鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

劇の現実と日常的現実が切断されていたらアリスは一人でなく二人である(GLASS1-4)

2011-02-21 21:27:51 | Weblog

 アリスがついに結論を出す。「お姉さんが一人の役しかできないって言うのなら、お姉さんは一人の役だけやってください。ほかの全部の役は私が一人でやるわ!」と。

 PS1:姉にとって劇の現実は日常的現実の一部だから、彼女は劇中の一人の人物しか演じられない。しかしアリスにとって劇の現実は日常的現実と全く別物である。劇の中で(日常的現実に属す)アリスは見えない。だからアリスは劇中で何人分の役でも演じる。

 かつてアリスは年配の乳母をひどく驚かした。アリスが突然、乳母の耳元で叫んだ。「乳母!誰かのつもりごっこしよう! Let's pretend! 私はお腹がすいたハイエナ、そしてお前は骨!」と。
 
 PS2:なぜ乳母は驚いたのか?①突然、耳元で叫ばれたから。②骨を演じるとはどういうことか乳母には分からなかったから。③骨を演じたらお腹がすいたハイエナに食べられてしまうから。

 PS3:驚いた理由③の考察。乳母にとって劇の現実は、普段と異なるルールに従うとはいえ日常的現実の一部である。骨としてハイエナに食べられるという虚構の恐怖が、日常的現実と虚構が切断されていないため、日常的現実に生きる乳母の心に反射する。彼女は日常的現実のうちで恐怖する。

 PS4:アリスが乳母の立場だったとしても、アリスだったら何も恐怖しない。劇の現実の中でハイエナに食べられたところで、それは日常的現実から完全に切断されている。両現実は無関係。日常的現実のうちに生きるアリスの心に何の影響も与えない。

 PS5:追加考察。アリスの立場に立ったとき、劇の現実と日常的現実のどちらにも登場するアリスは果たして同一なのだろうか?二つの現実が完全に切断されていたらアリスは同一でなく、全く別の二人となる。アリスは一人でなく、二人のアリスになる。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