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東京優駿(GI)回顧

2013-05-26 20:43:26 | 回顧
12.3 - 10.5 - 12.2 - 12.5 - 12.8 - 11.9 - 12.7 - 12.3 - 11.9 - 11.6 - 11.7 - 11.9=2:24.3
(35.0-35.2)(60.3-59.8)

 人馬の揺るぎない絆がもたらした勝利。第80回東京優駿を制したのは武豊とキズナだった。この中間は京都新聞杯から中2週ときついローテーションだったが、最終追い切りでは坂路で素軽い動きを披露。下見どころでも、完歩の大きい柔らかい歩様で気配は抜群だった。レースでは1番枠発走から好発を決めるも、手綱をがっちりと抑えて自然とポディションは後方まで下がる。有力どころが1角でゴチャつくのはどこ吹く風。後方3番手のインでしっかりと折り合う。大一番でも慌てない手綱捌きは、さすがダービー4勝の武豊。道中は首を水平に使った収縮の利いた走りでコースロスなくインをぴったりと回る。3角から馬場の3分どころを通り、進路を探る。4角で手綱をしごいてスパートを開始させると直線は加速したまま大外へ持ち出す。坂下でタマモとマイネルの間に進路を見出し突っ込むも、タマモが外へ膨れたことで一瞬手綱を抑える。それでも、そこから立て直して再びスパートすると、一完歩毎にグーンと凄い脚力で伸びる。特に残り100㍍を切ってからの脚はすさまじかった。上がり3ハロン33秒5の脚で世代の頂点に立った。背中と首が柔らかく使えて収縮の利いた走りができるため、一完歩の推進力が凄まじい。力みがまったくない。その分、加速するのに少し時間の掛るタイプで弥生賞は完全に脚を余した。父ディープインパクトに最も近い走りをしている。凱旋門賞へ既に登録済みと聞く。父の果たせなかった世界制覇は夢ではなくなった。
 
超良血馬エピファネイアがまたしても大金星を取り逃した。この中間はソエ気味で最終追い切りは坂路でサッと流す程度だったが、攻め量自体は豊富で当日の馬体重は8㌔減。馬体、テンションともにギリギリで、まさに究極の仕上げだった。9番枠発走から発馬で右にモタれると、そこから馬任せで中団へ。1角手前で馬込みの中でゴチャつくと、首を上げてかなり行きたがる。1角で上手くインに潜り込むと、その後も抑え切れないくらいの行きっぷり。それでも、前に壁を作れたことでメリハリのある競馬ができた。3,4角ももの凄い手応えで、それは同厩舎でダービーを制したウォッカを彷彿とさせるものだった。直線を向くと、右手綱をシェイクさせ加速させたまま馬場の外めへ持ち出す。一完歩毎にグイグイと鋭い脚を見せ、鞍上の右ステッキに応えると残り100㍍でロゴタイプを捕える。完全に抜け出したかと思われたが、勝ち馬の強烈な脚に屈した。この馬の持ち味はすべて発揮できた。

 逃げ粘ったアポロフェニックスの走りは見事だった。3番枠から手綱をしごいてハナを主張すると、外からサムソンズプライドも負けじと外から競りかけてくる。2ハロン目は10秒5と激しい攻防。コーナーワークでハナを奪うと、1角から12秒2-12秒5-12秒8とたっぷりと息を入れる。その割に後続と5,6馬身の差ができた。これは3番手の2頭が人気薄で無理をするタイプではなく後続に蓋をしたことと、その後ろにいたロゴタイプが距離に不安を抱き、折り合い重視の騎乗をしたため。これはかなりの利があった。向こう正面で業を煮やしたメイケイペガスターに一気にハナを奪われ、11秒9と流れは一瞬速くなったが、すぐに12秒7と息を入れる。ここで勝浦の判断が素晴らしかった。馬にスイッチを入れさせないためにあえてメイケイペガスターと距離を置き、外に出したのだ。その甲斐あってガツンと掛ることなく平静を保てた。4角で外から並びかけると、直線は単独早め先頭に躍り出る。坂上から懸命の粘り腰を見せ、一旦はペプチドアマゾンに粘られるもそこから差し返した勝負根性はお見事だった。道中の緩急ある流れに戸惑うことなく対応できたし、渋太い脚は高く評価できる。

