飛水峡

思い出

岐阜新聞

2006年07月20日 20時29分26秒 | 岐阜の水と緑

冷水病との闘い 放流工夫し漁業振興

 鮎の伝染病・冷水病が広まった一九九四(平成六)年ごろを境に釣り客が減少したのは、県内のどの河川でも見られる現象。そんな中、九四年よりも売り上げを伸ばしている漁協がある。飛騨市神岡町の高原川漁協だ。
 徳田幸憲参事(44)はこう話す。「高原川は北アルプスの雪解け水が流れ込み、水温が低い。そんな条件で鮎が育つのは難しい。鮎釣りのピークといわれる平成六年ごろでも売り上げは三百―四百万円程度。もともと鮎を釣りに来る人が少なかった川なんです」
 水温が低い上に、川はいくつものダムや堰堤(えんてい)で分断されている。冷水病の影響も他漁協より早く受けた。
 鮎釣りの漁場としては決して条件が良くない高原川なのに、日釣り券の販売件数の推移を見ると九四年が千三百件だったのが二〇〇一年ごろから上昇し、〇四年が四千二百件と飛躍的に伸びている。釣り人の心をつかむまでには何があったのか。
 注目すべきは、天然遡上(そじょう)は見込めないため、放流の成否がそのまま釣果になって表れるという点。
 「どんな種類の鮎をいつ放流すればいいのか。とにかく情報を集めた」と徳田参事は言う。県内外の種苗生産業者に会って話を聞いたり、全国の水産試験場の報告書を読んだり。「組織の大きい漁協だったら前年のやり方を大きく変えるのは難しい。でもうちは役員の理解もあり思い切って試行錯誤ができた」
 その試みは理論的で興味深い。水温が上がる梅雨明け後の放流量を増やしたり、友釣りに掛かりやすいとされる琵琶湖産の天然を梅雨明け後に放流したり。
 また九八年からは、冷水病が激しくなってきたため人工産を主体に。〇四年には堰堤の上流と下流で県産と滋賀県産の人工を分けて入れるなど工夫して、売り上げ千二百万円の過去最高を記録した。
 今年は思い切って、賛否が分かれる琵琶湖産を放流したという。「冷水病対策として加温処理がされるようになり、菌に強くなったと聞いたから」と徳田参事。七月九日の解禁後は「人工産よりも琵琶湖産の方が掛かりやすく好調」といい、読みは当たったようだ。
 そしてこう振り返る。「冷水病の影響を早くから受けたので、早く対処できた。長良川みたいに天然遡上があると放流の効果が良く分からないけど、うちは失敗イコール釣れないということ。一生懸命だった」
 鮎が元気な川は輝き、流域のまちは釣り人でにぎわう。漁業法では、漁協に対し漁業権が与えられるのと同時に増殖が義務付けられている。内水面(河川や湖)漁業の振興のために漁協は何をするべきか。高原川での成果がそれを物語っている。


 
(写真)「あそこに元気な鮎が見えますね」と指さす徳田幸憲さん。放流方法の試行錯誤を繰り返しながら売り上げを伸ばしている=飛騨市神岡町、高原川

《岐阜新聞7月20日付朝刊一面》

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