鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

来るための使者と行くための使者:一人の使者が来るそして行くことはできない?(GLASS7-5)

2009-08-16 18:29:04 | Weblog
 白の王様が遣わした使者の一人目はヘイア Haighha であった。そして王様が言う。「もう一人の使者はハッター Hatta と呼ばれる。私には二人の使者がいなければならない。わかるかな。来るそして行くため to come and go である。一人は来るため、一人は行くため One to come, and one to go である。」

 PS1:白の王様は何を考えているのか?一人の使者しかいないとどうなるのか?来るための使者一人では行くことができない。行くための使者一人では来ることができない。使者二人が協力して初めて来るそして行くことができる。だから「私には二人の使者がいなければならない。」と王様は言ったのだろうか?奇妙である。一人の使者が、来るそして行くことができるのが日常の世界である。鏡の国では使者二人が協力しないと来るそして行くことができないのだろうか?だからアリスが質問する。

 「もう一度言っていただきたく、あなたのお許しをお恵みください I beg your pardon? 」とアリス。すると王様が「お恵みをなどと言うのは乞食のようで上品でない It isn't respectable to beg 」と諭す。

 PS2:なんとも話が通じない王様である。アリスが恵んでほしいのはもう一度王様に言ってもらうことであって、乞食のように食物や金銭ではない。だからアリスが言い返す。

 「私は王様が言うことの意味がわからないだけです。何故来るための使者と行くための使者の二人が必要なんですか?」と。

 PS3:アリスの当然の発言である。王様の答は次の通り。

 「お前に言っているではないか。私には二人の使者がいなければならない。取って来るそして持って行くため to fetch and carry 。一人は取って来るため、一人は持って行くため One to fetch, and one to carry である。」

 PS4:白の王様が言うことは日常の世界と同じである。二人の使者は別々の目的のために行った。「一人は取って来るため、一人は持って行くため」。だから王様には二人の使者が必要である。王様は省略して「一人は来るため、一人は行くため」と言った。この省略はアリスを当惑させた(PS1参照)。言うまでもなくこれは著者キャロルが言葉遊びにより意図的に引き起こしたものである。キャロルは読者を当惑させたかったのだ。


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