飛水峡

思い出

岐阜新聞

2006年07月23日 21時56分59秒 | 岐阜の水と緑

鮎百年構想

 「この地域にはいろんな問題意識を持って活動している人がいるが、岐阜で生まれ育った人なら、長良川の鮎が減っていると聞くと、多かれ少なかれ気分が落ち込む。長良川流域圏の再生を目指すにあたって、いろんな人の共感を集めることができる象徴的なキーワードが鮎だと思う」
 こう話すのは、岐阜市の若者によるまちづくりグループ「オルガン」代表の蒲勇介さん(26)=岐阜市靭屋町=。「鮎百年構想」というテーマを掲げ、東京都内在住の県内出身者でつくる「東京G―net」と連携して、地域づくりの方法を模索している。
 蒲さんはデザイン事務所を営む傍ら、広い人脈を生かして、地域に伝わる伝統工芸復活などのプロデュース活動もしている。原料供給者と職人など、需要と需要をつなぐ橋渡し役だ。 鮎に関心を持った背景は旧郡上郡和良村(現郡上市)出身だったこと。幼少時代の遊び場はもっぱら川や山。「岐阜といえば長良川、天然鮎なんです」と訴える。
 蒲さんの描く地域づくりはこうだ。「昔は仕事の糧となるのが木とか魚とか地域にある自然資源だった。ところが今は資本が投下される都市部でしか生計を立てるのが難しくなっている。地域でものをつくり地域で消費する持続可能な地域づくりをしなければいけない。そういうまちを次世代に残さなければいけないと考えています」
 そこで目指すのが長良川流域を一つの単位と見て、上流域では木や農作物を生産し、下流域ではそれを製品化して消費するという元来の社会システム。「そんな社会が実現したなら、地域みんなで鮎を大切にする下地ができているだろう。長期的な視点を持つため百年構想としました」
 第一ステップとして、農業従事者不足の解決の一手として郡上市明宝地域で進められている「里山再生トラスト」に若者の参加を募り、田んぼのオーナーとなった。
 里山再生活動に参加する東京G―net代表の平野彰秀さん(30)は「普通の人の郷土愛を形にする、というのが僕らの活動のテーマ。東京にいても鮎が少ないとか農村部の過疎化とか、岐阜のことは気になっている。あとはきっかけがあるかないかの問題でしょう」
 天然鮎の減少など長良川に問題意識を持ち、声高に意見を言い続けてきたのは、長良川河口堰(ぜき)建設当時の反対運動に参加した人が多い。ところが、蒲さんらは反対運動に強い印象がない。つまり気付いたらすでに河口堰があったという世代だ。
 蒲さんは言う。「これまで鮎に関して活動してきた人はたくさんいるし、本気でやってきた人たち。僕も自分なりに何とか河口堰問題にもアプローチしなければいけないと思っている」
 河川環境だけではなく流域全体の再生のシンボルとして鮎を掲げた活動。長良川を取り巻く様子は、百年後どう変わっているだろう。


 
(写真)「鮎百年構想」を掲げて地域づくりに取り組む蒲勇介さん(左)。第一歩として里山再生活動に参加している=郡上市明宝

《岐阜新聞7月23日付朝刊一面》

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