飛水峡

思い出

読売新聞

2007年02月18日 10時05分18秒 | 河童の川流れ
雑 煮


 もうすぐ正月。知人から、県東部のスーパーでは、年末になると、雑煮用に焼き魚が並ぶと教えられた。隊員の家では、すまし汁に角もちが入っているだけだったが……。県内の雑煮事情はどうなっているのだろう。調べてみた。


千差万別、我が家の味
 焼き魚のうわさは本当か。県内で52店舗を展開するスーパーマーケットチェーン「アルビス」(本社・射水市)に聞くと、「黒部や滑川など呉東の店舗では29日から31日にかけて、雑煮用の素焼きのフクラギやサバなどを売り出します」とのこと。同じ県内でも隊員が知らない雑煮があるらしい。

 そこで、食育など地域で食と健康にかかわる活動を展開している「県食生活改善推進連絡協議会」の協力を得て、各市町村の食生活改善推進員の会長に雑煮について聞いてみた。

 調べてわかったのは、雑煮は「家庭ごと」といえるほど、バリエーションがあること。合併で市域が広がったこともあり、同じ市内でも具が異なる地域が多い。また、他県、他地域から嫁ぐ人が増え、様々な地域の味がミックスされて、「家の雑煮」と「地域の雑煮」が一致しないことも多くなっている。

 ただ、全般的に言えるのは、富山の雑煮はしょうゆベース。もちは、丸もちを入れる人もあるが、四角い切りもちが主流で、「湯がいて柔らかくして入れる」という答えが目立った。

 一番具だくさんだったのは、滑川市の深井さつ子さん(70)宅のもの。ニンジン、ゴボウ、焼き豆腐、すり身に赤と青の渦巻きかまぼこ、焼きカワハギを入れ、最後に焼いたエビと三つ葉を飾る。ダシは、昆布に加え、頭と皮を取って焼いて入れるカワハギやすり身のうまみから出るそうだ。

 新川地区では、フクラギやタイ、サバといった焼き魚をほぐしてダシ兼具にする。隊員は魚入りの雑煮を食べたことがなかったので、魚津市の武田喜代子さん(73)の雑煮を一足早く食べさせてもらった。

 ゴボウ、ニンジン、焼き豆腐、こんにゃくを煮て、素焼きにしたフクラギをほぐして混ぜる。おわんに湯がいた丸もちを盛り、甘辛い濃いめに仕上げた汁をかける。「ブリの子どものフクラギは出世魚。縁起を担ぐんです」と武田さん。魚のうまみがしみこんだダシが何とも言えずおいしい。

 反対に県西部は、具少なめのあっさり味が主流。例えば小矢部市の山口希代子さん(59)の雑煮は昆布とかつお節のダシに、もちを入れ、三つ葉や手まりふを飾る。「鶏肉や油揚げを入れる人もいますが、シンプルなのが多いようです」

 果たして我が家の雑煮のルーツはどこか。元日に確かめてみるのも面白いかもしれない。

     ◇
 雑煮の具に何を入れる?(もちをのぞく)

 ▼朝日町 ニンジン、ゴボウ、焼き豆腐、こんにゃく、鶏肉、タイ▼入善町 ニンジン、ゴボウ、焼き豆腐、こんにゃく、カワハギ、すり身、赤と青のかまぼこ、三つ葉▼黒部市 ニンジン、ゴボウ、焼き豆腐、こんにゃく、フクラギ(タイ)▼魚津市 ニンジン、ゴボウ、焼き豆腐、こんにゃく、フクラギ(タイやサバ)、三つ葉(ホウレンソウなど)▼滑川市 ニンジン、ゴボウ、焼き豆腐、カワハギ、すり身、赤と青のかまぼこ、素焼きしたエビ、三つ葉▼舟橋村 ニンジン、ゴボウ、焼き豆腐、すり身▼上市町 ニンジン、ゴボウ、大根、焼き豆腐、こんにゃく、すり身、エビ、カワハギ▼立山町 ニンジン、ゴボウ、かまぼこ、すり身、あぶらげ、鶏肉、ネギ▼富山市 渦巻きかまぼこ、三つ葉、(甘エビを入れる地域も)▼射水市 鶏肉、ネギ(三つ葉)▼高岡市 ニンジン、ゴボウ、大根、里芋、エノキ、三つ葉(鶏団子を入れる家も)▼氷見市 ニンジン、大根、ナルト、三つ葉、鶏肉▼砺波市 ニンジン、ゴボウ、シイタケ、ネギ、鶏肉(こんにゃくや豆腐など5品~7品入れる家も)▼南砺市 かまぼこ、ネギ、鶏肉▼小矢部市 ネギ(三つ葉)、(手まりふなどを入れる家も)


具だくさんの魚津の雑煮。世代を超えて伝えたい味だ(魚津市西布施公民館で)


隊長 「これぞ日本のハレ」
 我が家の雑煮には、甘エビ、すり身、煮た角もちが入る。祖母いわく、エビは腰が曲がるまで、すり身には元気に身を粉にして、もちは粘り強く働けますように、との思いを込めてあるそうだ。

 雑煮は、神棚、仏壇にお供えしてから家族全員で頂いた。雑煮を通じて、家の歴史や価値観を共有伝承する。うまい、まずい、珍しいではなく、込められた心を頂き受け継ぐことこそ日本のハレの食だったのではないだろうか。

 来年は、故郷の先輩方が私たちに込めた思い「心のハレ」の話をお届けしたい。



探検隊メンバー
寺嶌圭吾隊長…富山市内で酒店を経営する傍ら、食文化研究に情熱を注ぐ53歳

隊員O…高岡市出身。体形を気にしつつ、食べ歩きに励む30歳代




(2006年12月23日 読売新聞)

最新の画像もっと見る