岩村町と愛知県知多市は五八年、青年学級と青年団の交流が契機となり、七〇年代には児童らが岩村にキャンプ、新舞子に臨海学校に相互訪問。八五年にふるさと協定という太い絆を結んだ。

 同郡付知町と愛知県幡豆町も六四年から姉妹提携。揖斐郡坂内村と三重県浜島町、吉城郡上宝村と富山県氷見市、大野郡久々野町と三重県南勢町の山と海の教育交流も年輪を重ねている。

 このうち、久々野町久々野小と南勢町五カ所小は交流二十周年の今春、記念誌「友情」を発刊。海の子のスキー、そり、山の子のヨット、魚釣りなど、異郷の風土に感動し、郷土を再発見した交流の様子をつづった。


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 八九年に友好都市提携を交わした各務原市と福井県敦賀市は、年初に阪神大震災があった九五年に災害時相互応援協定を結んだ。

 応援の中身は、①食糧、水、生活必需物資とその調達に必要な資機材②被災者の救出、医療、防疫、施設の応急復旧などに必要な資機材③救援に必要な車両など-の提供と、①消火、救援、医療、応急復旧活動などに必要な職員派遣②ボランティアのあっせん③児童・生徒の受け入れ④住宅のあっせん⑤ほかに特に要請されたもの-の計八項目。

 昨年一月の日本海重油汚染災害では、この協定に基づき、各務原市から職員二百一人と、青年会議所、商工会議所、ジュニアリーダーなど各種団体のボランティアら総勢三百二十三人が重油回収に出向いた。敦賀市は翌年春、各務原市の桜まつり会場で、お礼の物産展を開き、魚を特売した。 交流、協力、再発見-。海と山が昔の色を取り戻す時代も、いつか来るかもしれない。



朝なぎの海岸で潮風を浴びながら、
地引き網漁を体験する大野郡丹生川村の小学生ら


《岐阜新聞6月22日付朝刊一面掲載

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