 4着のペプチドアマゾンはこの中間、攻めで絶好の動きを見せていた。最終追い切りのCWコースでは、グンと重心を沈め、大きなフットワークで併走馬を突き放していた。16番枠発走から左ステッキを連発されると、ゴール版前で行き脚がついてスーッと3番手のインに潜り込む。これだけステッキを入れられると馬にスイッチが入ってもおかしくないが、ピタリと折り合う。見事な精神力だ。道中は攻め馬でも見せたように、グンと重心を沈め収縮の利いた素晴らしい姿。直線で4番手からスパートを開始させると、ジリジリと差を縮める。一瞬は先頭に躍り出て夢を見たが、最後は強烈な決め手を持つ2頭に差されてしまった。まだトモが緩い現状で追われてからは頭が高くなってしまう。それでも、前走、前々走よりトモがパンとしていた。前走、前々走のVTRを見てほしいが、トモが外へ逃げている。ステイヤータイプだけに菊花賞が楽しみだが、もう少しテンをゆっくり走らせられないものか。

 皐月賞馬ロゴタイプは、この中間もWコースでゴム毬のような弾むフットワークを披露し、気配は絶好だった。トモの蹴りが強く、好発を決めると自然と先団のポディションへ。しかし、1角までは前に壁を作ることができず鞍上も抑えるのに苦労する。1角から前に2頭を置き我慢をさせるも、ハミを噛んで少し力んでいた。流れが落ち着いた向こう正面でメイケイペガスターが外から一気に先頭へ並びかけた時は、釣られることなくグッと我慢。3,4角も手応え十分のまま直線は馬場の5分どころへ。手前を何度も替えて懸命に脚を伸ばす。しかし、残り100メートルで脚色一杯で止まってしまった。スピードの持続力で押し切るタイプ。いつもの正攻法の競馬で力を出し切ったが、府中の2,400㍍向きではなかった。

 14番人気の伏兵テイエムイナズマに本命を打っていた。下見どころでは二人引きで少しテンションは高かったが、地下馬道、返し馬と落ち着いていた。11番枠発走からスーッと馬任せでポディションを後方まで下げる。行きたがる素振りを見せずに折り合えたのは前走で武豊が実践の中でメリハリのある競馬を教えたのと、この中間に前に壁を作って折り合いを付ける稽古を繰り返した賜物だろう。道中は後方3,4番手でじっくりと脚をタメる。緩急のある流れにも動じない。誤算だったのは流れが予想以上に落ち着き、3,4角でびっしりと馬込みが固まってしまったことだ。その分、大外へ進路を取らざるを得ず距離ロスは相当あった。直線もかなりの大外へ回らされた。そこから一完歩毎に大きなフットワークで伸びてきてはいるが、良馬場で上位馬が33秒台を使うレースで大外一気は辛かった。欲を言えばもう少しテンから流れてほしかった。気性面は確実に成長しているし、距離は問題なかった。

 コディーノは発馬で躓き、その後に気合いを付けたことで完全に掛ってしまった。1角では頭を上げてモロに掛っていしたし、向こう正面でも掛っていた。鞍上として2番枠発走で馬込みに包まれたくなかったし、良いポディションを取りたかったのだろう。その焦りが馬に伝わってしまった。これでは力を発揮できない。今シーズンのCウィリアムズは取りこぼしが目立つ。

 メイケイペガスターは2角で我慢できずに一気に脚を使って先頭に躍り出た。直線はアポロソニックに交わされてからもう一度抜き返す脚力を見せてくれたし、残り100㍍までは粘りを見せてくれた。首と背中を柔らかく使えるタイプで推進力は素晴らしい。マイルから2000㍍で今後の活躍が楽しみだ。


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